軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

118.クランハウスの場所

「うーん、ファガットの島、良かったけど高いなぁ」

「利便性を考えるとジアースかバロンだね」

お茶漬とペテロが話しているのはクランハウスの話である。

ジアース・バロンは売買や移動が長所だ。ファガットは青い海椰子の木陰の絵に描いたような南の島、と巨大な植物たちが迎える小人気分が味わえる島の二種類があった。

現在、『転移』でもってハウスが建築可能な場所を見て回ったところだ。ついでに抜かりなく『建築玉』『意匠玉』の素材の収集場所近くの転移門も開けるだけ開けて来た。

行動様式から選ぶなら、売買中心はジアース、集団戦をしたいならアイル、闘技場中心ならファガット、迷宮中心ならバロンに建てるのが便利だ。

アイルの集団戦は学校に所属しても国に仕えても、ミニゲームよろしく定期的に魔物の大討伐があるらしい。帝国とのこともあるし、首都の魔法都市は優雅に見えるがなかなか安定しない国の様子。

「海がある方がいいな!」

「でも川はないでしよ?」

「ぬう」

「でもわたちもでっかい木の島がいいでし」

菊姫はレオの提案を否定しておきながらのファガット押し。

菊姫とお茶漬は会うたびに服装が違う。【装備】ではなく【お洒落着】だ。菊姫は青と白のセーラー服っぽい上下、ミニスカートに足首のところから広がった白いハーフブーツ。お茶漬は本日は赤い詰襟にマントの王子様風、笑う。

二人とも装備変更スキルを所持していて、戦闘になったら直ぐ着替えられる。住人の冒険者は自分の武器を街中でも持ち歩いているタイプが多いが、 異邦人(プレイヤー) は二人のようにお洒落着だったり、私のように嵩張るのが邪魔で武器だけしまっているタイプがいたりと様々だ。

ただ、攻略組と呼ばれる人々は武器防具をきっちり街中でも着込んでいる人が多い。そもそも【装備チェンジ】にスキルポイントを使うくらいなら戦闘に有利なスキルを取得するのだろうし、わざわざ大盾を背負ったりしているということは、あれはあれで「武器防具を見せる」ファッションなのだろう。

実際街で見かける戦士や騎士、カッコイイしな。幼女は職に関わらず、わざわざ持っている武器まで替えるお洒落装備のようだが。

「オレ、ちょっと闘技場に興味もある」

「私も大きな植物の島かな」

よそ事を考えつつも、私もシンの後に希望を述べる。あの島はインパクトがあった。シンは他のゲームでも結構対人戦をこなしていたので闘技場が気になるらしい。

「じゃあ小人ごっこできる島でいいのかな?」

「そういうペテロはどこが良かったんだ?」

自分の意見を言わず、まとめようとしたペテロに聞く。

「私は住むとこあんまり興味ないかな、部屋の中に凝りたいくらい?」

「インドア派だった」

「問題はお金、土地だけで六千万シルよ?」

「一人一千万でし」

ファストとは違いレンタルはなく、買取だ。もっとも一定期間クランメンバーが誰も出入りしない状態が続くと、レンタル料不払いと同じく所有権が切れるそうだが。はっきり言うなら現実時間で一年間、誰もログインしないと所有権をなくすようだ。

「誰かに買われないうちに貯めないと。僕もう自分の分出せるよ」

「ぶあ! すげぇ! オレ金ねぇ!!!!」

「右に同じ!!!!」

「金がないのに高いところ選んだの? 私も今出せるかな」

「わたちは少し足りないでし。がんばるでし〜」

「私も出せるな」

しかも今なら即金で買える金額を出せます。

シンとレオはクラン設立前後の借金を先ほど私とお茶漬に返したばかりだ。私はレオとシンには魚+αで支払ってもらった。今日は『おちょぼカレイ』の唐揚げにしよう。

「レオはともかくなんでシンはお金ないんでし?」

あちこちに釣りや採取・採掘に出かけ、死に戻りをしょっちゅうしているレオは兎も角、何故シンは金がないのか、それは私も不思議。だがしかし他のゲームでもこの二人金持ってなかったんだよな、二人とも欲しいものがあるときは結構な勢いで真面目に目標額を達成していたので大丈夫だと思うが。

