軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

388話 夢の国

「「「「「は?」」」」」

俺の税金フリーという、ある意味政治を放棄したような発言に、目を見開き固まる3人、いや横の2人もそうだから5人。

そんな中、一番早く正気に戻ったのはヤーゴフさんだった。

「し、正気か? さすがにそれは、無理があるぞ?」

「ん~そうですかね。例えば税を取ったとして、普通はどこに使うんですか?」

「国に仕える人達だって大勢いるでしょ……給金も徴収した税から賄うのよ?」

「でも、いませんよ? 役人も貴族もこの国にいませんし……あぁ、ダンゲ町長に補佐役としてお二人を指名すればそうなるのかもしれませんが」

「これからもっと増えるじゃろ。そもそも兵や軍を持たぬ国など聞いたこともない」

「この町を守る兵は使役した魔物にやらせますので、人の住む場所がこの程度の規模であるうちは問題ないと思っています。軍も何かあれば僕自身がすぐ動いちゃいますし」

「ま、魔物……?」

「何かあればロキが動くというのは、今回の戦争とその顛末を聞けば納得もするが、魔物が兵というのは具体的にどうするのだ?」

「見た目で明らかに強いと分かるAランク魔物を、15体くらいこの町の入り口やクアド商会、あとは町の周囲に配置しておこうかなーと」

「Aランクじゃと!?」

「しかも15体って、そこらの軍隊より遥かに脅威じゃないのよ……」

「……もしや、ロズベリアの竜種か?」

「あまりやり過ぎると人が寄り付かなくなるので、何を連れてくるかは悩みどころですけどね。僕の住んでいるもっと奥の方にもAランク魔物が何種かいたりするので、明日にでも連れてきますよ」

「「「……」」」

年金も無ければ健康保険も無い。

国の施設だって今まで見たのは兵の官舎や宮殿くらいなのだ。

城壁や関所の維持に金が掛かるわけでもないし、多少の細々とした費用負担はあったとしても、目ん玉が飛び出るような税の発生場所がこの環境であるとはとても思えない。

だったら、今はまだ、俺の構想だって十分実現できるはずだ。

「作物を作ってお金に換えたいというなら、いくらでも農地を広げて作ったらいい。何かを加工して売りたいと思う人がいるなら、うちの商会で素材でも買って自由に作れるモノを作ったらいい。僕の今すべき仕事はこの地に外からの人を呼び込み、皆さんが頑張った何かを現金化できる仕組みさえ作れれば一先ずは良いと思っているんです」

「面白い発想だな……農地など普通は領主から割り当てられるのに、どれほど広げるかは自分次第か」

「ですね。その方が皆さんのやる気に繋がると思っていますし、僕は僕でその方が楽ですから。あぁただ、新たに奥へ続く道を作ろうとか、手狭になって居住区を拡張させようとか、明らかに公共性のあるモノは僕がその費用を出しますよ。あと住民の意見を取り纏め、揉め事にならないよう取り仕切るという意味で、発言力の強いお三方にも給金をお渡しします」

「だから、その手の費用を捻出するための税じゃろ?」

「いえ、人が増え、町の規模が遥かに大きくなればそうなる可能性もありますけど、当面は普通に町が出来上がったとしても僕個人の負担でいいですよ」

「王が金を払うだけ払い、一切の税を取らんなど、そんな夢のような国、聞いたこともない……」

だろうね。

普通なら絶対にこんなことはやらないと思う。

普通ならば。

「正直に言えば、どこに税を掛け、どう徴収して、そのお金をどう振り分けるのか。流れくらいは想像できますけど、その辺りの細かいことに時間を割きたくないんですよ。かと言って誰かに任せれば多くの人を雇用しなければいけないでしょうし、そこで誰を雇う、何人雇う、いくらで雇いどのように仕事を割り振るとか、協議と報告にまた時間を食います」

「そ、それはそうじゃろうが……」

「1日でね、たぶんそれなりに本気を出せば、2億ビーケくらいは僕一人で稼げるんです。もちろん買う側が限界を迎えるので、永続的にできる稼ぎ方じゃありませんけど、それでも考えている間に狩りをした方が、この程度の規模なら僕にとっては得でしょう?」

仮に金銭面がトントンだとしても、稼いだ経験値の分だけ俺は税金の会議をしているより得だからな。

それに皆の生活が豊かになってクアド商会でいろいろ買い物をしてくれれば、現金化に困っていた物もどんどん捌けて、俺は俺で金銭的なメリットを十分得られる。

「くくっ、それはそうだろうな。ベザートくらいの小さな田舎町なら、年間を通しても町の維持にそこまでの費用は掛からん」

「なら、極力商人が足を運ぶような場所にしますから、皆さんは好きにやりたいことやって稼いでくださいよ。人に迷惑を掛けたり害を振りまく悪党は許しませんけど、そうでなければ僕があれこれと細かく指示を出すようなこともありませんし、基本的には皆さんのやりたいことを応援しますから」

「好きなこと……それじゃあ、本格的にロキ君から貰った案の製品開発を頑張ってみようかしら」

「良いと思いますよ。土地は有り余るほどあるんですから、自由に活用してやっちゃってください」

「ふーむ、ならワシはもうろくに身体も動かせんし、じじばば集めて子供達に【算術】を教えてやる場でも作ってやるかの」

「素晴らしい。そういうの大賛成です」

「へへっ、へへへっ……見たこともない商品が次々と並ぶ、異世界人で王様のお店とか、興奮でチビリそうなんっすけど……」

「クアドさんよ、あんたは一応売る側だからな?」

「それでも楽しそうじゃないっすか―――……」

皆が思い思いにやりたいことを口にする中、ヤーゴフさんだけは静かに皆の言葉を聞いていた。

いや、聞きながらも考えているのかな。

やりたいことを実現できるか否か、この新天地で推し進めるべきか否か。

きっとハンターギルドを新たに立ち上げたいという話も、未だその気持ちを諦めていないからというのもあるんだと思う。

なら、俺は俺で後押しをしてあげようか。

皆を必ず守れるなんて、そんな大それたことは言えないし言わない。

でも波風立てなければ、安全が確保されるなんていうのは幻想で。

その現実が分かったのならば、対策を取れるよう伝えるべき部分は伝え、その上で俺自身も可能な限り守れるように手を尽くしたらいい。

「ヤーゴフさん」

「なんだ?」

「今後開拓を進めていくなら、極力町の東から南方面に掛けて広げるようにしてください」

「それは構わないが……理由は? ラグリースとの国境を明確にするためか?」

ここで一度、俺は大きく息を吸う。

もう明かすべき事実。

ここに町が作られようとしているのなら、伝えなければ逆に危険が伴う可能性のある事実――。

「ここから南東にそう遠く離れていない場所、そこで僕はこの世界に降り立ちましたから」