軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

55.ウォータ・ポリプ

先に来ていたペテロとお茶漬に約束した『転移石』を忘れないうちに渡し待つことしばし。

ペテロに転移石を渡す時についでにレオがよこした真っ赤なブーメランパンツを混ぜておいた。こうしてパンツは履かれることなくロンダリングされてゆく。

『転移石』の生産には評価6も混じった。

委託はつけられる値段の上限下限はアイテムごとに決まっており、今は他に作るものがいないため評価6でも最高金額で売れる。なので余分に生産した評価10と交換サービス。『帰還石』を出したばかりなため、『転移石』は評価10をまだ売りに出す気がない。

私の【空魔法】での『転移』はフィールドから転移できる。初取得特典万歳。

通常の【空魔法】は街から街への転移となる、【空魔術】はリキャスト時間があるらしい、すぐに【魔法】になってしまったので正確なところは知らんが。

アイテムにした『転移石』は転移が成功する割合が評価で決まり、評価10では100%成功。

露店を出してしまえば販売価格を自由に設定できるのだが、それはそれで市場調査して値段を決めてという作業が面倒そうだ。街中とはいえわざわざ神殿へ行かなくていいなら、評価10は神殿の転移代四万シルより高く設定してもいいだろうかとか思うわけだが。でもあまり高くても時間と馬車代をかければいいわけで需要が見込めない。安くすればしたで、神殿と競合が起こる気がするのでそっちも悩ましい。

待ち合わせに最後に来たのは菊姫だ。残業ご苦労様です。

私は待ち合わせの時間に合わせて休憩もとって準備万端である。

「そういえばクランどうする?」

全員揃ったので気になったことを聞いてみる。

「あー、商業か冒険者ギルドね。ペテロどっちがいい?」

「冒険者は所属しているクランに対して特殊な依頼とかあるらしいね。商業は商業であまり手に入らないアイテムの商談持ちかけられることがあるらしいけど、どっちかな〜悩む」

「僕は商業に一票」

「冒険者ギルド希望。俺あんま生産しないし」

「あ、クランランク上げるので納品とかクエスト消化とか献金とかあるけど」

「どっちでもいいから任せる!」

「献金」

「ん〜、販売あんましないメンツがいるから冒険者に一票。献金できない二人に馬車馬のようにクエストしてもらうでし!」

あーでもないこーでもないと話したが冒険者ギルドでクラン登録することにまとまった。

「お茶漬、五万シル渡しとく」

「僕がギルマスならぬクランマスターなのね」

「おう! よろしく!!」

「お願いするでし」

「よろしく頼む」

「任せた」

そういうことになった。

登録が完了したらクランへの勧誘メールを送ってくれるそうだ。メールが来たら冒険者ギルドへ行って個人の加入金十万シルを払いクランに参加する。シンとレオは十万シルあるのだろうかちょっと不安だ。

「さて、ボス戦でし〜」

「くらげみたいのだっけ?」

「うん」

「なんか後衛ターゲットに追ってくる物体があって追われている間は回復できないっていうから、各自耐えて」

「はーい」

そういうわけでボスフィールドに着いたのでウォータ・ポリプと対面と相成った。

「【不意打ちィイイッ】!!」

「えっ?」

「えーーーッ」

「なんでし!?」

「ちょっ」

「ぶっ」

開幕、『シャドウ』かけていないのに突っ込んで行ったのが一人。

「ちょっとレオさん、さすがにそろそろ『シャドウ』卒業して」

「せめて『シャドウ』欲しいってホムラに伝えるでし!」

「わははは」

お茶漬と菊姫がレオに言う。私は問答する前に呆然とした。

【不意打ち】を失敗というか発動していないのでボスに大したダメージはなく、菊姫からタゲを取ってしまう事もなかったので惨事にはならなかったが、ひどし。

「 白雷(はくらい) !」

ウォータ・ポリプには雷がよく効く。

サブ杖でレオに『シャドウ』をかけながら『白雷』をチャージで二つ重ねて撃つ。

『白雷』は【雷】Lv.20で覚えたその名の通り白く光る稲妻の魔法、消費MPは95。以前、私は魔法特化ではないので、扱うレベルが高くなるとMPがきついかもしれないと思っていた。現在の私は【攻撃回復・魔力】のお陰でMPが無くなったら斬って回復すればいいやと思っている次第。『活性薬』もあるし、ソロのときはさらに【孤高の冒険者】の称号効果もある。MPに関してはもう心配しなくていいだろう。

