軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ゼアトからそう遠く離れていない森の中で、ゴブリンが肉を貪っている。ごくありふれた日常であったが、今回は異常な光景となっている。

ゴブリンが同族であるゴブリンを殺して食べているのだ。

ゴブリンは雑食ではあるが、基本は狩りを行い小動物などを主食としている。だから同族を食べるなど、まずあり得ない。だが、現に今ゴブリンは仲間であるゴブリンを食べている。

同族を食べるなど、よほどの飢餓状態でもなければ食べない。つまり、今ゴブリンは極限に空腹で仲間すら食べてしまう衝動に陥っている。

やがて、仲間を食べ終えたゴブリンは満腹感に満たされたが、すぐに餓えた獣のように涎を垂らして獲物を捜し求める。

そして、餓えたゴブリンは獲物を見つける。ゴブリンの前にいたのはゴブリンよりも屈強な身体を持つオークだ。

いくら餓えていてもオークには手を出さないゴブリンだが、極限の飢餓状態にあったゴブリンは正常な判断が出来ない。

ただ、今はこの空腹感を満たしたいと凶暴になったゴブリンは格上の魔物であるオークに襲い掛かる。

しかし、ゴブリン一匹程度オークの相手ではない。オークはゴブリンを簡単に捻り潰して殺した。

普段なら、このまま立ち去るオークであったがオークもゴブリン同様に飢えていた。だから、オークは殺したゴブリンの死体を持ち上げると、大きな口を開けてバリバリと食べていく。

ゴクリと喉を鳴らしてゴブリンを平らげたオークは満たされなかったので、次なる獲物を求めて森を彷徨う。向かう方向にはゼアトがあった。

森で異変が起きている頃、水不足を解決していたレオルドは今日も元気にギルバートにぶっ飛ばされ、バルバロトに叩き潰されていた。

「ぶひぃぃぃいいいいい!!!」

「その叫び声はどうにかならんのですか……」

「ならんのでしょうな……」

炎天下、レオルドは汗まみれ泥まみれになりながらも、懸命にダイエットと名の付いた稽古に励んでいる。

相変わらず、吹っ飛ばされる時の悲鳴が豚のようになるのは変わらない。嘆くギルバートと呆れるバルバロトは溜息が零れるばかりだ。

そんな二人の気持ちに気付く事はなく、吹き飛ばされたレオルドは木剣を杖代わりに立ち上がる。プルプルと産まれたばかりの小鹿みたいに足を震わせている姿に覗き見しているシェリアは笑わずにはいられなかった。

「ぷふっ! ガンバレー、レオルド様ー」

その声は笑っていたせいで震えていた。

シェリアが覗き見していることを知らないレオルドは覚束ない足取りで稽古相手であるバルバロトの前に戻る。

「次だ……!」

「では、行きますよ!」

カンカンと木剣がぶつかる音が屋敷に鳴り響く。使用人達にとっては日常となりBGMと化していた。

「ふっ!」

「甘い!!」

「くっ……!」

「そこ!」

「ぐあっ!?」

攻めるレオルドだったが、甘い部分を狙われてバルバロトの反撃を許してしまい、手を叩かれて木剣を落とす。

「まだまだですね」

「くぅ……」

バルバロトの言葉にレオルドは悔しそうに唸りながら木剣を拾い上げる。

「しかし、レオルド様も大分上達されましたね」

「そうは言うが、未だに一本も取れていないぞ」

「そりゃ、俺は常日頃から剣を振るっていますからね。つい最近、剣術の稽古を再開したレオルド様に負けては俺の立つ瀬がありませんよ」

「むう。弟子に花を持たせようとは思わないのか?」

「それで満足するなら構いませんけど?」

「ちっ。見てろよ。お前らから必ず一本取って見せるからな」

強気な宣言をするレオルドにバルバロト、ギルバートの顔が綻ぶ。

「ふふふ。まだまだ元気がありそうですな、坊ちゃま」

「そうみたいですね。では、もう一度やりましょうか」

「いや、あの、どうしてそんなに笑ってるの?」

真っ黒な笑みを浮かべる両名にレオルドは震えながらも立ち向かった。

結果はいつものように啖呵を切ったレオルドが二人によって盛大にボコボコにされたのであった。

「いてて……っ! 今日は沢山痣が出来てるな」

泥まみれになった身体を濡れたタオルで拭くレオルドは自身の身体に出来た青痣を見て溜息を零す。

「はあ……いつになったら二人から一本取れるようになるんだろ」

残念ながら、まだまだその日は遠い。

伝説の暗殺者であるギルバートにゼアト一の騎士であるバルバロトから一本を取ることは今のレオルドには難しい。

ただ、レオルドが腐らずに武術の鍛錬に打ち込んでいれば可能性はあった。しかし、今のレオルドはブランクがあるため、二人との実力差を埋めるのは時間が掛かる。

なので、レオルドが二人から一本を取るのはまだまだ先の話だ。

レオルドは汚れた身体を綺麗にしたら、用意されている新しい服に着替えて食堂へと向かう。

午前の稽古で動き回ったレオルドは空腹で食堂から匂う美味しそうな匂いに抗えない。

思わず食堂の扉をバンッと勢いよく開けてしまい、中にいた使用人を驚かしてしまう。

「坊ちゃま。空腹で我慢がならなかったのは分かりますが、 皆(みな) が驚くのでドアは静かに開けてください」

「う、うむ。すまなかった」

ギルバートに注意されて反省するレオルドは席に着いた。

食事の準備が整い、レオルドは一人食事を進めていく。

レオルドが食事を終えた時、食堂へとバルバロトが駆け込んできた。後ろには使用人がいるようで、どうやら余程のことがあったらしく急いで来たようだ。

「何事ですかな。バルバロト殿」

「ギルバート殿! 少々お耳を」

咎めるような視線でバルバロトを睨んでいたギルバートだったが、バルバロトの焦燥した様子にギルバートは只事ではないと察してバルバロトに近寄る。

「巡回中の騎士から連絡がありまして、どうやらモンスターパニックの兆候が発見されたそうです」

「それは本当ですか?」

「はい。間違いないかと」

「ならば、すぐにこの事実を領主であられるベルーガ様にご報告せねば」

「お願いします。私は防衛の為にこちらへはしばらく来れませんので、レオルド様には上手く伝えておいてください」

「わかりました。ご武運を」

内緒話が終わった二人はそれぞれ別れる。バルバロトは兵舎へと戻り、ギルバートはレオルドの元へと。

「バルバロトは何の用だったんだ?」

「そのことについては執務室でお話しましょうか」

「え……?」

思わぬ返答にレオルドは間の抜けた顔を見せた。