軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

343.入手したもの

ホムラ:って。ペテロ、転移するなら教えてくれ。

立て続けに2回、あの廃屋から神殿経由でペテロの庭。って庭?

ホムラ:『転移プレート』買ったのか?

「普通に話そうか? ホムラにもらった『金平糖』でカジノ無双――ってほどでもなかったけど、無事入手。ちょうど賞品ラインナップに出てたから」

ペテロが『黒の暗殺者』用の装備を解いて、髪の色も戻しながら言う。

「クランハウス近いのに、 豪気(ごうき) な」

夾竹桃(きょうちくとう) の影に置かれた、足元の転移プレートはとても高いし、神殿と結ぶには許可がいったはずだ。闘技場やカジノの転移プレートは許可付きだが、交換レートはさらに馬鹿高い。

「クランハウスは、生産してる二人とゴロゴロしてる二人と鉢合わせる可能性があるから。暗殺者がただいましちゃだめでしょ」

笑うペテロ。

お茶漬と菊姫が生産、レオとシンがごろごろだな。

「バレないように移動するには、今一番確実。神殿で一瞬姿を見られる可能性はあるけど、認識阻害ついてるし、見破る系のスキルを発動される前に移動できる。称号の『眼』の自動発動系は怖いけど」

ペテロの小屋の方に歩きながら、説明される。

設置場所が小屋の中でないのも何かの用心だろうか。『箱庭』は鍵をかけておけば、他の人は入れないはず――ああ、イベントで拠点攻撃とかあったなそういえば。

「なるほど? すまん、ちょっと派手すぎたか」

私が『流星』を使ったから、人が集まる前に撤退か。

「それもあるけど、死んだら一定時間ブラックアウトした後、自分の体からは離れられないけど周りが見えるようになるから。狐面での阻害はあるけど、暗殺した対象から見られないに越したことはないね」

あの場の戦闘不能者か!

「死ぬとそんな感じなのか」

「死に戻り一度もしたことないのもすごいね」

「安全第一です」

「初期で既にブループ狩りとかしていた人が何をおっしゃる」

すみません、戦闘大好きです。崖から飛び降りて、神殿へ死に戻りしようとしていた頃が懐かしい。

戦闘不能になると、少しの間だが視覚や聴覚などの感覚が遮断され、ブラックアウトのような状態になるらしい。で、少しずつ音が聞こえてきて、視界も戻って周りの様子が見えるようになるのだそうだ。で、しばらくしたら神殿に飛んで生き返る。

神殿に飛んでしまう前に、『蘇生薬』などを使えばその場で生き返らせることができる。幸いにしてそんな場面に立ち会ったのは、これが初めてだが。

「他のゲームだと、蘇生してもHPが減ったままだったりするが、この世界でもか?」

「『蘇生』できる人がこのゲームにいるとでも?」

「それこそカジノの景品に『蘇生薬』」

「今のレベルでは、どうにかして幸運上げないと無理ですよ」

私がヴェルスとヴェルナの【寵愛】でバグっているだけで、幸運は一番上がりづらい基礎ステータスらしい。ただレベルが上がれば上がりはするので、将来はカジノでも勝ちやすくなるはず。

相変わらずの毒の草木の間を抜け、小屋に到着。招き入れられる。

「ああ、そうだ。扶桑で 藁座(わらざ) を買ってきたのだが、いるか?」

「いる」

藁座といいつつ、い草編みの丸い座布団だ。注文して、厚めに作ってもらったのでふかふかとはいかないが、尻が痛くなることはあるまい。表面に編みで模様が入った見本もあったが、座り心地優先ででこぼこが少ないものにした。

土間から囲炉裏のある板の間に上がり込んで、藁座を四つペテロに渡す。

「ちょっ! 吊るし干し柿とか大根とか混ぜないで」

しれっと混ぜたら気づかれた。

だが、トレードで返されることなく受け取ってくれた。ぜひこの小屋の 軒先(のきさき) に。

「そういえば、暗殺の報酬は何が入った?」

「報告しとらん――ああ、暗殺した対象からアイテムを一つ奪えるんだったか。自動で入ってくるとは思ってなかった」

ペテロによって囲炉裏の前に置かれた藁座に座り、持ち物の確認をする私。

「ドロップのアナウンス、切ってるんだ?」

「通常ドロップは切っとるな」

ボスや特殊ドロップは流れるようにしているが、戦闘に集中したいし他はオフにしていることが多い。

パーティーで行くときは、何が出たとかみんなでわいわいするためにオンにするが、よく切り替えを忘れる。

「さすが殲滅好き」

笑いながら囲炉裏に火を入れるペテロ。 自在鉤(じざいかぎ) にかかった鍋に水を張り、下ろして火に近づける。自在鉤は高さを上下させることで、火の当たり方を調整する道具だ。なお、ペテロの家の自在鉤にはベタに鯉の彫り物がついている模様。

