軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

273.休憩中

『すごい、全部避けてる』

思わず感心する私。ここに至るまでを想像するとあまり感心できない匂いがぷんぷんするのだが、今現在だけを見ればすごいとしか言いようがない。

『回避スキルもすごいけど、集中してるときのレオってすごいね』

集中してない時はひどいんですね? わかります。

窓辺に寄りかかってつい見物態勢になる私とペテロ。この窓辺もまたアリスの湖フィールドの中なのでちょっと変な感じだ。アリスが扉を守りつつ、『遊んで』いるのだろう。

「わははははは!! ぁあ〜〜〜っ!!!」

『全部よけ切ったのに何故そこで……』

褒めた途端、全て攻撃を避け切ったレオが戦闘不能の敵に躓いて頭から水ダイブ、ダイブした先にはお約束のネズミ。

『まあいつものことだけどね』

隣で肩をすくめるペテロ。

『さすがに回復かけないとまずいな』

『え?』

どれ効果範囲まで跳ぶかと窓枠に手をかけたところで、すごく意外な感じの声を上げられ動きを止める私。

……

『ちょっとレオから取れるスキル石に興味が……』

いい笑顔で告げてくるペテロ、容赦ないなおい。

『……レオのスキル石って粗相も 感染し(うつり) そうだな』

『アリス、帰還せよ』

はははーなどと笑う前にペテロがアリスに命を出す。

『早い』

『ありえないと分かってるんだけどレオだからね……』

粗相が 感染す(うつ) るのはすごく嫌な様子。粗忽者のペテロか……少し見てみたい気もする。

『Master、帰還しました 楽しかった』

『おかえり、アリス』

『わはははは!! ただいま!! 死ぬかと思ったぜ!』

アリスにおかえりを言っていたらレオがパーティーに混じった。どうやら同じエリアだったのでペテロがパーティーに誘ったようだ。

『こっち終わっちゃったぞ』

『あと一歩間に合わなかったか!』

『いや、待って。あの人数引き連れて参加しに来たの?』

ペテロの声がちょっと慄いている。

『わはははは! まけなくって屋敷の周りぐるぐる回ってた!』

『距離的には一歩だけど高くて大きな壁があった件』

アリスの介入がなかったらずっと回ってたんじゃあるまいか。

『それにしても二人ともカッコイイな! 一緒にいたプレイヤーが騒いでたぜ』

『一緒に、いた……?』

『プレイヤー……?』

固まる私とペテロ。

『そそ。マラソンしてたら混じってきてな! そっちの子見てなんか盛り上がってたけど、窓んとこに二人の姿見つけてなんか叫びながら没してったのとか色々だ!』

『何に参加してるんだ、何に』

レオの行動もレオに混ざるプレイヤーの行動も謎なんですが。レオに混じったということは味方だったんだろうな……。隣でペテロが眉間を押さえて黙り込んでいる。『……。』とか出ている吹き出しが見えそうだ。

『まあ 殺(や) ってしまったものは仕方がないね。幸いイベント中だ』

吹っ切ったらしいペテロが笑顔で言う。このイベント中はプレイヤーキルをしても罪には問われないし、ギルドカードにバツもつかない。

『帰るか』

二人の同意を得てクランハウスに『転移』する。

「ただいま」

「おかおか」

「やらかし組、お帰り」

クランハウスにはお茶漬とシンがいて、ソファでくつろいでいた。

「開口一番ひどい」

「掲示板が大混乱ですし」

ペテロの抗議にさらっと答えるお茶漬。

「マスター、A.L.I.C.Eと一緒に毒草園見て来てもいい?」

かかととつま先で体重を移動し揺れながら首を傾げて見上げてくるリデル。転移の際、『永遠の少女アリス』はまた二人に分かれている。

「ああ、これを持って行け」

A.L.I.C.Eはリデルに輪をかけて人嫌いというか一人でいたがるが、リデルとは仲がいい。毒草園を見に行く二人のためにリデルにお菓子を渡す。毒草もまた、山菜などと一緒で現実世界より咲く季節が長くそして現実世界にないものもある。この間見せてもらった時は白い花を咲かせた背の高い草の下にイヌサフランが群生していて淡いピンクが可愛かった。

リデルに持たせたのは 艶干し錦玉(つやぼしきんぎょく) 、甘い砂糖液を寒天で固めた 錦玉羹(きんぎょくかん) と呼ばれるものを常温でしばらく乾かして表面の砂糖を再結晶化させた和菓子だ。外は砂糖の結晶でシャリっと中は寒天のプリッとした食感。色とりどりにできるし、上手く作れば磨りガラスのようで美しい、味覚の弱いリデル向けに可愛いを重視で作ったお菓子だ。

