軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

364.盾2枚

シン:こんばん!

「この時間に珍しい」

シンからの挨拶にお茶漬。

ホムラ:こんばんは

お茶漬:こんばん。珍しい

シ ン:今日有給、今まで寝てた!

ホムラ:現実世界、陽もとっぷり暮れているのでは……

シ ン:昼過ぎに起きて、食って、ビール飲んで二度寝! 明日も休み!

お茶漬:ビールクズを絵に描いたような生活

シ ン:休日出勤の代休! 2日!

お茶漬:かわいそう

ホムラ:羨ましいのかそうでないのか微妙になった

シ ン:そういうわけで、おじさんをどっかに連れてって!

お茶漬:どこがいいのよ?

シ ン:スカッとするとこ!

ホムラ:格闘系だとHPが多いボスか?

お茶漬:盾はホムラ?

盾とは敵の攻撃を受け、耐えて、味方を守る役割。

ホムラ:やってもいいが、防御できないぞ?

シ ン:盾とは?

お茶漬:目があったら斬り殺す、わかります

シ ン:おじさんも殴りたいんですー!!!

お茶漬:しょうがない、ちょっと心当たりの盾に声かけよう

とりあえず迷宮にという話になり、移動。

「よう!」

びっと指先を揃えて片手を上げてくるロイ。

「……来たか」

仏頂面の炎王。

「こんばんは。ありがとう、ありがとう。これで僕の安全は確保」

お茶漬がにこやかに挨拶。

「うをっ! 豪華、2枚盾!」

シンが叫ぶ。

「攻略争ってる有名パーティーの盾2人。豪華すぎんか? 大丈夫か、私はカオスな道中を覚悟してきたんだが」

シンは割と真面目に格闘はするが、道中の他の行動については割と適当というか、自分のHPを見ていないというか、危なそうなところをつい覗きにいって、罠を発動させるタイプ。そして何故かその罠にハマるのはお茶漬。

そして私は私でつい先に進みたがるというか、何故か手助けできない位置、それを見ている位置にいることが多い。集団行動ができないパーティーです、確実に迷惑をかける自信がある。

「確かに2人ともOKくれるとは予想外だったかな。どっちか来たらラッキーくらいだったんだけど」

お茶漬が笑う。

「いえーい! カオスにようこそ!」

シンがガハハと笑う。

「よろしく!」

ハイタッチしているロイとシン。

「……」

腕組みして、俺はやらんぞ、みたいな顔でそれを眺める炎王。

「せっかく豪華なんだし、強いとこ行きたいけど、それぞれ攻略ルート別れてるね?」

お茶漬が残念そうに言う。

それぞれ迷宮の攻略は進んでいるけれど、進めているルートがそれぞれ違うため、このメンツではどのルートを選んでも浅い層からになる。ボスを倒していないと階層の転移が使えない。

「ああ、では行きたいところがあるのだが、いいだろうか? もしかしたら【火属性】かもしれんが」

シンが使うのも【火属性】、炎王が使うのも【火属性】。相手が同じ【火属性】だと与えられるダメージ量が上がらない。シンの願いの攻撃してスッキリとはいかないかもしれない。

「もう殴れればどこでも。コンボ繋げたいから、ダメージいかないのも大歓迎!」

シンは前向きだった。

「俺もどこでもいいぜ!」

「……同じく」

ロイと炎王。

「待って。すごく嫌な予感がするんだけど、僕の安全は確保される?」

「私も初めての場所だから保証はできん」

お茶漬の不安に正直に返す。

「大丈夫、大丈夫! なんせ豪華2枚盾!」

シンが豪快に笑い、お茶漬の背中をバシバシ叩く。

合意(?)を得たところで移動。場所はバロンの 火華果山(かかかざん) 。ちょっとロイと炎王の騎獣をもふってもいいでしょうか?

もう帰還させる? 早くないか?

「フェニックス、まだだったのか?」

「いや、フェニックスは倒している。――多分あそこが守護獣の鐘楼だと思うのだ」

ロイに答えて、火華果山の中で明らかに人工的な感じのする浅い洞を指す。

ずいぶん高い場所だが、そこに続く細い石段も崖に張り付いている。鐘楼、鐘堂、鐘を鳴らす場所。そして石段の反対側の岩壁は底の見えない深い谷に続いている。

「あそこは疑った人がいて、鐘を鳴らして何も出なかったとこです」

お茶漬がばっさりと言う。

「でも条件が足りないだけかもに。鳴らしてみたら? 鳴らなかったら大人しく諦めて」

そして続ける。

「おっと、もう鳴らした奴がいるのか。でも、一応鳴らしてみれば? んで、ダメだったらフェニックスやろう、フェニックス! 俺まだだし!」

シンが言う。

「じゃあそれで!」

ロイが笑顔で。

「俺もそれで構わん。【烈火】のメンツが揃うまでの暇潰しだしな」

炎王は眉間の皺が不動。

「それで頼む。おそらく大丈夫だと思うのだが……」

そう言って、階段を上がる私。

待たせるのもなんなので、【空翔け】使用で一足飛びに駆け上がろうかと思ったが、全員つき合いよくついてきてくれる。

「僕は無理!」

高所恐怖症のお茶漬を除く。

切り立った崖、階段には手すり無し。少し崩れかけた、一人が通るのがやっとな幅、巻き上がるように吹く風。現実世界だったら私も上がるのは躊躇する。

「よし、到着! 高いとこ気持ちいいぜ!」

際に立って、お茶漬に手を振るロイ。

「フン」

仏頂面なのに付き合いがいい炎王。

「いえーい! 鳴らすぜ!」

シンが鐘を取り出して振る。鳴らしたかったのか!

