作品タイトル不明
153.無実ですよ!
「落ち着け。見た目幼女だが幼女じゃない」
リデルのレベルは1なので【鑑定】で余裕でステータスを確認できるはず。……まず覚えさせるスキルは【隠蔽】か。仮面をかぶっていれば、リデルのマスター表記も『レンガード』になるっぽいが。
「ホムンクルスゥ?」
「錬金で造ったの?」
「ホムンクルスの制作技術は失われたんじゃなかったか?」
ガラハドたち三人が口々に言うのを理解しているのかいないのか、微笑んで聞いているリデル。微笑がデフォルトなのか?
「失われた製造方法を復活させようって、昔流行りましたよね?」
「レーノ君の昔って何時だ?」
「僕がパルティン様と出会う前ですから、三百年くらい前ですかね?」
「それ普通の人間は生まれ変わってるから」
思わずツッコミを入れたが、長生きのエルフやドラゴニュートも錬金をするならホムンクルスの製造法は伝わっていそうなものだが。
「ホムンクルスは昔、黒の錬金術士が造った 機械人形(オートマタ) と並んで、白の錬金術士が連れていたことで有名ですね。その後も暫く継承されていましたが、二人が消えた後、どんどん劣化していってやがて技術そのものが失われたと聞きます」
「もしやドゥルの封じる獣『狂った人形ハーメル』はその黒の錬金術士が造ったオチか」
「オチって言うな、オチって。あとジジイの昔もレーノほどじゃねぇが、大概昔だから、ジジイの"昔聞いた"は一般的知識だと思うなよ?」
カルの説明に思いついたことを言えば、ガラハドからツッコミがはいった。そろそろカルの年齢を聞いてもいいだろうか。
「『狂った人形ハーメル』、……封印の獣、『アリス1/2』……?」
イーグルがリデルを見ながら、眉間にしわを寄せてつぶやく。
「……アリスは何か聞いたような気がするけど、ホムラから聞いたあの アリス(・・・) じゃない……わよね?」
カミラが困惑した、あるいは、不審そうな顔をして問いかけてくる。
「ヴェルナの封じていた獣『永遠の少女アリス』の片割れだな」
ラピスとノエルをもふ……撫でながら言う。店舗への引越しが嬉しいのか本日は二人のスキンシップが過剰な気がする。まあ、スキンシップといっても近くにいて目があうと寄ってきて額を押し付けてくるくらいだが。
「ぶ! やっぱりかあああああああああああああっ!!!!」
「ちょっとホムラ、『封印の獣』何体持てば気が済むの!」
「もう少し自重しようか?」
ガラハドたち三人が思い思いにツッコミを入れてくる。ガラハドの叫びに驚いたのか、ラピスとノエルの尻尾がですね、ぼわわんと。リデルは通常営業、もしや私関係以外は感情の起伏があまりないのかこれ?
「うるさい」
「あだだだだだだだだだだっ!!」
カルがガラハドにアイアンクロー。再び上がる違う種類の悲鳴。どうしよう、お隣さんにそろそろ謝りに行ったほうがいいだろうか。
「寡聞にして、封じられた獣は『バハムート』『ハスファーン』『クズノハ』『ハーメル』『鵺』しか最近まで知りませんでしたが、それが冒険者ギルドが秘匿していた『アリス』ですか? 早いですね、島に行ったのは下見かと思いました」
レーノ君が聞いたことがないって凄いと思うべきか、山にこもっていたから仕方ないな、と思うべきかどっちだ。
「『鵺』は初耳ですね。そのような魔物がいることは古い文献で見たことがありますが、封印の獣だったとは……」
カルが言う。古い文献か、神々に出会えなくとも一応、世界を探せば封印の獣には出会えそうだな。
「アシャの封じる獣、『雷獣鵺』、ヴァルの封じる獣『白き獣ハスファーン』、ドゥルの封じる獣『狂った人形ハーメル』、ルシャの封じる獣『傾国九尾クズノハ』、ファルの封じる獣『毒の鳥シレーネ』、タシャの封じる獣『終わりの蛇クルルカン』、ヴェルスの封じる獣『かつての竜王バハムート』、ヴェルナの封じる獣『永遠の少女アリス』」
イーグルがスラスラと獣の名前を挙げる。
「よく覚えているな」
「これはまだ平常心の時に聞いたからね。後から考えるとヴェルスの話にハスファーンの話も出てきていたのにスルーしてしまっていたり反省しきりだよ」
どちらかというと固有名詞八つを一回聞いただけで覚えていられるほうが凄いと思うのだが。私は五分たったら忘れる自信があるぞ。
「まちたまえ、イーグル。封印の獣は長きにわたる封印のせいでどの神が何を封じたのか半数程度しかわかっていなかったはず、どこで得た情報だ?」
ガラハドたち三人が揃って私を指す。カルとレーノの視線も私に向けられる。
「神々から直聞きです」
「神器を二枚もお持ちでしたしね」
パンツのことですね?
