軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

209.烈火との攻略

「何で俺の後ろにくっつく?」

「私よりでかいのが、おっさんだけだからだ」

シンの後ろに隠れて烈火を待つ。尻尾が邪魔なんだが、贅沢は言っていられんのだった。シンやレオの尻尾を特にもふりたいと思わないのは、 人間(なかみ) の印象のほうが強いからだろう。

現在、魔法国家アイル首都アルスナの西、ファルノールへと続く門の前だ。白亜の門の上には水を司るファルのレリーフが掲げられている。アイルの中では、ジアースのサーと同じく、ナルンの豊かな水源に恵まれている街だそうだ。アイルの六つの街もそのうち回りたいところだが、街の転移門の解放はどういう条件なんだろう?

「すげーうっとおしい!」

言葉とともに横に飛び退くシン。

「あ、コラ! 逃げるな盾!」

「誰が盾だ!」

「ホムラは隠れなきゃいけないようなことなにやったの?」

シンの背中を追い回して、ぎゃーぎゃーやっているとお茶漬が聞いてくる。

「炎王にパンツを渡して、即『帰還』で逃げてきた」

「ああ……」

正直に答えると微妙な返答。

「いまさらでしよ。すでにレオから烈火には配布されてるでし」

「レオの名刺がわりだと思って諦めてもらう方向で。ついでに僕に来た分も流しといた」

「やべぇ、俺もレオから来たダブったブーメラン、ギルにつめちった」

「待て、烈火にいったいどれだけパンツ回ってるの?」

ペテロが困惑して聞いてくる。

「同類と思われたくないでし!」

「同じく」

「いまさらですよ、いまさら。ほら、朱に交われば馬鹿になるって」

拒否する菊姫とペテロに諦めを促す私。

「何かちがうでし!」

「お前ら……」

騒いでいたらいつの間にか烈火が後ろに来ていた。

「やあやあ、こんばんは」

「おー! こんばんはだぜ!」

「今日はよろしくでし」

「ばんは〜」

「こんばんは」

挨拶は笑顔で元気良く。

「お、おう。こんばんは」

「……こんばんわん?」

戸惑う炎王とギルの返し。

「お久しぶりであります」

大地は、パーティーも組んだことがあるし、自衛官みたいな話し方をするので印象が強い。が、フルアーマーを脱がれたら見分けがつかんかもしれん。

「こちらこそ、今日はよろしくおねがいします」

「こんばんは」

ハルナ、コレト……、かな。一緒に冒険に出たことがないので、名前がうろ覚えなのだが、女性の方がハルナ、消去法で残りの聖法使いがコレトという結論。名前より太ももやら脇腹のほうが印象が強いのは内緒です。素晴らしきかなチラリズム。

「よろしくおねがいするにゃー。流れるような話の逸らし方にゃ」

「気のせいですよ。揃ったところでさっそく行こうか。カモン、黒焼き!」

クルルが突っ込んでくるが、お茶漬がスルーする。パーティ同士の一時的な同盟――アライアンス申請を烈火に送ったのだろう、ウィンドウがパーティの状態を確認しろと点滅している。話しながら、黒焼きを呼び出し、申請もするとか、相変わらずお茶漬は器用だ。

呼び出す際に、黒焼きに差し出すのはラピスラズリ。

「よし、おいで白虎」

差し出すのはブルートパーズ。

「黒天」

差し出すはオニキス。

「白雪〜」

差し出すはクリソベリル――いわゆる猫目石。

「武田~!!!」

掲げるはルビー。

「アルファ・ロメオ〜〜〜ッ!」

ぶん投げるは赤水晶。

「……ってなんでシンとレオは力んでるの?」

ペテロが突っ込む。

シンはなんか拳を天に突き上げるポーズで、現れた武田くんが早くクレ! とばかりに、握られているルビーの代わりにシンの髪をもぐもぐしている。馬の親愛行動だ。アルファ・ロメオに至っては、すごいスピードで赤水晶を追いかけて走り去った……、と思ったら砂埃を蹴立てて戻って来た。

ちなみに宝石は、個々の騎獣に設定された色に合っていれば何でもいいようだ。ただ、ランクが高いか、騎獣の好きな宝石で呼ぶと好感度が上がるらしく、逆にランクが低いと好感度が落ちる。高い低いは騎獣のレベルによるので、今はまだ宝石のランクが低くても余裕だ。

「シン、ルビー勿体無い!」

「持ってたのこれだけだった」

「売り払って安いの買え! そんなんだから金がないんだよ」

さっそくお茶漬の教育的指導。ルビーはボスドロップか何かだったか、武田くんに好かれているのも納得の大盤振る舞い。

「なんというか、個性的ねぇ」

声の主のギルヴァイツアの隣には黒いライオン。烈火のメンツは全員お揃いの騎獣だ。

「赤じゃないんだな」

「赤い子か、黒い子か迷ったにゃ」

「炎王になついちゃったコがいて、それに揃えたの」

なんとなく迷宮でパーティを組んだメンツで話す。大地はもともとあまり喋らないが、話を聞いている気配。

菊姫とレオとシンは、コレトとハルナと盛り上がっている。ペテロは迷宮攻略混合パーティーのとき、ロイたちクロノスのメンツと組んでいたので、烈火とパーティーを組んだことはないのだが、如才がない男なので大丈夫だろう。

「ところで、炎王がペロペロキャンディみたいになっとるんだが」

他の黒いライオンよりもひと回り大きな騎獣が、炎王の後頭部をべろんべろんと舐めている。うめぇ〜、うめぇ〜、超うめぇ〜と声が聞こえてきそうなくらいに。舐められている炎王は、眉間にしわを寄せてまっすぐ前を向いている。動じていないふりをしているようだが、時折頬が引きつっている。

