軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

424話 来訪対策

知っている人も、知らない人も。

一度大量に積み上がった資材の上で建国宣言しているせいもあり、フラフラしているとよく話しかけられる。

その表情は晴れやかなモノばかりで、自然とこちらの気分も軽くしてくれた。

「あらあら? 王様ったら背が伸びてきたんじゃない?」

「なはは、いや~そうなんすよ~」

「おーいロキ王、木材がだいぶ少なくなってきてな。木こり連中も頑張っちゃいるが追い付かねーんだ。一発ガツンと補充してもらえねーか?」

「あ、了解でーす。ちなみにダンゲ町長ってどこにいるか知ってます?」

「ダンゲのじいさんなら、最近はいつも町の入り口辺りで死にかけてるぜ?」

「???」

おや、結構な歳だし老衰かな?

何か不穏な言葉を聞いたような気もするけど、皆が笑って過ごしているのであれば、大きな問題は発生していないと思っても良さそうだ。

(しかし、なんでいつも入り口に……って、これは家じゃないよな?)

川を挟んだ向かいには、置物のように鎮座している門番の黒象――ギリオ君が鼻だけ揺らしながら見張っており、その正面。

つまり川の横を通る道沿いには、知らぬ間にいくつかの建物が作られていた。

一つはすぐに分かる、馬車置き場だ。

柵で囲んだ中にはいくつかの馬車や荷車が置かれていて、元奴隷組の一人が清算の終わった品を馬車に積み替える作業を手伝っている。

建物の後ろには森を切り開いて作られた厩舎があったので、たぶん馬がギリオ君にビビらないよう配慮した結果がこの配置なのだろう。

しかし横にあるこの建物はなんだろうか?

そう思って中を覗いてみると、もじゃもじゃした髭が心無しか逆立っているように見えるダンゲ町長と、なぜかハンターギルドの遺留物管理をしていたペイロさんが疲れ果てた表情でグッタリしていた。

そして俺を発見するや否や、こちらが問い掛ける暇もなく捲し立てる。

「やっときおったか! 大変じゃぞロキ王!」

「え? 事件ですか? 事故ですか?」

「どっちもじゃ!!」

「うえぇええ!?」

おいおい、どうなってんだよ……

外は平和そのものなのに、この建物の中だけは空気が修羅場。

ペイロさんなど、今にも泣きそうな顔をしている。

そして奥の机からスッと、数枚の木板を差し出してきた。

なんだかゴニョゴニョと、人の名前っぽい文字と聞いたことのある国名が書かれているが。

「これが足を運ばれた貴族、それに他国の使者を名乗られた方々の一覧です……」

「貴族? それに、使者……?」

「皆が皆、ロキ王との謁見を希望しておった。中にはワシみたいな田舎者でも高そうなことだけは分かる手土産まで持参してな」

「えっ、謁見!?」

「なんせロキさんは異世界人の王ですからね。様々な意図や打算もありきで、素早く繋がりを持ちたいと思ったのでしょう」

「……」

「しかし、肝心の王は神出鬼没で行方不明」

「ぅ」

「王の住む都が別にあるのか尋ねられても、道なきパルメラの奥地としか我らは答えられん」

「うぅ」

「おまけに現れるまで滞在すると言われたところで、貴族や役人が泊まるような宿などこの町にあるわけもなく、ようやっと営業を開始できたビリーコーンや他の宿も商人連中で連日満室」

「はうぅぅ!」

「呆然とする貴族や役人の一行に、日帰りを促すしかないこの気苦労………ロキ王には分かるかね?」

静かにそう告げるダンゲ町長の髭はさらに逆立ち、息を呑むほどの強烈な威圧感を放っていた。

グ、グリムリーパーより全然恐ろしいんだが……?

「すんませんでしたぁああああ!!」

田舎の爺さんと気の弱いペイロさんが、貴族や偉そうな役人を追い返すなど狂気の沙汰。

想像しただけで血反吐を吐く姿が想像され、思わず空中一回転土下座をブチかます。

が、しかし――。

これは、どう解決を図ればいいのだろうか。

というより、解決を図れる類の問題なのだろうか……?

