軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

366.レアボス

刃を合わせると、如意棒から火花が散る。いや、火花だけではなく、何か金属編のようなものが飛び散り、私に小さな傷をつくる。

『月華の刀剣』も如意棒も破損はない。おそらく、組み合った時に切り傷と火によるダメージを相手に与える効果が、如意棒についている。私は火によるダメージも受けず、傷は生命回復系の称号スキルであっという間に塞がってしまうが。

【元剣帝】斑鳩と戦った時のような高揚。

いかん、今日は1対1ではない。『活性薬』いや、【土魔法】lv.45『大地の癒し』。今は【投擲】なんぞしていたら隙になる。

効果は継続回復。使用中は使用者の MP(まりょく) が減少を続けるが、全員にかけても問題ないレベル。【神聖魔法】にもっと強力な継続回復の魔法があるが、『聖歌』なので、絶対使わん! シンにもう一度『ハイヘイスト』。

悟空と武器を打ち合わせてはお互い距離をとり、また打ち合わせる。さすがにしゃべっている余裕はなく、無言で魔法を行使する。

「サンキュー、サンキュー!」

「魔法!? ――剣と同時に使えたのか!?」

「杖が浮いてる!?」

炎王とロイの声。

「一応魔法de剣士系なんですよ、あれ」

お茶漬は変な紹介するな!

「この俺様を前に、余裕だな! 貴様!」

悟空が凶暴な笑いで歯を剥く。

お茶漬に文句を言う暇もなく、悟空と斬り結ぶ。如意棒はいかにも丈夫そうだが、これとやり合って『月華の刀剣』は刃こぼれひとつしない。流石だ。

お茶漬を守りつつ、割とえげつなく減る生命を自己回復しつつ、回復役に気を使いながら戦う炎王とロイ。そしてヤバいくらい減っているのに気にせず戦うシンに、罵声を浴びせながら回復をかけるお茶漬。

「よっしゃー! 1匹撃破!」

シンが歓声をあげる。

「アナタは自分の生命の管理は自分ですることを覚えて……っ!」

げっそりしているお茶漬。

「こっちも……っ!」

「終わりッ!」

炎王とロイ。

「くそっ! 羽虫のような奴らが! 俺の身外身を倒すだと?」

悟空が今までより大きく距離を取り、 鬢(びん) からまた毛を数本抜き、ふっと息を吹きかける。

「ぶえええええっ! 増えた!」

半泣きのシン。

「毛から無限なのかよ!?」

「本体を倒さんとダメか!?」

盾と剣を構え直すロイと炎王。

「ちょっ! 防御抜かれないでね!?」

保身第一お茶漬。

悟空が 吼(ほ) える。体毛が逆立ち、肌が燃えている。赫赫と赤い体、瞳が見えなくなった目が白く燐光のような光を放つ。

身外身が悟空の吼え声に続き、長々と後をひく声を上げ、こちらもオレンジ色の火をまとう。

「ぐええええっ! 速い!」

「重いっ!」

シンと炎王の叫び通り、敵の攻撃が一段と早く、重くなった。悟空の攻撃を剣で受けたつもりでも、ずしりとダメージが入る。私の耐久力の少なさよ……っ!

「くそっ! 炎王、ちょっとだけ俺が押さえる、シンと一緒にとりあえず1匹倒せ!」

「ふんっ! くたばるなよ!」

「ああ、もう! 防御してても回復してても、生命が削られるほうが多いなら、打って出るよりしょうがない! 僕に攻撃が回ってくる前になんとかして来て! 僕、一撃で死ぬ、当たったら絶対死ぬ」

情けないことを言いながら、付与と回復を配るお茶漬。

私にも付与くれんか? 物理防御力はそんなに高くないから……っ! いや、届く距離におらんのでしょうがないのだが。

先ほどとは違う、もっと動物的な動きをするようになった悟空。全身を使って跳ぶ速さ、バネのような筋肉、吹き飛ばされそうな腕力、打ち合っている時に火球を吐く。

刀を絡め、刃を滑らせ、見切り、避け。一太刀。

身をかがめ丸まり、思わぬ方向へ飛ぶ。動きはすこし動物じみてトリッキー、速く、力も相当強くなった。だが、気がつけば隙も大きい。

一太刀、二太刀。

戦うのならば、最初の方が楽しかった。

「残念だったな。お前の負けだ」

そう告げて【一閃】。

「ああああああああああああああああああ」

悟空が光の粒になるよりも先に、身外身たちが悲鳴を上げて姿を歪め消えてゆく。はらはらと舞う獣の毛。

「ぐ……っ!」

斬ったはずの悟空が、うめいて額を押さえる。

頭に現れる金の輪。

「いでででででででっ!」

そして転げ回る。

しばらく転げて、大の字になってはあはあと荒い息を吐く。

「お師匠さん、いねぇよな? 何で……っ」

大の字になったまま言葉を漏らす。

悟空の頭に現れた 緊箍児(きんこじ) は、三蔵法師がお経を唱えるとぎりぎりと締まって悟空を苦しめるアイテムだ。

それにしても 鸞(らん) の時は倒して終わりだったのだが。イシュヴァーンが特殊なのかと思っていたが、違う?

