軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

144 s

K視点――

対峙するのは怯えた様子の青年。

「僕は、僕は無実です……脅されて……」

Armaは自分に言い聞かせるように呟く。

Kは乱暴に頭を掻きながら、Armaが身に付けている装備を観察する。

武器は状態異常の付与された短剣二本。防具はカロアで購入できる最高クラスの物――Kは奥歯を噛みしめた。

「お前の着てる物、持ってる物、懐に隠してる沢山のアイテムは全部この世界で必死に生きてきた奴等の所持品だよ。しれっとそれを着ておいて無実だなんだってほざくんじゃねえ」

一気に距離を詰めるK。

それを見て、Armaは微かに笑った。

勝った――と。

「!」

Kの体に電撃が走る。

ステータスには《麻痺》の文字が並んだ。

Armaの高笑いが空洞内に響き渡る。

「あーあ、間抜けだなぁ。こんな安い挑発に乗ってくるなんて、それで本当に一つの町を束ねる支部長なの?」

Kの視線の端には罠が映っていた。

そしてArmaは追い討ちをかけるように右手の短剣を何度もKに突き刺し、麻痺の状態異常をさらに重くさせる。

「足元見える? これ、俺の固有スキル。全員を殺したスキル、これ。麻痺を更新し続ければじきに死ねるよ。聞いてる?」

目を閉じるK――

瞬間、彼の固有スキルの効果が発動した。

固有スキル『欲張りグルメ』

食事の効果を五つまで重複させずに継続させる事ができる。効果時間は一律で8分間。

彼が食した物は――

黄色い治療の実『掛けられた麻痺を治癒する』

青色の治療の実『掛けられた催眠を治療する』

剛龍のステーキ『STR+80%』

剛龍のステーキ『STR+80%』

剛龍のステーキ『STR+80%』

体の電撃はすでに無くなっていた。

強化された筋力は凄まじい剣速を生み出す。

ザンッ!!!!!

「あれ?」

宙に舞う首が不思議そうに呟いた。

回転する視界の端に、自分の体が見える。

Armaの体は瞬く間に塵と化し、

大量のアイテムが地面に散らばった。

「一瞬の死ってのは無情なもんだろ。お前らがやってきたことだぜ、それ」

光の粒子を見つめながらKは呟いた。

PK達の手にかかった沢山の仲間を想いながら。

*****

怜蘭視点――

目の前には20人の百合香が立っている。

20人の百合香は不気味に笑っていた。

「便利よね、このスキル」

取り囲む百合香が言う。

怜蘭は十字架の大剣を抜いた状態で静観していた。

実のところ、百合香の固有スキル『虚像』は数ある固有スキルの中でも最強クラスに位置付けられている。

役割は状態異常の《幻覚》や《魅了》などに近いものの、これは攻撃の類ではないため町中でも使うことができ、その上対象者はこれを〝治療することができない〟。

知覚情報を騙すため応用は多岐に渡り、千を超える分身をも作り出すことすらできる。しかしガルボの『 瓜二つ(ドッペルゲンガー) 』とは違い、分身体は攻撃力を持たず本人と同じ動きしかできない。

「この力があれば誰にも負けることはない。誰も私に攻撃できないもの」

余裕の笑みを浮かべる百合香。

怜蘭は淡々とした口調でそれに反論する。

「いいえ、弱点だらけよそれ――確かに強いのは認めるけれど、無差別的な広範囲攻撃は防げないし認識外にいるプレイヤーには作用しないでしょ?」

一瞬、言葉を詰まらせる百合香。しかし、怜蘭の武器を見てそれを鼻で笑った。

「大剣使いのアナタには、その両方の弱点とやらも突けないじゃない。それに、大剣使い唯一の範囲攻撃にも溜めが必要なの知ってるわ」

お話しはこのくらいね――と、百合香は杖を構える。20人の百合香から杖を向けられても、怜蘭は表情一つ変えてはいない。

「わかる? 四方八方から魔法が襲ってくる恐怖。攻撃の数も大きさも、変幻自在なんだから」

そう言って、百合香が魔法を放つ。

それは百を超える巨大な龍となり、その全てが怜蘭目掛けて突っ込んでくる。

けたたましい爆発音が響き渡り――

しかし、煙が晴れた先に怜蘭はいなかった。

(死んだらアイテムが散らばるはずだから仕留め損ねた? あの中から本当の攻撃を見切ったってこと?)

そこで初めて、百合香は自分の相手が誰なのかを思い出す――かつてのβ時代、そして最前線で活躍した〝幻影〟の異名を持つプレイヤーだということを。

「やはり、貴女が認識できない相手には効かないようね」

「なッ!?」

20人とは遠く離れた場所にいた百合香の体に剣が生える。今まで覚えたことのない激痛に表情を歪めながら後ろを見ると、まるで幻が溶けるようにそこに怜蘭が現れた。

怜蘭の固有スキル『透明化』

その名の通り、短時間だが体を透明化させ音や気配すら消すことができるスキルである。

恐怖や痛みから逃げるように地面を転げまわる百合香。怜蘭はそれを冷たく見下ろしながら、百合香の首元に剣を突き付けた。

「痛みで映像の組み立てすらできないでしょう。たとえレベルが高くても、経験値が伴わなければただの的よ」

怜蘭の瞳が赤色に染まる――

放つのは大剣士最大火力の攻撃スキルだ。

「待っ……」

「《流星剣》」

流れるような連続攻撃をその体に受け、百合香は苦悶の表情を浮かべながら爆散する。

怜蘭は更に透明化を使用し、再び姿を現した。

「今度は嘘じゃない、か」

変わらずそこに散らばったアイテム群がその証明となった。自分のレベルが上がることにどこか気持ち悪さを感じつつ、天を仰ぐ。

(敵の特性を修太郎君が送ってくれたから、相性の良い相手と戦えた)

怜蘭はふと、修太郎との戦闘を思い出していた。

透明化して気配を消した怜蘭を、

いとも簡単に見つけ出し攻撃を避けた。

固有スキルを使って敗れたのは、

あれが初めての経験だった。

(経験値っていうのは、修太郎君みたいな子の技を言うのかな)

そう心の中で呟きながら、激しい戦闘音がする方向へと視線を移す――そこでは解放者とラオが激しい撃ち合いをしていた。