軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

266話 求める居場所

俺の告白は、ロッジさんにとって爆弾発言だったのだろう。

面白いくらいに動揺しながら、次から次へと出す俺の装備を判別していく。

「はい」

「ミ、ミスリル」

「これは」

「ミスリルだ!」

「どうだ」

「これは……シルバーッ!! 下がっとるがな!!」

「うえぇ!?」

そして10個目くらいになった時。

「次は鎧っ!」

そう言って取り出したモノに、俺もロッジさんも二人して、ん? ってなった。

なんかちょっとシルバーに黒が混じったような、かつて見たことがあるような色味をしている、ような……気がする。

「ふぉ……」

「ふぉ……?」

「ふぉおおおお!! こ、この鎧はダマスカスだッ! 間違いねぇ!!」

「ふぉふぉふぉふぉううううう!?」

ややややっと、きたぁあああああああああああッ!!

内心ちょっと心配してたのだ。

おいおい、ほんとに混ざってんのかよと。

考えてみたら俺だってシルバーとミスリルの合わせ技だし、長年通っているっぽいグロムさんがやっと手に入れたような装備がダマスカス製なのだ。

Aランク狩場なら、半分くらいの人は持ってるんじゃない? って考えはかなり甘かったらしい。

「良かったですね~ほんと混ざってて良かった……」

「本当だな。これでおまえの武器も、ショートソードくらいなら十分作ってやれるだろう。まぁ種火があればだが」

「あ、あの特殊な魔石ですよね?」

「そうだ。ダマスカス以上は溶かして鍛造するとき必要になる」

そういえばそのことをすっかり忘れていた。

が、たぶん俺の予想通りなら大丈夫だろう。

ゲームにありがちなイベントアイテムと言われたら絶望的だが、たぶんこの世界なら中途半端にリアル寄せをしてくるはずだ。

「それって、熱量の問題ですよね?」

「そうだが、おまえ鍛冶もやるのか?」

「いえいえ、まったく。でも『 白(・) い(・) 火(・) 』なら出せるんですけど、それでなんとかなりません?」

「……は?」

まぁ言ってもそりゃ分からないよね。

なので直接指先マッチの火を――

――【白火】――

目の前で白くした。

するとロッジさんの目の色が変わり、強引に俺の腕を引っ張りながらカウンター奥の作業場へ。

そのまま炉の前に移動させられ、その火を入れろと言われたので言う通りにすれば、ロッジさんは火に手を当てしばらく固まっていた。

あまりにも真剣な表情だったし、俺は何かを確認していると思っていたので、下手に声を掛けることもできない。

コオォォォッと空気を勢い良く燃焼させているような音だけが響く中、どうしたものかと黙っていたら、ロッジさんが視線は火に向けたまま口を開いた。

「ロキ、おまえは何者だ?」

ちょくちょく聞く言葉だ。

一瞬悩むも、今更隠すべき部分じゃないと、すぐに答える。

「異世界人ってやつですよ」

「そうか……」

「悪い印象、持ってました?」

あの女が絡んでいるのだ。

実質ロッジさんは、あの女に居場所を奪われている。

「そんなもん、人によるだろう。それこそ種で括るもんじゃねぇよ。俺があのマリーとかいう女を個人的に許さねぇってだけだ」

「同じ考えですね。僕は『バルニール』で随分な値段だなと、内心嫌な思いをしました。でもドワーフが嫌いということにはなりません。だからロッジさん、『良い人』だと思ったあなたを訪ねました」

「……」

「僕と、僕の仲間の装備、作ってくれません?」

「仲間がいるのか?」

「えぇ。と言っても自分達の拠点にですけどね。周りがAランクの魔物だらけなんで、ある程度強い装備が欲しいんですよ」

「すげぇ場所だな」

「はは。景観は素晴らしいですし、魔物の肉もまぁ美味いんですけど、とにかく何も無くて――」

「上位素材、取り放題じゃねーか!」

「あ、そっちっすか……」

この人もたぶん相当な変態だ。

もしくは今まで我慢していた鬱憤が溜まっているのかもしれない。

まぁ俺も自分が変態の欠陥人間だと自覚しているので、この程度のことでどうのと思うことはないけど。

拠点の周囲にいる魔物情報なんかをアレコレ聞かれてざっくり答えていると、知らない魔物が多いのか大興奮しているロッジさん。

が、興奮から一転。

我に返ったような真顔で口を開く。

「一つ確認させろ」

「はい?」

「おまえもその仲間も、Aランク相当の魔物を十分倒せるってのは分かったが……Sランク素材も集める気あるのか?」

「へ? そんな、Sランク素材なんて当たり前ですし、それ以上も集めますよ? それにボス素材も集めていきたいですしね」

まったくロッジさんは、なんてことを聞いてくるんだ。

Sランクがアダマンチウム系の時点で、さらに上の素材があるのは俺の中で確定事項。

どうせファンタジーな世界ならオリハルコンだろうし、そんなもん集めるに決まってるでしょう!

ただ問題はまだありそうなもう1枠だ。

『ヒヒイロカネ』じゃちょっと弱い気もするし……ここは今までのゲーム知識をフル活用してもよく分からない。

それにボス素材の有用性も全然分かっていないんだよなぁ。

「くっ、くはははっ! 当たり前のように集めると言い切るか! やはり異世界人はバカばっかりだな! その魔力が魔物みてぇに黒いのも特徴か?」

「あ……」

言われて初めて、先ほど自分がやらかしていたことに今更気付く。

やべぇ、何を目の前で普通に指先マッチやってんだ……

【白火】で代用がきくのか確認したくて、すっかり頭から抜け落ちていた。

「まぁ、んなことはどうだっていいか。どの道鍛冶師としての欲を優先するなら俺に選択肢はねぇんだ。ロキもロキの仲間の分も、素材さえ用意してくれりゃいくらでも作ってやるよ。おまえについてきゃ、『火種』もいらねーみたいだしな」

「お、おぉ!? ありがとうござ―――ん? ついてく?」

聞き間違いだろうか?

