軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

325.大規模戦、乱戦中

「拝命致します」

カルが短く応え、マントを払って立ち上がる。

と同時に、パーティのお誘い。了承してカルのパーティーに参加、騎士や貴族の相手は面倒なので、周りにいる時はカルがリーダーのままと申し合わせてある。騎士達とパーティーやアライアンスを組む場合、カルのスキルや称号的に、リーダーの方が都合がいいものもあると言っていたし、都合がいい。

「結束せよ!」

騎士達を背に、カルが剣でマーリンを指して叫ぶ。

剣の先のマーリンは金髪、さらさらすとんな長めのおかっぱ、少年の姿。罠ダンジョンでみんなが見ていた少年って、こんな姿だったんだな。今現在、私に見えているのは、お茶漬が言っていたマーリンの乗っ取りが原因だろうか。

しかし、姿が老人でも、ゴリラでも、フクロウでもないのは何故だ。やっぱり趣味か? 趣味なのか? ペテロ対策? これが育ってゴリラになるのか? いや、最初は皇子を騙っていたんだったか? では私の知らない皇帝似か。

「かつての帝国の礎は自らの老いに負け、帝国と世界の敵に回った!」

「偉大なる魔法使いマーリンは、今や封印の獣と同化し堕ちた!」

「敵は国にあらず! 敵は姿を 騙(かた) る 鵺(ぬえ) !」

言葉の合間に、騎士たちが大地に剣や槍の石突きを打ち付け鳴らす。

「討伐せよ!」

低い地響きのような大勢の声の重なり。

「笑止! 皇帝に剣を向ける愚か者どもよ!」

歪んだ笑みを浮かべた少年マーリンが吠えるように叫ぶと、フィールドが変化した。

マーリンを中心に円形に広がった。今までのフィールドはそのままに、近かったマーリンとの距離が離れ、辺りが薄暗くなる。マーリンの周囲には薄く 靄(もや) がかかり、その靄の一部に時々マーリンの姿が幻影のように映る。

騎士達が一斉に動き出したその先に、新たな魔物が放たれ、行く手を阻む。人型から大きな植物まで、様々な魔物達が、強化されているためか初手からスキルを放っている。

「散開し、分断せよ! 皇帝の前に隊を率いるとは何事か! 【軍行解除】!」

マーリンの頭に王冠のエフェクトが現れ、消える。小さな少年の体だというのに、その声は戦場の隅々まで響く。

「なに!? アライアンスが解除された!?」

下から誰かの叫びが上がる。

本当だ、パーティーだけになってる。思わぬ事態に先ほどまで足並みが揃っていた騎士たちの戦線が崩れ、乱戦に突入する。

カルは予測していたのか、それとも元々アライアンスを組んだ騎士のパーティーを当てにしていなかったのか、慌てた様子はない。アライアンス用のスキルや伝達手段が使えなくなっただけで、やることは変わらないしな。

『くそっ、クラつきやがる』

ガラハドが自分の側頭部を乱暴に叩く。

いつもより踏み込みが浅いが、それでも向かってくる魔物の柔らかいところを狙い、確実に屠っている。ガラハドの格好は、黒い騎士服の上に鎧のパーツをいくつかで、フル装備ではないがいつもよりは騎士らしい。

『未熟。さっさと覚悟を決めぬからだ』

パーティー会話に切り替えたカル、戦闘音で周囲会話は聞こえづらい。

『うるせぇよ! 覚悟とかそんなんじゃねぇの!』

ガラハドが目の前の敵に八つ当たり気味に剣を振るう。

カルは毎度ガラハドに厳しめ。でもおそらくそれは親愛からくる本音なのだろう、他の人には笑顔で柔らかく諭すか、さっさと切り捨てるか。

『ガラハドは、盛大に抗ったからな。私は口さえきけなかった――』

剣を引き抜きながら、悔しそうにイーグルが言う。

イーグルの装備は『アシャの庭の騎士』らしく、鎧の上から後ろの長い上着をまとって、腰のあたりでベルトで締めている。

カルも【庭】でドゥルたちに会った時、立ち上がろうと抗ってふらふらになってたな。ガラハドの気力がごっそり減っているのは、それと同じか。集団行動できんとか思っていてすまぬ、すまぬ。校長の長話を聞くのに、体育座りじゃないけど、座って話を聞いてたわけじゃなかったんだな。

