作品タイトル不明
410話 懐かしの古代武器
「もしかして、ゼオが昔使ってたやつなの?」
あまりに予想外な展開だ。
ゼオが使用していたとなれば、1万年近く前の武器。
そもそも、そんなに保つものなのかという疑問もあるが。
「たぶん、としか言えんがな。【消費魔力上限突破】レベル3も、我が使用していた時のモノと同じだ」
「マジか。その指輪と同じ、エルフの傭兵が持ってたやつだと思うんだけど」
「え~そんなはずないよ。王都が戦場になる前の日、最後に大ばあちゃんと会った時にその杖持ってたもん」
「んん? 前日ということは、普段はこの武器を持ってなかったってこと?」
「うん、一度も見たことない武器だったから、きっと大ばあちゃん本気なんだって、そう思った……」
「ということは――……あぁ、そういうことか」
ばあさんを最後に見た時、もうこの杖は所持していなかった。
けどヘディン王は宝物庫に眠っていた『大黒樹の禍棘』をばあさんに託したのだから、たぶんこの『破天の杖』も一緒に託していたのだろう。
そしてバリーに敗れ、この武器を奪われた。
つまりはどちらも古代の遺物。
ゼオが最後に戦い、リアから裁きを受けたのは魔道王国プリムスの存在した現ラグリース領だし、そうなると長く地中に眠っていたモノである可能性はかなり高い気がする。
「カルラがゼオを発見して助けた時って、もうこの杖は見当たらなかったんだよね?」
「うん。師匠の身体、半分くらいは無くなっちゃってたし……」
「そっか。なら元の持ち主に返すよ。ラグリースって国は遺物を蒐集してたから、昔に掘り起こされたモノだろうしさ」
そう言って差し出すも、ゼオは首を横に振った。
「いや、少なくとも今は遠慮しておこう。ロキも分かっているだろうが、この武器は魔力が潤沢だからこそ意味を成す。今の我には使いこなすことなどできぬし、そもそも使う場面もない」
「それは、そうかもだけど」
「だから今暫くはロキが持っていてくれ。徐々に回復してきているのだから、いずれその武器を十全に使いこなせる時も来るはずだ。エニーに教え始めてから、力の戻り方が早くなったような気もするしな」
「了解。ただ俺は使ったとしても限定的な場面だけだろうし、必要と感じたらすぐに言ってよ?」
そう返しながら、ゼオの最後の言葉に引っかかりを覚える。
(エニーに教え始めてから、か……)
カルラとエニーとで何か違いがあるのか。
いくつかの可能性を考えながらも黙々と作業を進め、俺は倉庫と食糧庫の荷物整理を完了。
一度上台地に寄ってから、肉だけは素早く足らない所へ回るよう、扱いに慣れたジェネラルマスターオルグさんに纏めて卸し、その後にベザートへ飛んだ。
「毎度~って、おぉう!? なんかだいぶそれっぽくなってきたね」
「あ、ロキさん! へへっ、俺っちの美的センスが輝き過ぎて怖いっすよ!」
「いやいや、私でしょ~! 店長の古臭い案をバッサリ切ったから、ここまでの見栄えになったんだと思うわ」
「なにをー!?」
「なによー!?」
クアドは店長と呼ばれてるのか。
というか素直に褒めただけなのに、なぜクアドと魔石屋のミザールさんは揉めてるんだ?
