軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

436話 一区切り

「あぁー……」

真っ暗闇の秘密基地。

そこに置かれたベッドからのそりと起き上がり、【夜目】を通して周囲を見渡す。

物凄く寝たような気もするけど、いったい今は何時なんだろう。

時間に関係なく秘密基地には日の光が入ってこないので、年がら年中遮光カーテンで太陽光を遮り、時間の感覚もないまま引き籠っていた時代を懐かしく思いながら下台地へ転移。

すると外は夕暮れで、なぜか男風呂には3人の他、エニーとケイラちゃんまで一緒に入っていた。

余裕をもって入れる大きさの風呂だから問題ないのだが……

メイちゃんと似たり寄ったりの歳って考えたら、二人に羞恥心が芽生えるのはもう少し先か。

そう思いながら、俺もスパパッと服を脱ぐ。

「おはよ、丁度いいや俺も入れて」

「この時間に起きたのかよ!」

「ロキってほんと不規則だよね~」

「そんな生活では長生きできんぞ?」

「うっ」

そうだった。

若返りがスキルではない可能性も濃厚になってきたのだから、あまり不摂生な生活をしていては、魔物ではなく病気にやられてしまう可能性もある。

うーん、しかし、ついつい狩り始めたら止められない病が……

ロッジの飲んでいたお酒を少し貰い、湯に浸かりながら己の持病にウンウン呻っていると、横で吐き捨てられた聞き捨てならない言葉を耳が拾う。

「ケイラ! これがきっと駄目人間ってやつだよ!」

「孤児院の近くにもこんな黒い顔色をした人達いっぱいいたかも……みんな、お昼から路上でお酒抱えたまま寝ていて……」

「それってロキと一緒じゃん!」

「おうおうおう、全然違うわ! 黒いのは日焼けだし! お酒も一区切り着いたから貰っただけで、普段はまったく飲んでないし!」

「そうだとしても、毎回極端でやり過ぎだよね~裏庭凄いことになってんだけど?」

カルラに言われ視線を向けると、連日放出だけしに来ていた素材で今まで以上の大山が出来上がっていた。

Aランク帯の素材は特にデカいからなぁ……

「うむ、あまりにも多過ぎて、我とエニー、それにケイラにも手伝ってもらっているからな」

「あ、だから皆で風呂入ってたのか」

「毎日血だらけだよ! 解体も大事なことって師匠が言うから頑張ってるけど」

「私はちっともナイフが刺さらないので、皮の加工をお手伝いするくらいしかできません……」

「はは、ありがとね。その革を求めて商人が買い付けに来たりしてるんだし、加工だってめっちゃ重要だよ? って、奥の素材なんか動いてるけど……まさかリコさんまで参加してる?」

「あの人が図書館から出てくるわけないじゃん!」

「ジェネでしょ? 解体作業覚えてからは1日中やってるからね~」

「へぇ」

一瞬、解体を覚えることなんてあるのかって思ったけど、薪割りはゼオが教えてやるようになったわけだしなぁ……

カルラやゼオが当たり前のような顔をしているのだから、訓練で技術を覚えるというのも普通のことなのだろう。

「それより一区切りというと、調べていた砂漠の謎でも解き明かせたのか?」

どこか期待するようなゼオの視線。

古代に絡む内容となれば、そこから魔人の情報に繋がる可能性だって否定できない。

だが、今は首を横に振るしかなかった。

「正直今回はかなりキツいね。まったくと言っていいほど手掛かりが掴めてなくて泣きそうだよ」

「ふむ……手掛かりか……」

「砂漠の謎って、面白そうなことやってんじゃねーか。古代の武具が砂の中に埋まってるって話は聞くが、未発見の遺跡でも探してんのか?」

「いや、どこかに眠ってるっぽい古い『Sランク狩場』。ただ肝心の砂漠が広すぎて当たりも付けられていない」

「は?」

「すごっ!」

「すまぬな。我は辿り着くまでが面倒というくらいしか情報を持っていない。それもあってわざわざ行くようなことも無かったが……カルラ、他に何か分からぬか?」

先日『夢幻の穴』という狩場名を口にしたからだろう。

ゼオにそう問いかけられたカルラは、腕を組みながらう~う~呻るも、やはり足を運んだことのない狩場ではそれらしい情報がないらしい。

「ボク狩場なんて興味無かったもん。ダンジョンみたいな所っていう話は聞いたことがあるけど、でもそれくらいだよ?」

「……辿り着くまでが、面倒……で、ダンジョンみたい、か……いや、ありがとう。やっと落ち着いて考えられるし、一回情報を整理してまた頑張ってくるわ」

「ふむ」

「ん? そんじゃあ結局何に一区切り着いたんだよ?」

「あぁ、それね」

Sランク狩場の方で頭がいっぱいになっていたけど、こっちの素材を放出する目的もあったんだった。

風呂の横だけど、まぁいいか。

ドン!

「これ、砂漠のボスで『ゲイルドレイク』ってやつ。素材等級は Sランク(3等級) だから、たぶんガルグイユと同じような格じゃないかな?」

「ぶっ!?」

「ほお」

「絶対美味しい血のヤツぅー!」

「すっごぉおおおお!?」

「ひ、ひぎゃぁああああああ!?」

「あ」

一人、風呂から飛び跳ねたように湖へ走っていくケイラちゃん。

咄嗟の緊急避難先が水の中とは、だいぶ【水中呼吸】に慣れてきた様子が窺えるが。

――【遠話】――『ケイラちゃん』

「死んでる魔物で大丈夫だから、戻っておいで」

「おま……こないだのグリムリーパーってやつもまだ弄ってる最中だってのに、またこんな大物を……」

「何言ってんの。これからボス素材は余るくらいに増えてくるはずだよ?」

「へ?」

「そのうち機会があればこっちに連れてくるかもしれないけど、自分でボスハンターって名乗るくらいボス巡りしている人と知り合ってさ。その人の協力もあって周辺国のボスは湧き周期に合わせて動く予定なんだよね。そん時に俺がギルド相場で素材を買い上げれば、こっちに丸ごと持ってこられるでしょ?」

「マジかよ……おまえ、最高かよ!?」

「まぁ再戦の難易度がボスによって全然違うから、希少素材はどうしても生まれてくるだろうけど。ちなみにゲイルドレイクはまた探してまで狩ろうと思ってないから、コイツの素材は大事に使ってね」

「装備にはしちまってもいいんだろ?」

「もちろん。土属性に強いみたいだから、みんなの分は一式作っちゃっていいよ。俺はまだ背が伸びるはずだから、あとちょっと様子見ね」

「っしゃあ、こうしちゃいられねぇ! 俺も手伝うぜ! カルラ、とっとと解体頼む!」

「もう、しょうがないなぁ……師匠~新鮮な血をいつでも飲めるように仕舞っとこうよ?」

「ふっ、最近魔力量にも少し余裕が生まれてきたからな。良かろう、まずは壺でも作ってそこに保存しておくか。エニー行くぞ! 【魔力纏術】でコヤツの皮を斬る特訓だ!」

「はーい! ケイラも行くよ! 早く終わったら今晩のご飯が竜のお肉になるかも!」

「えぇえええ!? ま、待って~!」

「……」

気付けばなぜか一人で、ほんのりと寂しさが込み上げてくるけど、考え事をするには最高の環境だ。

無理やり冷やしたエールを口に含みながらSランク狩場の情報を頭の中に並べ、どうすれば目的の場所に辿り着けるのか。

余計な情報が混ざっている可能性も踏まえつつ、1つ1つを整理しながら考えていった。