軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

73.ボタンは飛ぶものです

生産所に行く前に冒険者ギルドに寄る。

相変わらず受付嬢ファンクラブは今日も出勤している。受付に近付くと全員がこっちの動きを目で追うのはヤメレ。

「すまん。確認したいのだが」

「はい、なんでしょうか」

対応はポニテのナナさん。前回エメルさんのボタンが弾け飛んだがナナさんは大丈夫そうだ、どこのとは言わないが余裕がある。

「冒険者ギルド登録のクランに専用依頼があると聞いたのだがそれは掲示板に張り出されるのか?」

「いいえ、クラン専用依頼はメールでお知らせが届きます。掲示板の貼り出しはございません。只今準備中ですが近日中に最初のお知らせが届く予定です、受ける受けないは任意ですが通常依頼より報酬を良くしてありますのでご活用ください」

「わかった、ありがッツ」

礼を言いかけたら隣から何かが二つ飛んできて一つが額にクリーンヒットしかかるのを慌ててキャッチ。飛んできた方向を見ると、びっくり顔したエメルさん。

さっきのはボタンですか、そうですか。本日はピンクですか、そうですか。

「おおおおおお!?」

外野から野太い歓声が上がる。 女性キャラ(なかみ不明) の声はこんな時は飲み込まれてしまうものなのか。

「ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」

「! 大丈夫です」

エメルさんが頭を下げて上げたらまた一つ飛んで来たのでキャッチ。

「きゃあ! ご、ごめんなさい」

慌てて身を乗り出してくるのはいいんですがますます胸元が広がってですね。見える、見えるから。

( )( )じゃなくって( Y )なんですね。

「大丈夫だ」

少しずれて日参の男どもからの視線を遮りつつ、カウンターにボタンを置き、バスタオルを渡す。かっこよくストールとか上着とか渡せればいいのだが、あいにくストールなんか持っとらんし、上着は防具でもあるので気軽に渡せない。未使用だから許せ。

「ありがとうございます」

シャツの上にギルドの上着はきているが、胸が完全に隠れるようなデザインではない。

「エメル、ここは大丈夫だからシャツ着替えておいでよ。ホムラさんもありがとう」

ポニテを揺らしながらナナさんも慌てて声をかける。

たゆんたゆんに動揺して思わずですます調がでてしまったな、と思いながらエメルさんが胸にタオルを当てて隠すのを確認してからなんでもなかった風にカウンターを離れる。

激しく外野が騒いでいるけれどスルーで!

資料室に寄ろうかと思っていたが、視線が痛いので退散することにした。そっちがメインで来たのだが仕方がない。

男どもからうらやましー!! ちくちょう!! なんだとか定型文が聞こえて来る、幼女の外見でその叫びに混じっている人は最終的に一体何がしたいのか。少ないたぶん中身の性別も女性な冒険者からはエメルの胸の形状についての話と、自分ももっと大きくすればよかった!とか、身長と同じで胸の上限も種族ごとにあるとかが聞こえてきて豆知識が増えた……。

男女共にエメルの胸には夢と希望を見るらしい。

その後、生産と委託処理をちゃっちゃと終えて騎獣を探しにアイルへ移動する予定が思いのほか夢中になった。

錬金を30まで上げると扱える素材が四つになるかもしれんのでせっせと器用さの指輪+3を生産。持ち物がいっぱいになるたび委託に突っ込むが、人の多い時間帯のためかすぐ売れた。

レベルが上がっていいのだが、さすがに手頃な器用さの指輪が販売リストから消えたので魔法石造りにシフト。

ランクの低い宝石には耐性・強化などのエンチャントは宝石との相性が良ければ効果が付くそうだが、%が低い。炎耐性3%とかそんな感じだ。3%ついた魔法石同士を錬成して4%、さらに錬成して5%を超えると錬成失敗の確率が跳ね上がるそうな。上のランクに付加した方が最初から5%がついたりで効率もコスパもいいこともしばしば。

