軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ワイバーン討伐から一日が経過した。レオルドは今ギルバートと共にゼアトの騎士を纏める騎士と、その副官の前に座っていた。

レオルドが住んでいる屋敷に用意されていた執務室で机と椅子があり、壁一面の本棚が備えられている。

今、レオルドは執務室の椅子に座って目の前に跪いている騎士二人組みを見下ろしていた。表情は冷酷な貴族になっているが、内面はパニックを起こしている。

(何が起こってるの? 珍しくギルに執務室へ呼ばれたら座るように言われて座ってたら、騎士二人を連れたギルが来て、その騎士二人がいきなり跪いたんだけど!? 何!? これから何が起こるの?)

「そのままで聞け。今回ワイバーンの討伐により我が主であるレオルド様はお怒りだ」

(へ? 俺? 怒ってないよ?)

レオルドはチラリとギルの方へと視線を向けると、ギルは何を勘違いしたのかレオルドの意思が伝わったかのように頷いた。

「貴様ら、騎士団の不始末の所為で屋敷は半壊し、屋敷で働いていた使用人も被害にあった。

この責任、貴様らはどう取るつもりだ」

「申し訳ございません。我らの力不足により――」

「黙れい!!! 見苦しい言い訳は結構だ。何故、王都からの援軍を待たずに出撃したのだ」

「そ、それは王都からの援軍を待たずとも我らのみで討伐が可能だと判断したからです……」

「ふん。半分はその理由だろうが、もう半分は自分達の不始末を知られたくなかっただけだろう」

「そのような事は決して――」

「一つ勘違いしているようだが、王都へは既に知らせてある。貴様らは自分達の首を絞めただけに過ぎん」

「なぁっ……!?」

「領主であられるベルーガ様にも手紙は出している。今回の件については巡回を怠っていた騎士のみを罰する事になっていたが、どうやら間違いだったようだ」

「何卒! 何卒ご容赦を!!」

跪いていた騎士が顔を上げると、床に頭を擦りつけ始めた。そう、土下座である。日本人にとってはお馴染みの土下座だ。

これには日本で過ごしていた記憶があるレオルドは、どうにかできないかと発言する。

「なあ、ギル。今回は屋敷が少し壊れた程度だから許してやったらどうだ?」

「レオルド様。今回は確かに人的被害はありませんでしたが、もしレオルド様がいなければシェリアはワイバーンの餌となっていたでしょう。そう考えれば、今回の処罰については妥当だと思いますが」

「いや、確かにそうなんだが結果的には犠牲者も出ていないし……」

「結果だけを言えばそうですな。しかし、だからと言って過程を疎かにする事は許されません。レオルド様の言うように犠牲は出ませんでしたが、それでも被害にあった者は精神的に傷を負ったはずです」

(あっ……そっか。そうだよな。少なくともシェリアは死ぬかもしれないという恐怖に直面したんだよな……

仮定の話になっちゃうけど王都からの援軍を待ってれば、シェリアがワイバーンに襲われなかったかもしれない。その可能性が否めないなら、反論は難しい)

「すまない。失言だった。被害者が受けた精神的苦痛は計り知れないものだったろうに。許せ、ギル」

「いえ。理解してくださったのならば謝る事などありません」

ギルバートは聡明な判断をしたレオルドに感服した。今までであったなら自分の意見が正しいと傲慢な態度を崩さなかったであろうレオルドが今ではギルバートの言う事を理解しているのだから。

「あ、あの我々は結局どうなるのですか?」

土下座をしていた騎士が恐る恐るといった表情でギルバートを伺う。

「貴様らの処罰はベルーガ様に委ねられる。追って連絡があるまでは待機しておけ。

ただし、罰を恐れて逃げようものなら地の果てまで追い掛けて私が殺す。以上だ」

(ひえええええええ!!! とんでもない殺気だ。なんとか小便はちびらずに済んだけど、あっちは……あっ)

ギルバートは内心騎士団に相当怒っていたのであろう。恐ろしい発言と共に尋常ではない殺気を放った。

横にいたレオルドは日頃からギルバートと組み手を行い、稀に放たれる殺気になれていたおかげで漏らす事はなかった。

そんなレオルドは、モロに殺気を浴びた二人に目を向けると騎士なだけあって漏らすようなことは無かったが、顔面蒼白で壊れた玩具のように首を振る事しか出来ない騎士がいた。

(あー、どんまい! 強く生きろよ!)

心の中では励ますが口には出さないレオルド。騎士二人はギルバートに連れて行かれて屋敷を去って行った。

残ったレオルドは執務室から、自室へと戻ろうとする。すると、何やら挙動不審なシェリアがレオルドの部屋の前にいた。

(何やってんだろ? ベッドメイキングにでも来たけど、俺の部屋に入りたくないって所かな?)

ネガティブな考えであるが実際は違う。シェリアは先日ワイバーンから助けてもらったお礼を言いに来たのだ。

(どうしよう、どうしよう。お爺ちゃんに言われてお礼を言いに来たけど、いざ言おうとすると緊張する~)

そんな事は露知らずレオルドは、なるべく驚かさないように声を掛けた。

「そこで何をしている?」

「ひゃあっ!?」

驚いたシェリアが一メートルほど飛びあがった。悪いことをしてしまったと感じるレオルドはすぐに謝罪を述べる。

「すまない。驚かせるつもりはなかったんだが」

「い、いえ! レオルド様が頭を下げる必要なんてありませんから!」

「そうか? まあ、君がそういうなら」

(はあ~、もう心臓に悪いよ~。それより、今がチャンス! 助けてもらったお礼を言わなくちゃ!)

突然、背後からレオルドに声を掛けられて驚いてしまったシェリアだが今がお礼を言う絶好のチャンスだと見てレオルドの名を呼ぶ。

「あ、あのレオルド様!」

「ん? なんだ」

「その……先日は助けていただきありがとうございました!」

「その件ならギルから礼は貰った。気にする事ではない」

「いえ。そういうわけにはいきません。祖父から申し上げていたとしても、自分の口で言わねばならないことですから」

「ふむ……なるほど、わかった。なら、受け入れるとしよう」

「は、はい!」

「それより大丈夫なのか? もう働いても」

「はい。体の方は怪我も一切無く――」

「そうじゃない。心の方だ。あんな目に遭ったのだ。しばらくは、仕事を休んで療養に努めた方がいい」

「え? でも、それじゃ他の人に迷惑が――」

「賭けてもいい。みんな分かってくれる。ギルバートの方には俺から命令を出しておくから、しばらくは休むんだ。分かったな?」

「いや、あの、でも……」

「これは主人としての命令だ。いいな」

「は、はい」

「うむ。ではな」

レオルドは言いたい事を全部言えて満足した。シェリアには嫌われていると思っているので早々とシェリアの前から立ち去った。

残されたシェリアは、もしかして自分は夢の中にいるのではないかと疑い、自身の頬を抓っていた。しかし、確かな痛みを感じて夢ではないと分かった。

「あんなに優しかったんだ……」