軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

349.酔いつぶれ

「レベルはそう変わらんと思うが。とりあえずステータスについては黙秘する」

色々見られては困るものがですね!

「え、あれ? レンガードがホムラと同一で、ホムラが俺を殺したって謝ってきたってことは、俺、レンガードに殺された? 青騎士じゃなく? ホムラが雑貨屋に協力したとかじゃなく?」

ロイが何かこんがらがっている様子。

「私が【流星】で殺したな」

その節は申し訳ない。

「おおおおッ!」

いや、待て。なんでそこでガッツポーズ? 両手ガッツポーズで身を反らしているロイ、意味がわからんのだが。

「若干嬉しそう」

「若干? 大幅に嬉しそうに見えるけど?」

「ソウネ」

引き気味のお茶漬と、冷静に訂正を入れるペテロ。

「だって俺、闘技大会で対戦できなかったしな!」

笑顔で言い放つロイ。

通訳というか、いつもの補足を求めてクラウを見る。視界には唖然としたクラウと、珍しく眉間の皺を消して口を開けっ放しの暁。

「……対戦できた【烈火】をだいぶ羨ましがっていましたから。それと、どうせ一撃で殺されるだろうけど、その一撃をくらいたい、とも」

目があったクラウが気を持ち直したのか、説明してくれる。

「男らしいんだかマゾなんだか微妙」

お茶漬が私が口にするのを躊躇ったことを言っている。

「色々ついていけてねぇ」

眉間を揉む暁。

「まあ、とりあえず内緒で頼む。と言うか、口にしたところで相手に強烈な【認識阻害】がかかるので、相手のためにもバラすのは控えて欲しい」

「【認識阻害】? 密偵が持ってるやつか」

ロイが聞いてくる。

「一般の【認識阻害】は、居場所を知られないよう【気配察知】系を邪魔するとか、顔や姿をしっかり認識できないようにするにとどまるけど、ホムラのは考えようとすると思考を奪ってくるからね」

ペテロが説明してくれる。

「直に見たの初めてだったけど、なかなかひどそう」

うんうんと頷きながらお茶漬。

無言で目を逸らすクラウと暁。

「へえ、戦闘や潜入以外でも使えるんだな」

二人の様子に気づかず、感心するロイ。

「とりあえず、料理と酒をどうぞ」

まだ残っているが、手をつけた料理もどうかと思ったので、新しい料理も追加。

「おー! 並んでもなかなか買えないやつ!」

やたら嬉しそうなロイ。足取り重そうに席に着くクラウと暁。

「ビール美味い!」

「はい、変わらず美味しいです」

「……美味い。くそっ、意味がわからん! 飲むぞ!」

やけくそっぽい暁。

「伺ってよければ、このことを知っているのは他に?」

珍しくビールを一息に飲み干したクラウが聞いてくる。

「クラン全員と、エリアス、炎王、ギルヴァイツア、クルルの四人だな。住人を入れるともっと増える」

雑貨屋のみんなに、ルバ、右近、左近、天音――クリスティーナには仮面を手に入れる前に、レンガードの銘入りのアイテムを渡したせいで、微妙に認識が混乱している風だな。

「え、あいつら知ってたの!?」

「闘技大会後にな」

冷やし緑茶を飲みながら答える。

「なんでこうなったかは、私にも分からんので聞くな。成り行きでとしか言いようがない」

里芋の煮ころばし、胡麻油で炒めてから、酒と水で煮て、ザラメで照りをつけた。酒は飲まんが、酒のアテは好きだ。甘辛い味がちょうどよくできた。

「質問は無しで。何がどう謎に引っかかって、聞いた人が弱体するかわからない」

お茶漬が言って、千万唐辛子――どう見ても万願寺唐辛子――の焼き浸しに箸を伸ばす。

鳥手羽先の黒酢煮、トコブシのふくめ煮、カツオのタタキには新玉ねぎをたっぷり。枝豆、夏野菜の天ぷら、レオの魚から適当に選んだ刺身の盛り合わせ、迷宮のドロップ肉、マルチキのソテー、唐揚げ。大量に作ると、どうにも統一性がなくなる。

「醤油! レオの醤油はホムラか!」

不思議な日本語になってるロイ。確かにレオにはよく醤油をせがまれるが……。

「バロンに醤油持ち込みで、醤油ラーメンを作る店が。よく二人で通っているようです」

クラウが謎を解いてくれる。

ああ、そういえばロイはレオのラーメン食い歩き仲間だったな。

「色々腑に落ちねぇことと、腑に落ちたことがあるが」

不機嫌ではなさそうだが、困ったような暁。

「その辺は酒と一緒に飲み込んでくれ」

「まあ、コイツを出されちゃな」

日本酒が入ったぐい呑みを口に持って行き、飲み干した後、トコブシに箸をのばす。

見た目もチョイスもやたら渋い、シンとはまた別なオッサンっぽさ。

「あー、でもそうか。クランハウス壊れた後の差し入れ、ありがとな!」

「ありがとうございます。大規模戦のイベントの後、大分助かりました。それに料理の差し入れはレンガードからではなく、ホムラからだったんですね。いえ、レンガードからとも言えるのでしょうけど」

