軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

456話 尋問と告発

全部で100ある地下牢獄。

そのうちの『71番』に、男の絶叫が木霊する。

「ひぎぁあああああああ!」

「はい、このようにあなたが誤魔化そうとすると、あなた方のリーダーがその責任を負うことになります」

そう言って正座させた男――サバンの太ももからナイフを引き抜く。

一時的に血が噴出するも、自動ヒーリングを施しているのですぐに傷は塞がっていった。

『カルージュ』の兵を尋問とした時と似たようなものだ。

強制奴隷を施した真実しか語れない一人と、何もしていない一人。

ただ今回は三人いたので、痛みを与えるのはこの場の責任者に任せることにした。

「て、てめぇこんなことして……ここはレサ一家の拠点だぞ!? すぐに応援が来るっていうのに、何考えてんだよ!?」

「来ませんよ。そのために入り口を塞いだんですし、逃走防止のためなのか、他に出入り口もないようですしね。なのでわざとらしく騒いだって意味ないですよ?」

「わ、わざとじゃ……」

「あぁ、あと勝手に聞かれてもいないことをしゃべった罰です」

ザクッ。

「んがぁあああああ! あ、がっ……もう、勘弁してくれ! 勘弁してくれぇ……ッ!」

「まだ始まってもいないのに、何言ってるんですか?」

「そ、そんな……なんで、こんなこと……」

痛みを与える役にはそれだけで十分。

話を聞く価値もないし、放っておくに限る。

「さて、改めてお聞きします。人攫いは組織内で常習化してるんですね?」

「あ、あぁしてる! 俺達だけじゃねぇ! なのになんで俺達だけこんなこと!!」

ザクッ――、プジュリリィ……!

「いでィィぇああああアアアアアッッ!! うぐっ……もう、無理……、本当に、もう、無理だっ、でぇ……ッ!」

「ひい……ッ!?」

「コーラスさん、それはなぜですか?」

奴隷化した、青白い顔の男に問いかける。

「仕組みが、変わった、から」

「具体的には?」

「ノルマと、査定」

「ん? んー……レイジルさん、仕組みが変わる前はどうだったんです?」

「はっ……はっ……ま、前は一人奴隷にしたらいくらって感じで、なりそうな連中を探してきてここで金に換えていた! 東区は貧しい連中も多くて、ばかすか産むだけ産んで育てられないガキを買ったり、稼ぎ手が消えちまった家を見つけて何人か奴隷を勧めたり……あとは衛兵も東区はあんま入りたがらないから、悪さしてトンズラこいた連中をとっ捕まえて奴隷に落としたりもしていた! あ、あと、方々から恨み買って、奴隷落としの希望が入ったやつを金額次第で落としたり――……」

ふむ。

決して良いことだとは思わないけど、オムリさんの言っていた『必要悪』という言葉が少しは理解できてしまう内容だな。

しかし、どうも俺が思い描いていた奴隷商館とはやり方が違う。

「借金苦とか表立った軽犯罪者とか、そんな相手とは違うんですね」

「そ、その手のデカい山は幹部連中がやっていることだ。俺ら末端は足を動かしながら、くたばりそうなやつらがそのままくたばっちまう前に奴隷として拾い上げるのが仕事だった」

「なるほど。それで仕組みが変わり査定――、つまり良くも悪くも、奴隷対象の質で値段が変わるようになったわけですか」

「あぁ……年齢、性別、種族、それに所持スキルも勘定されて、奴隷一人一人に点数が付けられるようになった」

「それがあなた方の報酬に繋がると?」

「そうだけど、チームを組まされてるから、毎月チームで最低基準を超えないといくら点数稼いでも報酬が半分以下にされる。逆に上物を引き当てれば、前より格段に金を貰えた時もあったけど……」

