軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

259話 再開と拡張

拠点からベザートまでの魔力消費量は俺一人で950ほど。

急激に減る魔力は最初こそ嘔吐感を催すくらいだったが、今は慣れてきたこともあって、すぐに知っている人のところへお土産という名の『余りモノ』を配っていく。

ハンターギルド、パイサーさんの装備屋、宿屋ビリーコーンの女将さん、教会の人達にかぁりぃのインド人や靴屋に屋台のおっちゃんなどなど。

俺が狩った魔物はカルラが解体していくわけだが、その時どうしたってお肉が大量に余る。

アリシアは高確率で上台地にいるようだけど、それでもたった4人、増えたって食べる人は9人なのだ。

みんな大好きユニコーンを1匹捌いたところでまったく食いきれないわけで、かと言ってさすがにファルメンタの偉い人、オルグさんのところにすぐ売りに行くほどの量でもなく、ならば余った肉くらい腐る前に配ってしまえと。

こうなっているわけである。

リルも無事復活して『上台地周辺の誰得警護』を夜間にコソコソ始めたらしいし、これから今まで以上に素材が余り気味になってしまうんだろうな。

味変のために熟成肉は無理でも、燻製肉の作り方くらい学んだ方が良いのかもしれない。

まぁ俺は外でお金稼ぎと町へのお使いが仕事なので、作る作業は誰かにお任せしますが。

「おはようございます!」

「あら、ロキ君! 随分と久しぶりじゃない。戻ってきたんだってね」

「えぇ、ベザートに定住しているわけじゃありませんが、すぐ立ち寄れる環境を整えましたので」

「メイが喜んでたわよ~? それでどうしたの? あの子ならもうロッカー平原に向かったはずだけど」

「あ~お裾分けを持ってきただけですから大丈夫ですよ。これ、余り物のお肉ですので食べてください」

そう言ってカウンターにドドンとブロック肉を置いたら、目の前にいるメイちゃんママの顔が完全に隠れてしまった。

「ちょ、ちょっと多くないかしら……? うちでこんなに食べられないわよ?」

「なのでできればメイちゃんに、ジンク君とポッタ君にも分けてあげてって伝えてもらいたいんですよ。僕まだ二人の家を知らなくてですね」

「あらら、じゃあお昼にパパが戻ってくるから、その時にお願いしちゃうわ」

もうこうして戻ってこられたわけだし、本当は二人の家も把握しておいた方が良いんだろうな。

ポッタ君の家は他にも子供がいっぱいいるような話を聞いているので、たぶん届ければ一番喜んでくれるだろう。

【飛行】しながら【探査】で無理やり突き止めるというのも、なんかストーカーっぽくて違う気もするし……うん、今度直接会った時に聞いていこう。

ならばぜひお願いしますと、メイちゃん家にだけ特別に魔樹の果実も付けておき、収納が軽くなったところでヴァルツの玄関口『グリールモルグ』へ。

久々だなーと思いながら、そのまますぐに傭兵ギルドへ顔を出す。

なんせ今日からヴァルツ中央部のマッピング作業再開だ。

既に主要狩場は回った後なので、一応狩場情報のチェックは欠かさないが、ここからフレイビルに入るまでは、特に悪党討伐がメインになってくるだろう。

ついでに埋めた戦利品も一通り回収。

なんとかしてお金を貯めていかないと、次の本購入代金がまったく足らない予感しかしない。

ちなみに、たぶん出現するであろう《イスラ荒野》の裏ボスは、まだ死にたくないのでやりません。

湧かせた後に逃亡という選択が取れるなら試してみたいとは思うけど、そのまま存在が残り続ける可能性も考えれば責任が重過ぎるからね。

せめて表に出ている普通のボスを安定して単独討伐できるようになってから――このくらいの判断をしておいても間違いではないと思う。

(ふむふむ、ワーガスト山道付近で15人規模の山賊……場所が分からないけど、4日前で討伐報酬450万ビーケならまずまずかな? こっちは単独で16人殺して逃走中、規模はデカいけど40万ビーケって、安過ぎでしょ……)

とりあえず【跳躍】しながら気になるやつを全部取って、ニヤニヤしながら眺めていた受付嬢ミルフィさんのところへ持っていく。

「久しぶりじゃない。相変わらず背が届いてなかったわね」

「くっ、もうちょっとで伸びるはずなんですよ! いや、たぶんですけど」

「ふーん。でも生き残ってるなんてやるじゃない? いくつか依頼もこなしているみたいだし」

「あ、他の町の情報とかもやっぱり入ってくるんですね」

「近隣の町とは依頼情報を共有しているんだし当然よ。傭兵稼業は情報の鮮度が命なんだから、ハンターギルドみたいに伝達が遅いんじゃやっていけないわ」

ミルフィさんはハンターギルドに恨みでもあるのだろうか……?

言っていることはその通りだと思うけど、言葉に棘を感じてしまう。

ライバル関係だから、ってことなのかな?

