軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

275.大規模戦中

振り下ろされた剣を合図に騎士たちが走り出す。ついでにレオの騎獣、赤い狸のアルファ・ロメオも走り出す。

『え、ちょっ!』

それを見たお茶漬が戸惑う。

騎士は大体盾持ち、防御力が高い。計画としては騎士が走り出した後、一拍おいて 異邦人(プレイヤー) が、次にアイルの魔術師たちからなる隊が続くはずだった。実際、騎士達が隣の陣から丘を駆け降り、広がりながら敵に向かって行くのをプレイヤーたちが動かず見守っている。

赤錆色の大地、小国群と帝国の間は長年金竜パルティンの通り道だったため土は鉄を多く含み、細かな砂の中に存在する 鉄分(それ) が長い年月の間に酸化し錆び、赤く見えている。帝国の領土は広大だが、半分はこの風化が進んで肥沃度が低く、硬く水の通りにくい土で覆われている。【傾国】の影響もあるだろうけれど、帝国が領土を広げたがるのは自分の土地で自国の国民を養えなくなっているからだ。

水無し川を挟んで対峙していた両陣営の騎士たちが足場の悪い丘を駆け下りて行く。その中でアルファ・ロメオがぶっちぎりで一騎抜きん出ている。

『あー。ありゃ、騎士もついて行けねぇなぁ』

『戦列維持考えたら、ついて行く気もないでしょ』

『速ければいいってもんでもない』

シンが目を細めて遠くなるレオを眺めながら言った言葉にペテロと私が突っ込む。

アルファ・ロメオはあっという間に帝国軍に達し――そのまま突っ込んだ。帝国軍が割れて道ができ何騎かの帝国の騎士が跳ね上がって見えた。

「一騎駆け?」

「『一騎駆けこそ戦の華よ!』」

「すげぇ、はえええええ!!」

周囲がざわついている。

『あれは止まれなかったの、それとも止まったらダメだと判断したの? どっち?』

『前者だろうな』

お茶漬の疑問に答えたが、言ったお茶漬も絶対止まれなかった方だと分かって言っている。駆けてはいるが討ってはいない、アルファ・ロメオに吹っ飛ばされた帝国兵もHPは減っただろうが、あれくらいでは戦闘不能にはなるまい。なったら困る。

「風の精霊【ハーン】。お願い、僕の願いは『風の守り』」

【クロノス】の弓使いカエデの声が聞こえたかと思うと優しい風が辺りを包む。

「通常攻撃の飛び道具は大体は逸らせますー」

「魔法とかスキルは無理なんで気をつけて下さい〜」

どうやら【クロノス】のついでに私たちにも精霊の魔法をかけてくれたようだ。

「感謝する!」

「ありがとう」

『センキュー、センキュー!』

「助かる!」

それぞれに礼を言って動き出す。なおシンはパーティー会話と周囲に聞こえる会話の切り替えを忘れている模様。

白虎と黒天で並んで走る、やや遅れてシンの武田くん。馬型の騎獣は虎の騎獣より遅いが安定性と体力がある。お茶漬の黒焼きは思いの外俊敏だが、スピードを保ったままの長距離は苦手。

近づくと帝国の前列にパーシバルはじめアキラ君一行の姿が見える。パーシバルが乗るのはタテガミが赤く燃える白い馬、ガラハドの騎獣と同系統なのだろう翼はなくとも飛んでいる。隣のカミラの妹――エイミだったかは白いグリフィン。その姿も丘を降りた後は到達した味方の騎士達によって視界が遮られ見えなくなった。

『アキラは騎士の馬にタンデムしてるっぽいね?』

『先行しすぎの弊害ですね、騎獣は自分で捕まえないと制御できないから』

同じく見ていたらしいペテロが不思議そうに言ったのにお茶漬が答える。

――『わはははははあああああああああああああああっつ!!!!』

『毎回一緒に行動していたら、騎獣を手にいれる必要もなかったんじゃないか?』

私もずっとガラハド達と一緒で移動に困らなければ――いや、やっぱり手に入れたい。

――『ぎゃあああああああああああああああ!!!』

『俺だったら移動で必要なくても恥ずかしくって自分の欲しくなるけどな』

シンが言うのと同意見です。それに魅惑のもふもふだし、今現在空飛ぶもふもふ絶賛募集中。

『レオうるさい』

ペテロが一言みんなが思っていることを。

前方から派手なエフェクトの光が多数見える。特にパーシバルがいた辺りのあれはあれです、【断罪の大剣】。【断罪の大剣】のスキルが使えてパーシバルと関係があるのは一人しか思いつかない。ガラハド、それはピンチのときとか盛り上がるときに……、いや今一番敵が密集しているから効果的なのか。

【断罪の大剣】を見たプレイヤーから、いや住人からも声があがりどよめきが広がる。ちょっと側で見損ねたのは残念だ。パーシバルと対決になっているのだろうか? その辺はこのイベントを終えた後にも見ることになりそうだ。

名残惜しいが白虎をここで帰還させる、戦闘不能後に復活するペットになっているとはいえレオのように死なば諸共で突っ込むつもりはない。味方の騎獣に踏まれないよう注意して進む――と思ったら炎王に捕獲されました。