『【神聖魔法】『回復』』

【神聖魔法】レベル35の『回復』には気力回復効果も付随。レベル25のあれとは違う、違うのだ!

『おう! サンキュー、助かった!』

ガラハドの動きが目に見えて変わる。豪快な戦い方の方が、見ていてガラハドらしくて気持ちがいい。

『あの強制的に跪かせるスキルは、連発できるのかしら?』

カミラが矢をつがえて、近くの騎士に飛びかかる魔物の口の中を射抜く。

カミラの格好は深い赤を基調に黒が入ったマーメードラインのドレス。大きく開いた背中の白が眩しいです。

『もう一度という心配は無用だ』

飛びかかってきた魔物を一刀のもとに切り捨てて、マーリンに向かって歩みを進めるカル。マントが大きく翻る、走って突撃したりはしない方向のようだ。

マーリンが使ったという跪かせるやつは、カルが扶桑へ行く途中でアグラヴェイン達に使ったあれと同系統だろう。覚えにくい名前なのに、間違えてカツラって言わないように繰り返していたら覚えてしまったぞ、アグラヴェイン。ウサギ娘のところのガウェ――ヒゲはレオのおかげでヒゲになっちゃったけど。

『使ってこないならば安心だな』

どういう理由か知らんが、カルには何か確信があるのだろう。――カルとまったく同じスキルなのだろうか?

『はい、主。たとえマーリンに皇帝と同等かそれ以上の力であったとしても、対面一度という制限がつきます。あれは光の神ヴェルス由来のスキル、彼の神は様式の美しさを尊ぶがゆえに、これは覆らないでしょう』

忙しいだろうに、説明がいっぱい返ってきた。なるほど、ヴェルスか。すごく納得した。

薔薇が無残に踏み荒らされ、どころか地面から来る魔物のおかげで掘り起こされ、穴が空いている始末。薔薇園と他とを区切る壁も用をなさず、人の背の五倍はあろうかという魔物が、冒険者を打ち付け盛大に破壊している。

雑魚からボスまで入り混じっているな。いかん、観察している場合ではない。働こう。

ホムラ:――あ。騎士の混ざる戦いで開始の時に、言いたいセリフがあったんだった。

カルとガラハドが左右にいる時に言いたかった言葉がある。今回がチャンスだったのに逃した。

菊姫 :なんでしか?

ホムラ:カルさん、ガラさん、やっておしまいなさい!

ペテロ:www

ホムラ:せっかく言えるチャンスだったのに

お茶漬:やめて下さい。いきなり吹いたら変人です

菊姫:何かあてちに恨みでもあるでしか!

レオ :わはははは! ひー! 減ってる、減ってる!

お茶漬:あっ! ペテロ、お面ずるい!

ペテロ:密偵系に必須の、認識阻害装備ですw

ホムラ:いつから必須に……

菊姫 :ホムラは騎士まで愉快な人に落とすのやめるでしよ!

シンは混ぜてもらった炎王のパーティーで、クラン会話を漏らさないようにか、クラン会話に 参加し(あがっ) てこない。レオは通常営業で会話になっていない。

話している間に【黒耀】で防御を、【時魔法】『ヘイスト』で速さをパーティーに配り終える。その間、向かって来た飛行型の敵を二匹ほど斬り落としている。

一匹目を倒した時、下の騎士にぶつかってヤバいかと慌てたが、ぶつかる直前に光の粒となって砕けた。なによりです。

白、黒が帰還してしまったのが寂しいが、随分連れ回してしまったので、仕方がない。バハムートも今は、胸の青い宝石の中でおとなしくしている。

ペテロ:んー。必ず魔物の邪魔が入ってマーリンの間合いに近づけない。

お茶漬:近づいても靄の中に入る前に弾き飛ばされるね、これは何か条件がありそう

ホムラ:うちの店員さんは斬りかかってってるぞ?

