軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

081

ダンジョンコアのある部屋――楽園レジウリアへとやってきた修太郎。その存在に気がついた住民の一人(リザード族)が話しかける。

「主様! お会いできて光栄です!」

「ありがとう。そうそう、鉄の体をした新しい仲間がどこにいるかわかる?」

プニ夫を抱きながらいう修太郎。

リザード族はある場所を指差した。

「新入りなら広場ですね!」

「そっか、ありがとう!」

そう言ってその場を後にする修太郎。

単なるNPCであるリザード族と 自然な会話(・・・・・) が行えたことについて、修太郎が違和感を覚えるのは少し先の話である。

* * * *

広場に響く子供達の笑い声。

人だかりを縫って進む修太郎の目の前に広がった光景には、かつて自分の主人である召喚士を殺してしまった悲しき召喚獣――アイアンの姿があった。

アイアンが暴走したあの時……

トドメを刺すように見せかけて、修太郎はダンジョン生成の機能を使いダンジョンへと招き入れた。その際、 執事服(エルロード) と連携して留守番の魔王達が送られてきたアイアンの面倒を見ていたのだった。

晴れてレジウリアの住民となったアイアン。

その風貌はかつてのサビだらけの体とは違い、青銅色に輝く体に変わっており、さながら国を守護する騎士のよう。

「きゃははは高い高い!!」

「おち、おち、おちる……!」

アイアンの肩や頭に子供達が乗っており、その中にはバートランドの妹であるヴィヴィアンの姿もあった。

「主様! 皆、主様がおいでなさった!」

民の一人がそう叫ぶや否や、アイアン達を囲うように集まっていたmob達が膝をついてこうべを垂れた。そしてアイアンもまた、修太郎に気付きゆっくりと膝をつく。

「主様! この子ね、たくさん遊んでくれてるの!」

「良かったねヴィヴィアン。ヴィヴィアンも友達たくさんできたみたいだね」

ヴィヴィアンを取り巻くように、それぞれ種族の違う10人の子供達がぎこちなく膝をついている。修太郎はそれを羨ましそうに眺めながら、アイアンへと視線を向けた。

「楽しくできてるみたいで安心した。ヴィヴィアンも最初は友達の居ない場所にいたけれど、ここに来てたくさん友達ができた」

「……」

「ここには君を悲しませる人はいないから」

その言葉はアイアンの心に強く響いた。

* * * *

修太郎がここへ来る前――

この地に送られたアイアンは、右も左も分からぬまま、元々の主人への怒りや悲しみに感情がコントロールできずに暴れていた。

「待ってたぞ。とりあえず頭を冷やしてもらうか……」

そこに居たのは二人の魔王。

拳を鳴らしながら前に出るのは 巨人(ガララス) 。

相手との力の差すら測れないほど暴走したアイアンがガララスに飛び掛かると、ガララスの拳が頭に振り下ろされ、地面にクレーターを作って沈むアイアン。

正に、巨人の一撃――

「我々はお主の激情を物理的に受け止められる。気が済むまでかかって来るがいい」

しかし、その一撃で我に帰るアイアン。

遅れて湧き上がるのは今は亡き主人への懺悔の思いや後悔。ひたすらの悲しみの感情だった。

静かに見ていた 金髪の騎士(バードランド) が厳しい口調で告げる。

「主様はお前を仲間にしたいと考えているそうだけど、お前にその気持ちが無いならこのまま投獄し処分する。主殺しはどの世界でも大罪。主様が許してもそれだけは揺るがない」

地に伏しながら沈黙するアイアン。

思い出すのは、自分が手にかけた主人の顔。

思えば召喚された直後は楽しかった――

主人と種子田さんの三人で毎日楽しく冒険し、戦闘後は労われ、手に入ったアイテムに一喜一憂するのを見るのが好きだった。

その後の記憶は曖昧で、ただただ悲しみと怒りが混濁した感情を抱きながら今日を迎えた。

召喚獣という枠組みから解き放たれた時、今まで忘れていた感情が全て流れ込んできたのだった。

やり直したい――

後悔の念ばかりが募る。

金属音を響かせ立ち上がるアイアン。

その瞳の色は赤から青へと変わっている。

ガララスが楽しそうに「ほぅ」と溢す。

「後悔しているのなら、その力を次こそ正しく振るえばいい。今のままじゃ主様の力になる事はできないけど、確かにお前には皆を守る力があるよ」

旦那の拳でも死ななかったし――と、苦笑いを浮かべるバートランド。

バートランドの言葉にアイアンが頷く。

こんな自分でも必要としてくれた新しい主様に、今度こそ尽くすため――

意志の籠もったその瞳をみたバートランドも満足そうに頷く。

「よし、じゃあ今から特訓な。ひとまず主様が戻ってくるまで、 一つ先(・・・) へ行ってもらおうかなァ」

「我も稽古をつけてやろう。暇だしな」

二人の言葉に力強く頷くアイアン。

訓練場向かうその背中を見送りながら、それを陰で聞いていた 黒髪の騎士(セオドール) は楽しそうにその場から去った。