軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

243.三つ巴?

クルルカンが二の腕まで登って腕輪のように巻きついて出てこない。最初は時々袖口から顔を覗かせながら前腕にいたのだが、カルの視線と黒の威嚇で出てこなくなってしまった。それでいいのか封印の獣。

デザートはチョコレートのショートケーキ、カルの 淹(い) れてくれた紅茶で。柔らかいふわふわのクリームと甘酸っぱい苺。苺とクリームとスポンジの組み合わせは正義だと思う。

「ラピス、ノエル、今日もお疲れ様」

「ん、ラピス頑張った」

ラピスがちょっと照れながらぐりぐりと頭を擦り付けてくる。

「僕も」

遠慮がちにノエルもくっついてくる。

食べ終えてくっついてくる二人を撫でていたわる。この世界ではこのくらいの子供は立派な働き手であることが普通のようだが、現実世界の自分の周囲と比べてしまうとどうしても働かせていることに後ろめたさがある、んだが。

「はいはい、くんくん禁止、くんくん禁止!」

油断するとこれである。なぜ脇の匂いを嗅ぎたがる!!!! 獣人だからなのか!? まさかよそ様にまでやってないよな? やるならカルかレーノにとどめておいてください!

ひっぺがしつつラピスとノエルに明日から一時的に火と水の属性石以外を買取から外し、薬師ギルドで出している納品クエストと同じものを買取するよう頼む。私は納品クエストは受けられないがたくさんあって困ることはないだろう。

そしてラピスとノエルを風呂に送り出したら酒の時間だ。

「食材集め、けっこう長丁場になりそうだけど大丈夫か? ダメだったら何回かに分けて行こうと思うんだが」

ガラハドたちの到達階数は確か四十四層、二十五層は全部開けたと聞いているが蛇ルートは未開拓なはずだし、グリーンヒドラが未だなら二十六層からだ。

「おー、平気、平気。フェニックスなんとかなるようになったし、『炎熱の病』の兆候はねぇし」

ローストナッツをつまみながらビールを飲むガラハド。本日のおつまみはローストナッツとカナッペ。アボカドディップと生ハムと輪切りのオリーブ、クリームチーズとハチミツ、レーズンバター、サーモンのマリネをクラッカーに乗せただけだが彩りが綺麗だし、手でつまめるのがいい。

……ビールを飲んでいるのを見ると個人的には唐揚げを出したくなるのだがどうなんだろうか。私自身は飲まないので本当に独断と偏見なのだが。

「誰か罹ったという連絡があれば途中で抜けると思うけど、それまでは付き合うよ」

「長丁場ってことは手に入れづらい食材なのかしら?」

ワインを飲んでいるイーグルとカミラ。

「レアなのもあるけれど、どちらかというと量を確保したいかな。死ぬ気は全くしないんだが、一人はどうにも時間がかかってまいった」

「集まりが悪かったら僕も交代して手伝いますよ」

「ありがとう。ぜひ頼む」

手伝いを申し出てくれたレーノに礼を言ってお願いする。なにせ何層まであるのかわからんし。

「雑貨屋が休みの日でしたら私も」

「ありがとう」

カルの言質も取った!

「食材収集って、じじいに似合わねぇ作業だな〜! って、あだだだだだだだ」

だいぶ飲んでいるガラハドがワハハと笑いながら言えば、カルが微笑みながら流れるような自然な動きでアイアンクロー。

そんなこんなでバロンの冒険者ギルド迷宮前。

「なんで迷宮の入り口なんだ?」

「食材採取のはずよね?」

「ホムラ? 食材ってもしかして蒼天ルートで鳥狩りなのかな?」

分岐の鳥マークの先は蒼天ルートとか狩人ルートとか、そのまんま鳥ルートと呼ばれる鳥系の魔物が多いルートだ。唐揚げがはかどりそうなのでそのうち行きたい。

「いや、今回は……」

「おっと、お仲間だ」

一瞬同じく食材集めに来た一行があるのかと思ったが、ガラハドの視線の先を見れば炎王たちとロイたちがいた。だがガラハドがお仲間と言ったのは一緒にいる騎士のことだろう。

「僕らが依頼されたものと同じものかな?」

「効果はなかったけど、進行は止められたって聞いたものね」

「『フェル・ファーシの雫』か」

ガラハドたちの言葉に、依頼の内容を思い出す。最近はタコ、じゃないフェル・ファーシに縁があるようだ。雫を得るためには特殊な剣でダウンを取らんといかんかったはずだが持ってるのだろうか? それとも他の方法もあるのかな?

「ほう、ようやく始動か」

「ああ、クランも落ち着いたからな。そっちも騎士連れか」

炎王とロイが話している、そして騎士の姿が二人。どうやら騎士を連れて迷宮へ行くクエストがそれぞれに発生しているようだ。二人の、あるいは二つのクランの成り行きを遠巻きに見守る他のプレイヤーもいる。

ロイたちは炎王たちと同じく攻略組と言われるパーティーだったが、立上げたクラン『クロノス』が大所帯になり体制作りやクランメンバーの騎獣確保を始めとする手伝いでしばらく攻略からは離れていた。ただ、生産職も多く抱えるクランのトップなので今後の攻略は楽に進められそうだ。

「俺の方は護衛依頼だ」

肩をすくめて炎王が視線を送った先にはエリアス。どうやら騎士を連れているのはエリアスのようだ。

「ああ、生産職はギルドに護衛依頼だせるんだったか。まあお互い頑張ろうぜ!」

「負けんぞ」

白い歯を見せて明るく笑うロイと対照的に口の端を片方あげて笑う炎王。緊迫した空気がとてもライバルっぽい!