謝ったはいいものの、その後の言葉に詰まっていると、目の前から物凄く深い溜め息が聞こえてきた。

「はぁ――……まぁ足を運ばれた面々も、ある程度こちらの事情を酌んでくれていたのは幸いじゃったがな」

「え、どういうことです?」

「パルメラという未開の地を領土として切り開き、戦争で生まれた避難民を匿う形でアースガルド王国が生まれたと、少なくとも貴族や使者といった相応の立場にある他国の者は、その辺りの事情を理解していたということじゃ」

「あぁそっか、事情を記したヘディン王の手紙が切っ掛けで来ているんでしょうしね」

「ただ大きな齟齬があったとすれば、ロキ王はここに居ると、皆が皆そう思っとったことじゃな」

「な、なるほど……」

これはしょうがないな。

ヘディン王にもその辺りの説明はしていないし、拠点がどこにあるなんて話を今後もするつもりはない。

女神様達もいるわけだし、あそこは秘密の場所だからこそ意味がある。

となると――、実質は二択か。

俺がここに常駐して来客に対応する気なんて欠片も無いのだから、公に俺の代理となるような存在をこの町に置くか、もしくは――……んん?

「奥の棚に並べられた羊皮紙は、もしかして手紙ですか?」

「あぁそうじゃった、これは手紙というか、ロキ王宛ての正式な書状じゃ。ここで一通り預かっていたから全て渡しておこう」

「奥には土産物も保管していますから、そちらも後で確認してくださいね」

「あぁ、はい……ちなみに、ペイロさんはなぜここに?」

「ギルマスに、保管や管理と言えばお前だろうと、そう言われて……うぐぅ……っ」

た、確かに、この人遺留品とかの管理や保管が仕事だったわ。

書状も一つ一つに木板が添えられ、足を運んだ順番と渡しに訪れた人の特徴、それに手土産品の有無などが詳細に纏められている。

いきなりこんなことまでやってくれているのだから、今後もお願いしたいとは思うが……いやしかし、だいぶ心が痛むな。

「ペイロさんにも給金お支払いしますから、その心労が気にならないくらいの給金を!」

ツラい仕事には見合うお金を。

というよりそれしか解決方法が見当たらないまま書状を見れば、数は全部で9つか。

結構来ているものなんだな。

中身を一つ一つ確認していくと――、おおう、いきなりフレイビルの王様からか。

ヴァルツの戦争を止められなかったことへの詫びと、ラグリース及びアースガルドに敵対の意思はまったく無いこと。

それに転送物流の話は王にも通っているようで、俺との良好な関係を望む旨が記されていた。

足を運んだ際には歓待するから宮殿にもぜひ立ち寄ってほしいとか書かれているけど、そういうのは胃が痛くなりそうだからちょっと勘弁である。

それに――、ジュロイと共にラグリースとの同盟を蔑ろにしたトルメニア王国からも来ていた。

こちらは報復でもされると思っているのか、内容に相当な焦りが見える。

第二王女をアースガルドにとかわけの分からないことが書かれているので、この国は放っておいても良いだろう。

あとはジュロイの、オーバル領復興の現地責任者になるのか?

伯爵の立場の人が、復興の開始とおおよその派遣人数、資材の搬入経路などを記した計画書と詫び状がセットになったようなモノを騎士と共に届けてくれたらしい。

その他にもラグリースやヴァルツの周辺貴族の名で、祝いとか、懇意にとか、発展を願ってとか。

そんなことが書かれた書状を眺めていると――、あれ?