なんかおかしな言葉が聞こえた気がする。

「ロキの拠点に行きゃあ俺の知らねぇAランク素材は集まるし、お前がそれ以上の素材だって採ってくるんだろ?」

「た、確かにそれはその予定なんですけど、僕含めて3人――いや、ちょっと離れたところで人が増えたり減ったりしていてアレですが、基本はたった3人で自由気儘に生活してるんですよ?」

「そうか」

「いやいや、『そうか』って、何を真顔で答えてるんですか! お店すら一軒も無いんですからね!?」

「でもお前が、その収納? だかってやつで、大概のこと解決させてんだろ?」

「……ん、んんーまぁ、ハイ」

「それにな、今更ロズベリアに戻ったって俺の居場所はねぇよ。『バルニール』が存在する限り、いくらロキから素材を融通してもらおうが、結局はどうあっても嫌がらせを受ける」

……それは、その通りになるだろうな。

結局障害になるのは価格設定だ。

ロッジさんがバルニールに合わせられれば大概は解決するんだろうけど、そんな決断ができるならそもそも町を追われていない。

意地でも周りの流れに合わせなかったのは、『装備はハンターを生かすために』という根底の考えがあったからこそ。

高くすればハンターが困るから価格を抑えるロッジさんと、利益を最優先するバルニールではどうあっても衝突するわけで、そうなった時は残念だが多勢が有利になるのは否めない。

俺とマリーがぶつかればまた違うだろうけど……まずその国にも辿り着いていないしなぁ。

ただ、そこまでは理解できても、せっかく居を構えたローエンフォートを捨てるのは違うだろう。

それこそロッジさんの持つ矜持から外れた行為になる。

「ローエンフォートはどうするんです? ロッジさんの腕を頼るBランクハンターはいっぱいいるでしょう?」

「ふん……いるが、いねぇんだ。それがこの町で仕事してみてよく分かった」

「へ? どういうことです?」

「<鍛冶師>もしくは<上級鍛冶師>の職業加護も重ねりゃ、Bランク素材までは扱える鍛冶師なんざ世の中それなりにいる。もちろんローエンフォートにもな」

「え、えーと、つまり?」

「俺じゃなきゃいけないってことがねーんだよ。たしかに俺がBランク装備を作れば他より早く完成はする。でもその程度で、Bランク装備の製作に慣れているやつなら出来栄えなんざ大した違いはない」

「そう、だったんですか……」

「だから丁度いいんだ。金を貯めて、いつかSランク以上の素材が採れる町でも探す旅に出ようと思っていた。自分の居場所を求めてな」

「……」

家が無い。拠点の二人は絶滅危惧種の古代人。更に上台地には残念な神様達もいる。

断るための口実はまだまだあるけど、じゃあ本当に断りたいのか? となれば、それはまた違うわけで。

本人がそうしたいと言うならどうぞどうぞ! というのが俺の本音だ。

環境が合わなきゃまた送り届ければいいし、その時に俺達の拠点がパルメラの中だとは言っても、具体的にどこかなんて【地図作成】のスキルがなければ分かりようがない。

でも、これだけは聞いておかなければ――

「仮にロッジさんが拠点で装備を作ったとしても、それらをまともに販売するルートが僕にはありません。簡単にできるものでもないと思います。このままでは『装備はハンターを生かすために』というロッジさんの考えを貫けませんが、それでいいんですか?」

「何言ってやがんだ? おまえもハンターだろうが」

「……へ?」

「なんか勘違いしてそうだが、俺は聖人君子じゃねぇからな? 人の好き嫌いなんざ普通にあるし、少なくともロズベリアで俺がまともに鍛冶仕事ができなくなった時、誰も俺を頼ることはなくなった。一斉に馴染みの客も得意先も、皆が俺から離れたんだ。ローエンフォートに居を移しても、わざわざ『俺を』頼ってきたやつなんざお前以外いなかった」

「そ、それは……」

「おまえに人並外れた移動能力があるのは理解してるけどな。まぁ、それでもだ。てめぇで磨いてきた力を頼られるってのは、やっぱり嬉しいもんだろう?」

そう言って鼻を掻きながら笑う姿を見れば、俺まで釣られて笑ってしまう。

「たしかにここじゃあ、素材の置き場すらありませんしねぇ……欲しいですか? 巨大な素材置き場」

「ククッ、あったら最高だな! そこに見たこともねぇ素材や、ボス級の希少素材なんかが置かれんだろ!?」

バーンと、極太の短い両手を広げて目を輝かせるロッジさん。

まぁ、いいか。

悪いことじゃなければ、その人のやりたいことをやれるのが一番で。

ロッジさんにとって夢中になれるソレがあの拠点で実現可能なら、好きにやってくれたらいい。

あれだけ広いのだから誰に迷惑を掛けることもないし、問題があればちょっとずつ解決していけばいいだろう。

(それでも、一応みんなにも意見は聞かないとな……)

俺は拠点の人達に一応確認するから、少しだけ保留にさせてもらうようお願いする。

が、皆の反応はあっさりしたもので、結局翌日からロッジさんは引っ越しの準備を進めるのだった。