軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

648話 隠された狩場情報

下台地の拠点周辺にて。

幻獣の特性を調べるため、森の中で見つけた魔物を相手に実験を繰り返していると、非常に興味のそそられる結果が飛び込んでくる。

まずエニーが敵と認識し、その対象に敵意を向けるか。

もしくはエニーや幻獣が敵意を向けられ、攻撃と判断され兼ねない行動を仕掛けられるか。

基本的にはこの2パターンに対して幻獣は反応を示し、相手がAランク魔物であろうと容赦なく食い散らかしていった。

武器と盾。

幻獣は両方の性能を兼ね備えているということ。

この時点で十分強力だが、さらに俺を驚かせたのが今、目の前で繰り広げられている"自動反応"だ。

――【多重発動】――

【火魔法】――『火球』――【土魔法】――『岩弾』

――発動。

エニーが"そうしたい"と思考を切り替えるだけで、踏み込んできた敵や俺が死角から飛ばした飛来物、魔法にも反応して幻獣が次々と迎撃していく。

その速度はゼオも躱し切れないほど速く、また半透明という特性を活かしてエニーを含む障害物をすり抜けながら移動するので、背後から狙えば当たるというほど簡単な話ではなかった。

明らかに視覚とは別の何かで宿主が昏睡していようと全方位を護り、攻撃するのだから本当に優秀だ。

ただ欠点がまったくないわけではなく、幻獣の行動範囲は精々エニーを中心に半径2mまで届かない程度。

加えて単体攻撃しかできず、直接的な攻撃ではないデバフ付与は幻獣もスルーしてエニーに入ってしまうので、本気で攻略しようと思えばできなくはないだろうが……

(今の俺じゃ避けて掻い潜るのはキツイかな……)

それでもこれほどの能力となると、まだ他にも最低2体はいるっぽいし、抱えるリスクが個体によって異なるのなら、その内容次第では俺も欲しいと思ってしまう。

「その自動迎撃にしている時は駄目っぽいね」

「うん、全部ユッキー任せにしちゃやっぱり危ない。でも私が意識している時は、攻撃しちゃ駄目って言ったらちゃんと言うこと聞いてくれたよ!」

エニーがいけそうというので、近くにいる魔物だけでなく、ゼオやカルラにも軽く攻撃を加えてもらっていた。

自動反応中でなければちゃんと攻撃対象は識別できているようなので、これなら模擬戦や《夢幻の穴》への転移移動も滞りなく行えるだろう。

そう考えると幻獣は気性の荒いペットのような存在だな。

「でもロキだけはなんだろうね? 今もユッキーがちょっと嫌がってる……というよりは怖がってるっぽいんだけど」

「しょうがないでしょ。俺は最悪の状況に備えて、その幻獣をどうにかする可能性や対処法まで考えちゃってるから。もしそうなったら、今は対処できるの俺くらいだろうしさ」

「あーそっか……」

本当に暴走でもされたら、幻獣をどうにかしないと仲間やその時の場所によってはベザートなどの住民にも危害が及ぶわけで。

共に生きることを認めた以上、俺だって最悪の最悪はエニーを殺してでも強引に止める覚悟を抱えているのだから、そんな考えを持つ俺が幻獣の警戒対象から外れないのも当然だろう。

