軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

205

準決勝が行われ、レオルドは勝利して決勝進出が決まった。決勝の相手は勿論リヒトーである。

二人の対決が決まって観客が大いに沸いた。騎士団長に勝利したレオルドと王国最強の騎士リヒトーとの戦いだ。期待するしかないだろう。

しかし、残念ながら決勝戦は最終日なので観客は焦らされることになる。まあ、それも闘技大会の醍醐味ということで観客に不満はなかった。

決勝戦まで時間が空いたレオルドはというとジークフリートとの約束を果たすために控室で待っていた。待っていると控室にジークフリートが現れる。しかし、一人しかいない。クラリスはどこにいるのだろうかとレオルドはジークフリートの背後に目を向けたりする。

「クラリスなら別の場所で待ってる。ここで話すことじゃないからな」

「ああ。そちらに合わせるよ」

「ん、じゃあ、付いて来てくれ」

言われるがままにレオルドはジークフリートの後をついて行く。

行き先は分からないが、 人気(ひとけ) のない場所だろうとレオルドは推測する。

闘技場を出て、夕暮れの街道を歩く二人は一切の会話がない。

レオルドとしては、ジークフリートの交友関係を問いたいが何の脈絡もない話題を振れば変に思われてしまうので難しいところだ。

ごく自然に聞き出すことは出来ないだろうかと思案するが、いい案は思い浮かばない。

そうこうしている内に、ジークフリートが喫茶店に入っていく。そこは以前レオルドが妹のレイラと行ったことがある喫茶店であった。

確かにここなら個室があるので、人目は気にしなくてもいいだろう。レオルドはそう思いながら、ジークフリートの後を追いかけるように喫茶店へと入った。

「ここにクラリスがいる」

「……一人で入れと?」

「え? だって、クラリスが二人でお前と話したいって言ってたし」

「いや、まあ、それはわかるが、流石に厳しいだろう?」

「なんでだ?」

「忘れたわけじゃないだろ。俺がなにをしたかを」

「もちろん、覚えてるよ。でも、今のレオルドなら大丈夫だって俺が説得したんだ」

「む……それは嬉しい事だが、クラリスと二人きりというのは少々気まずいだろ」

「でも、俺がいたら話せないことだってあるだろ?」

「それはそうかもしれんが、加害者と被害者の二人きりというのは、やはり問題がある。だから、一緒にいろ」

「そこまで言うなら仕方がないか」

ここまでの会話を聞くとレオルドはジークフリートが好きなのではないかと思いそうな流れである。

一人じゃ寂しいからついて来て欲しいというか弱い乙女か幼児のようなものだ。

さて、そんな事は置いておいて二人は仲良く個室へと入る。

すると、そこには待っていたであろうクラリスが一人座っていた。レオルドは久しぶりに見る 元婚約者(クラリス) に緊張していた。

第一声が出てこずに固まっていると、ジークフリートが助け舟を出してくれる。

「ごめん。待たせたか?」

「ううん。私もさっき来たばかりだから」

レオルドはジークフリートを連れて来て正解だったと胸を撫で下ろす。

そんな様子のレオルドをチラリと見るクラリスは、やはり以前までのレオルドとは違うと確信していた。

そのレオルドは席に着こうかと迷っているとクラリスのほうからレオルドに席へつくように促した。

「どうぞ、お二人ともお掛けになってください」

「あ、ああ」

「俺は出てようか?」

「レオルド様がジーク君を呼んだんでしょ?

だったら、いてもいいと思うよ」

「そうか? なら、いさせてもらうけど」

そう言いながらジークフリートはレオルドの方を見つつ席に座る。

本当に俺がいてもいいのだろうかという視線をレオルドに送るジークフリートに対してレオルドはいてくれなきゃ困るといった視線を返していた。

伊達に二度も拳を交えた仲ではない。すでにアイコンタクトすら可能になっている。

何故か見詰め合っている二人にクラリスは可愛らしく首を傾げた後に、気を取り直してレオルドへと話しかける。

「お久しぶりですね、レオルド様」

「っ……あ、ああ。久しぶりだな、クラリス」

そこから先は続かない。二人はなにを話せばいいのやらと頭を悩ませる。

クラリスとしてはレオルドの変貌ぶりについて尋ねたいところだが、どのように切り込めばいいかと迷う。

レオルドの方は、過去の事について謝罪をしなければと思っているのだが、タイミングが掴めないでいる。

案外似た者同士なのかもしれない。まあ、今のレオルドとだが。

さて、一向に会話が始まらないことに痺れを切らしたジークフリートがある提案をする。

「なあ、やっぱり俺は出てようか?」

それは同時に起こる。レオルドとクラリスの両名から、穴が開くほどジークフリートは見つめられる事になる。

どうやら、出て行かないで欲しいということなのだろうが、せめて言葉にして欲しい。

二人から鬼気迫るといった表情で見詰められるジークフリートは堪らず小さく悲鳴を上げた。

「ひぇ……!」

なんとかジークフリートを引き止めることに成功した二人だが、事態は好転しない。

両者互いに相手の機を窺うように沈黙している。

その様子を見せられるジークフリートは、逃げ出したいと切実に思い始めた。

クラリスに万が一の事があってはと思って同行したが、この様子ならば問題はないだろう。

しかし、永遠にこのままなのは辛い。だから、ジークフリートは状況を打破する為に動くことにした。

「と、とにかくさ、黙ってないで何か話したらどうなんだ?」

その言葉に二人は顔を見合わせる。クラリスが口を開こうとした時、レオルドが先に頭を下げた。

「すまなかった。クラリス。君をずっと俺は傷つけてばかりで。挙句の果てには、君に一生の傷を負わせることになってしまった」

頭を下げているレオルドにはクラリスの顔が今どんな風になっているか分からない。

側で見ていたジークフリートはクラリスの顔が酷く悲しそうに歪んだのを見逃さなかった。

しかし、口出しする事はない。ジークフリートは決闘の際に言いたい事は全て言い切っている。だから、これは当人同士の問題である。