「貴様、騎獣のクラス替えはまだか」

「まだだ。大部分がまだだろう?」

現在、炎王の真っ黒いライオンの騎獣の上だ。タテガミをもふりたいが引き上げられたのは炎王の後ろ、騎獣の尻側だ。手入れは悪くないがライオンの短い体毛はゴワゴワしている。

「だいぶ先行してるからとっくかと思ったぜ!」

会話を交わす間も進行は止めず、エンカウントした敵の騎士と剣を交わす炎王。

「安全な所から魔法を放つ簡単なお仕事のつもりで来たんですが!」

「諦めろ」

「大変にゃ〜」

私の希望を短く切り捨てる炎王と笑いながら敵に向け弓を引くクルル。そのクルルの騎獣にはお茶漬が乗っていて、何かレオがやらかして巻き込まれた時みたいな顔をしている。どうやらドナドナ仲間らしい。

「こっちも大規模戦までには騎獣と一緒に戦えるように、クランの半分はクラス替えさせときたかったんだが、結局間に合ったのは俺たち六人だけだぜ!」

会話に入ってきたのはロイ。

「っごめんなさいねっ、っと!」

後ろでギルヴァイツアがさっき炎王と剣をかわしていた敵に拳を叩き込んでとどめを刺している。ギルヴァイツアの拳を覆う魔王の手のような巨大な拳のエフェクト、騎獣に乗ったまま敵を殴り倒している。

って、どんどん敵陣の奥に連れて行かれるんですが!

「すみません。炎王ったら強引で……」

付与をつけてくれ、申し訳なさそうにハルナが謝ってくる。いつもはあなたの暴走に炎王たちが謝ってきてるんですが……。

「魔法使いは機動弱いですから足を手に入れたと思って!」

「守るであります!」

片手拝みしてくるコレトと頼もしい大地。

なるほど、移動砲台だと思えばいいか。一応、 魔法使い(・・・・) らしく(・・・) あまり動き回らず過ごそうと思っていたのだが護衛付きの騎獣に乗せてもらえたと思えば……。思えば……。

『えー、私が使える魔法の設定なんだっけ……』

パーティー会話で助けを求める私。

『聞かないで下さい』

『火は覚えてる』

お茶漬とシン。

『火と風、光でしょ?』

『ありがとう』

さすがのペテロ!

『ところでレオはどうしたろうか?』

動きを阻害する効果のある【火】の『ファイアリング』を周囲にばらまきながら、騒がしさの中にレオの悲鳴が聞こえなくなったことに気づいて聞く。

『確かに悲鳴のBGMなくなった』

気にしてないっぽいペテロ。

『パーティーにはいるから、静かにしてる、ってことはないから会話を周囲に切り替えた?』

お茶漬は器用にパーティーの状態を確認している様子。私は半透明とはいえウィンドウだらけになると気が散ってダメなのだが、お茶漬は逆に色々な情報が見えていないとダメだそうだ。

『かねぇ?』

けっこうシンも近くにいたらしく、私の拘束した歩兵にコンボを決めている。こっちは普通に走って後をついてきたようだ。

『騎獣に乗ったまま戦えるスキルちょっと羨ましいぜ!』

そう言いつつ火を纏ったスキルを発動させ敵を殴り倒す。大柄な体で豪快にコンボ決めてる時はなかなか格好いい。

「【防御付与】『土』、いたします」

どこからかシラユリの声。

「我、【ドルイド】の席に連なるもの。願うは 荊(いばら) の拘束『ソーン』」

クラウの声も聞こえ、少し離れた場所で荊が地面からにょきにょきと。そこに降り注ぐ矢のエフェクト、たぶん【クロノス】の弓使いカエデのスキルだろう。回復職狙って攻撃しかけてる気配が。

味方だけではなくもちろん敵の攻撃も飛んでくる。陣内から私たちを排除しようとどんどん敵が集まって来ている。完全に乱戦なので倒すまで同じ相手と戦うのではなく、人がどんどん入れ替わる。騎士たちの後ろは遠距離職が多く魔法や矢が飛んでくるのだが、約束通り大地が付かず離れず守ってくれている。結構動き回る炎王にばらけずクランメンバーがみんなついて来ているのがすごい。

「【火】『クリムゾンノート』」

以前迷宮でカミラが使っていたものだ。燃焼効果がつく上、燃えている者に触れると燃焼が移るので密集して敵がいる時に便利なので連発する。まあ、この状況で一番便利なのは【雷】なのだが。

やはり倒せそうだった敵が回復してHPを削るのが一からに戻るのはいただけない。私も回復職っぽいの狙おう。矢を打ち込まれたと思ったら全回復しとるのとかいて、ローブや杖持ちだけが回復職ではない様子。だが見分けがつかないのでとりあえずローブと杖を目印に他に、怪しいなと感じた敵をなるべく『クリムゾンノート』の範囲に巻き込む。

「よくMPなくならんな」

横着して適当に連発してたら炎王に突っ込まれてしまった。回復行動っぽいことをしておこう……。