「罠ダンジョンの時は、ウサギんとこの男どもに好き放題言われてなかったか? 掲示板でも、三区画の弱い敵にやられて死に戻った情けねぇ男とか、レンガード参戦前に死んだ残念キャラとか散々だった記憶があるが。――本人かよ」

黒百合たちが出したイエロードラゴンで、ロイたちのクランハウスは大破。イベント期間中のことではあるものの、一緒に倉庫も吹き飛んだので、ロイのクランで溜め込んでいたアイテムのほとんどがダメになった。その時に、アイテムと料理を差し入れたのだが、うっかり料理にレンガードの銘を入れたままで、レンガードから預かったとか適当なことを言った気がする。

暁が言い出した罠ダンジョンの話は、その時に差し入れたアイテムに罠ダンジョンのものが大量にあったから、それで思い出したのだろう。

「記憶力いいな。アイテムのことは気にせんでいい。罠ダンジョンの時は、調整に協力してもらって助かった」

焼き串に手を伸ばす。

大きめの『白牛のロース肉』とミディトマトが交互に刺さったもの。トマトは熱で皮が割れ、肉はこんがり。3センチは厚みのある肉にかぶりつくと、肉汁が口内に広がる。柔らかいが塊なので歯応えもあり、串焼きなので程よく脂も落ちておりとてもいい感じだ。焼いたトマトも甘さが際立つ。

ダンジョンの攻略を行いたいプレイヤーと、採掘がしたい住人やプレイヤーの日程の取り決めは、知名度のある『烈火』や『クロノス』が中心に広報してくれたため、すんなり決まった。特にロイたちはさすが大規模クランの貫禄という感じだった記憶。

罠ダンジョンの時は私のために怒ってくれたし、いい男だと思う。

「これで君たちもこっち側、レンガード様のイメージ戦略にぜひ協力を。これがバレたら大惨事」

お茶漬が笑顔で言う。

「レンガード様が焼き串……」

「なかなか衝撃的ですね」

「顔はホムラなのに、いつもより線が細いつうか、繊細に見える気がするんだが、そのせいか? 焼き串に合わねぇな」

三人がこちらを見ている。

焼き串の何が悪いのだ! あと多分、見え方が違うのはファルのせいな気もする。何故あの残念女神は余計な機能を付けたがるのか。おそらく魅了効果で多少見る者の好み寄りに? いや、私には髪が大変ふわっと見えているので、それのことか?

「あ、拗ねた」

文句を言われんよう、白装備から他の装備に変えたら、ペテロにからかうように笑われた。おのれ……っ!

愉快にできあがったロイを、クラウが宥めるのを見ながら酒宴は続く。ちなみにロイは日本酒よりもビールのようだ。

「この手羽先、美味しい」

ペテロが珍しく指を汚しながら食べている。

「唐揚げも無限に飲めそうだぜ!」

ロイが笑う。

唐揚げは飲み物です?

暁は芋の煮っころがしに逃げられているので、いつもよりは酔っている気がする。里芋の 滑(ぬめ) りと、酔いのおぼつかなさで転がる芋――江戸時代には芋酒屋が多かったそうだ。

「どれも美味しいですが、和食が珍しい。ロイではないですが、醤油が嬉しいです」

「ああ、そのうち出回りそうだがな」

クラウに答える。

帝国で、玉藻が逃げていった方に向かうプレイヤーもいるだろう。エルフの大陸も気になるが、私もクズノハを連れてもう一度行かねば。――ナナオさんと戦うことになりそうで、心苦しいが。

そういえば、鵺を倒した時の称号【鵺の鳴く夜】の効果を話した時、ペテロは「扶桑の陰界用だね」と言っていた。私とは別の方法で既に陰界に出入りしているのだろう。

扶桑は忍者的あれこれが多そうだし、通っている気配。通う方法が愉快な感じにアシカだった気がするが、その後移動方法はどうなったのだろう?

その後、寝ると言うお茶漬の言葉で宴会はお開き。

「これどうする?」

すっかりできあがってソファに懐いているロイを見て、お茶漬が言う。

「ここで放置で」

あっさり言うペテロ。

「どれ。おっ……」

ロイに肩を貸そうとして潰れる暁。

「暁も酔ってますね……、普段ここまで飲まないんですが。すみません、私では運べませんので、お邪魔でしょうけれど放置して頂ければ」

クラウの結論がペテロと同じ。

クランハウス内で敵に襲われることはないだろうし、風邪もひかんが。菊姫たちがログインしてきたら驚くくらいか?

「邪魔だし、客室に放り込んじゃって」

「はーい」

お茶漬が私を見たので了承して運ぶ。右肩にロイ、左肩に暁。飲ませたのは私なので、素直に責任を取る。

「え……。どういう 力(STR) ……?」

初期職が同じ魔術士始まりのクラウにひかれるが、気にしない。

「気にしない、気にしない」

言いながらペテロが先導して、扉を開けてくれる。

客室に案内(?)を終えて、私とペテロも休憩のために一旦ログアウト。

炎王とロイが張り合っているのも知っているし、ロイたちの方が付き合いが長い。人への好意は付き合いの長さではないが、無精者で気ままな私が長く付き合える人というのは珍しい。秘密をバラして、少しスッキリした。

まあでも、これ以上ずるずるとバラす人を増やすのもなんだし、あとはなるべく黙っていよう。