とりあえず、近寄ってもいきなり噛みついてこなければそれでいい。

「じゃあ大丈夫そうだし、あとは任せるね。自動だと魔力を食うとか、何か新しい発見があったらまた教えてよ」

そう告げて、再び拠点へ。

さすがにまだ寝てないよなぁと思いながら図書館に向かうと、リコさんはお決まりの付与付き盾を踏んづけたハチマキ装備で夜の部の仕事を再開していた。

そして俺が部屋に入ると、珍しく反応して顔を上げる。

「あら、検証は終わったんですか?」

「うん、とりあえず皆と過ごせそうなことは分かったよ。宿主が相当なリスクを抱えるだけあって、かなり性能的には凄いね」

「ふふっ、ならしっかり記録に残さないといけませんね!」

なんだかんだと、結果を楽しみにしていたリコさんだ。

この世界に存在しているという程度の情報しか出てこない幻獣の特性について語ると、うんうん頷きながら物凄い勢いで木板に俺の言葉を記していく。

どうやらこのあと、情報を整理して羊皮紙に清書するらしいが……

俺がここに来た理由はこれだけじゃないんだ。

出来上がった木板を並べて喜んでいるリコさんの横に、次々と戦利品の一部を放出していく。

「これ、そこまで多くはないけど見覚えのない本も交じっていたと思うから、とりあえず全部渡しておくね」

「ふぇ……これも、アルバートの……?」

「そうそう、兵士が大事そうに抱えていたお宝っぽいやつ。あとは――、これもだね」

「ッ!?」

「俺も楽しみにしてたからさ。まだ眠くないなら一緒に整理しちゃおうよ」

「も、もちろんです!!」

追加で渡したのは、薄い金属の箱に入れられた源書の完品と叡智の切れ端だ。

ガルム聖王騎士国からも結構な量をコピーさせてもらったが、こちらは完品だけでなく、くっつかないように分けて保管された切れ端もかなり多い。

となると、弥が上にも期待は高まるわけで。

二人して慎重に分別していくと、歯抜けになっていた所に新たなページが次々と加わっていく。

「あ、52番できた!」

「48番と、それに57番もです! これでやっと40番台が全部揃いましたよ!」

もう時間帯は深夜だというのに、はしゃぐ二人の声が石造りの簡素な部屋に響き渡る。

そして――。

「おお~マリーも不要と判断した残り物ではあるんだろうけど、それでも追加で8枚完品が出来上がったのはかなり大きいね」

「ええ、それに初めての60番台も……!」

ズラリと並べられた大判の源書を眺め、二人して感慨に耽る。

古い歴史があり、書物に強い国とあってガルム聖王騎士国も30番台までは一通り揃っており、40番台と50番台もそれなりに完品を抱えていた。

そこに今回の戦利品が加わり、これで60番未満は残すところ55番と57番の2ページだけ。

ようやく国という規模でも滅多に抱えていない上位のページに手が掛かってきたことで、俺とリコさんはニヤニヤが止まらない。

「では早速……」

「ええ、見てみましょう!」

二人して追加された源書に目を通していくと、最初のうちはまあまあ予想していた通りの内容だ。

主に俺がステータス画面で見ている各スキルの詳細、各職業の内容や魔物情報などがびっしりと記されており、番号が大きくなるほどより上位の内容が明かされていく。

そんな流れは50番台でも変わらず、俺がまだ見ぬSランクの魔物情報を眺めていると、別の源書を見ていたリコさんが小さく声をあげた。

「あっ、59番で《夢幻の穴》についても書かれていますね……」

「え? あーほんとだ……砂に覆われた大地、ヘルデザートに隠された狩場への入り口……それらは移ろい、侵入者を拒み続けるが、辿り着いた者が強運であるほど大いなる富と絶望を齎す、か……」

情報自体はこれだけで、他と違い魔物構成も記されておらず酷く曖昧だ。

俺だってあれだけ通い詰めても半年くらいは砂漠を彷徨い続けたわけだし、これを見たからただちに見つけられるというものではないだろう。

だが、59番の切れ端をこれだけアルバートの王家が所持していたということは、まずマリーもこの情報は既に把握していているということ。

となると、『城内』だけは未開通にしておいても、いずれマリーが見つけ出す可能性もあるわけで、伏せておいてほしい場所まで載ってしまっていることに思わず眉を顰めてしまうが……

(……まあ、今更だな)

既に素材は溢れてジェネ達に食わせるほど有り余っているし、いずれマリーの動向に関係なく、ベザートの戦力が追いついてきたら『城内』まで転移陣で繋げ、Sランク狩場を解放する可能性だって考えているのだ。

辿りつけなきゃ暫く素材で荒稼ぎさせてもらうし、辿り着いたらそれはそれでさらなるベザートの戦力底上げのために狩場を活用すればいいだけの話。

《夢幻の穴》について触れられていようともはや大した問題ではなく、それよりこの手の"隠しネタ"が狩場にまで及び始めたという事実に胸がざわめく。

これはもしかしたら……

かつて耳にした言葉を思わず探すと――、やはりだ。

同じページにそれらしい情報を見つける。

『Sランク狩場《ハマンの氷園》:北の海、全てが氷に覆われた極寒の地に隠された狩場が存在する。求めるならば極氷点を目指せ。死をも恐れぬ卓越した魔導士のみが、大いなる経験と共に希少な宝を手にするだろう』

フレイビル王国ロズベリアのギルマスであるオムリさんが、実在するかも疑わしい文献情報として、北の海にもSランク狩場があるかもしれないと教えてくれていた。

そして、その情報は事実だったと。

確信に変わったと同時になんとも言えない高揚感に包まれ、心が躍る。

極氷点とは……

魔導士のみってなんだ?

希少な宝ってなんなんだよ。

《夢幻の穴》と同様に普通の狩場ではないらしく、情報はこれくらしか載っていないが、今すぐにでも探検しに向かってみたい。

というか、もう行ってもいいんじゃないのか?

国のテコ入れもある程度は形にできたし、これから向かえば朝方には――

激痛に苛まれながらそんな妄想をしていたら、横にいたリコさんに激しく肩を突かれる。

「ちょっと、ロキさんってば!」

ああ、いけない。

どうやら久しぶりに別世界へトリップしていたらしい。