……

「無音!」

大袈裟に驚いた顔をするシン。

「やっぱダメか。フェニックス倒した後でもダメだったしな」

後頭部に手をやってお手上げポーズのロイ。

おそらく、大規模クラン代表のロイは、ここも調査済みなのだろう。下調べはクランの他の者がやったのかもしれないが、フェニックスを倒して鳴らしてみたのは本人のようだ。

「大人しくフェニックスを……」

炎王が言いかけたところで鐘の音が響く。

私の手の中の『黒き獣ミスティフの鐘』。

「――鐘が鳴った」

頭から下ろしかけた手が中途半端な態勢で、ロイが驚いている。

守護獣の話題になった時に、バロンに大猿がいると言ったのはカル。確信がなければ私に伝えないだろう。

大猿と火華果山。孫悟空と 花果山(かかざん) 。

ついでにこの周辺はエリアの切り替えがある。ここ以外にないと思うのに、鐘は鳴らないと言う。ならばお茶漬の言ったように条件がある。

鐘の音が岩に共鳴するかのように響く。ぶるぶると揺れだす火華果山。私たちの上がった来た階段とは反対側の岩壁に亀裂が走る。

「ちょっ!」

下でお茶漬が叫ぶ。

「あぶね!! 上がってこい!!!」

シンが叫ぶ。

いかん。ボス戦の前にお茶漬が死にそう。

洞から飛び降りながら【空翔け】を使用。着地と同時にお茶漬を脇に抱えて、駆け上がる。

「ひゃ〜〜〜〜」

お茶漬が情けない悲鳴を上げるのと、壁が割れてごろごろと岩が落ち、水が噴き出したのが同時。

「おおっ、すげぇ!!」

「滝ができた!?」

「こりゃまた派手だな!」

「うぇぇええ」

ロイ、炎王、シンがそれぞれ驚いて声をあげる。お茶漬は下から駆け上がったGが胃に来た模様、四つん這いで滝は視界に入っていない。

「うを、生えた!」

シンが言うように、六角形の石柱が私たちのいる洞から滝の中に向かって下から生えてきた。

「どうなるのかと思ったが、やはり入り口は滝の裏の洞窟なのか」

道ができたということは、滝壺に飛び込んで 洞窟(いりぐち) を見つける必要はなさそうだ。

「いぇ〜い! 行こうぜ!」

ご機嫌で六角柱が連なる道に向かおうとするシン。

「ええっ、ここ行くの? 下見えないんですけど!?」

お茶漬がすごく嫌そうだ。

「お茶漬、鳥の時は飛び込んだじゃん。赤褌で」

「海はいいんですよ、海は。ゲーム的にあの高さでも下が海なら死なないのわかってたし。ここは絶対落ちたらやばいでしょ!」

シンに答えながら、岩壁に張り付いているお茶漬。

死なないことが確定していれば高いところでも平気なのか。怖いのは、落ちたらどうなるかを想像してしまうとかか?

流れる滝の水は、底に着く前に霧散しているようで、谷がけぶっている。かなりの高さがありそうだ。

「平気、平気! って、うをおおおっ!」

強風に煽られてたたらを踏むシン。

「慎重に行こうか?」

「お、おう!」

声をかけると、壁に張り付きながらシンがカニ歩きを開始。

「なかなか凝った仕掛けだな」

その後をロイが片手を岩壁につけながら、慎重に進む。

「火華果山……、花果山というと孫悟空か?」

続く炎王も慎重に。

「おそらくそうだと思うが。孫悟空が出てくるかはわからんが、大猿は確定だろう」

「離さないでね!?」

お茶漬は私が後ろから腰帯をつかんだ状態で移動。

「すぐにわかるか。まさかこの顔ぶれで守護獣をやることになるとは」

ちらりとロイを見る炎王。

「強敵だろうけど、がんばろうぜ!」

笑顔で返すロイ。

炎王が一方的にライバル視しているようにも見えるが、なかなかどうしてロイの方も戦闘では炎王には張り合う。闘技大会では盾の役割を放棄して、1対1状態で戦って、叱られていた。

「滝の裏ってワクワクするぜ!」

連続残業が終了して休みのせいか、シンが始終上機嫌。

「おっと、予想通り洞窟! 入ったら戦闘だな、HPとMPの確認しろよ!」

「万全!」

ロイの言葉にシンが胸をはる。

現れた洞窟は不自然なほど暗く、先が見えない。ロイの言う通り、踏み入った途端、ボスのムービーの如きものが始まる気配がする。

「大丈夫だから早く入ろう、そうしよう。高いところから安全な場所へ!」

「ボスエリアが安全とはこれいかに」

お茶漬が混乱しているようだ。

「条件はいったい何だったんだ?」

剣を抜き放ちながら、足を踏み入れ炎王が聞いてくる。

これから戦闘なわけだし、答えても謎の暴露にはならんだろう。

「おそらくフェニックスと、ここを寝ぐらにしている火竜を倒すことだな」

火竜が留守だからフェニックスが現れる、両方いなければ? と思ったのだ。この場所はずいぶん調べられたようだし、他の条件はおそらく色々な人が試している。

「……火竜?」

「えっ! ちょっと待て。ここ、火竜を倒した後に来るボス!?」

洞窟内い響く鐘の音、洞窟全体が揺れる。炎王とロイの言葉を飲み込んで、『守護獣』登場の前振りが始まった。