軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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レオルドが出来る限りの準備を終えて、後は教皇からの呼び出しを待つだけとなっていた時、ギルバートの手によりブリジットの私室へ手紙が届けられていた。

仕事を終わらせたブリジットはいつものように部屋に戻ると、違和感を抱いた。そして、それはすぐにわかった。彼女の部屋に備えられている机の上に一通の手紙が置いてあったのだ。

この部屋は使用人が毎日掃除している。つまり、手紙があれば使用人から一言あるはず。だが、それが無かったという事はこの部屋に侵入した者がいるという事。とはいえ、その侵入者は手紙を置いていくだけで何もしなかったらしい。部屋を調べたところ何かを盗まれた様子はなかった。

「……あとはこの手紙だけか。差出人は……ッ!?」

机の上に置かれていた手紙を手に取り、差出人名を見たブリジットは驚愕に目を見開いた。手紙を持つ手が震えて、彼女は差出人の名を呟いた。

「アナスタシア様……! 一体、どういうこと……ッ!」

驚きに固まっていたブリジットは焦った表情で手紙の封を切った。それから、すぐに手紙へ目を通して内容を読んでいく。彼女の目が右から左へと流れアナスタシアの手紙を読んでいく。

どんどんブリジットの表情は険しいものへと変化していき、読み終えた頃には頭を抱えることになった。

アナスタシアの手紙の内容は教皇の企みについて。その全容が記されており、尚且つ教皇がこれまで行ってきた悪行の数々が事細かに書かれていたのだ。

信心深いブリジットは神の代弁者とも言われている教皇の言葉を疑ったことはない。だからこそ、今回の手紙は到底信じられるものではなかった。しかし、教皇と同じく神の声を聞ける聖女アナスタシアが言っているのだ。教皇は邪神の復活を目論んでいると。

今までブリジットは教皇の言葉を疑う事をしなかったが、アナスタシアの手紙を読んでこれまでのことを思い出した。

教皇からの指示で行ってきたことの数々。思い返してみれば確かにおかしな点はいくつもあった。これが本当に正しいのかと迷う事もあったが、すべては教皇からの指示だと誤魔化していた。

だが、それら全ては教皇が邪神を復活させる為の手伝いだったのだ。もうブリジットは何を信じればいいか分からなくなる。アナスタシアの言葉が真実だとして、どうすればいいか分からない。

それに今更言われても自分は手を汚しすぎてしまった。これでは親にも顔向けできない。ブリジットはそう思うと深く後悔に苦しんだ。ベッドに腰掛けて顔を手で覆い隠し、彼女は涙を流した。

「私はどうすれば……! どうすればいい……!」

神に問い質した所で答えが返ってくることはない。ブリジットは悪事に加担してしまったかもしれないと苦しむ事になった。

その後、ギルバートからレオルドはブリジットに無事手紙を届けた事を聞かされた。その報告は吉と出るか凶と出るか。それは当日にならなければ分からないだろう。

それから数日後、レオルドは大聖堂へ来ていた。勿論、来たくて来たわけではない。教皇に呼ばれたのだ。聖歌隊のお披露目をするから是非来て欲しいと言われて。

「ようこそ、シルヴィア王女、ハーヴェスト辺境伯。本日は新たな歴史の門出にどうか盛大な拍手を」

そう言われてレオルドは来賓の席に座ったまま拍手をした。一応、顔は笑っているが内心は般若の形相である。

(この狸爺め。この子達を生贄に捧げて邪神を復活させる魂胆だろうが! しかも、俺のシルヴィアを保険代わりにしやがって! お前の思い通りになると思うなよ、こんちくしょうがッ!)

内心では教皇の企みを絶対に阻止してやると意気込んでいるレオルド。彼が怒るのも当然だろう。自身の妻になるシルヴィアも狙われているのだから。

聖歌隊の発表が大々的に行われて、大聖堂前に集まった住民達は大歓声を上げている。なにせ、新たな聖女ことアストレアの歌声には癒しの効果が含まれているので小さな傷を負っている者は歌を聴くだけで癒されるのだ。

ファンになってしまうのも無理はない。加えてアストレアの容姿がいい事も大きな要因だ。

「ほほ、どうですかな。ハーヴェスト辺境伯。彼女の歌声は」

「とても素晴らしいですね。我が領にも是非お招きしたいところです」

「ハッハッハッハ。そう言っていただけると私も嬉しい限りです」

一緒に笑うレオルドだが、やはり彼の心中は穏やかではない。今すぐにでも目の前の腹黒ジジイを叩きのめした方がいいと思っていた。

(腹立たしい笑顔だぜ。今すぐぶん殴って整形してやろうか……)

膝の上に置いているレオルドの手が怒りで震えていた。それに気がついたシルヴィアがそっとレオルドの手に自身の手を重ねて、彼の耳元に顔を近づけると耳打ちをした。

「レオルド様。落ち着いてくださいませ。ここで暴れてしまってはこちらの作戦が全て無駄になってしまいます」

「……ぐ、む。はい」

心地よい声にレオルドは思わず声を上げそうになったが、寸前のところで耐えた。

それから聖歌隊のお披露目が一旦終わり教皇が挨拶に前へ出た。教皇の登場に住民達の興奮はますます高まる。聖歌隊という新たな取り組みを行った教皇に住民達は感激しているのだ。

新たな聖女アストレア。そして、人々の心を潤し、癒してくれる聖歌隊。それらを作り上げた教皇。住民達にとってはいくら感謝をしても足りないくらいの存在だ。

しかし、彼らは知らない。今、目の前で崇めている教皇が恐ろしい計画を立てていることを。