「絵面だけなら花と少女で可愛いのに。飼い主のせい」

ぱたぱたと部屋を出て行く二人の少女の背を眺めながらお茶漬が酷いことを言う。

「ここにいっとA.L.I.C.Eが時々茶を出してくんだけど、さらっと毒が混じってる時あるしなぁ」

シンがビールを飲みながら不穏な告白をしてくる。

「あるある」

同意するレオ。

「それはシンとレオにだけ」

「「え!?」」

「うるさいからだと予想します」

ペテロの答えに驚愕する二人と、理由を多分当ててるお茶漬。チャンスがあったら容赦なく消しにかかりそうだ、A.L.I.C.E。

「死なない程度にね、って諌めてるから大丈夫」

「それは大丈夫なのか?」

あんまり止める気がない飼い主がここに……。

そして始まる食事。

本日は黒酢あん肉団子、玉子チャーハン、餃子、エビの揚げ春巻、空芯菜のガーリック炒め。

「肉団子ウメエ! ビールくれビール!」

肉好きのシンは先ず肉から。

「ピーマン大きくない? 歯ごたえ良くって好きだけど」

豚ひき肉の揚げ団子をニンニクを効かせた黒酢あん、肉団子とピーマンのみだがペテロの言うようにピーマンはでかいです、はい。

「雑貨屋ででかいピーマン出せないんでつい」

「ああ、お子様いるもんな!」

ひひひ! と笑いながら大人アピールなのかピーマンをかじるシン。ピーマンダメなのは大人のほうなんだが、誤解を解くべきか否か。

「チャーハンも玉子ふわふわで黒胡椒効いてていいね。こっちもビールをお願いします」

玉子チャーハンの玉子は豚ばらを細切れにして炒め、その脂をよく玉子に吸わせてふわふわに。玉ねぎを入れると甘くなるが今回はネギで甘さ控えめ(?)。

「餃子、餃子〜〜〜!!」

飲むように次々餃子を自分の口に投げ入れるレオ。こんがりと焼かれた餃子はパリッと摘んだひだのほうはもちっとしつつも邪魔にならない薄さで中の肉汁を閉じ込めている。

「ぎゃあっ! 熱い!!!」

なので気をつけないとレオのようになる。焼きたてだしな。

「そういえばホムラはリデル連れ歩く時は気をつけて。雑貨屋にいるの知られてるから見られると煩いよ?」

揚げ春巻を取りながらお茶漬が言う。

「そういえば。――隠蔽装備だったからセーフ?」

「屋敷の中で喚び出したから見られたのは『アリス』だね。私もA.L.I.C.E連れるのは隠蔽装備の時だけにしてる」

『封印の獣』に限らず、珍しいものはみんな欲しがるし見せびらかす趣味がないなら隠すのは妥当だろう。

「掲示板、それで盛り上がってた。なんか黒レン様の印象と黒の暗殺者様のせいか、暗殺者極めると貰える少女って結論になってたよ」

「そうそう、今回のコート姿の男も暗殺者だろうってな。はーっ! うめぇ!」

お茶漬の話をシンが補足して、ビールを一息に飲む。

今回のビールは軽快な苦みが心地よくサッパリとした口当たり、油っぽくなりがちな中華に合わせてみたんだがどうなんだろうか。飲めない私は烏龍茶、現実世界の 黄金桂(おうごんけい) のように香りが爽やかでちょっと金木犀っぽい匂いのするお茶だが、微かに苦い。その苦みが口中の脂を流してくれるようでこちらも飲んだ後は苦みも残らずサッパリする。

「全然違う方向に結論が出てる模様」

「いつか訂正できるといいね」

全くそう思っていない笑顔でペテロがビールに口をつける。

「それとアイルと帝国の騎士同士の戦いが明け方開始しそうだって」

お茶漬の言葉にカツ……アグラヴェインの顔が浮かぶ、困ったことに主に額だが。一応、兎娘と一緒にいる騎士ガウェインの説得でこちら側についたそうだが、実際敵対したことのある騎士なのでつい。冷静に考えると知った顔で出てくるのはパーシバルとカミラの妹か。

「アキラくんは 帝国(むこう) 側なのかな?」

「アキラくんだけじゃなくて、アイルの魔法系のスキル石欲しいプレイヤーはあっち側ですね」

セットで思い浮かんだアキラくんの名を出せば予想外の答え。いや、まあプレイヤーに善悪は関係ないどころか好んで極悪プレイする人もいるし。

「強い騎士出てくっかな? 拳士系スキルあるんだと嬉しいんだけどよ」

すでに酔っ払いだしているシンが陽気に言う。

「どうだろう? 帝国はまだ行ったことがないプレイヤーが大半だったし」

「プレイヤーが未だ到達していないボスの類出ないみたいだから、騎士も無茶苦茶強いのは出ないかもに」

シンと同じような量を空けているが、酔っていないペテロと本日は私に付き合って烏龍茶を飲んでいるお茶漬。

「……出ないのか!」

玉藻とか鵺とか。

「出たらネタバレ困るでしょ」

ペテロが一刀両断してきた。私も見たことがないし、そう言われれば『封印の獣』のネタバレになるかもしれない……。

冷静に考えて神殿の白と遭遇しなければ、攻略の進行に絡んで『封印の獣』の初めての登場とかになるんじゃあるまいか。エルフの大陸へ渡るためには帝国を通らねばならなかったはずなので、運良く飛べる騎獣を手に入れていない限り、行動範囲を広げようとするとぶつかるはずだ。

「あ」

「どうした?」

私の短くあげた声に、シンが聞いてくる。

「私、最後にバハムートにブレス吐かせる約束しちゃったんだが、帝国についたプレイヤー無事だろうか」

「ぶ!」

ビールを思い切り吹き出しかけるシン。

「どう考えても無事じゃないですね、それ」

信じられないものを見るような顔をして言うお茶漬。

「わ〜、帝国ご臨終のお知らせ」

そしてナルンで参加しようかな、などと笑顔を見せるペテロ。

「今回のイベント、派手に始まって派手に終わるんですね。帝国詰んだ」

「わはははは! スカッと思い切り派手なのがいいな!!!」