「強化ギャンブルがやめらんねぇ」

「おやめなさい」

「やめろ」

「やめるでし」

「わはははは! 楽しいよなあれ!」

「勝負武器だけにしてね?」

次々にツッコミを入れる。

「まあ、早くしないと 埋まっ(買われ) ちゃうかもだし頑張って貯めて?」

「了解!」

「貯まった時点でまた見に来て、目当ての種類の中で島々を案内してもらおう。川がある島あるかもよ?」

「おう!!がんばるっ!!!」

ペテロが言外に川と海釣りを餌に、早く貯めるようレオにハッパをかけている。

お目当ての島々は、植物や岩がやたらでかく、小人気分が味わえる。外海ならば嵐の日に波に洗われそうな小さな島だが、幸いファガットとジアースの間の一年を通じて波の少ない穏やかな海に浮かんでいる。

「ツリーハウスとか作りたい気がムラムラすんぜ!!」

「ああ、わかる」

「おお!! 作りてぇ」

「木のウロの中とかもロマンだね」

レオの言葉に同意すると、シンとペテロも乗ってきた。

「星が見えるように空が見えるところに作って」

「お茶漬、アイルの『星降る丘』名前負けしないくらい星綺麗だったぞ」

お茶漬は現実世界でも屋根裏・天窓・満天の星のフレーズに弱い。

「かわいいやつお願いするでし。でも誰が作るんでしかそれ?」

「設計士と大工なんだっけ?」

シンが聞いてくる。

「うむ、だがしかし、普通の家じゃないからオーダー料高くつきそうだ」

「【大工】取得目指そうかな〜」

私が高いと言ったらレオが自力で作ることを匂わせる発言。

「レオはどこへ向かうつもりでしか?」

「取得スキルが迷走してそう」

「既にレオのスキルは手遅れな気がします」

「建つのに何年かかるんだ」

そして次々に入るツッコミ。

「だが自力でツリーハウス作るのは確かに楽しそうだ」

うっかりレオと同じくちょっと【大工】が欲しい。

「島が小さいとはいえ、ハウスは幾つか作れそうだし、普通に作ってから景観壊さない範囲で自力で作ったら?」

「おう!」

ペテロの提案に勢いよく返事をするレオ。彼に確実に迷走スキルがまた一つ増えるようだ。

「とりあえず資金集めが先決ね。迷宮にでもこもる?」

「三匹のオークでもやる? 生産職でも店舗とは別なところにハウス欲しいらしくて今なら結構クエ用の素材高いよ」

「へぇ〜」

「委託で売っちゃダメダメだけど、買取屋に売っても層の転移代考えてもかなり黒字だね」

「道中の素材ドロップもまだ高いしね。掲示板に攻略書かれた途端、あっという間に増えるから今のうち」

「ああ、今もう5層すごいね」

この辺の話はペテロとお茶漬頼り、他の三人も私と同じく二人の話を聞いて合いの手を入れる程度である。……妖精がいるところまで行ければ、道中の光闇の『属性石』のドロップ目当てで、ボスやらんでクルクルするのがオススメなのだが。

「ううっ、ゾンビ忘れてたでし」

やってきました迷宮。そしてオークのお出迎えを経て、9層。

臭いと飛び散る何かが!

