軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

058

戦闘指南役(キャンディー) から合格をもらい、集合場所である門の前へとやって来た修太郎は、門の前で留まる荷馬車と数人のプレイヤーを見つけた。

一人は温厚そうな弓使いの青年。

一人は盾と剣を持った小柄な中年男性。

一人は杖を持った長い黒髪の女性。

そして一人は――

「遅いっ!」

中年女性の怒号に修太郎は小走りで合流する。

かなり大柄と言わざるを得ない豊満な体型。

ゆったりとした鈍色のドレスアーマーに身を包み、紫色の髪が特徴的なその中年女性は修太郎を値踏みするようにジロリと眺めた。

「あなた、レベルは?」

「ええと、31です!」

「ふうん。まあ合格にしておいてあげるわ」

いきなりそう言われ、困惑する修太郎。

中年男性が慌ててそれを止めに来る。

「あ、あの、リヴィルさん? 初対面の子にそんな態度は……」

「なあに? 遅れて来たガキに何言おうが勝手でしょ?」

そのまま中年女性は中年男性に罵声を浴びせはじめ、男性は頭を下げ続けている。

いきなりの事に唖然とする修太郎。

すかさず魔王から念話が飛んでくる。

『醜いですね……消しましょうか?』

『ううん、平気!』

上空から見下ろしているであろう 執事服(エルロード) を落ち着かせる修太郎。

魔導結界が施されているのに、なぜエルロードは修太郎達を認識できるのか――そこには魔導結界が防げる範囲に〝限界〟が存在するという恐ろしい事実が隠れているのだが、平和に暮らすアリストラスのプレイヤー達は知る由もない。

中年女性の声量が上がっていく。

鬼の居ぬ間にと、残り二人が歩み寄る。

「気にしない方がいいよ。俺達が合流した時もあんな感じだったから」

二人を見つめながら言う青年に、修太郎は紫髪の女性を見つつこくんと頷いた。

「自己紹介でもしよっか。俺はキイチ。レベル25の弓使いだ」

膝を折り、目線を合わせ握手を求めるキイチ。

修太郎は嬉しそうにそれに応えた。

今度は隣の女性が口を開く。

「私はヨシノ。レベル25の聖職者」

ヨシノはぶかぶかの黒のローブを身に纏っており、キイチは動きやすそうな革の鎧を着ている。

「僕は修太郎! レベル31の剣士!」

「すごいね、31だなんて。パーティ一覧に表示されたのを見て驚いたよ」

弓使い(キイチ) の言葉を受け、気になった修太郎は視界の左下にあるパーティ一覧に視線を向けた。

種子田(L)兵士 Lv.23

キイチ 弓使い Lv.25

ヨシノ 聖職者 Lv.25

修太郎 剣士 Lv.31

リヴィル 召喚士 Lv.28

(リヴィルさんが召喚士かぁ……あの男の人はなんで読むんだろう)

修太郎がそんなことを考えていると、リヴィルの罵倒も終わったらしく、二人もこちらへとやって来た。

「紹介がまだだったね。僕は 種子田(たねだ) 、レベル23の兵士だよ」

少しお腹の周りがふくよかな種子田。

甲冑の顔当ての部分だけを上にあげた全身鎧を着ており、腕には 丸盾(バックラー) と、腰に剣が覗いている。

そしてリヴィルが口を開く。

「挨拶の前に確認なんだけど。今回は〝アリストラスからエマロの町への往復〟が依頼の条件だから、途中抜けを禁止にしたいんだけどいいかしら?」

その言葉に、キイチとヨシノは顔を見合わせ、小さく頷く。修太郎は「依頼の内容なのになんで確認取るの?」などと考えており、沈黙を肯定とみなしたリヴィルは満足そうに頷いた。

「じゃあ改めて。私は召喚士のリヴィル。ちなみにこの部隊は隊員募集してるから、この依頼で活躍できたら誘うわね」

リヴィルはキイチとヨシノに視線を移しながらそう言い放つ。二人は諦めたように、黙って頷いた。

修太郎は気付かないが、種子田とリヴィルが鈍色の鎧――つまり紋章ギルドの制服を着ているのに対し、キイチとヨシノが着ていないのには理由がある。

二人は元々別の町を拠点に活動しており、実はワタルとアルバが最前線組を集めるためアリストラスに向かう際、拠点を移したいと考えた大勢の中に混じり、いわゆるIターンのような形で戻ってきたプレイヤーだ。

その後、アリストラスに戻ってからギルドに所属はしたものの、日が浅いため制服を着ていない。逆に種子田とリヴィルは昔から戦闘員として紋章に所属しているため制服を着ている――という事情がある。

つまり、第38部隊の正隊員は鎧を着た二人だけで、修太郎を含めた三人は体験入隊のような状態である。なぜ正隊員が二人にまで 減った(・・・) のかは後々判明するのだが……

空気を変えようと、キイチが修太郎に声を掛けた。

「修太郎君は、なぜこの隊に?」

それに答える修太郎。

「ここに召喚士が居ると聞いて来ました!」

それを聞いて機嫌を良くしたのはリヴィルだ。

「あらあら、そうだったの。まあ私の召喚獣は特別だから気になるのも頷けるわね。なんたってレアな 盾役(タンク) 適性の召喚獣なんだから!」

満足そうに頷くリヴィル。

修太郎は小首を傾げながらそれに答える。

「召喚士の人なら誰でも良かったです!」

「……っ!」

屈託のない笑みでそう答える修太郎に、ヨシノはたまらず吹き出すと、顔を真っ赤にしたリヴィルが唾を飛ばしながら反論する。

「なら他の部隊に行きなさいよ!!」

「? それなら……」

「ま、まぁまぁ。それくらいにして、そろそろ依頼に向かいませんか?」

面倒な気配を察した種子田が場をとりなすと、リヴィルは不機嫌そうに鼻を鳴らした。

荷車を引く馬が動き出し、ギスギスした雰囲気のまま修太郎達は外へと出た。

* * * *

平原に出てすぐ、リヴィルが杖を抜き掲げた。

召喚獣を呼び出すんだ――

大いに期待する修太郎と、静観する面々。

「おいで、アイアン!」

リヴィルの掛け声に応じるかのように、まるで地面からせり出すような形で錆びた鎧の人型が現れた。

鎧は紋章の制服よりもさらにゴツゴツした見た目をしており、年季が入っているのかボロボロで、所々塗装が剥げている。

甲冑の奥から覗く黄色い瞳が怪しく光り、その呼吸音は大型の獣を彷彿とさせる。

「これが私の相棒でこの38部隊の 盾役(タンク) であるアイアン。便利だし文句も言わないし疲れも知らない。最高の道具よね」

そう言ってアイアンを叩くリヴィル。

甲高い音を響かせるもアイアンは微動だにせず、ただそこに佇んでいる。

修太郎はというと、感激していた。

「すっげええ! 鉄の巨人だ! ロボだ!」

「あーあ、やはりお子ちゃまね。戦闘ではアテになるんでしょうね?」

リヴィルの小言もどこ吹く風。

修太郎はそのボロの鉄塊を舐めるように見る。

なかなかどうして男子に刺さる 風態(ビジュアル) をしており、 盾役(タンク) と言われても納得の屈強さが伺える。しかし ボロの鉄塊(それ) を見つめるキイチとヨシノの表情は曇ったままだった。