軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

252話 <開拓者>

家なのかよく分からないものはたしかにあった。

断崖から1㎞くらいは奥に入ったところだろうか。

川の近くで凄まじい量の木材に囲まれながら、今にも崩れそうな掘立小屋をアリシアが作っている。

その横では木の皮むきをしているフィーリルとリステが。

いや、あれは皮むきなのか……?

根っこ付きの木が大量に宙を舞っており、物凄い勢いで皮や根っこが何かで削られていた。

しかし量は減ることもなく、次から次へと大量の木材が空から飛来している。

目を凝らせば、遠くでリアが手をバンザイしてなんかやっており、大きな石はまた別の場所へ凄い勢いで飛ばされていた。

(【重力魔法】と、皮の削りは【風魔法】だよな、たぶん……)

どの魔法を使っているかは予想できるが、やっている内容は理解ができない。

というか、ここは2時間くらい前まで辺り一面が森だったはずなのだが?

それが1㎞どころか、周囲数㎞に渡って土が向き出しの平坦な台地が続いており、切り株さえ一つも見当たらない。

俺達がコツコツやっていた伐採とはあまりにも違う結果で、まさかこの女神様達に負けたのかと、なぜか悔しさまで込み上げてしまう。

(この犯人は、誰だ!?)

血眼になって探せば――……うーん、アレだろうな、間違いない。

遠目からでもモコモコと、地面が広範囲に渡ってうねりながら隆起を繰り返している理解不能な現象が起きていた。

近くに飛んでいけば、そこには片膝を突き、両手のひらを地面に付けながら前方を見据えるフェリンの姿が。

そのまま異世界勇者を召喚しそうなポージングにビビッてしまうも、その表情はいつになく真剣だ。

フェリンなのに話しかけにくいと感じるほどだったが、それでもこの状況――聞かないわけにはいかないだろう。

「や、やっほー!」

「あ、ロキ君だ! ヤッホー!」

「俺も下台地で伐採してたんだけどさ、まったく切り株を残さないっていうのは凄いね。これは【土魔法】でやってるの?」

上手く活用できれば、下台地での作業も捗る。

そう思って聞いてみれば、フェリンからは予想外の返答が返ってきてしまった。

「頑張ればできるんじゃないかな? ずっと範囲は狭くなっちゃうと思うけど」

「え? ってことは、フェリンは何をやってこんな綺麗に整地できてるの? あ、もしかして【精霊魔法】?」

「ぶっぶー! 【地形変動】ってスキルだよ。凄いでしょ!」

……なんぞ、それ?

絶対ないよなぁと思いながらスキルツリーを眺めるも、やはりまだ解放すらされていない。

いったいどうすれば手に入るのか。

答えを聞こうか聞くまいか悩んでいると、先にフェリンが納得のゆく答えを教えてくれた。

「私の固有最上位加護<開拓者>についてくるスキルだからね~こういう時には便利でしょ?」

「はは……まさにここが出番って感じだね。そりゃ俺じゃ真似できないわ。【地形変動】ってことは、もしかして山や川を造ったりもできるの?」

「そうそう! って水を一緒に生み出すわけじゃないから、その地形を造るだけだけど。大規模で地形を変えるものって思っておけばいんじゃないかなー? その分魔力の消費すんごいけどね!」

「ほえ~」

凄いな……

あまり神様っぽくないフェリンだけど、固有最上位加護はリアに次いで人外染みているんじゃないか?

思わずそう思ってしまった。

地形クリエイトとまではいかないにしても、かなりそれに近いことを広範囲でやってのけるのだ。

まさに神の御業。

見てしまえば欲しくなるけど――……

「リルは、まさか具合悪いのに、この奥?」

「うんうん! しょうがないからゆっくり魔物を狩ってくるって言ってた!」

「そ、そう。相変わらずだねリルは」

それでも、やっぱり言えないよね。

これからやっと楽しみにしていた旅に出られるというのに、フェリンの出鼻を挫くようなお願いなんてできるわけがない。

でも、それでも、いつかは欲しいなぁ……

そう思いながら、「地面が揺れているからほどほどにね」と告げ、リルの様子を見に現在進行形で開拓されている森の内部へと入っていった。

▽ ▼ ▽ ▼ ▽

揺らめく火にかけられた不思議な容器は、先日本を買いに寄った王都で見つけたモノ。

どうやらコーヒー豆と一緒にラグリースへ入ってきているらしく、店員さんに聞けば、それはコーヒーを作る専用の器具らしい。

そう言われると、ばあさんの部屋でも似たようなモノを見たような気が……となれば俺に買わない選択なんてなかった。

言われた通り何回か煮立ってはかき混ぜてを繰り返し、そろそろいいかなと思ったところで木のコップに注ぐ。

「ゼオとカルラも飲む?」

「良い匂いだな。我も貰いたい」

「ボクは血があるから大丈夫だよ~」

カルラはそう言ってマイコップを持ちながら森の方へと走っていった。

数本残した木にはいくつかの部位に分けられた魔物の死骸が吊るされており、血抜き兼カルラの飲み物用として、血が溜まるように【土魔法】で生み出した石材の大きな器を設置しているので、今後は飲み物に困ることもないだろう。

