軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

148.引越し

【風水術】はちょっとした雨を降らしたり、雲をのけたりだそうな。そして普通の【風水】は、一人ではなく儀式や工事を伴い何人かで時間をかけて行うものらしい。

……あれ? いや、まあ、人数や儀式、工事によって私が起こした範囲よりも広範囲、ほとんど恒久的に保つことも可能だそうなので。うん、セーフセーフ。

『普通の【風水】は自然界から学びとって、徐々に地水火風なんぞの属性を高めて行くんじゃがの』

ちょっと白、駄目押ししないで! 返事の代わりにもふる。

『パルティン様も僕も属性で苦労しているんですが……』

困惑気味にレーノが言う。

『 ホムラ(コレ) はこういうモノだと思って諦めたほうが疲れぬぞ』

『時に白殿』

『なんじゃ?』

『属性で思い出しましたが、こちらに来る前パルティン様に、"ホムラの属性は偏りがなく 平均的で(・・・・) 、 突出した(・・・・) 属性はない(・・・・・) "とおっしゃってませんでしたか?』

『嘘は言っておらんじゃろ』

『なんだ?』

『先ほど、"属性が平均的なホムラと契約すれば、そなたが ミスティフ(まわり) に与える属性の影響を制御できる。愛で放題じゃぞ"と』

『ぶっ! 白、何を勧誘しとるんだ、何を』

うりうりと白をもふる。

『嘘は言っておらん上に、足が増えれば便利じゃろが』

『"人間の一生は短い、あの男はあんなじゃし、六、七十年我慢すれば、その六、七十年ミスティフも含めて、属性がどうであれ、もふもふしたものに埋もれて過ごせるぞ"でしたか』

『直後にコレが来て台無しになったがの。せっかく金竜がその気になりかけておったのに』

『ああ。もしかして、私が今人間じゃないぞ、と言った時の会話か』

パルティンの住処でレーノが報告をしている時、また鉱石を掘らせてもらっていた間の会話だ。珍しく白がついてくれなくて寂しく思っていたのだが、そんな会話をしておったのか。

戻って来た時、私が人間だという言葉が聞こえてきたので訂正した覚えがある。

『お主が余計なことを言わねば、手頃な金竜が手に入ったのじゃ』

『相変わらずパルティン様に対して不敬な毛玉ですね。それにしても貴方の周りって、カル殿といい……、いえなんでもありません』

レーノが嘆きのような謎の言葉を言いだしてみたり、白にひどいことを言われつつ、島に到着。パルティンが竜の姿から、小さな翼の生えた金髪金目の少女の姿になる。その腕には小柄なミスティフ。全体は茶色くて短毛、長い胸毛と手足だけ白い。ちょっと浮気して、その天鵞絨のような背を撫でてみたい。

「ほう、いいのではないか?」

パルティンが見渡していう、着陸前に上空で円を描き、すでに上から島の全体の確認は果たしている。

「環境はいいと思います」

腕に抱かれたミスティフ、ファーリアが言う。

属性のせいで普段はミスティフに思う存分触れることを避けているパルティンだが、本日は嬉しそうに腕に抱いている。ファーリアも話すたび、パルティンの顔を見上げ、お互いの親愛が見えるようだ。別れの前だからだと思うと、少し切ないな。

「ミスティフ達に危害を加える存在もおらぬようだし、ここならスーン殿に時々足を伸ばして貰えば、海は封鎖できる」

「スーン?」

「普段はサウロイェル大陸の北に住む海竜殿だ」

あれか、フソウに渡るのが大変な原因の一端を担ってるという竜か?

「風の精霊達に頼んで空も塞げばさらに良い!」

「え、ちょっと待て。どこまで要塞化するつもりだ?」

パルティンがウキウキと嬉しそうに言い募るのにツッコミを入れる。

「欲深い者達はそれでも来ようとしますわ」

「我が同胞を守るためにできることはするのじゃ!」

ミスティフのファーリアと白の意見。

「パルティン様の不安を除くには必要な措置です。大丈夫ですよ、島自体には影響なく進めてくれるはずです」

「え、私以外全員推進派!?」

……この先の会話は聞かなかったことにしよう。ついでに実際にそれが行われても全力で見ないふりをさせてもらう! 幸い、島自体には手を加えないと言っているしな! HAHAHA!!!

パルティンとレーノ、ファーリアは島のどこに住まうか見て回りに行った。ハウスには別空間で庭がつけられるそうだが、そこに住まうのは閉じ込められているようで息苦しいと言う。ならば、やはりこの島自体に近づけぬようにしよう! などとパルティンの不穏なセリフも聞こえたが、とりあえず放置して私はハウス作りだ。

レーノとパルティンがいるからには、あちらに危険はないはず。たぶん。

ここの敵は、『アリス』の島と大体一緒で50から60レベルだ。そんなところまでお揃いでなくていいのに。どの敵も一応ソロでも倒せるのだが、一種類『オカウミウシ・緑』というのがヌルヌルした【行動阻害】つきの体液を吐いてくるので、それがフルパーティーで来ると面倒だ。

