軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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頂上まであと少しとなって来た。この階段を登りきれば頂上である。シルヴィアは終わりが近付いている事に寂しく思っていた。

(ああ、この至福の時間もあと少しで終わりなのですね。もう少しだけ、堪能していたいのですが、これ以上はレオルド様に迷惑でしょう)

残りわずかとなった階段。お姫様抱っこしながらも平然と登るレオルドにシルヴィアは気になっていることを聞いてみた。

「あ、あの重くはありませんか?」

「へ? いや、軽いくらいですよ。まあ、殿下しか知りませんけどね」

そんな風に少しだけ笑うレオルドにシルヴィアはトキメキが止まらない。

(私しか知らない!

私が初めて!

レオルド様の!

人生で初めての相手!)

お姫様抱っこのだ。ある意味初体験と言ってもいいが、断じて性的な意味はない。しかし、今のシルヴィアにとっては何よりも嬉しく感じていた。レオルドの初めてを貰えたことに。

「さあ、着きましたよ。殿下、ここがゼアト砦の頂上です」

レオルドばかり見ていたシルヴィアはレオルドの言葉により風の吹く方向へ顔を向ける。

そこにはゼアト砦の向こう側に広がっている広大な森に、爛々と輝く太陽があった。絶景とは言えないが悪くはない景色である。

「綺麗ですわ、とても」

「ええ。次は反対側を見に行きましょうか」

「はい」

所でいつまでレオルドはシルヴィアをお姫様抱っこしているのか。降ろすのを完全に忘れているレオルドはシルヴィアをお姫様抱っこしたまま反対側へと向かい、町を見下ろしている。

ちなみにシルヴィアは気が付いているが、ずっとこの体勢がいいので何一つ指摘するつもりはない。

「どうですか。この町は」

「その……少々寂しい町かと」

「その通りです。私が行った水道工事もまだこの町を盛り上げる事は出来ていません。ですが、私はこの町を盛り上げるつもりです」

「それは、どのように?」

「それは秘密です」

お茶目にウインクするレオルドに 心臓(ハート) を撃ち抜かれたシルヴィアは胸を抑える。

(はうっ! 死んでしまいます!)

「失礼。少々、調子に乗って――」

「いいえ! 謝ることなどありませんわ!」

「えっ、あっ、はい」

あまりの気迫にレオルドは何も言えない。ただ、返事を返すだけであった。

「あのレオルド様。私、どうしても聞かねばならない事があるのです」

「なんでしょうか?」

「レオルド様はどこで帝国の技術を学んだのですか?」

この質問にはレオルドは答えられない。答える事が出来ない。日本人である真人の記憶にある知識を使って生み出したもの。

それが帝国のものと一致しているのだが、その答えをどう話せばいいか分からないのだ。

「答えては下さらないのですか……?」

「……殿下。今は信じて頂けないでしょうが、必ずや答えますので、それまで待って頂けないでしょうか?」

保留にして欲しいと頭を下げるレオルドにシルヴィアは困ってしまう。王族の立場であるシルヴィアは本当ならここで帝国との繋がりが疑われているレオルドに判決を下さなければならない。

だが、感情がそれを邪魔する。王族としてはあるまじき行為ではあるが、シルヴィアはレオルドを信じる事にした。

「分かりました。いつか、レオルド様が話してくれるのを待っていますね」

「殿下……ありがとうございます」

「ふふっ、楽しみですわ。レオルド様。貴方が織り成すゼアトの未来が」

「ええ、見ていて下さい。王国、いえ、世界一の都市にしてみせますよ」

「まあっ! それは是非とも見てみたいですわ。その時はまたご一緒してもよろしいでしょうか?」

「はい。その日が来たらまた共に」

「うふふ。約束ですよ」

「はい。約束です」

笑い合う二人。その光景は誰が見ても恋人同士にしか見えなかっただろう。

「あ、あのレオルド様。もう、降ろして頂いても」

「あっ、申し訳ありません!」

シルヴィアは降りたくは無かったが、砦の階段を降り切った先にいた騎士達から注目を浴びて、恥ずかしくなったのでレオルドに降ろして貰うことにした。

二人きりの時ならばいくらでも構わないのだが、やはり人前だと少々恥ずかしいシルヴィアであった。

屋敷へと戻った二人は別れて、お互いに仕事へと戻る。とは言ってもシルヴィアの方は特に何も無いのでイザベルとレオルドとのデートについて語り合うだけであった。

「レオルド様がね! レオルド様が――」

「はい。はい――」

止まらない乙女トークにイザベルは微笑んでいた。まさか、ここまでレオルドに夢中になるとは思いもしなかった。最初は興味が湧いたと聞いて、レオルドの元に送られたと言うのに、今じゃシルヴィアは恋する乙女だ。

主君の変化は嬉しいことでもあったが、少々寂しくもあった。シルヴィアは達観している部分があったので恋する事は無いと思っていた。

いずれは政治の道具として有力な貴族か、隣国に嫁ぐものばかりと考えていたのに、今では年頃の女の子になっている。

イザベルは自分も同じように誰かに恋することが出来るのだろうかと、シルヴィアの話を聞きながら考えていた。

その頃、レオルドはシャルロットと魔法の袋を作製する事に神経を注いでいた。

「おわあああああああっ!」

「きゃあああああああっ!」

魔法の制御に失敗してレオルドは天井に叩きつけられて、シャルロットは壁に叩きつけられた。

果たして本当に上手くいくのだろうか。

二人の悲鳴にドタバタと忙しくなる屋敷は賑やかに一日が過ぎるのであった。