軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

161 s

翌朝―― 八岐(ヤマタ) とaegisがそれぞれ次のエリア攻略に向かうのを、フラメは不服そうに見送っていた。

「エリアひとつ分の差だ」

不意にかけられた声に振り返ると、そこにはワタルとアルバの姿があった。フラメは再び不服そうな顔になり、口を開く。

「あのギルドとは仲良くなれなそうです」

「まあまあ」

それを宥めるワタルと苦笑するアルバ。

紋章メンバー達もぞろぞろと集まり始めており、時間が来たら予定通りシオラ大塔の攻略をはじめる流れとなる。

宿屋をしばらく見つめていたワタルだったがすぐに視線を戻し、今度はそれを塔へと向けた。

隣でアルバが呟く。

「3日〜4日のうちにボス部屋まで通しで進めれば上出来だな」

黄昏のマスターの勧誘に失敗したこともあり、期待していた戦力増強は叶わなかったものの、アルバは今の戦力でも十分に最前線に通用すると確信していた。

だから――

続く展開には流石に驚かざるを得なかった。

「おいアレ……」

メンバーの誰かが別方向へと指をさす。

皆が見つめるその先へアルバも視線を動かすと、そこには数十人から成るプレイヤーの群れと、先頭に立つ女性の姿があった。

嬉しそうにフラメが尋ねてくる。

「なんだ、勧誘成功してたんですね!」

フラメの声をどこか遠くに感じながら、アルバは困惑の表情を浮かべワタルへと視線を向けた。視線が交わるとワタルは首を横に振った。

「いや……失敗した、筈なんだがな」

なら今まさに合流せんとするこの集団はなんなのか。しかし先頭に立つ女性――白蓮は、昔よく見知っていたあの頃の彼女だと分かる。

「おはようございます。昨日はごめんね」

両手を合わせて可愛らしく謝る白蓮。

廃人のようだった昨日の姿からは想像できない変わりようで、ワタルとアルバは「何があったんだ」と驚きを隠せずにいた。

白蓮はkagoneと目配せした後、口を開く。

「私達〝黄昏の冒険者〟は〝紋章〟との合併を希望します」

ハッキリとした口調でそう告げた。

紋章メンバーから歓声にも似た声が挙がる。

黄昏のメンバー達も嬉しそうに頷いている。

固まっているアルバを見かねてワタルが口を開く。

「それは勿論大歓迎ですが……どういう心境の変化があったのか、聞いても?」

そこで白蓮は昨日の晩に起こったことを語ってみせた。

フラメを含めた紋章メンバーからどよめきの声が上がるも、黄昏メンバーは少し悲しそうな顔でそれを黙って聞いていた――彼等はすでに白蓮から一部始終を聞いていたから。

「(ミサキちゃん凄すぎる……!)」

心の中でミサキを崇めるフラメ。

衰退したとはいえかつての最前線ギルドの参入はとんでもない戦力増強である。それに、マスターである白蓮のスキルは何物にも変え難い超有能スキルだ。

全てを聞いたワタルは「そうですか」と優しく微笑みかけ、チラリとミサキと誠を見た。

ミサキと誠は気まずそうに他所を見ている。

状況が状況とはいえ、夜間のエリア侵入と 回復役(ヒーラー) 不在でのエリア侵入は御法度である。しかし当然、それを責めるプレイヤーはこの場にはいなかった。

「合併といっても正確には〝同盟機能〟を利用するだけです。なので黄昏の冒険者と紋章自体はそのまま存在し、これからも対等な関係のままです」

ワタルの言葉に黄昏メンバー数名から安堵の声が漏れた。

同盟というのはギルド間で行えるパーティ機能のようなもので〝インベントリアイテムの共有〟や〝仲間への攻撃不可〟の対象に加えられたりと、メリットが多くある。ただ町への貢献度に応じた報酬も等分されてしまうため、基本的に規模の大きなギルドが何か条件を付ける場合がほとんどである。

それをワタルは〝平等〟とした。

黄昏からすれば願ってもない提案である。

「それと、これはお願いなんだけど――」

目を泳がせてごにょごにょと言う白蓮。

ワタルは察したように苦笑を浮かべた。

「ミサキさんと誠さんの部隊への加入ですか? 勿論、こちら側としては断る理由もありません」

ミサキと誠がガッツポーズを取る。

白蓮も安心したようにホッと胸を撫で下ろした。

白蓮は黄昏の冒険者マスター兼、

紋章ギルド第70部隊の隊員となった。

具体的には、ミサキ達がエリア攻略に参加する際はパーティに加入するといった流れとなる。それについて双方のギルドから不満が出ることもなく、むしろ残りの3枠を狙って野心に燃えている者が続出したのはまた別の話。