作品タイトル不明
414話 イベントアイテム
「うっし! 当たりぃ!」
スキルレベルは低いし、新種は数体の魔物を眺めても1種だけ。
それでも得られることに意味があるわけで、視界に入った魔物を片っ端から殴り倒していく。
パコン!
とても魔物を倒したとは思えないような軽い音。
そして――
『【甦生】Lv1を取得しました』
――アナウンスが流れてすぐ、ステータス画面を開いて内容を確認する。
「どれどれ……おぉう、やっぱり魔物専用で使用不可か。まぁこれはしょうがないな」
もしこのスキルが使えてしまったら、目の前にいる魔物達のように甦ることが可能になってしまう。
さすがにそっちの路線に足を踏み入れたくはないなと、そう思いながら、素手を基本に剣や槍、それに盾など。
自身の身体を変形させた歪な武器を握っていたりもする、意外とバリエーション豊かなスケルトン達と、俺に殴られ足元でバラバラに散った骨の残骸に視線を向ける。
骨に素材としての価値は無く、他に肉などの換金になり得るモノがあるわけでもなく。
その代わりに、この狩場で登場する魔物は魔石が全て『闇属性』のため、換金すれば総じて高値で売れると資料本には記載されていた。
あちらは実体のない【幻影】持ちだったので少し系統は違うが、幽霊みたいやつばっかり登場する、ヴァルツの 《旧オーベル跡地》と似たような印象を受ける狩場だな。
スケルトンは倒しても骨を放っておけば、また魔物としてそのうち復活するようなことが書かれていたけど……
ん~リポップとはまた別になるのだろうか?
そんな些細なことを気にしながら、 《悲嘆の廃道》に存在している魔物を一通り確認し、次の 《廃棄された祭場》にそろそろ向かおうかと思った時。
「あんちゃん、なんで骨、拾わないんだ?」
「え?」
声に釣られて振り返れば、そこには大きな籠を背負い、振り回しやすそうなメイスを握った中年のおじさんが立っていた。
籠持ちで一人とは珍しい。
そう思うと同時に、周囲に捨てられた骨がまったくないことに気付き、慌てて謝罪する。
「あ、ごめんなさい。入り口の近くだし、放っておくと復活しちゃうから、ちゃんと拾えって話ですかね?」
「ん? いや、そういうわけじゃなくてだな……もしかして籠も背負ってないし、あんちゃん新人か?」
「えーと、そうですね。この狩場には今日初めて来ました」
「やっぱりか。ならそこらに転がっている骨を俺に譲ってくれねーか? その代わりここのやり方ってのを教えてやるからよ」
「はぁ、それは構いませんが……」
答えながらも、俺は思わず首を傾げてしまった。
んんー、どういうことだ?
骨に素材価値はないはずなのに、なぜかこのおじさんは欲しいと言う。
「ハンターギルドには魔石くらいしか価値が無いって書かれていましたけど、その骨って実は価値があったりするんですか?」
感じた疑問をそのまま口にすれば、足元で骨を拾っていたおじさんは笑いながら答えてくれた。
「がははっ、そりゃあギルドじゃ骨の買い取りなんてしてくれねーよ。入り口に建ってた建物の看板は見なかったのか?」
「あー……、建物が何軒かあるのは見ましたけど、看板はまだですね」
「骨で大型の籠いっぱいにすれば、10,000ビーケくらいで『リーガル商会』が換金してくれんだ。そのまま 《悲嘆の廃道》を抜けて 《廃棄された祭場》まで自分で持っていけばもっと色付けてくれるみたいだけど、俺達みたいな入り口組には嬉しい収入になるだろ?」
「なるほど、10,000ビーケあったらかなり美味いご飯食べられますもんね」
「かかっ! 俺は2日分の酒代が浮くって考えちまうけど、あんちゃんはその歳ならまだ飯か。まぁ昼間でもちっとばかし不気味な所だけどよ、他のEランク狩場と比べたらここは稼ぎやすいぜ?」
そう言われ、先ほど拾った魔石と、おじさんが回収している骨に視線を向ける。
確かに、換金所がすぐ近くにあるなら嵩張る骨の運搬で苦労することはないし、入り口付近をウロウロするだけで属性魔石がそれなりに得られるのだから、美味しい狩場というのも間違いじゃないか。
んーしかし、根本的な疑問がまったく解決していない。
「ちなみにその『リーガル商会』というのは、なんでギルドでも買取しない骨を、わざわざこんな所に建物まで作って買い取ってるんです?」
「俺も詳しいことは知らねーが、奥の方にいる『グリムリーパー』ってボスを呼び出すのに必要らしいぜ?」
「へぇ……」
「まぁ俺達みたいな入り口組は、上位ハンターの連中がやってることなんてどうでも―――……」
その後もおじさんは、武器や防具を持たない俺にスケルトンの安全な倒し方や、狩場の横に買取屋だけでなく宿や食事処もあることなど。
ここ5年ほどで狩場の環境が大きく変わってきていることを教えてくれたが、俺の頭の中は先ほどの言葉でいっぱいだ。
資料本にはボスとして、確かに『グリムリーパー』の名前が載っていた。
が、それ以外の情報は見当たらず、まぁどうせ倒されているか、もしいたとしても表ボスくらいなら苦戦はしないだろうと。
受付で情報収集はせずにこの狩場まで来ていたのだ。
新規魔物だと喜んでも、得られるスキルがなければすぐに移動するわけで、ハンターギルドでも資料本だけを確認するという流れが当たり前になってしまっていた。
(うーん、これは予想外の展開だな……)
おじさんの話した通りであれば、スケルトンの骨に素材としての価値はないけど、ボス湧きのためのイベントアイテムとして価値が存在しているということになる。
そしてわざわざ商会が買い取っているということは、ボス湧きに今までのような周期はないかあっても極端に短く、一定量集められた段階で湧く可能性があり、買い取ったとしてもボス素材で十分に回収できるほどの収益が生まれているということ。
「ふふ……ふふふ……」
「あ、あんちゃん大丈夫か? 不気味な骸骨だらけだからって、気をおかしくするんじゃねーぞ!?」
まだ俺の願望も混じった仮説だ。
他にも細かい条件がいろいろとあるのかもしれない。
だが、必要アイテムが存在している時点で、今までの狩場とは何かが違うことは間違いないわけで。
「これはもしかしたら、美味しいのかもしれない……」
そう思えばいてもたってもいられず、おじさんにお礼を言ったら次のD-Cランク狩場。
《廃棄された祭場》へと向かった。