作品タイトル不明
627話 軍勢強化案
「我が主、申し訳ありません。私は職業には就けませんでした」
ジェネからそんな報告を受け、じゃあやっぱり厳しいかなと思いつつ軽く試したパワレベも不発に終わった。
つまり、いくら人に寄ったと言ってもジェネの存在は魔物であり、魔物には職業やスキルポイントの概念が存在していないということ。
この事実を俺と同様、内心魔人への繋がりを期待して起きていたゼオにも報告すると、がっくり肩を落としていたが、しかし……
「ほう、装備はいけるのか」
「はい、ゼオ殿。明らかに魔力量が上昇したことは分かりましたので」
新たな発見。
ダメ元で手持ちのストアリングを装備させてみたら、ジェネがこんなことを言うものだから強い興味が湧いてしまう。
「人と同じ、2個の装飾効果が乗るということは……ジェネ、ちょっとこれ振ってみてよ」
渡したのは先ほど回収物の中から確保していた『星布の槌』。
特殊付与武器の1つで強くはないのだが、素早く振るほどその軌跡に攻撃性を備えた輝く残置型の魔力痕を残すという、視認しやすい能力が備わっていた。
魔物が武器の付与効果も引き出せるのか……
今まで考えもしなかった選択肢の結果を見守っていると、ジェネが軽く振ったその後を煌めく星がぱらぱらと舞う。
「おお、これならほぼ間違いなく防具の付与効果も引き出せそうだね」
「であろうな。あとはこの現象が知性体となり、人に寄ったジェネだけに起きているモノなのか、それともウィグも同様の効果を得られるのか」
自然と二人の目が向くと、興味があったのだろう。
食事の手を止めジェネの様子を大人しく見ていたウィグが、自分も試したいと器用に尻尾で星布の槌を掴む。
そして勢い良く振り回すと、ジェネよりも大量の星が暗がりに舞った。
つまりやろうと思えば、ジェネが加えた配下の魔物にも付与効果を齎すことが可能ということ。
「なるほどね……まあ奪われるリスクを考えたら付与はかなり慎重に判断した方がいいだろうけど、ジェネやウィグみたいな特殊個体は今後の成長次第で豪快に強化しちゃっても良さそうだね」
「むっ、主よ。ワシも装備を貰えるのか?」
「うん。強くなればなるほど、良い装備をね。だからジェネもウィグも、しっかり食べて強くなるんだよ。特にジェネは、早急にSランクの魔物を扱えるようになってほしいからさ」
「お任せを」
「がはは! 魔石も食していいなら、もっと早くに強くなれるのだがな!」
「あーそっか……」
ウィグの何気ない一言。
だが成長の速度を求め始めた今なら、確かにと思わず納得してしまう。
「じゃあゼオ。今資材倉庫にある分と、今後エニー達と狩ったやつは全部餌に回しちゃっていいよ。魔石は俺が狩る分だけで調整してみるからさ」
「承知した。あとはロッジにジェネとウィグの防具造りも依頼しておこう」
「うん、お願いね。溜まってたオリハルコンはこっちで預かって、ひとまず全員分の【装飾作成】と【付与】を終わらせちゃうから」
本当ならそろそろ『人の骨』でグリムリーパーを湧かせたり、いることは分かっているAランク狩場 《シトラスの森》で裏ボス探しをしてみたかったが、狙い通りに湧いてしまうと今はだいぶマズいからな……
念のためにおかわり用の骨を溜める穴をもう1つ用意したら再びベザートへ戻り、リルと共に朝まで異変が起きなかったことを確認してからアルバート王国北西部、セルリック侯爵領の領都『ザイロ』に飛んだ。