軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ガチャリと音を立てて、シャルロットの部屋の扉が開かれる。二人は話に夢中で気が付いていない。誰が入ってきたのかすら。

「レ・オ・ル・ド・様」

話に夢中になっていたが、名前を呼ばれたレオルドは何事かと振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべてかつてないほどの暗黒オーラを立ち昇らせるシルヴィアが立っていた。

背後に控えているイザベルは口元を隠して笑っているのが見えるがレオルドはそれを指摘するほどの余裕は無かった。

(あっ、死んだかも……)

何故、これ程までに不機嫌なのか分からないレオルドは自分の命が無いものとしか思っていなかった。

恐らく、世界は運命は、ここでレオルドの命を刈り取るつもりなのだろう。

ああ、哀れなりレオルド。

さらば、レオルド。

来世では女性の取り扱いには注意をしよう。

「レオルド様。そちらの女性はどなたでしょうか? よろしければ私に紹介して頂けないでしょうか?」

満面の笑みを浮かべているシルヴィアだが、よく見るとうっすらと瞼が開いている。つまり、半目なのだが、その目は返答次第によっては確実に命を取るつもりの目である。

高速で頭がフル回転しており最適解を述べようとするレオルドだったが、儚く散る事になる。

「あら~、どちら様~?」

「ばっ、おまっ!」

シャルロットはシルヴィアがレオルドにどのような感情を向けているのか瞬時に察知して、最も面白い事になると思った事をする。

まるで、娼婦のようにレオルドにいやらしく腕を絡めるシャルロットはシルヴィアに勝ち誇ったように顔を向ける。

瞬間、シルヴィアの暗黒オーラが勢いを増して部屋全体を包み込むのではとレオルドは恐怖する。

そして、シャルロットの方はこれは面白い事になって来たと、シルヴィアに圧勝している大きな胸をレオルドへと押し付けるのを見せ付けた。

あからさまな挑発を見たシルヴィアは怒りによって新たな領域にでも目覚めて髪が逆立つのではと錯覚する。

絶望に顔を染めるレオルドだったが、諦める事はしなかった。

(誓ったはずだ!

運命なんてぶっ壊す!)

勇気を振り絞ってレオルドはシルヴィアへと立ち向かう。

「殿下、先程ご説明した私の相談役である、シャルロット・グリンデにございます」

しかし、その様な事を今更聞いてもシルヴィアの怒りは収まらない。

「よろしくね~!」

「シャル! 殿下に対して無礼だぞ!」

「え~? 別にいいじゃない。私はレオルドのものであってもこの国のものではないんだし~」

仲の良さを見せ付けるシャルロット。そして、再び怒りを増したシルヴィア。

しかし、シルヴィアはシャルロットの名前を聞いて少しだけ冷静さを取り戻した。

「シャルロット・グリンデ? もしや、かのシャルロット・グリンデ様でしょうか?」

「ピンポーン! 貴方が今想像しているシャルロットでーす!」

途端にシルヴィアは青ざめる。あの世界最強と称される魔法使いに。

そして、思い出す。シャルロットには何があっても手を出してはならないと。彼女の癇癪でどれだけ多くの権力者が泣かされたことか。

その中には当然、王族も含まれている。彼女が本気になれば王族であろうと一切容赦はしないのだ。シルヴィアは彼女の機嫌を損ねる訳にはいかないと怒りを鎮めて冷静になる。

「このような場所で会えるとは思いもしませんでしたわ。

私、アルガベイン王国第四王女シルヴィア・アルガベインと申しますわ。以降、お見知り置きを」

「はぁ~い。よろしくね」

シルヴィアがスカートの裾を上げて一礼をすると、シャルロットはレオルドから離れて元気よく挨拶を返した。

レオルドもプレッシャーから解き放たれてホッと胸を撫で下ろした。

「ところでレオルド様とはどのようなご関係で?」

だが、そこは譲れない。シルヴィアはどうしても聞かなければ気が済まないのだ。

「う~ん……こういう関係?」

再度、腕に絡み付くシャルロットは疑問形でシルヴィアに返した。

「へ、へ~。そういう関係なんですね、レオルド様」

(どうしてこっちを睨むんだ……)

たじろぐレオルドは自分が何故睨まれているのか全く理解出来なかった。

「んふふ~」

一人だけ状況を把握しているシャルロットは愉快そうに笑う。

恋するシルヴィアに気付かぬレオルド。二人の様子を見て楽しむシャルロットはどのようにからかって遊ぼうかと今後の事を想像していた。

「ところで、シルヴィアはここに何しに来たの?」

「あっ、忘れていましたわ。レオルド様に町を案内して頂こうと思いまして」

(なんで俺なんだ?

まあ、王族の頼みだし断れないか)

ただ、レオルドとデートをしたいと考えていただけのシルヴィアである。

そう、さっきまでは町の視察という口実でレオルドと一緒に町を歩くデートが出来ると喜んでいたのに、どん底に突き落とされた気分だ。思い出すと、シルヴィアはフツフツと怒りが湧いてくる。

しかし、ここでまた怒っていたらレオルドに勘違いされて嫌われてしまうかもしれないのでシルヴィアは怒りを鎮めた。

その事に気が付いたのはシャルロットだけである。ニヤリと笑って、シャルロットは楽しむ事にした。

「私も一緒に行きたいな~」

「なっ!?」

「ん~、どうしたのかな~? 驚いた声を出しちゃって。何か不味いことでもあるのかな、シルヴィアは?」

「いいえ。ただ、シャルロット様は別に行く必要は無いかと思いまして」

「え〜、どうして?」

「それは、シャルロット様がここでしばらく生活していたから町を見に行く必要が無いということですわ」

(ふふ~ん。まだまだ子供だけど、しっかりしてるね~)

最初こそ動揺したシルヴィアだったが、今は何としてでもシャルロットの同行を阻止しようと言葉巧みに断ろうとしている。

「シャル。殿下を困らせるな。お前はさっきの事を進めていろ」

まさかのレオルドによる援護射撃でシルヴィアの顔色は良くなる。

もしかして、レオルドも自分と一緒の方がいいのではと勘違いするほどだ。

「一人じゃつまらないじゃない。一緒に行くくらいいいでしょう?」

「あのな、殿下は遊びに行くわけじゃないんだよ。お前と違って忙しい方なんだ」

「ぶ~。じゃあ、帰ってきたら構ってくれる?」

「まあ、さっきの続きは俺も気になるからな。構わないぞ」

「やったー! レオルド、大好きよ!」

過剰なスキンシップを見せ付けるシャルロットにシルヴィアは我慢したが、完全には無理だった。幼い子供のようにプクッと頬を膨らませていたのをシャルロットとイザベルは見逃さなかった。

シルヴィアは何とかレオルドと二人きりになる事をもぎ取ったが、心は晴れやかでは無かった。