「おかしいわねぇ。外ではやらないんだけど」

頬に手を当てて困惑顔のギルヴァイツア。

「いつもは、乗るまで我関せずな顔してるのにゃ」

「……いくぞ」

炎王が黒ライオンに乗って走り始める。

「ごまかした」

私。

「ごまかしたね」

お茶漬。

「ごまかしたわね」

ギルヴァイツア。

「ごまかしたにゃ」

クルル。

「格好つけたいタイプなんだから、見逃してあげなさい」

ペテロ。

「容赦ないのであります」

大地の声が少しおののいている。

先行した炎王を追って、アイルを移動する。最初の国、ジアースに草原が多かったのに比べ、アイルは国土のほとんどが木に覆われた森の国だ。突出して大きな木は少ないのだが、どこまでいっても木が続き、マップがなければ迷子になりそうだ。よくよく見れば樹木の種類に変化はあるのだが。

「わははははははっ!! 先いくぜぇ!!!」

アルファ・ロメオがまっすぐな道で、無意味に左右に振れながら走って行く。たるんたるんの毛皮が、ドリフトするたび右にみょ〜んと伸びたり、左に伸びたりと赤い残像をつくる。

「あの主従はなるべくしてなったというか、砂埃凄いね」

「暴走タヌキがひどいでし」

お茶漬がローブについた埃を払う仕草をしながら言うと、菊姫も猫の白雪の埃を払う。

「速さ一点あげで餌やってるっていってたね」

「ペテロは僕より先に行ってくれない? 黒焼きが緊張しててかわいそう」

お茶漬を乗せてシャカシャカと走る黒焼きは、普段はS字型に自然に左右に振れる尻尾をピンと張りつめている。その後ろにはトカゲが好物なペテロの騎獣黒天。黒焼きの真後ろに陣取るのはわざとなんだろうか。普段は同じ虎型同士、うちの白虎といるのだが。

そうこうしているうちに目的の場所についた。ファルノールを過ぎて、ナルンの麓にぽっかりと空いた洞穴。奥にはアイルの門と同じ、白亜の扉が見える。何組か冒険者が来ていて、両開きの扉の前に立っている。

「迷宮とどっちが楽なんだろ」

「階層によるでしょ。こっちまだクリアされてないし」

チャレンジしている冒険者はそこそこいるが、道中にある採掘ポイント目当てなパーティも多い。銀が多く出るため、今流行りの金儲けポイントなのだそうだ。ミスリルの武具が出回り始めた時期で、ミスリルに加工できる銀は未だ需要に追いついておらず慢性不足状態。なお、ミスリルそのものも稀に掘れるとのこと。

烈火の赤い髪、お揃いの騎獣は目立つらしく、ほかの冒険者がこちらをちらちらと見ている。サキュバス戦の装備を修復したのか、新調したのかはわからんが、きっちり武具も揃えてきている。烈火の色は基本赤を主に黒・金。出会った当初は目立つことは目立つが単体で見るとちょっと……、という印象だったのだが、今は単品でも格好良い。武器防具をつくる生産者のレベルが上がってきているのだろう。それにしても、やっぱりパーティに統一感があると格好よく見えるな。

顧みて、うちのパーティ。妙に似合うピンクのローブを着ているお茶漬、顔は出しているが忍者ルックのペテロ、烈火のメンバーに間違われるんじゃないかと思うギルヴァイツアと似た格好のシン。膝丈のズボンに黄色いスカーフのボーイスカウトみたいな格好のレオ。白いミニスカに青い鎧を着ている菊姫。

そしてメイン色に白黒禁止令が出ている私は、灰色がかった 紺青(こんじょう) で、裾にアンナ・アトキンスの海藻みたいな白い模様の入ったローブを着ている。騎獣はいわずもがな。

「見事にバラバラでしね!」

同じことを考えていたらしい菊姫が言い切る。

「見られてるのは、ここが協力ダンジョンで、うちが烈火と組んでるからだね」

「烈火は有名だからね。うちはワールドアナウンスで名前が流れてるのレオくらいだし」

そのレオも秘境でのヌシ釣りでなので、名前はともかく姿を知るものは少ない。

扉が開いてダンジョン内へ入ると、先ほどまで周囲にいた冒険者たちが消える。もっともあちらから見たら、私たちが消えたのだろうが。

「さっそく二手にゃ」

「基本、連絡取りながら、仕掛けを動かして扉を開けて行くかんじよね。パーティのシャッフルもあるからよろしくねん」

ギルヴァイツアが声に出して簡単な確認をする。

「毒、麻痺対策とかはいいかな?」

「おうよ!」

お茶漬の言葉にシンが答える。中は結構罠が多く、失敗すると様々な状態異常を食らうことになるそうで、事前にお茶漬に用意するよう言われている。とりあえず一番多そうな毒対策に『抗毒薬』を飲んで攻略を開始する。

一区画目の最初の部屋はイベントらしく、体毛が黒いブラックコボルドが罠をかけているところに遭遇。ギャッギャと騒ぎながら六匹のフルパーティで襲い掛かってくるが、特に苦戦もなく。戦闘終了後、ブラックコボルドが落とした罠をつついたレオのせいで、全員で【麻痺】にかかるという憂き目にあったが。

「戦闘終了後でよかったでし」

「一部屋目で全滅とかやめてね」

「わはははは! ちょっと興味があったのさ!」

罠に気をつけなさいよ、というイベントで、罠にかかるのはどうなのか。