『白、ついていかなくてよかったのか? 楽しそうだぞ』

『ふん。今、我はお主の召喚獣じゃ』

『ふ』

ちょっと嬉しい。肩に乗った白に頬を寄せて感触を楽しむ。

ハウスを作るのは、二重円の内側の崖の中、日本人らしく南玄関です。ギリギリ北半球な気配、まあ入り口は日が当たらなくてもいいのだが。そう思いながら、『建築玉』で玄関ではなく、まず長めの廊下を作る。『意匠玉』でお高めだが、手彫りの洞窟風にする。歩くと秘密基地ぽくていい、後で壁にそれらしく燭台もつけよう。

『お主も楽しそうじゃの?』

『うむ。秘密基地みたいでいいだろう』

クランハウスの木の中や、ここの崖の中、どちらも現実世界では叶わない造りだ。……どこかに崖の中の町があった気がするが、まあ予算的にも叶わないだろう。ついでに換気の問題やら湿気の問題やらいろいろ出てきそうだしな。

通路の先に正方形の居間、隣にダイニング、台所。反対側の隣に書庫、寝室。寝室の北側に扉をつけずに区切ったサンルーム付きの居間――北側の部屋は崖の中から外に出るように最初の廊下の長さを調整する――最初の居間の北側に寝室と結ぶ廊下、一応ゲストルーム、風呂。廊下の端は拡張するとき二階への階段をつけられるように。

つい、最初の通路は我慢できずに『意匠玉』を購入してしまったが、他の内装は全て一番安いものにした。【大工】のレベルを上げつつちまちまリフォームをして好みに仕上げる予定。

『無理に家を建てさせてしもうたかとおもったが、……楽しんでいるようでなによりじゃ』

『ん? もしかして気にしてたのか?』

『そんなことはないのじゃ!』

白が肩で暴れ出した。照れてる?

もしかしてパルティンを勧誘しようとしたのも詫びのつもりだったのだろうか。

『私は白がもふらせてくれたり、なんなら大きくなって添い寝してくれればオールオッケーだ』

『せんわ!』

内側の円の中に出る扉と別空間に出る扉を並べて、観音開きできるようにつける。実際にはどちらか片方しか開かない。どういう作りか、片方を閉めなければ、もう片方を開けることができない。

別空間な庭は、住人に言わせれば持ち主の『徳』で広さが決まるという。ゲーム的に言うと、住人の問題を解決したり、親切にしたりすると広がるそうな。街中での交流の中で親切にしてもいいし、面倒なら極端に報酬の低い、あるいは報酬のないクエストをギルドで受けられる。デフォルトは十メートル四方。

とりあえず内円の崖の中に出る扉を開けてみる。

「ああ、ホムラ。急に壁がせり出たかと思ったら、ここに家を作ったのか」

扉を開けた正面にパルティンがいた。

膝まで届く見事な金の巻き毛が夜明けの光に輝いて、一幅の絵のようだ。絵のようだが。

「もしかして、ミスティフの 塒(ねぐら) はここになりそうなのか?」

「うむ、 崖(かべ) がもう一回りあったほうが安心だし、ここには水辺もある。ファーリアも気に入ったようだ」

この島には湖が二つある、一つは内円の外、島の西よりにある大きめの湖、もう一つがここ内円の中にあるお天気が続けば干上がってしまわないか心配になる小さな湖。カルデラ湖にはなりきれなかったようだ。

私の庭になる予定だったが、どうやらミスティフの庭になるようだ。まあ、昼間は消えているはずなので問題はないが。

「我の 塒(ねぐら) から『竜鉱石』を好きなだけ持って行ってかまわんから、我の離着陸場所を設定することを所望する」

「ん? 飛んで来てここに人型で着地じゃいかんのか?」

というか来る気満々なのだな。

「着陸は良いのだが、空は風の精霊に頼んで雲と嵐の天然結界を作り出してもらう心算だ。人型で飛び上がって自分で引っかかるのは間抜けだからな。精霊が溢れる嵐の中を突っ切るのは ドラゴン(もと) の姿でないとさすがに面倒なのだ」

人型で飛ぶのはバランスがイマイチらしい。ドラゴンのまま小さくなることは可能だそうなので、後で家の近くの崖の上を平らに削って場所を作ることで合意した。ちなみに作るのはレーノである。

『転移プレート』を設置して、ファイナに戻る。そのまま神殿で、ハウスの『転移プレート』の転移登録を申請する。カジノの『転移プレート』は転移の許可枠付きなので、設置場所が他人や公共の領域でなく、本人が犯罪者でない限りそのまま通る。さすがに開通するのは二、三日後だが。

主役のミスティフが日の出と共に精霊界に消えていったので、本日の島は終了である。休憩したら、今度は別の島、最初に見つけた島に『アリス』を探しに行く予定だ。レーノにはすでに頼んである。

島に渡った後は当然宿屋などはないので、もう一度ログアウトして時間いっぱい活動できる準備をする予定だ。あの島は結構歩いたつもりだが、ダンジョンの入り口らしいものは見かけていない。

ヴェルスの時は祠のような場所だったので、ダンジョンとも限らないのだが……。とにかく現地に行って手がかりを探さなくては。明日は休みなので遠慮なく探索ができる。

それにしてもパルティンが張り切っていたのだが、次に行った時、私の島の周辺はどう変わっているのだろうか。不安だ。

などと思っていたら、お茶漬達が迷宮から戻ってきたメール&おやすみメールを送ってきた。

そしてペテロからアイテムを受け渡したいから会えるかどうかの問い合わせと、時間があるならどこかへ行こうかのお誘い。

ロリセンサーでもついてるんじゃあるまいな?