軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

416話 共闘

今はいったい何時なのか。

夜になると暗闇に染まるBランク狩場 《忘却のファルマン聖堂》は人の気配が消え、魔物の骨や肉が擦れる不気味な音だけが僅かに響いていた。

そんな環境を俺専用狩場だと喜びながら狩り続け、気付けばいつの間にか朝になり。

ハンター達も少しずつ狩場に戻ってきたため、人が少ないうちはまだ頑張ろう、もう1つレベルが上がるまでは頑張ろうと粘れば、またハンター達が周囲から姿を消していた。

狩りは疲れてからが本番。

日の光がまったく入ってこないのだから、夜なのは間違いないと思うが。

「腹、減ったな……」

水だけ飲んで誤魔化していたのだ。

収納していた食料も死にかけの人達に配ってしまったので、そろそろ拠点に戻ろうか、それとも近くの町にでも移動しようか。

そんなことを考えながら一度外に出れば、中間狩場である 《廃棄された祭場》の端から淡い光が灯っていた。

(あれは場違いな建物が建っていた辺りか……)

そういえば宿も、それに食事処もあると入り口のおじさんは言っていた。

ならば丁度良いかと、周囲を太い鉄柵で囲い、見張りまでいる建物のドアから興味本位で中を覗いてみると、入ってすぐに見える1階の食事処は、酒や食事を楽しむ多くのハンター達で賑わっていた。

俺が入った途端、場が妙な静けさに包まれるも、こんな反応をいちいち気にしていたら何もできなくなるからな。

気にせずカウンター席でグラスを傾けていた、この中で一番強そうな男の横に座り、ゴツイ店員さんに聞いたこともないメニューを適当に5つ。

ついでに横の男が食べていたちょっとつくねっぽいけど、もっと肉肉しい何かもついでにお願いしておく。

店内の匂いを嗅いだ瞬間、腹が減り過ぎて死にそうになっているのだから、今なら5人前くらいはきっと食べられるだろう。

(風呂も入りたいし、食べたら一度拠点に帰るかなぁ……)

そんなことを考えながら、先に出された温い果実水に生み出した氷をポトポト落としていると、想定通りに横から声が掛かった。

「すげぇな。そこまで頼むってのは、まさか昨日から何も食ってないのか?」

「えぇ、ついつい夢中になってしまいまして」

「そうか。俺はグリムリーパー討伐チームの副長を務めているリュークってもんだ。あんた、名前は?」

「ロキと言います」

「ロキ……聞いたことないな。この国の人間じゃないのか?」

「ですね。たまたまこの狩場を見つけて立ち寄っただけですから」

お互いが探るような、様子見の会話。

果たしてこの団体は無害なのか、それとも俺の敵になるのか。

氷を指でツンツン突つきながらも話は続く。

「たまたま……ってことは、ハンターの依頼を見てここに来たんじゃないのか」

「ん? 依頼?」

「あぁ、『リーガル商会』が出している、グリムリーパー討伐の反復依頼だ。安定的に倒すための人員と、骨集め要員の"ボーンハンター"を常に募集している」

「へぇ……僕もハンターですけど、募集掲示板までは見ていませんでした。狩場にこんな建物まで建てて、随分大掛かりなんですね」

「そりゃあ表面上はリーガル商会の名前で動いているってだけで、実際はジャンバイル伯爵――つーより、国そのものが主導して動いているみたいだからな」

「国が主導……? 理由は、ご存じですか?」

「あ~あんた普通じゃない強さだし、なんかこう、魔力の色もおかしいし……どっか危ねぇ国の諜者とかじゃないよな?」

「へ?」

「いや、こんなことペラペラしゃべっちまっていいのかって思ってよ」

「さすがにそれは……」

「でもまぁ、やってることなんて当たり前のことだしな……うん、いいだろ、たぶん」

男は腕を組みながら数秒自問自答し、一人納得したように理由を説明し始めた。

「理由はボス素材で国軍の戦力を急速に強化するためだ。ちょっと前には横のラグリースで戦争もあったっていうし、西で暴れている異世界人達の火の粉がいつこっちまで飛んでくるか分からねーだろ? 自分達の領内にあるもんで戦力強化を図れるなら、やれるうちにどんどん進めろっつーそんだけの話だ」

「あぁ、なるほど……それはその通りですね」

少し構えてしまったが、理由を聞けば納得もする。

だから金を流してでも人を動かし、グリムリーパー討伐の回転数を上げようと考えたわけか。

国や貴族の直接的な依頼であればハンターギルドは受理しないだろうが、商会からのボス素材仕入れということなら依頼としても成り立ちそうだし、入り口にいたおじさんのように新たな仕事と金が回って喜ぶ人達もいる。