「さすがに初討伐か……」

「しゃべってたし、絶対そうでしょ。守護獣の初討伐はレアボス確定、あとは条件を揃えて挑めば確定。ランダムじゃないからに」

ぼそりと呟く炎王に、お茶漬が言う。

……レアボスだったのか。そしてそういう条件があるのか。通常ボスは美喉王あたりだろうか。アナウンスにレアボスと出ないこともあるのだな。

「実力があからさまに足らないところで、レアボスはキツい」

「本体と戦ってねぇけどな!」

ぐったりしているロイにシンがガハハと笑う。

「おう、あんたらが正気にもどしてくれたのか? 徳を積む旅から戻って、ここの守りについたってぇのに、俺は旅する前より悪いことしたみてぇだな」

あぐらをかいて膝に手を置き、こっちを見てくる悟空。

《守護獣『斉天大聖孫悟空』をクリアしました》

――そして再び鐘が鳴る。

『ああ、私の声を聞く貴方』

『ああ、私の姿を見る貴方』

『ああ、守護獣を正気に戻した貴方』

声の主は、ここに入った時に逃げていった猿たち。口を開いているわけではないけれど、こちらを遠巻きにじっと見ている。

『この地の守護獣は狂っていた』

『この地の守護獣は思いに縛り付けられた』

『この地の守護獣は閉じ込められた』

『集めた力を還元できなくなった故に』

『今、力が巡る』

『今、力が還る』

『守護獣の力の一部を持って行くがいい』

『いつかその力も還すために』

《初討伐称号【野生の格闘】を手に入れました》

《初討伐報酬『筋斗雲』を手に入れました》

《お知らせします。守護獣『斉天大聖孫悟空』がロイ・炎王他3名のパーティーによってクリアされました》

《守護獣『斉天大聖孫悟空の宝珠』を手に入れました》

《守護獣『斉天大聖孫悟空の鐘』を手に入れました》

《条件『竜』を満たしているため『竜の宝珠』を手に入れました》

《称号【 申(さる) の守護者】を手に入れました》

《称号【覚醒者】を手に入れました》

「ぶおおおっ! ちょっ、苦しい!」

竜!? 申!? となりながらアナウンスを聞いていたら、シンの顔に猿が1匹貼りついてた。

「ぎゃあああああ! 鼻に指を突っ込むな! キスをしようとするな!」

「何をされてるの何を」

大騒ぎするシンにお茶漬が冷めた視線を向ける。

「何で懐かれてるんだ?」

「知らん」

隣の炎王に聞くが、短く返されて終了したロイ。

「持ち物にバナナで条件達成アナウンスキタコレ! 一緒に戦う猿ペット!!! おじさんテイマー持ってない!」

懐いてくる猿と格闘しながらシンが言う。

「今もらった【申の守護者】でなんとかなるみたいよ。ガンバッテ」

お茶漬がシンの方を見ず、ウィンドウでもらったものの確認をしながら言う。

……よかった、バナナ持ってなくって。

刀剣をしまってみんなの元へ。

「……うっ」

「はぁ、さすが格好いいな!」

炎王が視線を逸らし、ロイが若干目を輝かせて声をかけてくる。

「ありがとう? 装備が装備だしな」

神器装備だし。

【申の守護者】は、どうやらこの場所に入れたこと自体が謎解きの正解扱いで、謎解きの称号のようだ。

効果は【ミスティフの守護者】と同系列、【火属性】のペットや召喚獣などのステータスアップ、特に猿。守護者というだけあって、猿が寄ってくるらしい。

私もテイマー系や召喚系の職は取っていないが、ミスティフとは縁が深いし、白も黒も一緒に戦闘をする。――とりあえず、ペットはもう間に合っているので、猿は遠慮したい。

『竜の宝珠』は竜の島で使うもののようだ。だがしかし、これからエルフ大陸なので、せっかく出たが行くのは先だ。

【野生の格闘】は格闘技能の向上、シンが喜びそうだ。今は猿との格闘で忙しそうだが。

「『筋斗雲』は騎獣か」

「今出さないでね? 今出すと、理想と現実の狭間で唸る人が出るから」

何故かお茶漬に止められた。

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・増・

称号

【野生の格闘】【申の守護者】【覚醒者】

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