「【鑑定】出来ないのでなんなんですが、白いローブももしかして神器ですか?」
レーノが神器について聞いてくる。
「ああ、見るか?」
装備を一時的に閲覧可にする。
「これはまた……」
「相変わらずスゲー性能だよな」
「魔法特化だわね」
「『ファル 白流(はくりゅう) の下着』にも【全天候耐性】ついてるのか、どうりで溶岩地帯で涼しい顔をしていたはずだ」
初めて見るカルが言いかけた言葉を切り、代わりにガラハドたちが感想を言う。
「あの男性用下着に続き、凄いですね」
レーノ君、わざとではないのだろうがパンツにこだわるな。ガラハドとイーグルが目を逸らしてるぞ。
「ま、まあ装備もぶっ飛んでるけど、ホムラはステータスもひどいから」
「非公開黙秘します。そして私は寝ます」
【快楽の王】ががががががが。
「ええっ!?」
「何故」
「またやばいものついたのか!?」
「主のステータスを無闇に知りたがるのは感心しない」
カルの一言で黙る三人。ありがとうカル。
「後で私にだけ見せてください」
「却下」
笑顔で言うカルの頼みを言下に拒絶する。
「何が増えたか大変気になるのだが」
「装備の公開にはゆるいのに何故かしら?」
「あれか、またH系か!」
おい、ガラハド、言い当てないで!!!
「また、ですか?」
レーノ君も変なところに引っかからない!!!
「マスター、何かHなことをするの?」
「しません!!!」
リデルが小首を傾げて不思議そうに聞いてくる。無垢な瞳で何てことを言い出すんだこの外見幼女は!
「しないっていうのも男としてどうよ?」
ガラハドがニヤニヤと揶揄うように笑って肩に腕を回してくる。
「このパターンは迷宮で酔った時のパターンかな? ガラハド?」
にっこり笑って聞き返す。
途端にババッと絡めた腕を離し、ホールドアップ体勢。
はっはっはっ、思い出したようだなあの惨状を。思い出したのかイーグルも目を逸らしている。もろ刃の剣というか、肉を斬らせて骨を断つみたいな何かなんだからあんまり使わせないでくれ(吐血)
「とにかく、私はそろそろ真面目に時間切れだ。すまんが三人を頼む」
「主、眠ってしまうんですか?」
ノエルとラピスがきゅっと袖を握ってくる。
「また起きない?」
「四、五日起きないかな」
もう現実時間では四時近いんじゃあるまいか。いくら休みだと言っても、さすがに寝たい。そして、そろそろ休憩を取るようにというアラートが鳴り始まってもおかしくない。
「必ず起きる?」
ラピスが必死に見上げて聞いてくる。
「ああ、起きるぞ?」
もふりながら答える。
「この間、何をしても起きなかったのがトラウマかしら?」
「人間の睡眠時間は一日の半分以下くらいですか? 知り合いに一年寝て一年起きるというドラゴニュートもいますんで、そう気にすることもないと思いますが」
多彩だなドラゴニュート。
「主、添い寝しますか?」
ノエルが見上げてくる。
「あら、なんなら私も添い寝するわよ。ふふ」
ラピスの頭越しにガラハドに替わって腕を絡めてくるカミラ。
「いやいやいや? 一人で寝られるから」
もふもふと一緒の誘惑と美女の誘惑だが、前者も後者も迂闊に乗れない何か。ノエルを抱き枕にしたらショタの噂が立ちそうだし、胸枕は気持ち良さそうではあるが、カミラはからかってるだけだろうし。睡眠は気兼ねせずにとりたい。
「ラピスも?」
「一人で寝られるから大丈夫。あと この世界(よのなか) 朝だろう! みんな私に構わず、健康的な活動しとけ。朝食を食べ終えたら、ラピスとノエル、リデルは、ここで暮らす上で足りない物の買い足しと引っ越しの算段を。すまんが誰か荷物持ちやら付き合ってやってくれ」
「はい、主」
カルが請け合ってくれた。
あとは、リデルにとりあえず【隠蔽】と【調合】【錬金調合】を覚えさせる。【隠蔽】を覚えさせると【幻想魔法】が同時にスキル取得された。【調合】で【投擲】、【錬金調合】では【闇魔法】。どうやら1/2になる前に覚えていたスキルを、スキルを一つ覚えさせるごとに思い出して行くようだ。覚えるのに使用したSPは今のところ一律5。初期 SP(スキルポイント) は90、覚えさせ放題じゃあるまいか。
ゲーム開始時のプレイヤーのSPは確か15。
……
……あれ、もしかして十二人の……
いや、まあ深く気にしないことにしよう。
そういうことにして、雑貨屋の錬金設備、調薬設備をリデルに解放する。
「もし手が空いたら、リデルを薬師ギルドに連れて行って体験コース? 研修? どっちだかを受けさせてやってくれ。コースは好きな物でいい」
「マスター、手伝えるよう頑張る。地図書いてもらえたら一人でもいけます」
微笑が笑顔になり、張り切るリデル。
「主、僕も受けてはダメですか? シルは貯めてあります」
「構わんぞ? あと支払いは持つから気にするな。好奇心起こして変な薬飲むなよ?」
「ありがとうございます」
嬉しそうに笑うノエル。ノエルにも調薬設備、ついでに錬金設備を解放しておく。
「ラピスも何か習うか?」
「ラピスは冒険者になる!」
おっと、冒険者ギルドの受付嬢に無謀な冒険を散々脅してもらったが、まだ冒険者熱は冷めなかったか。
「将来なりたいというなら止めんが、今はまだ育ってるところだし。やるなら何か身を守れる技能を覚えるところから始めたらどうだ?」
「あ、僕が身を守る基礎くらいはお教えしますよ」
レーノ君が立候補してくれた。
「オレも暇な時は相手するよ」
ガラハドやイーグルたちも。
「豪華な講師陣だな、ありがとう」
えらいこと英才教育になりそうだ。
「ではすまんが私は寝る」
「「主、おやすみなさい」」
「マスター、おやすみなさい」
「おうよ、おやすみ〜」
「おやすみなさい」
「良い夢を」
「添い寝はしますか?」
「いらんわ!」
オチをつけるなオチを!