気にせず周囲を見渡せば、入り口正面には全方位に対応するためなんだろうな。
中で10人くらい人が動けそうな、長方形型に囲われたかなり大きめのカウンターが用意され、入って左側には俺が回収してきた炉とパイサーさんがおり、こちらも囲うように配置されたカウンターの中で何かの作業をしていた。
奥には木製棚がズラリと並び、今もベッグさん達が木材で棚作りをしているのが、カウンター越しによく見える。
「左側は装備用、正面が通常の買い物用カウンターで、右側からお客さんが中に入って買い物するって感じかな?」
「そうっす! これだけの広さに品揃えじゃ、自分達で探させないと追いつかないっすから」
「店長は最初、一枚板のふっつぅ~なカウンターを作ろうとしていたけど、こうやって囲った方が安全だし、融通も利きやすいでしょ?」
「おぉーミザールさんやりますね~」
「ちょー!? ロキさん、あっち! あっちを見てみるっす!」
「んん?」
言われて指を差された方に視線を向ければ、かなり奥の方にはもう一つ、入り口と同じ長方形に囲われたカウンターが設置されていた。
それはいいのだが、なぜか何もない所にポツンと置かれている。
「あっちは高級品専用なんす! 盗人が入ってもすぐ逃げられないように奥をもう一つ区切って、絵画とか高い貴金属や魔道具とか、庶民が絶対買わないような物を並べる予定なんすよ!」
「ほっほー、となると少し様子を見てからになるけど、高級店専用の裏口を用意してもいいかもしれないね」
「そうなんすか?」
「専用の入り口を用意されていることに特別感を覚える人も多いだろうし、高いからこそ買う物を見られたくないって人も絶対いるだろうから」
「なるほど……」
「ん~実際やるとなると、専用の護衛魔物を用意したり道作ったりでちょっと大掛かりになるから、まだ決定じゃないけどね。今各所に宣伝して回ってるから、あとは今後の客層や高額品の売れ行きを見ながらってことで」
それ以外にも専用の色に着色した、分かりやすい店内用革袋を用意した方が良いとか、纏め買いする層のために店内で使える荷車を用意した方が良いとか。
あとは陳列棚に何を並べているのか、ザックリ分かる看板も作るべきだな。
なんとなく日本にいた頃のホームセンターを想像しながら、せっかく作ったカウンターの見栄えが手作り感満載だなーと。
あれこれしゃべりながら『石』を生み出し、【土操術】で望む造形に変えていく。
あまり複雑なのはまだ無理だけど、カウンター内部にお金や物を収納できる棚くらいは作っておいた方が何かと便利だろう。
うん。
こっちの方が頑丈だし、見た目だってだいぶ綺麗である。
「「「……」」」
(資材倉庫の階段もあっさり作れたし、【土操術】って相当便利だなぁ……)
あまりの使い勝手の良さに俺自身が若干ビビりながら顔を上げれば、いつのまにかパイサーさんまでカウンターの製造を見守っていた。
ならば丁度良いかと、3人に声を掛ける。
「また大量に商品を持ってきたので、あとお願いしますね」
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
放出した品を見て発狂している2人と、頭を抱えている18人。
それに半眼で炉の火を見つめながらブツブツ呟いているハンター達のボスを後目に、どうせならと俺は区分けされる予定の高級店に移動。
悩みながらもカウンター内の地面に1ヵ所穴を開け、そのまま掘り進めて地下室を作っていく。
確保すべきスペースは広大だが、【土操術】で強引に穴を拡張し、時折【空間魔法】による『収納』を繰り返していけば、どんどん地下空間は広がっていった。
そして目的のモノが収まる程度に広げたら強引に設置し、ギッチギチになるまで土を戻して店内に通じる階段をササッと作れば完成だ。
「クアドー! ちょっとー!」
呼べば一人走り寄ってくるので、都合が良いとそのまま地下空間へ案内すると、存在を知っていたのか。
クアドはボソリと呟いたまま、その場で固まる。
「これってもしかして、ストレージルームっすか……?」
「よく知ってたね」
「そりゃ、商人や貴族にとっては憧れの倉庫っすから!」
「じゃあ使い方も問題無いか。これはヴァルツ王家が所持していた特大のヤツで、開閉の都合上一人しか選べないからさ。責任者であるクアドにこれは任せるよ」
「マジっすか!?」
「俺みたいに空間や土に作用できる能力者だと破れちゃうから、決して鉄壁ってわけじゃないけど……それでも本当に高価だったり希少価値のあるモノ、あとは売上を納めておいたりとか、日持ちする食糧の備蓄なんかにも活用できるでしょ?」
「こ、これだけ広かったら相当な使い道があるっすよ!? あり過ぎてどう使えばいいか……まずは光源魔道具を設置して、あ、結界魔道具も置いとかないとマズいっすね! 中に仕切りを作って一部に冷蔵魔道具置いておけば、食品もかなり保存できそうですし……いやいや、ほんとありがとうございまっす! 凄過ぎて言葉も出ねーっす!」
「いや、十分喋ってるけどね。まぁみんなと相談して上手く活用してよ」
最後にもう一度店内を見渡せば、今回の仕入れで倉庫内の空きスペースもほとんど無くなったので、これで売り物の補充もすぐに消費されていく食べ物以外は一旦打ち止め。
あとはしばらく様子見でも問題ないだろう。
また一つやるべきが片付いたことにホッと一息。
(ここで伝えるべきじゃないか……)
そう思いながら、見張りをしてくれているであろう人物がいる天井に一度視線を向け、ジュロイのマッピング作業を再開した。