軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

402話 誘蛾灯の如く

「どうやってここ、がはッ!?」

「あー無理にしゃべらなくていいですからね。時間掛けたくないんで」

辺境伯に軽い【威圧】を放ち、静かにさせた上ですぐに動く。

「まずはこの宝物庫の中身を空にしていくんで、荷物整理で呼び出されただけの人達はこの中に移動してください」

当然、場は困惑した表情を浮かべた者ばかりでざわつくも、この程度は想定通りなので言葉を続ける。

「あなた達はセーフだから危害を加えるつもりはありません。ただここからすぐに動かれても今後に支障が出そうなので、いろいろと事情を知っていそうな執事のお爺さん。あなた以外は事が済むまでここに居てほしいんですよ」

ここまで伝えれば、少し安心したのか。

震えながら蹲る主を後目に、固まったままの爺さん以外は宝物庫の中へ入っていくが。

「わ、私は……私達はどうなるのですか!?」

「さ、左様! 呼ばれたから我らは品の買取に来ただけであって、ラグリース領を害するつもりなどは決してありませぬ……!」

「まだ何も手は付けておりませんし、このような事情があるのならばすぐに手を引きますので、何卒お許しを……!」

堰を切ったように、買取に来ていた商人の男達が騒ぎ立てた。

親玉っぽいのは全部で6人か。

商人連中をどう処理するかが一番悩ましいところだが。

「でもあなた達は様々なモノを兵から買い取っていた町民と違って、これらが盗賊に扮した兵の強奪品であることを理解しているわけですよね?」

「そ、それは……」

「確かに知ってはおりましたが! しかし辺境伯に呼ばれ、ここに来て初めてその事実を知らされたのです!」

「そ、その通り! 辺境伯を相手に知れたからと、手を引けるような立場でないことはご理解頂きたく!」

「にしては皆さん、ずいぶんと目を光らせながら宝物庫の中身を物色していましたけど」

「「「「「「……」」」」」」

自らを殺しに掛かる者か、理不尽に誰かを害し、殺す者。

結局は最初に決めたルールしか自分にはなく、曖昧であればその国の司法に委ねてきたつもりだったが……

今はこうして裁く側であろう上位貴族が死刑台に立っているのだ。

誰も判定を下せないのなら、リアに判断が間違っていたと言われない範囲で自ら決めていくしかない。

その方が守るべき人達をちゃんと守れそうな気もするしな……

「まぁ実行犯じゃないですし、今回はいいですよ。その代わり辺境伯を筆頭に、この国の阿呆共のせいで川の向こうは広範囲に渡ってボロボロなんですから、全力で物資を流して支援してあげてください。橋くらいは僕が架けておきますから」

そう言いながら、宝物庫の中に誘導する。

殺すのは簡単だし、どれほどの規模か分からない商会の売り物を綺麗に奪うことも簡単。

ただこの者達はオーバル領にも、そしてベザートにも近いのだ。

ラグリースと旧ヴァルツ領がボロボロな現状ではこの者達の存在は大きく、安易に潰せばラグリース南部の物流は特に停滞する。

俺が個人で支援するにも限界があるし、俺がしたいのは旅をしながら高みを目指すことで、決して支援に追われる人生ではない。

生かすことで彼らには、この場で殺す以上の利益を生み出してもらう。

黙々と物資を回収し、商人達が宝物庫の中に全員入ったのを確認したら、あとは入り口を一時的に【土魔法】で塞げば準備完了だ。

「さてと、それでは執事のお爺さん、僕と一緒に来てもらいますよ」

「ど、どこにでしょう……?」

「辺境伯と一緒に、軍部の一番偉い人のところへ案内してください」

▽ ▼ ▽ ▼ ▽

「おう? おまえんところもか」

「あぁ、どうも参加した連中は全員っぽいぜ?」

職務についていた者も、休暇だった者も。

班の隊長から緊急の招集が掛かり、ゾロゾロと要塞内部の訓練施設に向かう兵士達。

呼ばれた名目が名目なだけに、向かう者達の足取りは非常に軽く、道中の会話も大いに弾む。

「まさかあの辺境伯が臨時の報酬なんてなぁ……信じられるか?」

「そんだけ川の向こうで儲かったってことだろ? 侯爵家の資産も丸ごと掻っ攫えたんだしよ」

「俺達がくすねた小銭や小物とは訳が違うってか」

「そりゃそうだろ。噂じゃ相当な現金や貴金属、それに見たこともないような魔道具も大量にあったらしいからな」

「へへっ、なら期待しちまうよな。戦争がこんなに美味しいなんて思いもしなかった」

「だな。一旦囲っちまえば女もガキも選び放題だったし、もしかしたら次の話だってあるかもしれないぜ?」

今回呼ばれているのは兵全体ではなく、あくまで作戦の参加者のみ。

だからこそ余計に選ばれたことでの優越感に浸りながら、一般の者では通れぬ城壁の門を潜り、兵の待機所などが存在するエリアへ。

前を行く兵士達の後を追うように、山を掘り進めて固められた、雨天時用の巨大な屋内訓練施設へと進んでいく。

兵士にとっては通い慣れた巨大ホール。

集まるその数はカルージュに常駐している総兵数の半分ほどで、これからの期待もあってか異様な熱気に包まれていた。

そして待つこと暫し。

「せ、静粛にッ!!」

いつもの、総隊長の声じゃない?

多くの者が、この声に違和感を覚えたが。

しかし場は静寂に包まれ、全兵士が直立不動で壇上を見上げる。

兵士は皆が皆、壇上に上がるのは辺境伯だと、そう思っていたわけで。

「「「?」」」

姿を現した見知らぬ少年の姿を、一同は事態が飲み込めぬまま、ただただ茫然と眺めるしかなかった。

――次の言葉が発せられるまでは。

「んー……混ざった例外は無し、ですかね。では盗賊以下のゴミクズに成り下がった皆さん、生涯奴隷かこの場で僕と死ぬ気で戦うか、どちらか好きな方を選んでください」