軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

125

三人と別れてから数分後――

ほどなくして何かを察したバートランドは愉快そうに声を上げた。

「おーこれは凄まじい」

「ん? どうしたの?」

「この神殿内のモンスターが殆ど消え去ってます。あの三人が暴れてるんでしょうねェ」

それを聞いて修太郎も苦笑いを浮かべる。

目的の途中に出現したmobを全て蹴散らし進んでいく――特にバンピーとガララスの姿が容易に想像できたからだ。

「意気込んでた三人には気の毒だが、どうやらこの道が〝アタリ〟のようだな」

先頭を行くセオドールが立ち止まる。

つられて修太郎が視線を上げると、そこには何十段と伸びる石造りの階段の先、荘厳な佇まいでそこにそびえ立つ神殿があった。

神殿の入り口と思しき場所には、

何かのマークが彫られている。

「神殿の中こそ何かすごいモンスターがいそうだよね」

冗談っぽくそう言う修太郎だったが、セオドールが驚いたような表情でそれに答える。

「察しの通り、あの先に強力な気配を感じる。神殿を守護する何か、か」

「あ、ほんとに?」

当てずっぽうを肯定され困惑する修太郎。

警戒しつつ階段を上り、入口へと辿り着く。

中は至ってシンプルな造りとなっており、広い空間の中心に祭壇が一つ、それを挟むように竜の形をした像が二つ。

中心部に祀られるように置いてある〝太陽と月のマーク〟が描かれた水晶のような物を見つけ、修太郎は指をさした。

「きっとあれが宝玉だ」

昇級試験の第一段階目標である〝宝玉〟を見つけた修太郎。その前に――と、セオドールが素早く剣を打ち出した。

スパパッ! ズズン……!

二体の竜の像が音を立てて崩れ落ちる。

それは悲痛な叫び声と共に光の粒子となって、ほどなくして消え去った。

古代都市ムスキア周辺mob図鑑から引用すると、古代魔道ゴーレムは一見して普通の石像である。しかし主の所有物を奪わんとする者には容赦なく襲いかかり、材料として用いられたモンスターの力を使う事ができたとされている。今は失われた古代の魔法である――

「あーらら、なんか物凄くかわいそうなことしたんじゃない? 旦那」

「敵は斬るのみだ」

動くことすら許されなかったゴーレムに同情するバートランドは、無表情で剣をしまうセオドールに苦笑を浮かべる。

その瞬間、修太郎にアナウンスが鳴った。

『おめでとうございます。昇級試験第二段階が完了しました。報酬をランクアップします。詳細はクエスト画面にてご確認ください』

首を傾げる修太郎。

なぜなら、まだ宝玉を取っていなかったからだ。

(二段階目って、なにを達成したんだろ)

そう心の中で呟きながらクエスト画面を開く。

○○○○○○○○○

依頼内容:昇級試験(EX)

依頼主名:職業案内所

有効期間:47:44:07

第一段階:陰陽召喚士の神殿から宝玉を取り持ち帰る(0/1)

第二段階:遺跡内の全てのmobを撃破する(10,709 / 10,709)

第三段階:陰陽の竜と陰陽の召喚士を撃破する(未達成)

○○○○○○○○○

その後、修太郎は二人の魔王に見守られながら祭壇にあった〝召喚士の宝玉〟を取ると、特別な戦闘も無く第一段階目標も(1/1)となり完了となる。

残すは第三段階目標のみとなった。

「っと、エルロードの旦那達も到着したみたいですよ」

そう言いながらバートランドが視線を入り口に向けると、ひどく落ち込んだ様子のバンピーとガララス、そしていつも通り落ち着いた表情のエルロードが立っていた。

「申し訳……」

「よかった、皆無事で! 皆のお陰で第二段階目標も達成できたよ、ありがとう!」

ありがとう、ありがとう、ありがとう。

固まるバンピーの頭の中に修太郎の声が何度もこだまする。ガララスは目を手で覆うようにしながら「何者にも変えがたい」と天を仰いでいた。

「流石ですね主様。自ら神殿を発見なされるとは。我々の出る幕なしです」

と言って、微笑を浮かべるエルロード。

修太郎も笑顔でそれに答える。

「ううん、三人が頑張ってくれたお陰」

一頻り遠征組三人を労った修太郎は、本題の〝第三段階目標〟について意見を募った。

「この陰陽の竜ってなんなんだろ」

困ったように呟く修太郎。

ガララスは大袈裟に手を叩いてみせた。

「陰陽の竜――そうか、カムイとセムイが何なのか思い出した。東洋の神話に出てくる神の名だな」

眉間にシワを寄せ、バンピーが聞き返す。

「神?」

「そうだ。仲の悪い双子神で、それぞれ太陽と月を司っていると聞いたことがある。カムイが太陽、セムイが月。奴等は毎日争っているからカムイが勝ってる時は朝に、セムイが勝っている時は夜になる。つまるところ、カムイとセムイは遺跡内にあらず――」

そう言って、ガララスは指を上に向けた。

「空にある」

一行が空を見上げると、ちょうど太陽から月に変わり、朝を押し除け夜がやってきていた。

それを見て今度は修太郎が呟く。

「セムイの力強まりし時、世界に帳が落ちる。カムイの力強まりし時、世界に陽光が差す。世界の陰陽交りし時、祀りし祭壇に彼の者現れん――」

それはクエスト開始時のアナウンス内容だった。それを聞いてエルロードは納得したように頷く。

「世界の陰陽交わりし時……というのは、二つの神の力が拮抗している瞬間、それとも争いを止めている瞬間、という意味でしょうか」

「或いは、両方倒した後――とか?」

修太郎の言葉に、エルロードは微笑む。

「後者の方が分かりやすいですね。現段階で祭壇に何も変化がないのなら、主様が仰ったように二つの神討伐後という意味かもしれませんね」

と言い、天を仰いだのだった。