男はそう言って、未だ引きずるかのようにフェリンへ視線を向けた。

そりゃこの容姿だし、きっと奴隷化すれば、とんでもない点数が付けられたんだろう。

それにしても、どうもこの男の話を聞いていると、よくある営業会社の歩合制度に近いモノを感じてしまう。

ノルマねぇ……

「コーラスさん、その制度が変わったのはどれほど前ですか?」

「……7年、8年くらい、前」

「7年8年……異世界人マリーはご存じで?」

「知っている」

「その制度を作ったのって、マリーでは?」

「分からない」

「レイジルさん、あなたは?」

「俺も、そんなことは知らない……」

「ん~一応聞いておきます。サバンさん、あなたはどうです?」

「し、知らねぇ、から、もう勘弁し『ブスッ』でぇあああああああああッ!!」

その返答と悲鳴を聞きながら静かにフェリンへ視線を向けると黙って頷く。

つまり白――、本当に知らずか。

オムリさんが言っていたように、末端の人間じゃ『依頼者』を知らない可能性が高いっていうのは間違いなさそうかな。

「その制度に変わった数年後、ドワーフが多く住む西区にバルニールという鍛冶工房が生まれました。その時、反対派の家や職場が燃やされ、その後もまともに仕事ができないよう嫌がらせをされたわけですが――」

言いながらも3人を眺める。

表情、視線に動揺――、3人とも反応あり、か。

「まず、誰がレサ一家にこのような依頼をしたかはご存じですか?」

「知ら、ない」

「俺も知らねぇ!」

「本当に、知りません……」

「ではコーラスさん、あなたは反対派の鍛冶師を追い詰めた実行犯ですか?」

「そう、だ」

「なぜ、奴隷探しが仕事だったあなたがそんなことをする必要まであるんです?」

「点数が、足らなかった。やれば、点数をやるって、言われた」

「なるほど……レイジルさん、あなたは具体的に、何をやりました?」

「し、指示のあった鍛冶師の家を2軒、燃やした……」

「それだけですか?」

「あぁ」

「……嘘」

フェリンからの判定。

ならば答えに間違いはない。

ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ――

「っがぁあああ、ぐぉおおあああああッッ! ひぃ、ひッ、ひぐッ! レイジ、ル……貴様ぁあ゛あ゛あ゛!」

「ち、ちがっ! 俺はあんたのためを思って……!」

「本当は?」

「ほっ、本当、は……どうせ燃やすならって、ソイツん家のモノ全部盗んで金に換えた……ソイツの嫁と、子供も……」

はぁ。

……もう、十分だろう。

そう思えるくらいに、とことんクズ。

そう思っていたのに。

「それだけじゃないだろうが!!」

怒声は、鉄格子の外からだった。

視線を向ければ、通路を挟んだ向かいの部屋。

鬼の形相をした壮年の男が、震える細い手で鉄格子を掴みながらコチラを睨みつけている。

「てめぇら、鉱物を少し流したからってワイズさんとこの店も潰したじゃねーか! 娘さん二人とも攫って……親父さんが自殺しちまったのはてめぇらのせいだろう!」

「そうだよ! オリオの孤児院だって火事に見せかけて襲ってさ! この外道の人でなし!!」

「何もしていないうちの息子達を鉱山送りにしおって……! あんたら東区の連中をどれほど攫った!?」

「そうだ! 難癖つけては金をせびって、ちょっと渋れば二言目には奴隷に落とすだ!? おまえらいったい何様のつもりなんだよ!?」

「ぁ、ぐっ……」

「ちがっ……」

「……」

たった一つの、勇気ある声。

恨みを晴らさんばかりの告発を皮切りに、様々な場所から噴き出した叫びがこの地下フロアに響き渡る。

表情は見えずとも、抱える感情は言葉と声にすべて表れていた。

どれほど、コイツらが――、レサ一家が恨まれ、そして疎ましく思われているのか。

「フェリン。レサ一家は、もう丸ごとやるよ」

「うん、私も協力する」

「まっ、待てぇえええ!! なんでもする! 協力だってするし、奴隷にもなるから! だから命だけは……!」

縋るように足に絡みつき、命乞いをするリーダー格の男。

ゴッ!

「ばべ……」

その男の頭が陥没するほど、強く脳天から殴りつける。

「おまえみたいな中身がスカスカの脳無し、奴隷にしてどこで役に立つんだよ」

「ヒッ……」

「あっ…ぁ……」

はぁ――。

最後の最後まで図々しいとは恐れ入る。

死にたくないと願う者を生かすほど、俺は善人じゃない。

「害虫は駆除一択だ、ゴミ野郎ども」