なお、生産職の護衛依頼は護衛六人、される側三人までの最大九人のアライアンスを組むことができる。ただし、人数・行く場所によって冒険者ギルドに多大なマージンを取られるのでレアが出ない限り結構な赤字になるそうだ。護衛する側も依頼料はでるものの対象者を死なせるとペナルティがきついらしい。

「レンガード……っ」

などと考えていたら見つかった、最初から隠れてもいないが。あちこちから短く悲鳴が上がってざわついているのだが、何だ? 大丈夫ですよ? いきなり首を刈ったりしませんから。

「……え、三つ巴かよ……」

「おいおい、すごいところに来合わせたな……」

ちょっと待て、私は別に攻略に参加してないぞ。食材探し班なので緊迫した雰囲気からは戦線離脱させてください!

《お知らせします、迷宮地下35階反魂ルートのフロアボス『スケルトンロード』がソロ討伐されました》

おっと、アンデッドルート行ったチャレンジャーがいる、ゾンビとかきつそうなのに物好きな。臭いはともかく、神官や聖騎士になれば楽なルートになるのか? クリアは兎娘あたりだろうか。

「おいおい、先を越されたか。まあゾンビは選択肢になかったがな」

炎王が嘆息する。先ほどから炎王とロイだけが話しているが、多分他のメンバーは無言なのではなく推移を見守りながらパーティーで会話しているのだろう。ハルナがコレトとクルルに笑顔で腕を掴まれているので多分そうだ。

「あんたも今から潜るのか?」

「ああ」

炎王の問いかけに短く答える。実はさっきからパートナーカードを投げられまくっていて拒否るのに忙しいのだ。伊達に闘技大会優勝してないぜ! と言いたいところだが無言で聞いたこともない人から送られて来て困惑している。

「四人か。興味本位なんで応えなくってもかまわねぇんだが、何層まで到達しているんだ?」

ロイが聞いてくる。

「五十層だな」

「すげえなおい」

ロイが驚いてくれたが、私はロイが大所帯のクランメンバー全員の名前を把握してるほうがすごいと思うぞ。プレイヤーは服装や髪型がコロコロ変わるのに。

「アナウンスを聞いていないが……」

「住人のクリアにアナウンスあんのか?」

困惑する炎王に首をかしげるロイ。ハルナがいるし、住人だという誤解は解かないほうがいいのだろうなこれ。隠しルートを公開してしまうのも 憚(はばか) られるし。

「迷宮には隠し事がある」

炎王の疑問を謎めいた言い回しでごまかすプレイ、バラすことで彼らの不利益になるかもしれんし。――黙っていてしばらくのんびり食材集めしたい欲もありますすみません。

「 ホムラ(レンガード) 」

カミラが袖を引いて呼びかけてくる。

「人が集まりすぎじゃねぇか?」

ガラハドの言葉に周りを見れば、先ほどよりギャラリーが倍近くに膨れ上がっている。私たちが迷宮の入り口を大人数で塞いでいる状態だ、視線が痛い。

「では失礼する」

退散、退散。

後を追ってきたプレイヤーもいたが、進む階層が違うためギルドで振り分けられる転移部屋自体が違うので一緒になることはない。五十層まで到達している冒険者用の部屋まで追ってこられるものなら追ってくるがいい! いや、嘘ですこないで下さい。

「おい……。まさか五十層に連れてかれるんじゃねぇだろうな?」

静かになったところでガラハドが半眼で聞いてくる。

「そのまさかです。よろしくお願いします」

「ホムラ?」

「ホムラ君?」

カミラとイーグルは綺麗な笑顔ですね。

「お前ソロで死なないとか言ってなかったか?」

「ああ、道中は距離をとって戦える敵だったし、ボスはこまめに回復するファル・ファーシだったし痛いことは少なかったぞ」

私の答えに自分のこめかみをぐりぐりと揉んでいるガラハド。

「五十層で他のフロアと同じボスが出てくるのかい? 聞いたことがないが……。フェニックスよりもひどい道中になりそうな予感がするね」

否定の言葉は出ないのでこのまま付き合ってくれる気配のイーグル。

「……手伝うって言っちゃったし付き合うけど分岐はどこなの?」

「ホワイトいや、グリーンヒドラからだな」

ため息混じりのカミラに答える。

幸いガラハドたちはグリーンヒドラを倒していたので三十一層からスタートだ。ボスのいないボス部屋の隣へ転移して扉の先の階段を降りる。階層の移動は階段だったり転移プレートだったり扉を通るだけだったりと様々だ。

ここは崩れた石積みと枯れ木の迷宮。

「ここは初めてだが、ギルドの資料では鳥型が多いんだったか?」

「ホムラが目指してるのは話に聞くレアルートかな?」

「蛇だったかしら?」

三人は話が早くて助かる。

「そうだ、私が蛇ルートは開けているので行けると思う。石積みの間から矢みたいな蛇が突然飛び出してくるから気をつけて。あと枯葉が滑る」

「了解!」

キリッとした顔で一歩を踏み出すガラハド。

「あ、ここの敵【斬撃耐性】がある」

「ぶっ!」

大げさにずっこけるガラハド。

エンチャント取っておいてよかったです。