最初はこの付近の魔物が全部大きいと嘆いていたけど、今じゃ血の量が豊富とあってニッコニコだからな。

「うげ~風でさっきから焚火の煙が……でも火に当たりながら寒空の中で好きなコーヒーとは、なんと贅沢なことか~」

「生木だからしょうがない。それにしても、我が眠る前と似たようなモノが今も使われているとはな」

「なんかこの世界は文明が全然発展しないどころか、ちょっとずつ衰退しているみたいだからねぇ。あ、何か追加で生活に必要そうなものある? 言われても今の時代じゃ存在しないものがあるかもしれないけど、あるならそのうち纏めて買ってくるよ」

「ふむ。ではノコギリを用意してもらえないか? 魔力の節約で【風魔法】を使わないようにしているのでな。情けないことに木すらまともに切れん」

「オッケ~ノコギリね。でもまぁゼオの知識で皆が助けられてるんだから気にしないでよ。いてくれなかったら今頃大変だよ?」

そう言って思わず上台地を眺めれば、コップを啜りながら歩いていたカルラも賛同する。

「そうそう。別に嫌いじゃなかったけど、師匠がいなかったらずーっと洞窟暮らしだからね!」

「ふっ……そう考えると誰に非難されるわけでもないこの地は非常に過ごしやすいな。ロキよ、上の者達は大丈夫そうなのか?」

「あーうん、なんか練習って言って小屋が乱立してたけど大丈夫だと思うよ。あの人達は俺なんかより全然強いし逞しいからね。たまに今日顔合わせした"アーシア"が何か聞きにくるかもしれないけど、その時はできれば教えてあげて? 何かあればきっと彼女も助けてくれるはずだから」

「承知している。あの高さを移動してきているわけだしな。上台地の者達も、ロキにとっては仲間なのだろう?」

「うん、仲間……というのもあるけど、大事な人達――『理解者』になるのかな?」

「そうか……ならば大事にしないとな」

「大事な人ってさ、いなくなるだけで、ほーんと全てがどうでもよくなっちゃったりするもんね」

「……ほんとに、ね。だからもうちょっとここの安全がしっかり確保できたら、上と下を行ったり来たりすることになると思うけど気にしないでね。あ、あと崖の途中に隠れ家作るかも」

「あ、ボクも作りたーい!」

そのあとも3人で火に当たりながら今後の予定を決めていく。

ゼオは1軒目のログハウスを作ったら、薪棚ともう一つのログハウスを。

カルラはゼオと一緒のログハウスみたいなので、俺は崖の中でも十分寝られるけど、一応そちらは俺の個人用にしてくれるそうだ。

そして終わったらなんと、湖で漁をするための小舟も作るらしい。

船まで作れるとか、マジでゼオさんハンパねーっす! と一人興奮したのは言うまでもない。

基本は例の古代魔道具が作用している範囲内を行動するので、今後も安全地帯の拡張を進めていけば、まずゼオがこの地でいきなり魔物にやられているなんてことも無くなるだろう。

そしてカルラはこの状況でゼオの傍を離れるわけもなく、今課題となっている安全地帯の拡張と、拠点付近の魔物退治が当面の行動予定になる。

その合間に資金調達用の魔石を確保しつつ、死体をバラして皮などの素材活用法を考えるらしい。

特にマンティコアは毛がなかなか良質っぽく、床の敷物に最適だと喜んでいた。

料理は二人ともそこまで得意じゃないらしいが……まぁ男3人だしね。

全員肉が食えればとりあえずはオッケーなので、塩さえ切らさなきゃ問題無いだろう。

食材なら一応俺の収納にも入っているので、食い物で困るようなことはまず無さそうである。

そして肝心の俺は、今日中に崖の内部を大きく加工し、デカい氷を壁に埋めた冷蔵食糧庫を設置。

あとは家と湖の間にでも大きめの風呂を1つ作ったら、明日から一旦ヴァルツ王国のマッピング作業を止め、ここを拠点にパルメラの狩りを本格化させる。

理由は3つあって、一番はここのAランク狩場ならレベルが1つくらいは上がりそうだからだ。

今欲しいのはスキルポイントで、調子に乗ってきっちり0ポイントまで使い果たしてしまったため、いざという時用のスキルポイントがなんぼかは欲しいところ。

ヴァルツ王国の『ルシェ』にはスライムがいたように、場所が変われば同じ第六層でも魔物構成が変わる可能性は大いにある――ならば探索ついでにB~Aランク狩場の魔物情報を収集。

ついでにB~Aランク狩場を巡って経験値も稼ぎつつ、軽くスキル収集を行えば一石二鳥ってなもんである。

非効率でも所持スキルのレベルが高ければ、一定ラインまでは簡単にスキルレベルを上げられるわけだしね。

ここで新規スキルを拾いつつ、まだまだ欲しい魔力総量を底上げしていくのも狙いだ。

あとはついでの第七層以降の調査だな。

まずは存在するのかどうか、そして存在した場合Sランク相当の魔物は倒せるのか。

……たぶん、やるならガチンコだろう。

客観的に自分が今どの立ち位置にいそうかを考えれば、Sランク魔物は勝てるはずだけど状況によっては死がチラつく。

Aランクハンターフィデル達との交戦を考えればそんな気がしてくる。

なので状況次第だな。

ガーゴイルの【絶鳴】や【招集】のような、魔物を集める効果のある特殊スキルでも無ければ魔物が散り過ぎていて効率が悪い。

おまけに換金場所が近くにないので、資金不足なのに金銭効率もあまりよろしくない。

これは間違いないことなので、あまり時間を掛けずに美味しい部分だけを拾っていこうと思う。

さーて、方針が決まればサクッと作業開始だ。

まずはナイスなお風呂を作っちゃいますかねぇ。