軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

163 s

互いに自己紹介や色々を済ませた紋章と黄昏の面々。

久しく見なかったメンバー達の嬉しそうな表情を眺めながら、白蓮は感慨に耽るようにポツリと呟いた。

「ここにラオや怜蘭がいれば……」

そしてすぐさま「違う違う」と首を振る。

自分が立ち直れたからといって、すぐ二人を呼び寄せるなんて真似はできない。せいぜい勇気を出してメールを送る程度であると、白蓮はそう考え自重したのだ。

呟きを聞いていたワタルが微笑む。

「その二人なら我々のギルドの部隊に入って、順調に進んできてるそうですよ」

「!」

白蓮は驚愕の表情を浮かべた。

ラオも立ち直っていたのだ。そして二人はまた先を目指してこちらに向かってきている――驚きや喜びや後ろめたさや色々な感情が渦を巻き、白蓮はなんともいえない笑顔で「よかった」とだけ呟いた。

そして、続くワタルの言葉に、今度は別のメンバーが驚愕することとなる。

「二人が加入した旧第17部隊――新生第7部隊は、たしか誠さんが所属していた部隊ですね」

「へ?」

誠は急いでメール画面を確認した。

しかし、そこにはキョウコからのご機嫌伺いのメールやショウキチからのくだらないSS、ケットルからの愚痴などしか確認できない。

「大出世! バーバラさん達すごい……」

ミサキも驚きを隠せない様子。

秘密にしてやがったなと、誠は嬉しそうに怒る。

ラオに怜蘭といえば知らぬ者などいないほど精鋭中の精鋭、いわゆるトッププレイヤーだ。そんな二人が加入したなら大幅に戦力増強となったに違いない。

ただ――

「新生第7部隊って……二人の加入でそんな格上げしちゃうものなんすか? しちゃっていいものなんすか?」

トッププレイヤーとはいえ元々は部外者の二人を入れただけで格上げとなると、既存の部隊は良い気持ちしないだろうと誠は考えた。

もちろん、飛び越された部隊のメンバーからのバーバラ達への 嫌がらせ(影響) も考慮して、である。

ワタルは意外そうな顔でそれに答えた。

「いえ、もちろん総合的な実力を考慮しましたよ。彼等のレベルも全員が30近いですからね」

「へ?」

誠はギルドメンバー一覧を開き、バーバラ達の名前を探す。

「全員がレベル30前後……?」

誠にとって、ラオ達の勧誘に成功したことよりも驚きの内容だった。

レベル30なんて、かつてのキングゴブリン戦に参加していた面々や、長い間ケンロン大空洞辺りでレベリングしていた面々くらいしか到達できない領域だ。

それがこの短期間で全員。

「(何が、何があったんだ……?)」

誠の疑問に応えるように、ワタルは彼等が飛躍した経緯を簡単に説明してみせた。

「レベル37の侵攻を倒したあ!?!!?」

ざわつくメンバーの間を誠の絶叫が通り抜ける。

「正確には二人と合流する前に」

「ますます訳が分かりませんよ……」

その場に放心する誠に代わり、

同じく驚いた様子のミサキが尋ねる。

「レベル37なんてキングゴブリンクラスじゃないですか。それをパーティ単騎で……流石に信じられないです……」

「動画や戦利品の画像も添付されてますからまず間違いないでしょう。なにより大幅に上がったレベルが動かぬ証拠ですから」

ワタルの返答にミサキも黙り込んだ。

果たしてレベル差が十数もあるボスをパーティで攻略など可能なのだろうか。ボスには格下からの攻撃を半減させるボス属性というものが存在するし、それが無くてもステータスの桁が違う。

「動画なら二人にも送っておくね」

と、ミサキと誠へメールを送るフラメ――それはバーバラが受付嬢ルミアへ提出した動画であった。

「あ……」

ミサキは動画に映る人物を指差す。

「この子……この子は?」

ただならぬ様子のミサキを心配しつつも、報告内容を確認するフラメ。

「報告では元17部隊がレベル1プレイヤーの召喚用素材の入手のために森へ同行した際に侵攻を発見し倒したとあるから、この子はそのレベル1プレイヤーじゃないかな」

レベル1。

なら違うよね――そう思いつつも、ミサキはつい結び付けてしまっていた。

レベル37の侵攻を単騎で屠れる実力を持ち、小学生ほどの背丈の人物を。

「名前は何ていうんですか?」

うるさいほどがなりたてる心臓の鼓動を強い精神力で抑え込み、ミサキは答えを待った。

「プレイヤー名は、そうそう。〝修太郎〟」

ぽろり。と、ミサキの頬を涙が伝った。

周りのメンバーはギョッとした様子で気遣うような言葉をかけている。しかし、当の本人はそれどころではない。

「やっと……やっと……」

オロオロするフラメ見かねてワタルは修太郎について知ってる情報を話してゆく。

ギルドに所属していない修太郎の情報を話してしまうのは躊躇う所だが、尋常ならざるミサキの様子を見てワタルは「話すべき」と判断したのだった。

「この子は最終的に二人の加入に伴い、入れ違いで脱退したそうです」

ミサキはというと、何も聴こえていないような様子でその場に佇み泣いていた。

誠が気まずそうに口を開く。

「森で召喚獣の素材採取ってことは本当の初心者だよな。なら目の前で侵攻発生と戦闘を目にしたわけだ、可哀想に。せっかく一歩踏み出したのに戦意喪失して戦線離脱するのも無理はないな」

実際は全くの真逆なのだが、

側からみれば非力な少年そのもの。

「(違うよ、修太郎さんは……)」

反論しようとするものの、

言葉が出てこないミサキ。

代わりにワタルが弁解する。

「いえ、この子もそのまま最前線に向かってきてるそうですよ」

「まじですか?? すんごい肝っ玉じゃねえか。将来有望だな」

今時珍しいなと感心した様子の誠。

フラメはミサキの様子から何かを察し、誠に対して「空気読めてないな」と白い目を向けていた。

「(ショウキチ達も頑張ってるじゃねえかよ。レベルも一気に上がって舞い上がってなきゃいいけど、バーバラがいるなら心配もないか。いや、一度電話、いやメールだけ……)」

静かに葛藤する誠と、

「(ラオは乗り越えたのね。私もようやく前を向けたよ)」

遠くを見つめる白蓮と、

「(やっと会えますね、修太郎さん)」

静かに微笑むミサキ。

三者三様の反応を見せながら、新生第70部隊、紋章、黄昏のシオラ大塔攻略が幕を開けたのだった。