ただ、マーリンにダメージは与えられていない。シャボン玉とも質感の違う、空気の玉のような軽く丸いものがカルやガラハドたちの剣に纏わりつき、マーリンへの攻撃を阻んでいる。斬るとぼわんと煙のように広がり、またしばらくすると球体に戻って纏わりつく。

菊姫 :騎士がいないとダメとかでし?

お茶漬:うううん、違う。ウサギ娘のところのヒゲも同じ目にあってる

ホムラ:何だろうな?

「狂え! 吠えよ! 乱れよ! 眠れ! 暴れよ! 見えるものは真実! そなたの敵は目の前の味方!」

手を挙げ前を指差し、マーリンが高らかに叫ぶと場が乱れる。

後方にいる冒険者がいきなり崩れ、同士討ち、魔物の攻撃を避けもせず、近くにいるものに襲いかかる。

レオ :ぎゃああああああっ! 危ねぇええええっ!

菊姫 :眠ったところを叩かれて起こされたでし!

ペテロ:いたた。攻撃食らうと睡眠は正気に戻るみたいだけど、下手なの食らうと死ぬww

お茶漬:薬ありがと>ペテロ

ペテロ:これは睡眠に当たった人が攻撃くらって正気に戻ったら、ほかを回復?

菊姫 :あてちはホムラのお陰で各種持ってるでしけど、お薬足りないでしよ?

お茶漬:『治癒』とか『ディスペル』とか異常回復系の魔法でいけるから、最初に回復役正気にして!

どうやらマーリンの言葉通り、狂化、混乱、睡眠の状態異常にかかったらしい。吠えよ、暴れよは何だろうな? どちらにしても、自分では制御出来ない何かだろう。

それにしても、さすが 大規模戦(レイド) ボス、スキルの効果が広範囲!

ペテロ:大混乱だねw

菊姫 :多いのが 仇(あだ) になってるでし

お茶漬:最初の玉藻、イベントでもらった傾国への耐性も完璧じゃないけど聖水ぶっかける暇はあったし、これから先はいくつか真面目に耐性とれってことですね、わかります。

ペテロ:スキルポイントきついですwww生産者に期待w

菊姫 :そもそもアイルの狐のイベントやってない人も多いみたいでしよ

ホムラ:同士討ち怖!

こんな風な大勢の参加するイベントだと、個々の準備に差が出る。ロイたちとかは、準備不足の人もよほどでない限り助けてそうだけど、私は近づかない方向。

「グィネヴィア様……!」

「陛下……」

「ば、ばかな。お前は死んだはず……」

同士討ちはないものの騎士がざわめいている。

「鵺は望むものに姿を変える! 今は敵を望み、求めよ!」

カルの声が周囲に響く。

あれか、騎士たちには魔物が大事な人に見えているのか。難儀だな。

菊姫 :騎士対冒険者始まったでち!

お茶漬:さすがホムラのところの騎士は全員正気

ペテロ:混乱系付与から、思考奪っての幻覚コンボみたいだけど、まるっと効いてないw

菊姫 :颯爽としてるのに、さっきのカルさんガラさんで台無しでし!

ホムラ:あ。私、称号で狂化と暴走、混乱はアライアンスの範囲で鎮められる。

お茶漬:ちょっ!

ペテロ:また増えてるwww

ホムラ:なんかさっき三匹来たボスで貰った称号

【狂化を鎮める者】【暴走を御する者】【混乱を宥める者】、もらいたてです。