さらに同じランク同じ宝石でも石が大きければ大きいほど高い%がつくそうだが、あまりでかいと今度はアクセサリーに使うのが難しい。耐性は付きやすいが強化は付きにくい。

まあ、石のランクが高いほど込められる魔法も増えるのだろう。この辺は予測が立つ。

あとは魔法石を二つ以上使うとか魔法石に魔法陣を組み合わせることができるのかとか。魔法石二つはできた。ただ台座の素材に対して付けられる魔法石のランクの合計が決まっているような気がする。付けても発動しない事がしばしば。

魔法陣はスキルポイントがなくて覚えていません、終了。

どうせだったら幸運のお守りとか、常時つけていてもおかしくない効果を【冥結界石】を使ったアクセサリーにつけたい所存。

お茶漬たちが迷宮から出てきてタイムアウト。そして何故かペテロからメール。

お茶漬:こんばん〜

シン :こん

レオ :わはは!こんばんは!

菊姫 :こんばんわでし〜

ペテロ:こんこん

ホムラ:こんばんは

答えながらメールを読む。

内容はこのメンツに転移石を作れることを教えていいかの確認。

ホムラ:ペテロ、口止め付きで教えていいぞ。

ペテロ:了解wありがとう。

シン :なんだ?

お茶漬:金欠2名いて神殿の転移使わせるのいたたまれない。

レオ :なんだろ?

菊姫 :なんでしか?

素材の端数を生産してしまい、借りていた個室を出て、人がいないことを確認して転移する、出る場所はジアースの神殿だ。転移門から出るから出る方は気を使わなくていい。

「こんばんは」

「おお、合流」

「こんこん」

「あ、パーティー申請だすから入って」

お茶漬から誘われてパーティーに入る。

「クラン会話、ロイの所と間違えて誰か誤爆しそうで不安だったわ」

全員がパーティー会話に切り替える。

「お気遣いありがとう。このメンツ以外には内緒に頼む」

「いわないでしよ」

「おうよ!」

「黙ってる! 黙ってる!」

お茶漬とペテロが転移の説明をざっとしてくれていたので、自分で説明と口止めする手間が省けた。

「転移石は闇と光の属性石の二つで一つ交換してやるからもってこい」

「ありあり」

「早速お願いするでし、ペテロに今の分返すでし」

「私もちょっと迷宮おやすみして、光と闇の属性石集めなきゃ」

「僕も僕も、どっかいいとこないかな」

「本気で出ないよね」

「出ない上に、今の所弱点属性にならないせいで需要高いしねぇ。早く弱点属性になればいいのに」

「弱点属性になるってことは敵の属性が対応しているってことだから、光か闇出やすくなるんじゃ」

「一気に値崩れですね、わかります」

「全部『転移石』でいいのか?」

「他に何かあるでしか?」

「『帰還石』があるな。簡単に言うと『帰還石』はダンジョンから外に戻る用、『転移石』は敵の出るフィールドで使用不可だから街同士の移動用かな」

「半々で!」

「同じく!」

「わたちも〜」

お茶漬とペテロが話している間に三人分のアイテムの交換を済ます。受け取った属性石は後でまた錬金しておこう。さらに全員と頼まれていた薬の取引を終わらせる、ちょっとすっきり。

『帰還』の魔法はフィールドで使用の場合は最後に潜った転移門に、構造物の中で使った場合は入り口に移動する。例外ありとは書いてあるが、こちらは敵視が消えればフィールド上でもダンジョンでも使用ができるようだ。

ちなみに初めて取得した者のボーナス効果か私は攻撃を受けていては無理だが、敵視があっても攻撃を受けるような距離でなければ『帰還』が使える。基本、向かってくる敵は斬り捨てて殲滅しているのでその状況で使ったことがないが、結構反則である。

