軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

171

魔剣を失ったジェックスは一瞬我を忘れるが、すぐに正気を取り戻す。

「まだだ! まだ負けたわけじゃねえ!!!」

魔剣を失ってもジェックスは負けを認めない。負けられないジェックスは拳を握りしめてレオルドに向けた。

まだ、完全に戦意を失っていないジェックスを見てレオルドは口の端を釣り上げる。

「ふっ……よく吠えた! ならば、その心! 俺が完全に打ち砕こう!」

笑うレオルドは手にしていた剣を投げ捨て、ジェックスと同じように拳を握りしめた。

剣を投げ捨てるのを見たバルバロトは驚きに目を見開き、カレンと子供達は大きく口を開いている。

そして、剣を投げ捨てるレオルドを見たジェックスは戸惑う素振りを見せたが、レオルドがあまりにも堂々としているのを見て覚悟を決めた。

「はっ! 負けたときに言い訳すんじゃねえぞ!」

「愚問だな。俺は負けんよ」

「その余裕がどこまで持つかなっ!」

身体強化を施したジェックスが目にも止まらぬ速さで動き、レオルドの懐へ侵入する拳打の射程圏内に入ったジェックスはレオルドの顎に狙いを定めて拳を突き上げる。

しかし、レオルドには当たらない。拳を避けたレオルドはジェックスの顔面に目掛けて鋭い一撃を放つ。その一撃は直撃するかと思われたが、ジェックスに紙一重で避けられてしまう。

頬を掠めるレオルドの拳に内心で冷や汗をかきながらもジェックスは間を置かずに攻める。止まっていては勝てないとわかった。悔しいが実力はレオルドの方が上だと判明したジェックスはレオルドに攻める隙を与えないように苛烈に攻める。

しかし、ジェックスがどれだけ苛烈に攻めようともレオルドに拳が当たることはない。それは、レオルドが普段からギルバートという尋常ならざる実力者と鍛錬を積んでいるからだ。ジェックスが弱いというわけではない。単純にレオルドが強いだけだ。

(クソがっ!!! 涼しい顔しやがって!)

一向に攻撃が当たらないジェックスは内心で焦り始めていた。どれだけ拳を突き出そうとも避けられてしまう。それは、確実にジェックスの神経を削っていた。

次第にジェックスの動きが鈍くなる。神経をすり減らしていたのもあるが、ムキになって激しい動きで攻め続けていたので体力が減っているのだ。

ジェックスの動きが鈍くなってきたことに気がついたレオルドは拳を受け止める。

「どうした? 動きが鈍くなってるぞ」

簡単に拳を受け止められた上に呆れたような目をするレオルドを見たジェックスはギリッと歯軋りをして金的を狙う。

だが、浅はかな考えはレオルドに通用しない。金的を放ったジェックスの足はレオルドによって止められる。金的を防いだレオルドは残念そうにため息を吐く。

「はあ……拍子抜けだ。この程度で俺に勝とうとしたのか?」

「ぐっ! っるせえ!!!」

なんとかレオルドの拘束を振り払ってジェックスは距離をあける。怒りと疲れから肩で息をするジェックス。それを見たレオルドはこの辺が潮時かもしれないと考え始める。

(う〜ん……思ったより強くなかったな。いや、普通に強いんだけど、多分俺やバルバロトみたいに鍛錬をする相手がいなかったんだろうな〜)

たった一人でここまで強くなったのだから十分に強いと言えるだろう。ただ、悲しいことにジェックスは師匠と呼べるような存在も、切磋琢磨する相手もいなかったのだろう。そのことが、とても勿体ないと思うレオルド。

だが、同時にそれほどの才能を秘めているジェックスをどうしても配下に加えたいと思うのだった。

「ジェックス。ここまでやってわかっただろう! お前に俺は倒せん!」

「そんなことやってみなきゃわからねえだろうが!!!」

「まだ、言うか! ならば、見せてやろう! 俺とお前の差を!!!」

そう言うとレオルドの姿がブレる。ジェックスは直感でその場から離れようとするが、それ以上にレオルドが速い。ジェックスは眼前に現れたレオルドに驚く。レオルドはギルバート直伝の踏み込みで渾身の一撃を繰り出す。

ボッという空気を貫くような音がジェックスの耳に届いた時、ジェックスの頬を掠めるようにレオルドの拳が放たれていた。

ここで確信した。ジェックスは決して勝てないということを。目の前にいる 男(レオルド) は敵わぬ相手だと。

そして、今の今まで手加減という名の慈悲を与えられていたことを知ったジェックスは完全に心が折れてしまい、がくっと地面に両膝をつける。

地面に両膝をつけたジェックスへ近づくレオルドは声を掛けようかとした時、子供達を守っていたカレンが飛び出してきた。

「お願い、殺さないで!」

「何を勘違いしている。俺はジェックスを殺すつもりはない」

「え?」

呆気に取られるカレンを避けてレオルドは完全に戦意をなくしているジェックスへ声をかける。

「ジェックス。選べ。俺の配下になるか。国へ突き出されるか」

「……」

「お前が貴族をどう思っているかは知っている。だが、それでも俺はお前には配下に加わってほしい」

「どうして、そこまで……」

「餓狼の牙を纏め上げたお前の統率力、その類まれなる戦いの才能。そして、なにより他者を思いやる心だ。これだけの男を失うにはあまりにも損失が大きい。だから、是が非でも俺の配下にほしい。

どうだ、ジェックス? 俺の配下にならないか?」

「…………俺は貴族が嫌いだ。あんたは他の貴族と違うのか?」

「それはお前の目で確かめろ」

「………………ガキ共と仲間の面倒を見てくれるなら従おう」

「おお! それくらいなら全然構わんぞ! これから、よろしく頼むな。ジェックス!」

悪意の欠片もない笑顔を見せるレオルドに握手を求められたジェックスは毒気を抜かれる。

まだ、信じることは出来ないがレオルドならば信じてもいいかもしれないとジェックスはレオルドの手を取るのであった。