ちなみに魔法攻撃でもMPは回復するのだが、使う量が大幅に上回っているため回復している気がしない。

ウォータ・ポリプが分裂して四つの球体になる。

最初は二つだった。戦いが長引くほど球体の数が増えるらしい。ファイア・ポリプのときは当たると【燃焼】の状態異常がついたが、こっちは【麻痺】がつく。ポリプってクラゲの幼生だったか、それで【麻痺】なのだな。

球体は時間が経つと元のウォータ・ポリプに戻るが、一定以上ダメージを与えることでも戻る。時間が経って自然に戻った場合、間をおかずに全体攻撃がくる。

まだ攻略者が少ないため、攻略方法は確立していないがクリアした少数が掲示板に載せた方法をペテロとお茶漬がボス戦前に全員に説明。

①分裂したら密偵やローグなどの足の速い職が球体のタゲを取る。

②攻撃を加えても一番近い人にタゲが移ることがあるので外周まで引っ張って行ってかちあわないよう決まった方向に回る。

③魔法職(回復含む)は足が遅くて追いつかれるのでマラソンには参加しない

④ポリプに戻った直後に痛い全体攻撃がくるのでその前にHPは全員フルに。離れた距離によっては回復魔法は届かないので各自回復手段を用意。

⑤ラスト近くになると麻痺ばらまき+全体攻撃のコンボがくるので全体回復できる人は複数いた方がいい

⑤は全員が水の精霊で全体回復できるので、精霊召喚をラストにとっておこうということで解決。球体がどこにわいて誰を狙ってくるかで、タゲ取りも回復のタイミングもなかなか難しいらしい。

フォスのデイドリザードも全体攻撃後に全体回復を入れないときつかった、あれは予行練習だったのかなどと思う次第。

私達は水の精霊で全員が全体回復使えるという集団だったので回復のタイミングを外しても他の人が回復してくれたので楽に超えてしまったが、フォスでつまっているプレイヤーは多いそうだ。

「ひぃ〜〜」

お茶漬が二つの球体に追いかけられている。ペテロ、レオ、シンは球体と戦っている。

「シン、反対、反対」

「逆、逆」

回る方向を間違えたらしいシンとかちあってそこで戦うしかなくなってしまったらしい。そして味方同士十分に距離が取れていない状態なのでとても戦いにくそうだ。シンに【麻痺】が入った。菊姫は手筈通り球体を連れて外周を回っている。

大変だな、と思いながら増援は来そうにないので杖を剣に持ち替えてお茶漬と球体の間に割って入る。

「【一閃】」

別に声に出さなくても使えるが、たまには。二体の球体を斬り捨てる。

「魔法de剣士かっこいいな」

自分に【回復】をかけながらお茶漬が言う。普通の魔法剣士ってどうやって戦っているのだろうか。

ペテロたちの方も倒したようだ。お茶漬が【麻痺】を治して三人を回復している。ちょうど菊姫が四人のほうに差しかかる。

「倒しちゃおう」

「おう!」

「おー!」

「はいでし」

魔法が届かない罠。

乗り遅れた!