『帰還石』も同じく最後に潜った転移門か、構造物の入り口に移動できる。評価によって帰還の失敗と、ランダムなシルの喪失がある。失敗の場合も『帰還石』は砕ける。

博打が嫌な方はリスクのないレンガード印の評価10をお試しください。まだ売りに出してないがな。

どちらもフィールドで使って転移門未使用の場合は最後に潜った入り口の門の前に移動だ。

『転移』の魔法は非戦闘エリアから開放した転移門から転移先を選び転移できる。転移門がなくともマーキングした場所へ飛べるらしいが、マーキングするためのアイテムと魔法陣が必要な様子。アイテムは『空の精霊の祝福』というものだが、影も形も見当たらない。魔法陣はスキルポイント不足で覚えていない。初取得のボーナスは敵視がない状態でのフィールドからの使用。

『転移石』は非戦闘エリアから開放した転移門への転移。評価10で国境が越えられるかわりに評価9で0になる失敗の確率が国外を選ぶと10%つく。

評価8までの失敗率が帰還石より高い。

詳しく見るとこんな感じだが、菊姫達に言ったように帰還はダンジョン、転移は街間でいいと思う。

最初、帰還は転移の劣化版かと思ったが用途が違ったようだ。

「お知らせです」

「ん?」

お茶漬がいきなり笑顔で発言する。

「 こ こ に 姪 が き ま す 。 」

「「!!!!!」」

「わはははははは」

「わたちは安心です」

「どうした?」

不思議そうにペテロが尋ねてくる。

「うを! ペテロ、髪おろせ!!」

シンが慌ててペテロに言う。

「ホムラはローブ貸せ」

「何?」

「いいがなんだ?」

疑問に思いながらもシンの願い通りローブを着て髪を解くペテロ。

お茶漬の年の離れた姉の娘、今年成人式をしたとか言っていたがこのゲームをやっていたとは。

「リアルは清楚で黒髪ストレートで儚げで控えめでどこの漫画の設定詰め込んだよってくらいなのにな」

シンが嘆息する。お茶漬の地元は観光地で、一人暮らしのヤツの家にペテロ以外の全員がお邪魔したことがある。妹といっても通じるような年の差でお茶漬に大変懐いている彼女が、たまたま届け物をしに来て一度だけリアルで会ったことがあるのだ、挨拶だけで真っ赤になって引っ込まれてしまったのでほとんど話したことがないが。

シンについては仕事で引っ越す前はお茶漬の家と近かったので姪とも顔なじみだ。

「本当に美人で華奢で十五、六で通じそうなくらいでしのにねぇ」

「だからなんだ?」

「ああ、なんというか電脳世界では正反対というか、なんというか」

「油断するとホモホモしい妄想の対象とされます。僕は止められないんで自己責任で対応お願いします」

言いよどんでいると近親者がきっぱりバラしてくる。

「てめぇ、わざとここに呼んだな?」

「ネットのヤツを一人で受け止めきれる自信がないの、ゴメンなさい」

「そんな強烈なの?」

「ほどほど筋肉中背、黒髪短髪、浅黒い肌のキャラは本気で要注意ですね」

「全員外れてるだろう?」

私が長髪を選んだ理由の一つだ。

「最近、時代物にはまって結っていると長髪も範囲になったってお前頭抱えてたろ!」

お茶漬に向けて不穏な追加事項を叫ぶシン。

「なるほど、それで」

自分のさせられた格好に納得するペテロ。

「一応、 今回は(・・・) 友人同士でお互い好みのキャラ作って他には迷惑かけてないらしいのでちょっと安心して?」

「できんわ!」

ネット挟むと何故かグイグイくる人見知り? 何それおいしいの? な、妄想だだ漏れ少女になってしまう、何故なのか不思議は尽きない。以前のゲームでは、聞きたくないことはBGMをやや大きく、会話を小さくの音設定をして、スルーすればよかったのだがこの世界ではどうだろう?

