軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20

いつもの様にレオルドはギルバートと組み手を行っていると、メイドが一人走ってくる。普段なら、はしたないとギルバートが咎める所だがメイドの表情は青褪めており、ただ事ではないと二人は鍛錬を中止する。

「何事です?」

「ハア……ハア……執事長……騎士様が訪ねてきております。どうやら、火急の用件があるらしく」

「ふーむ……私にですか」

「あの、少しお耳を」

息を切らしていたメイドは、ギルバートに騎士が訪ねて来たと言う。レオルドも何故騎士がわざわざギルバートを訪ねてきたのか気になるが、メイドはギルバートにだけ聞えるように伝えた。

「なるほど……坊ちゃま。今日の組み手はここまでにしましょう。私は訪ねてきた騎士とお話がありますゆえに」

「あ、ああ。わかった」

気になってしまって仕方のないレオルドだが、ギルバートの雰囲気が教えてくれそうにもないので素直に言う事を聞いた。

ギルバートとの組み手が早めに終わってしまったレオルドは手持ち無沙汰となってしまう。なので、レオルドは自室へと戻り魔法の勉強に勤しむのであった。

一方でメイドから話を聞いたギルバートは訪れている騎士の下へと向かった。メイドと共に玄関先にいる騎士の下へと辿り着くとギルバートは騎士から詳しく話を聞くために、騎士を屋敷の中へと案内した。

「メイドから聞きましたが、ワイバーンがゼアトの近くに巣を作っているという報告は確かなのですか?」

「ええ。我々、騎士団が調査隊を派遣したところ間違いないかと」

「数は?」

「二十は越えているとの報告です」

「二十ですか……失礼ながら騎士団は月に一度は見回りを 行(おこな) っているはずですが?」

「お恥ずかしい話ですが、中には見回りをしたと虚偽の報告をする者もいまして……」

「ほう。それが事実ならば領主様であられるベルーガ様にご報告をせねばなりませんな」

「出来れば穏便には済ませられないでしょうか……?」

「なりませんな。今回の件については騎士団の怠慢が招いた結果です。それを見過ごすことなど出来るはずがありません」

「っ……」

「私の所に来たのはその為だという事でよろしいですか?」

「い、いいえ。部下から聞いたのですがギルバート殿は相当な武勇の持ち主と聞きまして、今回のワイバーン駆除にご協力をとお願いに参ったのです」

「ふむ……バルバロト殿ですかな。しかし、私は坊ちゃまの執事ですので今回のワイバーン駆除には参加できません」

「そこをなんとかならないのでしょうか!? 我々だけでは大勢の負傷者が出ることは確実です。せめて、被害は抑えたいのです!」

「くだらない見栄を張るのはやめる事ですね。王都に使いを出して、援軍を要請するべきです。それでは、私はこれで」

これが真人の記憶が宿る前のレオルドだったなら、受け入れて貰えただろう。ワイバーンを討伐したという功績を引っさげて王都へと凱旋したかもしれない。

残念ながらギルバートの言うとおり、騎士団の怠慢から招いた結果なのでワイバーンを駆除したとしても何の褒賞も貰えない。むしろ、国民を危機に晒したとして罰を受けるのが正しい。

ただ、今のレオルドなら普通に断る。生き残る事に必死なのでワイバーンの駆除など騎士団に任せておけばいいと判断するに違いない。

ギルバートは訪ねてきた騎士と話す事はこれ以上は無いと決めて席を立つ。がっくりと肩を落とす騎士にメイドをあてがい、帰るように促した。

良い返事を聞けなかった騎士は食いつこうとしたが、ギルバートの物言わせぬ圧力に負けて大人しく帰った。

くだらない事でレオルドとの時間を無駄にしてしまったと溜息を吐くギルバートは自室へと戻り、今回の騎士団についての報告書を纏める。

報告書が出来上がり、ギルバートは領主であるベルーガへと届ける。使いの者を出したギルバートは、ゆっくりとレオルドの下へと向かう。

自室で引きこもっているレオルドは魔法の鍛錬に励んでいた。少しでも精度を上げようと、無詠唱で魔法を発動させて維持していた。

相当集中しており、レオルドの額からは汗が溢れ出ていた。流れ落ちる汗は床へと零れて染みを作っている。

「ふう……ふう……」

掌に水の球を浮かべるレオルドは真剣な目付きで水の球を見ている。浮いている水の球はレオルドが少しでも集中を乱すと、歪な形となり弾けてしまう。

「ふう! ふう! 落ち着け……っ!」

集中が途切れたわけではないが、レオルドの掌に浮かんでいる水の球が騒がしくなる。綺麗な玉の形をしていたのに、今はボコボコと形を変えて今にも弾け飛んでしまいそうだ。

レオルドは必死にコントロールして水の球を操ろうとしたが、レオルドの努力は実らず水の玉は弾けてびしょ濡れになってしまった。

「くそ……またか」

悪態をつくレオルドは濡れた髪を拭く為にタオルを取る。ガシガシとイラつきながら髪を拭いていると扉をノックする音が聞こえる。

「坊ちゃま。今、よろしいでしょうか?」

「ああ。入っていいぞ」

部屋の中に入るギルバートは、何故かびしょ濡れのレオルドに疑問を感じた。

「入浴でもされましたか?」

「いいや。いつものだ」

「ああ。なるほど」

「それで、どうした?」

「先程の件なのですが、どうやらワイバーンの巣がゼアトの近くで発見されたそうです」

「なんだと!? 数は?」

「二十と騎士からは聞いておりますが、正確な数字は不明です」

「ふむ……」

(ゲームには無かったな。まさか、こんな事で死なないよね?

なんか、怖くなってきた……)

「ギル、騎士団に加勢――」

「なりませんぞ。騎士には王都から援軍を呼ぶように言いましたから、坊ちゃまが出る幕はございません」

「――ひゃ、ひゃい」