《ウォータ・ポリプの粘液×5を手に入れました》

《ウォータ・ポリプの杖を手に入れました》

《ウォータ・ポリプの魔石を手に入れました》

《ウォータ・ポリプの卵×10を手に入れました》

《知力の指輪を手に入れました》

「最初から倒しちゃえばよかった」

「火力すげぇ!」

「反則くさいよね、火力ないと球体倒せない挙句、球体八つまでいくらしいよ」

「かといって最後、全体回復二人いないとやばいだろこれ」

「デイドリザードとここで詰まってる人多いらしいね」

球体を処理した後は食らったダメージは大きかったものの水の精霊もあってあっけなく倒すことができた。

で、ボスフィールドから外に出たわけだが。

「こんにちは、倒せましたか?」

いきなり女性に話しかけられた。

「おー! 倒したぜ!」

物怖じしないレオが答える。

「おめでとうございます。それで失礼ですが火力高い方か、アタッカーで回復持ちな方、誰かこちらの攻略お手伝い願えませんか?」

「私は転移登録さっさとしちゃいたいんでパスで」

「私もパスで」

ペテロに続いて断る。

「あ、魔法使いの方は走れないでしょうしできれば他の方で」

何気に失礼な女である。

「俺もパス〜」

「わはははは、オレも〜」

結局全員パスして街に帰る。

「冒険者ギルドの掲示板か門で募集すればいいのに、急に一人落ちちゃったとかかね?」

「あー、なんかクリアした人なら確実だろうって現地スカウトあるみたいよ」

シンの言葉にお茶漬が答える。

「失敗したらデスペナ回復待ちで連戦できないから結構シビアというか殺伐としてるらしいよ、野良」

野良とは決まった固定パーティーでなくその時その時で知らん連中とパーティーを組むことだ。他がどう呼んでいるかしらんがこのメンツではそう呼んでいる。

「それにしても一番火力あるホムラを却下するとは」

「なんかバレたらバレたで後々絡まれそうで怖いんで普段は魔法使いのフリしときます」

【隠蔽】で職業欄の書き換えが可能になったら速攻変えよう。

「わははははは」

「お? ロイからメールだ」

「あ、こっちにもきた」

どうやら全員に届いている様子。一斉送信か?

ロイ:Cランクになった! ポリプ詰まったら手伝うから声かけろ。あとクランつくった!

「お、Cランクになったんだ」

「おめおめ」

「相変わらず短いメールだ」

「まあ、僕らも転移登録したら昇級試験受けようか」

「ゴンドラ乗ろう、ゴンドラ」

それぞれおめでとうメールを返して夜明けの道をのんびり歩く。時々襲ってくる敵と戦いファイナの街へ。

「運河すごいけど、潮風? ベタベタするな」

「同じ海でもセカンのほうが清々しかったね」

「運河深すぎて風景が見えないでし」

「干潮なんじゃないか?」

「深すぎるというか、家の裏の壁に囲まれている場所が多いからなあ」

「家はなんか見るの楽しいじゃん」

「ゴンドラもいろいろあってそのうちチャーターしたいでし」

「レオ、静かだけどどうした?」

「……酔った」

「ちょっと! 僕の膝に吐かないで!?」

「馬車は平気なのになぜだ。端と席交換しよう」

「ちょっと待て、真ん中のレオと交換するんじゃないの? そこでなんで一個ずつズレるの?」

「隣は任せた!」

「ぎゃー! レオちょっと川の方向いて! 私の膝にすがるなあああああああああああああああ」

「いい悲鳴」

「近所迷惑でし」

「平和だなぁ」

初めて来たときと違って晴れているし大騒ぎでゴンドラを楽しむ。

神殿で転移門を登録し、ファストへ戻る。レオもシンも金が無さそうなのでせっかく登録したが、私の『転移』で移動した。

「六人移動すると570もMP使うのか」

『転移』もレベル20の魔法で単独転移の消費MPは『白雷』と同じだ。

「ありあり」

「あらあら、ホムラさん」

「!」

でた!

エカテリーナ!!

ファストの転移門がある部屋を出た途端鉢合わせした。

「ホムラさん、お肉をありがとう。姉弟があなたに会いたがって〜」

「うをう?!」

「ちょ、ホムラ?!」

にっこり笑って無言でエカテリーナに向けて木箱を四箱床に滑らす。

箱から飛び出して乱れ飛ぶアジフライ。

「走れっ!」

「なんだなんだ?」

神殿でちょっとした騒ぎがありましたが無事ギルドのある広場に着きました。

「ホムラ、あれはいったい?」

ペテロが聞いてくる。

「紙箱やトレイが売ってなくてな。量が多くなった上に揚げたてで蓋ができんかったのだ」

木箱は木工士になりたての人がレベル上げに作ったかなんだか、安く大量に売っていたのでまとめて購入した。アジフライを詰めたのはみかん箱サイズだが、一応、菓子箱にできんこともないサイズのもある。木箱に詰める羽目になった時はさすがの私も思った、 鯵(なま) のままの方が良かったかと。

「意味がわからん」

「なんで女官さんに鯵フライ?」

「いや、なんか孤児っぽいの拾って神殿に押し付けたら押し付け返そうとしてくるのでそっと応戦してる」

「何をしてるの何を」

「それでなんで鯵フライなんでし?」

「殴ったり蹴ったりできないだろう。レオじゃないんだから」

「まず話し合いなさいね?」