「転移門あるし、逃げようか」

あっさり提案してくるペテロ。

「そうだな!」

「そう言えばそうだな。お茶漬置いていこう」

「冷静に考えたら会う必要無かった」

「暗いところ飽きた!磯釣りがしたい!」

「はいはい、セカンでしね」

「え、ちょっと待って。一人にしないで」

そういうわけでお茶漬を置いてセカンに転移した。

パーティー会話で泣き言が聞こえてくるが気にしないことにしよう。セカンは雲一つない晴天、星降る丘ほどではないが綺麗な夜空だ。とても清々しい。

「夜釣り!!!!」

一言叫んでレオが走って行く。

【釣り】を持っているシンも海に、菊姫はペテロに頼まれた服の生産。レオとシンが釣り上げた魚で宴会をしようと言うので私とペテロは市場を覗いてそぞろ歩いている。

「釣りなのにウニ釣れた〜〜〜っ!」

「わははははは、こっちはサザエだぜ!」

「おー、こっちは市場が肉もチーズも充実してる、まあ肉はドロップ品がたくさんあるからそっちを使う。小麦はあるけど野菜がないな」

「果物は船で入ってくるのかオレンジとレモンがあるね、あとオリーブ」

「ファガットからの輸入なのかな? お、トマトの瓶詰め発見」

「日本食食べたい」

「まだちょっとハードル高い、日本食。肉焼くから我慢しろ」

肉と白米と納豆をこよなく愛するシン。遠慮なく米を食い尽くされそうでまだ提供する気はない。

「ちょっと僕抜きで楽しそう!」

「お茶漬はおとなしく姪の熱弁を受け止めてろ」

「大漁〜〜〜〜っ!」

「おーいえーっ!」

「なんでレオはパンイチなんでし?」

「この方がよく釣れる気がする!!」

レオとシンが帰ってきたので、レオの格好はスルーして浜辺で宴会の準備をする。

「浜辺でも猫足テーブル」

「アイアン家具見かけたらご一報ください」

ペテロから突っ込みが入ったが気にしない。野外で使っても違和感がない様なアイアンテーブルを探すのをすっかり忘れていたが、まあ思い出しても回った場所で見かけた記憶がないので同じことだろう。

まずはシン用にサーロインとヒレが楽しめるTボーンステーキ、現実世界で焼き加減が難しくともここではスキルで素晴らしき焼き加減に。この辺で我慢がならなくなったお茶漬が姪を振り切って宴会に参加、手土産に野菜を提供された。

ウニの殻を使ったクリームグラタン。

カニのタルトにビスク。

タコのカルパッチョ。

生牡蠣にレモンを添えたもの。

トマトと玉ねぎのサラダ。

バターロールと小ぶりのホテルブレッド。

薄切りにしたシープシープの肉を外側をサクサクに仕上げたカツレツ。

オーク豚のトンカツ。

ソースはタルタルソースとウスターソースを作ってある。オイスターソースにもチャレンジしたい気がするが、牡蠣は菊姫の好物なので残る気がしない。

はっはっはっ! オーク豚を堪能するがいい!!

「やべぇうめぇ」

「カニがいい!これうまい!!!」

「トンカツだけメニューから浮いてる」

「相変わらず洋食にまとめる気がないんですね?」

ペテロが鋭い。

「オーク豚です」

あとからバレるのはあれなので早々にバラす。

「うへぇ!」

「でも衣はサックリ、中はジューシーでおいしいでしよ?」

すでに菊姫が食べていた、チャレンジャーだなおい。

「ああ、思いの外癖がなくていい肉だぞ、オーク豚」

内心の動揺を隠してトンカツを勧める。

「ビールと合えばなんでもいい!!」

豪快なのがここにも一人。

「はぁあ、至福!」

結局ペテロもシンにつられてトンカツに手を出していた。

「あ、そうだ。今回これもある」

忘れていた日本酒を出す。

「ああああ! 日本酒でし!」

「おおっ!」

「一本しか無いし、造れないから大事に飲め」

そんなこんなで宴会は続く。

レオは食ってる間もずっとパンイチだったことを付け加えておく。

この世界に風邪はないのだろうか……