「否定はせん。『熱望の双眼鏡』『隠れ蓑』『闇のマント』『猫足消音靴』『巨匠のスケッチブック』――こう、ドロップ品から覗き装備で固めている気配が感じられるのだが……」

「ふっ。『隠れ蓑』とか『闇のマント』は名前からして使えそうじゃない?」

「あれらが着ていたものかと思うと、装備するのが 躊躇(ためら) われる」

何かが染りそう。場所取りの小競り合いもせず、集まってるのは偉いような妙な感心をしてしまったが、気がついたらとりあえず殲滅すると思う。

「レオにでも譲るか」

「使う気がないなら暗殺者ギルドに売るのがお勧めですよ。暗殺者が使う装備系は割と高く売れるし、出どころを辿られないから」

「なるほど。そうしよう」

覗き装備が暗殺装備とかぶる事実が私を微妙な気分にさせるが、高く売れるならばよしとする。

「ロイたちは大丈夫だったろうか」

「蘇生後にHPが減った状態だとしても、街中に魔物は出ないから心配しなくても大丈夫ですよ」

ペテロが沸いた鍋から小さな 柄杓(ひしゃく) で湯を掬い、緑茶を淹れてくれる。

「あんまり【料理】は上げてないんだけど、煎じたり煮出したりは毒で得意だから」

「毒で得意と笑いながら出される飲み物」

微笑まれても困る。

「ふっ」

「ああ、だが美味い。 茶請(ちゃう) けを出そう」

「ぜひ日本酒で」

「それは茶請けじゃない」

まあ、出すのだが。

「囲炉裏と言うと、塩焼きか。囲炉裏の使用許可くれ」

日本酒をペテロの前に出しながら囲炉裏の使用許可をペテロにもらう。

人の設備なので、許可が出ないと料理ができない。串が打たれた鮎の塩焼きを出して、囲炉裏に刺す。既に焼かれて熱々のものだが、雰囲気大事。

囲炉裏にあった五徳に網を載せ、焼きおにぎり。お互い好きに焼けるように、盆のような大皿にネギや椎茸、餅、蛤などを出して置く。囲炉裏の縁、私とペテロの前には山菜の天麩羅とお浸し、野蒜のヌタ、漬物を少量ずつ。

クズノハの家にも囲炉裏はつけるつもりだし、囲炉裏用の鍋を手に入れるべきか。でもあんまり人の家に道具を持ち込むのも気が引ける。

「どうぞ」

「遠慮なくいただきます」

ペテロがまず杯を空けてから、鮎を手に取り食べ始める。

「いい塩加減。川魚の刺身は得意じゃないけど、塩焼きは好きだな」

得意じゃないというのは嫌いだということだな。

私も網の上に軍鶏――迷宮食材の『将軍軍鶏』を載せて焼き始め、天麩羅をつまむ。少し開いたタラの芽の方が好みだが、まだ開いてもいないタラの芽もほくりとして美味しい。

「このヌタも酒に合う」

辛子酢味噌もお気に召した様子で、ペテロの口角がほんの少し上がっている。

「今回の報告で独立できると思うけど、本当にスキルはもらわなくていい?」

「あまりあっても使いこなせんしな。今の【隠蔽】や【糸】が無くならないならそれでいい」

本当は依頼をせっせとこなして、特殊依頼を出現させ、暗殺系のスキルを貰うのが普通なのだが、これ以上スキルが増えても使いこなせないどころか、存在を覚えていられる自信がない。正体がバレる粗相をしても、既に持っている暗殺スキルの剥奪がなくなるなら万々歳だ。

「まあ、ホムラに忍ぶのは似合わないし、無理そうだし?」

「そっと隠れながら倒してゆくより、おおっぴらに殲滅したい」

じっくり機を窺って、大勢の中から一人倒すとか無理です。

「どうして暗殺者を取ったのか」

「成り行きです」

呆れたような声音のペテロの言葉に答える私。隠れ家的ご飯屋だと思ったんですよ!

「忍者装備もらったし、時々は依頼を受けようとは思うけど」

「エルフ大陸も開いちゃったし、いつになるやら」

ペテロの言う通り、新しいエリアに行けるようになってやることが目白押し。

今までも行くだけはレーノで行けたのだが、正式ルートで入らないと転移門が開かなかったり色々制限がある。転移門どころか、フォスのように条件を満たさないと街に入ることさえできないこともある。

しばらく囲炉裏ばたで喋り、ログアウトするほろ酔いのペテロと別れ、『雑貨屋』へ。大抵、ルバに紹介された宿でログアウトすることが多いのだが、今日はお向かいの惨状の反応が気になる。

深夜なのでみんな寝ているとは思うが、騒ぎになって起きていたら謝らねば。次にログインしたら、衛兵の詰所に差し入れして、ロイに謝って――。

『雑貨屋』に【転移】したら、風呂上がりのカルと廊下で遭遇、今か。覗きの人たち、情報に踊らされてるな……。ちょっと可哀想になったが、会ったら殲滅はします。