傭兵ギルドがないからこその苦肉の策だろうが……相変わらず、褒められた行為ではないけど悪いとも言えない、微妙なところを突いてくるのが上手い王様だ。

「んでだ。ここまで話したんだから、ロキにも聞いてもらいてぇ相談がある」

「……具体的には?」

「まずロキが狩った骨は――、いや手の内を探るような話は失礼だな。片っ端から消していた骨は今も持っているのか?」

「えぇ、ありますね」

「そいつはどうするつもりだ?」

「まだ具体的には決めていません。ただ、《《僕も》》グリムリーパーに興味があります」

「じゃあ、俺達と目的は一緒ってことだよな?」

言いながらやや前のめりになる男だが、そう結論付けるにはまだ少し早い。

「それはどうでしょう。リュークさん達は倒してハンターギルドの依頼を達成し、相応の報酬をリーガル商会から得るのが目的でしょう?」

「あぁ、その通りだ」

「でも僕はお金より、ボスそのものと素材の方に興味があるんですよ。参考程度に欲しいというくらいで、丸々ってわけじゃないですけどね」

「隊長はグリムリーパーの素材から武器を作るとかで腕を一本貰ってたしな……自前装備のためなら、貢献次第で素材の一部を報酬に回すくらい許可は下りると思うが」

「んー……ちなみに、聖堂の中央にある巨大な穴に大量の骨が入ってましたけど、あれが一定量溜まったら湧くってことですかね?」

「そうだな。あの穴に入れておけば、この辺りに湧くアンデッド共はなぜか蘇らない。そして穴が埋まれば代わりにグリムリーパーが生まれる」

「今で、何割ほど満たしてるかはご存じで?」

「6割から7割ってところだ」

「なるほど」

中央にポッカリ空いた穴はかなり巨大だ。

大きさはパルメラ中央にある円盤よりもさらに大きく、普通の人なら落ちればまず這い上がれないだろうというくらいに内部も深い。

まだ10メートル以上の深さはありそうな状況で6~7割か……

まぁ、いいか。

たぶんリュークさんが最も恐れているのは、今まで溜めた骨を俺に利用されてボスまで奪われること。

その心配を無くしてあげれば、あとは上手くいくはずだ。

主導しているのが国なら、損のない形であの王様に直接交渉しちゃってもいいわけだしね。

俺は俺の目的を。

グリムリーパーのラストアタックを必ず獲り、使うかどうかは別にしても、ロッジが喜ぶ程度の素材量を持ち帰る。

その上で反復するかどうかは、1戦目が終わった後の戦果を見てから考えればいい。

「それでは僕も素材を提供しますので共闘しましょうか。開催は明後日くらいでも大丈夫ですか?」

「え? いや、あんたみたいな強そうなのと共闘できるのは有難いが、まず『骨』を集めないことには――」

「大丈夫ですよ。遅くとも明後日の朝までには、僕が責任を持って集めますから」

「は? いやいや、あそこまで溜めるだけでも、全域で2週間以上は……」

「大丈夫です」

「ほ、本当に……?」

疑り深い人だな。

たぶんそこまで切羽詰まってはいないと思うが、いざとなれば寝ずにやるつもりなのだ。

既に丸一日分以上の骨は収納しているわけだし、残り15メートルほどのデカい穴を埋めるくらい、気合を入れればなんとでもなる。

「本当です。なのでリュークさんは副長のようですし、もしここにいない参加予定の方がいるなら呼んでおいてくださいね? 討伐しなくても個人依頼が達成されるなら好きにしてもらって構いませんけど、知らぬ間に倒されてたとかで後から揉めるのは避けたいですから」

「あ、あぁ分かった……そこまで言うのなら、明後日の朝一までには全員集まるよう、通達しておこう」

最後はやや強引に纏めてしまったけど、ここのボスが美味しいかどうかの判定は、とっとと済ませてしまった方が今後の予定も組みやすくなる。

皆には悪いが、前倒しとなればその分収入は増えるわけだし、仲介の商会も、それに国だって早いに越したことはないだろうしな。

お詫びに、ここを寮のように活用している骨集めの専門や、ボーンハンターとボス討伐を兼業している面々に酒を一杯奢り。

受け入れてもらえる空気を作ったところで、 《エントニア火岩洞》以来のレイド戦にお邪魔することが決定した。