作品タイトル不明
527話 楽しい楽しい狩りの時間
『【帯電】Lv3を取得しました』
視界の片隅にこのアナウンスが流れ、とりあえず目標としていたスキルレベルまで到達したことを確認してから、さらに上へと続く階段に腰掛ける。
どれどれ、変化は起きているかな。
【帯電】Lv3 雷を身体に留め、一時的に帯びることができる 可能な総量はスキルレベルによる ※自ら生み出した雷は不可 常時発動型 魔力消費0
帯電なのに雷に限定されているところがなんともファンタジーっぽいけど……うーん。
やはり、レベル1から順に確認しても、詳細説明の内容は変わらずか。
となると、他スキルでたまに見られるレベル6。
次はここで詳細説明に変化が起きるかどうかだな。
自分自身に雷が撃てれば大きく世界は広がりそうだが、元々自分で撃った魔法は一度手元から離れないと効果がないことは分かっていたんだ。
そこまで求めてはあまりに贅沢、そう思って納得するしかないだろう。
なんせこのスキル、【発火】と違ってパッシブ型の時点で相当優秀だろうしなぁ。
先ほど試したように、キャパを超えるほどの【雷魔法】を食らえばなんの意味もなくなるが、軽微であれば蓄え、こうして身体を伝って武器にまで纏わせることができるのだ。
目の前にはバリバリと音を鳴らし、放電したように迸る邪魅の乱槍。
眺めていると次第に収まっていき、時間にすればだいたい15秒ほどで効果が消えた。
「受ける魔法の威力が同じなら、効果時間はレベルが上がっても変わらず。でも【帯電】レベル2で、金色羊の【雷魔法】レベル4は受け止められるくらいか……」
このことから、ショボい【雷魔法】ならよほど連発でもされない限りは無効化し、逆に直接的な攻防にそのエネルギーを転用できることになる。
となれば、放出なんてできなくていいし、できたところでするつもりもない。
強者が放てば貫通してくるだろうけど、それだってまだまだスキルに伸びしろがあるわけだし、撃たれた威力が上がれば効果時間が伸びる可能性もある。
そう考えるとかなり夢があり、対人向けの面白みがあるスキルと言ってもいいだろう。
問題は魔物図鑑でも見たことがない、この名前も分からない金色羊しか今のところ所持しておらず、そのスキルレベルも『1』ってところだが……
まぁ【転換】でも技能の種でも、強引に引き上げる方法は残されているのだから、いざとなればどうとでもなるか。
さて――、それじゃあ検証も終わりだ。
【帯電】の効果ももう切れたし、これ以上焦らしプレイをしたら身体に悪い。
そう思って、中層となるこのフロアの魔物情報を纏めてから 本(・) 命(・) のフロアへと向かった。
・城内部(中層)
オーランベアー:【突進】Lv5 【噛みつき】Lv4 【爪術】Lv5
フンババ:【突進】Lv5 【狂乱】Lv5 【旋風】Lv3
クァール:【闇魔法】Lv4 【闇属性耐性】Lv3 【噛みつき】Lv5
金色の羊:【雷魔法】Lv4 【帯電】Lv1 【突進】Lv4
キマイラ:【飛行】Lv1 【爪術】Lv5 【毒霧】Lv3 【火炎息】Lv3
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
高揚感と期待。
階段を一歩一歩上るごとに、胸の高鳴りは増していく。
この世界に来て、今までにも度々このような気持ちになることはあったが、ここへ到達するまでに費やした労力と時間から、今は張り裂けそうなくらいにその感情が膨れ上がっていた。
あと少しで、姿が見える。
あと少しで、スキルが覗ける。
あと少しで――。
「ふふ、ふふふふっ……」
上っている最中から見え始めた巨躯の魔物が静かにこちらを見つめ、別の魔物がすぐに俺を敵と認識したのか、物凄い勢いで走り寄ってくる。
書物から名前くらいは連想できる魔物が2体。
まったく知らない魔物が3体か。
スキルは――、
「あはっ、あはははははっ!!」
寄ってきたのは、薄く青みがかった綺麗な狼だった。
跳ねたと同時に空中で大口を開け、キラキラと光り輝く白色の息を撒き散らす。
今まで食らってきたモノとは違う、もっと細かい粒子のような氷晶。
――【発火】――
それが何かをすぐに理解し、火を纏いながら宙へ飛び掛かる。
想定したよりもだいぶ素早いが、だからと言ってこの程度を捕まえられないことはない。
「グガッ……!」
そのままお構いなしに地面へ強く叩きつけると、早速視界の片隅でアナウンスが流れ始める。
『【凍結息】Lv1を取得しました』
が、今はそれどこじゃないな。
すぐ近くには、俺と同じように身体を燃やした、真っ赤な竜が迫ってきていた。
コイツも情報にない魔物。
だが。
「邪魔!」
5メートル近くはありそうなソイツを思い切り蹴飛ばし、続く魔物をはっきりと視界に捉える。
今興味があるのは、その後ろからこちらに駆けていた二足歩行の巨大な牛。
「グゴォアアアアアアアアッッ!!」
これは書物で見た魔物――ミノタウロスのはずだ。
いやいや、しかし、こいつが所持するスキル。
どこかで身に覚えがあると思っていたが……そうか。
拠点の倉庫に、このスキルが【付与】されたアクセを見かけたんだったな。
いまいち効果が分からないままになっていたけど。
「フン!」
放たれた【咆哮】を強引に解きながら太い首を斬り飛ばすと、視界の片隅でアナウンスが流れ始めた。
『【底力】Lv1を取得しました』
これで上手くいけば、詳細説明からもう少し情報が得られるようになる。
まぁ、さっきから上空で何かやっている派手な鳥と、こちらを見つめたままゆっくりと移動している、一番の巨体を片付けてからだが。
スキル名から連想できる効果が合っているのか。
確かめるためにスタスタ近寄っていくと、
ドンッ!
20メートルくらいはありそうな目の前の巨竜――アースドラゴンは、その巨大な足で強く足踏みをする。
と、同時にブレる視界。
やはりか。
思わず膝を突いてしまうほどの強い揺れは、紛れもなく 地(・) 震(・) だ。
ふふ、そうかそうか。
Sランク魔物ともなれば、こうして広域の大地まで揺らしてくるのだから面白い。
「あはは! 飛んじゃったら意味ないけどねぇ!」
「グガァアアアアアアアッッ!」
勢いをそのままに、邪魅の乱槍を首に深く突き刺すも、この程度では仕留めきれず。
しょうがなく特大剣を取り出し、強引に太い首をぶった斬ることで、ようやく目の前の巨躯は崩れるように倒れていった。
『レベルが63に上昇しました』
『【烈震】Lv1を取得しました』
『【烈震】Lv2を取得しました』
さて、これで新種は残すところ一体。
そのまま宙を舞い、色彩豊かな、しかしなんとも不気味な文様の翼を羽ばたかせる、孔雀のような魔物の前に躍り出る。
敢えて最後に回したこの魔物。
効果の蓄積によって何かしらの症状が出るかと少し警戒していたわけだが、今のところは身体が不調になったわけでも、動かしづらいと感じたわけでもない。
直接的な攻撃に出ることなく、滞空しながらまだ俺に何かしらのデバフを与えようとしているんだろうが……
「全部耐性あるから、そう簡単に【呪術魔法】は効かないよ」
それでも、ここに用があるのは俺だけじゃない。
本格的に影響を確かめるなら、もっと時間が必要か。
そんなことを考えつつ手を伸ばし、目の前の3メートル近くはある孔雀の細い首を毟った。