書状とリストにある来訪者の数が合わないことに気付き――

「ペイロさん、書状が無かった人っていますよね?」

「え、ええ。近くにいたから立ち寄らせてもらったとかで」

「なるほど」

――どうすべきか悩んでいた俺の頭の中で、自然と一つの答えが導き出された。

「よし、相手にするのは止めましょう」

「「え?」」

ダンゲ町長とペイロさんの声が重なる。

そして焦ったように、町長が言葉を続けた。

「ど、どういうことじゃ?」

「言葉の通りですよ。基本僕はこの町にいませんし、最初は誰か正式に代理を立てるべきなのかな~とか考えたんですけどね」

「つまり、そのようなことはせんということか……」

「ですね。僕がこの手のやり取りで間柄を密にする利点もなさそうですから」

「いや、でも普通は敵を作らないように、特に近隣周辺国との関係性を深めていくものですよね?」

「それはそうですけど、僕は『悪』だと思えばどのような関係であろうと叩き潰しますし、逆に『悪』でなければ微妙だろうと思った国でも何もしませんし……親密になったら――、それこそ同盟でも組んだら も(・) う(・) 大(・) 丈(・) 夫(・) とは思われたくないんですよ」

結局はここだ。

国同士の仲が良くなるのは大いに結構なことだし、まったく否定するつもりもない。

が、うちと同盟を組めたから他所の国へ強気に出られるとか、同盟を組めば悪事を働いても手は出されないとか……

うちとの良好な関係を免罪符に面倒なことをされても困ってしまう。

俺自身は嫌いな悪党を許すつもりがないのだから、それならば立ち位置は常に一歩外から。

ハンスさんの国は既に関係性が成り立ってしまっているのでアレだけど、あまり親密な国は作らない方が、余計な情も入らなくて済むので動きやすい。

こんな腹の探り合いをしなくても、皆が皆、平和を望んで過ごせればそれで良いのだから。

「なのでダンゲ町長、それにペイロさんも」

「な、なんじゃ」

「大変な役回りを押し付けてすみません。一部の例外を除いて、書状は本人に渡すけど、面会は一切お断りしていると。その代わり必要があれば僕が出向くと、今後も貴族や使者が来られたらはっきり伝えてもらえませんか? いずれはその噂が立ち、求められることもなくなってくると思いますので」

「一部の例外とは?」

当然、ダンゲ町長からその突っ込みが入ったので、一枚木板を貰い、その例外を書き連ねていく。

「今後増えるかもしれませんけど、その国名の使者、もしくは当人が来たら、向かいの黒象に緊急だと伝えてください。内容は分からずとも『呼び出し』であることだけは僕に伝わりますので、可能な限り早めにここへ来るようにします」

「ふむ、ラグリースのレイモンド伯爵や国王はいいとして、ジュロイ王国のアウレーゼ殿、アルバート王国、ヴェルフレア帝国、エルグラント王国――、ん? そういえば……」

身を乗り出し、俺の手元にあった木板を確認しようとする町長。

なので、二人に差し出しながら事実を伝える。

「そう、エルグラント王国――勇者タクヤの関係者が、何用か分かりませんけど来てるんですよね」

「あっ、立ち寄っただけって言いながら、謁見を強く求められた方ですね。宿の空きがまったく無いと分かったら、また来ると言って帰られましたが……」

「なら遊びに来たってわけでもないでしょう。特に勇者タクヤ、マリー、シヴァのいる三国に関しては慎重に動く必要がありますので、なんとかその方針でお願いします」

「……税も報酬も取らずに町ごと救ってくれた恩義があるのだ。望むならそのように対応もしよう。しかし要人を待たせる環境など、この町にはまったく整っておらぬぞ?」

「問題はそこなんですよねぇ……まぁ遅かれ早かれやらなきゃいけないことですし、僕の方で早急になんとかしてみせますよ。最低限足を運んでくれた一行が、日帰りのご帰還にならないようにはしないといけませんからね」

「そうか、ならばロキ王を信じるとしよう。なぁペイロ」

「お、お願いしますねロキさん!」

「ふぅ――……任せてください。表ボス以上に本気を出しますから」

「「??」」

ベザートの今後に大きく影響することなのだ。

形振り構わず、本気でやるしかない。

となれば、やはりあの人だよなぁ……

そう思い、約束していた木材の補充を少し進めてからそれぞれの町へ向かった。