軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

037

世界が割れる程の威力を孕んだその魔法を受けた赤の結界は、しかしその力を〝消し去る〟ようにして、一切の変化が見られない。

程なくしてエルロードが魔力の供給を止めると、周囲に徐々に世界が戻ってきた。そして10秒ほど経ったあとには、エリアは元どおりになっていた。

「効果なしですね」

「う、うん」

何事もなかったように振り返るエルロードに、唖然とする修太郎。

彼が使ったのは、固有スキルと魔法だ。

彼の固有スキルである《時の番人》と《至高の魔力》はそれぞれ、あらゆる時間制約を無効化する能力と、魔法に掛かるMP消費を1/10にする能力。

この二つがある限り、エルロードには魔法発動に要するキャストタイム、発動後のクールタイムを無視し、低コストで何度でも魔法を撃ち続けられるのである。

そして使った魔法……《 神喰らう深淵(イデア) 》は、魔族の頂点たる彼にしか使えない言わば〝固有魔法〟であり、その威力ゆえに彼はまだこの魔法を生物に対して発動した事はない――それほどの魔法であった。

修太郎は、エルロードの一位たる所以を垣間見た気がした。そしてそのエルロードの魔法でも破壊できない事実を知り、修太郎の中にはある確信が生まれていた。

「なるほど! つまりここに入るためには、何かを終わらせないと進めないってことか!」

「主様、心当たりがおありですか?」

「うん。 ゲーム(こういうの) では常識だよ!」

修太郎は、この結界がどうやっても破壊できないのは火力不足ではなく〝必要なもの〟が足りていないからだと推測していた。

同時に、破壊できないことが威力不足が理由ならば、きっとプレイヤー達はいつまでもこの世界から出られないだろう――とも思っていた。

「たとえば前のエリアにここの結界を壊すヒントとかが残されていて、それをどうにかすると道が開かれるんじゃない!?」

「流石は主様。もうすでに確信がおありですか」

「うん、きっとそう!」

修太郎はβテスター達が苦戦したキレン墓地には〝鍵が無いと入れなかった〟という記事を思い出していた。つまりはこの結界も、 鍵が必要(その類) だろうと考えたのだった。

「それではここより一つ前――つまりセルー地下迷宮に行く必要がありますね」

「お願いできる?」

「仰せのままに」

そう言って、エルロードは再び修太郎達を優しく抱いて飛び立った。

あとには静寂だけが残った。

* * * *

セルー地下迷宮――

世界に三箇所存在する巨大な迷宮のひとつ。

かつて迷宮を生み出す異能を持った賢者が造ったとされるその迷宮は、侵入者を排除する魔物や罠が存在する。周囲には高濃度の魔力が漂い、それらは魔物にとって最高の餌であり、人間には毒となる。ここで 喰われた(・・・・) 者は迷宮の糧となり、迷宮は更に大きくなってゆく。

「ここですね」

「うん、ありがとう!」

不自然な石のアーチの前に降り立った修太郎達。アーチの間には水面のような質感の紫色の空間が続いており、ここが迷宮前であることが見て取れた。

ここを解き明かせば結界を破壊できる――

そう思った修太郎が一歩進むも、その空間をぐるぐる巻きに施錠した無粋な鎖が行く手を阻んでいた。

「そっかあ、ここも鍵がいるんだ」

「破壊を試してみますか?」

「あ、それは大丈夫かな!」

掌に小さな魔法陣を浮かばせたエルロードを静止させながら、修太郎は少し困ったように「うーん……」と唸り、何かを閃く。

「やっぱり詳しいプレイヤーに聞くのが一番早いよ! プレイヤーなら鍵のこと何か知ってるかもしれないし!」

修太郎はプニ夫に頼んで黒騎士の姿となる。

その言葉にエルロードも頷く。

「では主様と似た気配のする存在が多く集まる場所に向かえばよろしいですか?」

「待って。アリストラスは多分人は多いけど詳しい人はいないかも知れないから、なるべく 地下迷宮(ここ) に近い所で!」

「かしこまりました」

修太郎の要望を聞き、エルロードは再び空へと飛び立った。