「ちょっとホムラさん、回復役替わって?」

「イイエ、修行の邪魔は致しません」

ただ今現在、【格闘】スキルを上げたいというお茶漬と回復役を替わっている。黒づくめの普通装備+『闇の指輪』で下げておいての、【神聖魔法】の効果が上がる『白の杖』装備だ。

二キャラ目を作れるゲームならば、レベル差が出るととっとと二キャラ目を作って強さを合わせるのだが、生憎この世界は今のところ製作可能なのは一キャラのみだ。やっぱり、同じような強さで攻略したほうがお互い楽しい。

回復下手くそなんで、魔法よりヘイトが低い薬の【投擲】を織り交ぜている。

お茶漬が【格闘】を取ったのに 野良(他のパーティー) でも回復役で上げる暇がないとぼやいたのでアタッカーと回復役を交代した。能力半減の『闇の指輪』を装備していても、スキルレベルのおかげで私のほうがダメージは出せるのだが、うちのパーティーは攻撃特化に傾いているので一人なら攻撃力が低くなっても問題ない。さすがにボスはダメだが。

「屁っ放り腰だなおい!」

魔拳士のシンがお茶漬に先輩風を吹かせている。

お茶漬は拳士になったのは初期の一度だけで、聖法使いに傾いたステータスをしている上に、スキルが上がっていないためなかなかダメージが出せない。

パーティーは攻撃力が高い代わりにHPが全員低く防御力も低い、死なせないように、そして敵のタゲを取らないように回復しきるのはなかなか難しい、私は私で四苦八苦している。

「むしろ私の修行だなこれ。お茶漬はどうやってヘイト取らないで魔法だけで回復してるんだ?」

「見本みせるから替わって?」

「フッ」

ゾンビは近接にはちょっと強さ的な意味でなくキツイ敵だ、何せ殴る度、色々なものが飛び散る。菊姫は盾を顔の前から離さず、シンでさえ距離をとって魔法を使い出した始末。一回目の私と同じく【火】を使ってゾンビの焼ける臭いを洞窟内に充満させて不評を買っていたが。

「ゾンビだけ交代するか」

「そうしてそうして」

ゾンビに光レベル30で覚えた『まどろみ』をかけてもしょうがないので、前回と同じくレベル20の『ライトイーグル』で【重ねがけ】を使って攻撃。杖はユリウス少年が作った二本。

「能力半減してるとは思えないね」

「まあ、【重ねがけ】やら杖二本使用のおかげで、普通の魔法使い並みには攻撃力は確保できてるのかな?」

「あなた、【魔法 剣士(・・) 】でしょう? 忘れないで」

ペテロが話しかけてきたのに答えれば、お茶漬からツッコミが入る、お茶漬はメインな職業の役割に戻ることができ余裕な様子。【格闘】育たないぞ!

「ホムラ、闘技大会出るんだろ?」

「ああ。シンも出るのか?」

「一応出るぜ〜」

「オレもオレも!!!」

レオも出るらしい。レオのオレオレ詐欺ならぬ、オレオレヤル気。

「あ、そうだ。ホムラ【幻術】上げて?」

思い出したようにペテロが言う。

「【幻術】?」

「そそ、ホムラに【幻術】で覚える『認識阻害』をアイテムにつけてもらう約束」

疑問系で聞いてきたお茶漬にペテロが説明する。

「おお、謎の忍者ごっこか? いいなぁ」

「ペテロも謎の忍者で闘技大会参戦するでしか?」

「アイテム間に合ったらね。間に合わなければ普通にでるよ」

「おっと、期日があったのか。頑張らねば」

「間に合ったらでいいよ。正体隠すのホムラと違って単なる趣味だから」

「まあ私も半分趣味で隠しているようなもんだが」

「隠しておいたほうが平和でいいよ」

前のゲームで、プレイヤーに追っかけまわされた被害者のお茶漬がシミジミという。

「オレも『認識阻害』頭巾欲しい!」

「頭巾なのかよ」

便乗してきたレオにすかさずシンが突っ込む。

頭巾ってなんだ頭巾って。

「忍者といえばイカ頭巾だろ!」

「イカでしか??」

「宗十郎頭巾のことか」

イカ頭巾でわかってしまう自分もどうだろう。

「え、レオ、まだ忍者目指してたの!?」

洞窟内に響くお茶漬の疑問。