軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

531話 女神会議②

場所は拠点の上台地。

だいたい10日に1度くらいという報告会のため、ベザートの監視を務めるリル以外の5人がいつもの食卓に顔を出す。

今回はどこの国の、どんなご飯だろうか。

それぞれが期待に胸を膨らますも。

「「「……」」」

いつもの石机には料理が並んでおらず、調達してきてくれるロキの姿も見当たらない。

そんな中で、一人席についていたアリシアが静かに口を開く。

「……今、【神通】で状況を確認しました。例の新しい狩場が忙しいようで、できればまだ離れたくないそうです」

「え? 今回もですか……?」

「ええ、ロキ君の方は緊急の用件もないため、こちらに重大な報告がなければ、テリア公国のマッピングが終わったタイミングでまとめて伝えると。次回までには間違いなく終わるようですね」

そう言われ、フェリンとリステは目を見合わせたあと、様子を窺うように周囲へ視線を向ける。

誰か、呼び戻せるほどのネタはないのか。

目がそう訴えかけるが、誰も口を開くことはない。

「一応、皆が美味しいと言っていた孔雀肉は、下の食糧庫にたくさん置いてくれているそうですが……」

そうは伝えるも、一番喜びそうなフェリンの反応が薄いことで、アリシアの声も尻すぼみになる。

「そっかぁ……なんか、寂しいね……」

「しょうがないでしょう。兼ねてより探していたSランク狩場をようやく見つけたのですから。それにここだけでなく下台地も、それに地下の秘密部屋にだってほとんど帰ってきていません」

「え? そうなの? 下は魔物の死体で物凄いことになってるけど」

「少しでも顔を見たくて、夜間や早朝は特にロキ君がいないか反応を探っていましたが……あれはただ置きに来ているだけ、またすぐに狩場へ戻っているのだろうと思われます」

そう言って、沈痛な面持ちで悲しみに耐えるリステ。

そのストーカーチックな行動に、若干この場の空気がおかしなことになるが。

しかし、ここでロキに理解を示したのは意外な人物だった。

「たぶん、今が一番楽しい時。なら、そのうち落ち着く」

ロキからの挑戦状とも取れる新しい趣味を見つけ、拠点にいる時間のほとんどを魔法陣の作成に費やしているリアが、頬や衣類に跳ねたインクをつけたままそう伝える。

今までだって顔を見せない期間が続くことは何度もあったのだ。

ただ今回はだいぶ長いという、それだけの話。

リアはそう思って皆に伝えるも、フィーリルだけは至極当たり前のことでありながら、女神では気付きにくい点を口にした。

「はぁ~また心配を掛けて……ロキ君はちゃんと寝てるんですかねぇ~」

「え?」

「ん?」

「?」

「人は普通、眠らないと生きていけないんですよ~私達と違って」

「ああ、そうでした……私としたことが、まずはそのことを心配すべきだというのに……」

「確かに、リステの言っている通りであれば、ロキ君がいつどこで寝ているのかまったく分かりませんね。あれだけのペースで魔物の死体が増え続けているということは、実際に動き続けているのでしょうし」

「最初の頃みたいに、どこかの宿で寝てる?」

「この短期間でまた一国の地図が完成するというのですから、そんな時間もないように思えますが……」

「ん~? ってことは、もしかして私達に近づいたってこと?」

「「「え?」」」

一瞬、フェリンの言った言葉の意味が分からず、4人の女神は固まったようにフェリンを見つめるのみだったが――

「だってロキ君って、フェルザ様直轄の『神使』でしょ? 悪を滅し、世界を導く存在って、まさにその通りだと思うし」

――続くこの言葉に、リステがハッとした表情を浮かべる。

「ま、まさか、神格化し始めていると、そういうことですか?」

「分かんないけど、そういうことなんじゃないの? ロキ君の言っていた隠れているスキルっていうのも、何か繋がりがあるのかもしれないし」

「うーん、何を以て下級神と呼べるかは分かりませんけど、リガルがいたら二つ返事で納得してしまいそうなほど強くはなりましたもんね」

「普通に考えれば絶対無いと言い切れる話でも、ロキ君に限っては既に前例のない変異を遂げていますしねぇ~」

思いがけないところから始まった、ロキの神格化疑惑。

いつも通り、当初の問題はどこかへ飛んでいき、あーでもないこーでもないと話が盛り上がる中、静かにそのやり取りを眺めていたリアが言いかけた言葉をそっと飲み込む。

先ほどはこれ以上ないほど気持ちの沈んでいた二人が、今こうして元気を取り戻し、より強い繋がりができたかもしれないと嬉し気に話しているのだ。

ならばわざわざ水を差す必要はない。

それでも――

「寝ないのは、魔物も同じだと思うんだけど」

自ら確かめるようにボソリと呟きながら、一人作業へと戻っていった。