まぁ余計な詮索をする必要はない。

俺はまだマッピングが完了していないエリアにいそうな悪党情報が掴めればそれでいいのだ。

「これから東方面に行くので、そっちの方角にいそうなやつを教えてください」

こうしてまずは、ゼオ達の発見とともに中断となっていた亀裂内部を。

そのまま外周の地図を繋げたら、上下に移動しながらマッピング作業を進めていく。

薄々感じてはいたけど、パルメラ内部にある拠点の方がここより明らかに暖かい。

たぶん2000㎞くらいは北にいるはずなので、上空を高速で飛べば鼻水が凍りそうになる。

ちなみに、ついついというかなんというか、スキルポイントが入ったことで調子に乗ってしまい、【地図作成】をレベル4まで上げてしまった。

理由は色々あるが、一番はマッピング効率を上げたかったからだ。

レベル1からレベル2に上げた時、僅かではあるもマッピング対象範囲が広がったような感覚はあった。

しかし詳細説明に記載されているわけでもなく、実際そうなったのか勘違いなのか、答えも分からない程度の微妙さ加減。

だから今回は本気で判別するためにも試したのだ。

未踏破の真っ黒い部分をまっすぐに飛び、スキルをレベル3にしてすぐに地図画面へ戻る。

すると一定のポイントからほんの僅かに伸びる線が『太く』なっていた。

これでやっとモヤモヤが解消、マッピング範囲が少しだけ広がったということで間違いないだろう。

そう思ったらレベル4にまで流れるように上げてしまっていたが、決して後悔はしていない。

せっかく得たスキルポイントがこれで『16』しかなくなってしまったけど、マッピング進行が加速して損することはないし、マッピングが終わっていると次の国へも気持ち良く移動できる。

それに魔物からも人からも、絶対に経験値を得られない類のスキルだからね。

スキルポイントを使うならこういうスキルじゃないと損になる可能性が高いのだから、間違いなくこれは有意義な使い方だっただろう。

それにスキルレベル4で、そんな機能があることだけは聞いていた、『地図の拡大縮小』もやっと覚えられたし。

まだそれぞれ3倍程度といったところだけど、今まではセコセコと画面をスクロールさせながら距離や位置を測っていたので、3倍ならラグリースやヴァルツを移動するには必要十分な縮尺だ。

ちなみにレベル3は『任意で移動経緯の表示、消去が可能』というものだったけど、ゼオ達の所にあったトラップを抜けた今となっては使いどころが無さそうである。

そんなわけで5日ほど。

色塗りの感覚で地図画面に映る黒い部分を消していき、途中2組の簡単な『掃除』もしつつ、ヴァルツ王国の首都『エントラ』に到着。

王都に着いたらその国を一緒に勉強する約束をしていたので、半分調査、半分デート感覚でリステと街中を徘徊すれば、横にアドバイザーがいることもあってラグリースとは違った部分が見えてくる。

「ん~最初は気のせいかなと思ってたけど、やっぱり食べ物の値段高いよね?」

「間違いありませんね。環境が違うわけですから、食材の一部が高いのはしょうがないことですが……特産と謳う豚や鳥などの肉類も全般的に高く感じます」

「これで味が違うなら納得なんだけどなぁ。俺の舌って凄く庶民的だから、その差がよく分からないんだよね」

「私もです。価格差に見合う質の違いを感じられません」

二人して屋台メシを食べながら「う~ん」と唸る。

価格は倍から、酷いと5倍くらいまで違っていたりする。

それが一部の特殊な香辛料や食材とか、限定的なモノだけなら何も違和感を覚えることはないと思うけど、どういう訳かなんでもかんでも高いのだ。

それは食材だけに留まらないようで。

「衣類も、それに生活用品も少し高く感じますね」

「共通通貨の隣国なのになんでだろうね? やっぱり差別と緊張状態で国交が冷え込んでたせいかな?」

「情報を塞き止められていたことが一番の原因でしょう」

「『外』を知らなければ、それが当たり前としか思わないか……」

自分で言っておいて、そりゃそうだよなと思ってしまう。

比較対象を知らなければ何も判断のしようがない。

搾取され、苦しい環境に身を置かれていたとしても、それが周りを見ても当たり前で、もっと劣悪な環境を身近に用意されれば、人は ま(・) だ(・) マ(・) シ(・) な(・) ん(・) だ(・) と納得してしまう。

そう思った時、真っ先にブラック企業が出てきてしまうのは、現代日本人ならしょうがないことなのかな。

細道が多く、かなり汚い印象を覚える路地には、浮浪者と思われる人達が多く地面に寝そべっていた。

その中には小さな子供もいて。

近しい環境はあっても、ラグリースでここまで分かりやすい光景はほとんど見なかったなと今更ながらに思う。

「あとちょっとでヴァルツ王国の地図もできるし、人の往来がもっと活発になって改善されていったら良いんだけどね」

「大丈夫です。しますよ、きっと」

リステは当然として、俺自身も今見えている光景に直接手を差し伸べたりはしない。

こういう世界も当たり前のようにあるんだと、理解した上で動く。

それだけだ。

当初の予定通り滞在は僅か半日。

コーヒー以外にも、麻製品でいくつか使えそうな品に目星をつけつつ、ただ滅多に来ることもなさそうだなと感じながら、複数の尾行を撒くように俺は王都『エントラ』を後にした。