軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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翌朝、修太郎が集合場所に着くとすでに全員が揃っていた。

「遅れてごめん。また遅刻しちゃった」

「んーん、私達もさっき着いたから」

そう言ってラオはショウキチとケットルの肩を叩く。二人に愚痴るような様子は無く、むしろ緊張したような面持ちでちょこんと椅子に座っている。

「さて、結果報告といきましょうか」

ハンド操作で全員分のドリンクを並べながら、バーバラはどこか嬉しそうに ショウキチとケットル(二人) を見る。

「やーーっぱりバーバラの差し金かよ!」

「はて、なんのことやら?」

立ち上がるショウキチに対し、戯けるように肩を竦めるバーバラ。

ショウキチは目の前の炭酸飲料を一気に飲み干すと、Kから貰った地図を広げ、最初にキレン墓地を指さした。

「俺達はラオと一緒にエリア構造とエリア毎に出現するmob、罠、美味しいクエストを調べて回った――正直言って、ウル水門のボスを完封した勢いで進んでたら間違いなく大怪我してたと思う」

ショウキチとケットルにいつもの覇気がない理由はこれだった。二人はラオに連れられカロアの町中を駆け巡る中で、先の三つのエリアがいかに過酷で、残酷で、前の〝初心者向けエリア〟とまるで難易度が違うことを知ることとなったから。

実の所、紋章がカロアに拠点を構えるまでは最前線よりも〝キレン墓地〟と〝ケンロン大空洞〟の死亡率が段違いに高かった。それはKが言っていたように、ウル水門突破で勢いづいた無知で力自慢のプレイヤーが無策に突っ込んだことが挙げられる。

このゲームは残酷だが無慈悲ではない。

しっかりと調べれば情報はいくらでも手に入るようできているのだ。

「キレン墓地は――」

ショウキチが語り出す。

その内容は修太郎が説明した内容とほぼ同等の情報量で、怜蘭とキョウコもそれを満足そうな表情で聞いている。

「じゃあ次のクリシラ遺跡は私が説明する」

続いてケットルから、クリシラ遺跡の特徴が語られる。

彼女は〝ショウキチの振り見て我が振り直せ〟という座右の銘に従いここまでうまく立ち回ってきたが、自分の足での情報収集は今回が初めてだった。

「その前に言わせてほしい」

ポツリと呟くケットル。

合わせた両の掌に力を込める。

「いつも誠やバーバラやキョウコに任せっきりだったけど、エリア一つ攻略するのにこんな細部まで気を配る必要があるなんて知らなかった――というか、知ろうとせず寄りかかり過ぎた。ごめんなさい」

そう言って、頭を下げるケットル。

バーバラとキョウコは目を丸くした。

「ケットル……」

過去の自分を戒め、そんな自分を見放す事なく支えてくれていたバーバラ達への感謝の気持ちを素直に伝えたケットル。彼女の成長に、世話役のキョウコの涙腺が緩む。

「お、俺も、俺もごめん。これからは一緒に情報収集とか色々するから!」

「うん、うん……」

涙ぐむキョウコを心配するティーン二人組を見て、今度はラオが鼻水を垂らしてオイオイと泣き始めるという連鎖が起こり、報告会は一時中断となったのだった。

咳払いを一つ。

改めてケットルが語り出す。

「クリシラ遺跡はエリア内の紋様を覚えながら進むのが鉄則。間違えた紋様に触れただけ、マップ構造が複雑に変化するのが理由」

ケットルは1から7までのマップパターンを引っ張り出しながら、さらに説明を進める。

「石像のようなmobがメインだから、鈍器系武器や水属性が有効。mobの移動速度は今までのmobの中でも一番遅いから、キレン墓地よりもある意味初心者向けかな。ただ倒すのが遅れれば部屋に仕掛けられた罠が発動して、道が塞がれたりするから注意」

重要な要素を簡潔に説明するケットル。

最後のケンロン大空洞も引き続きケットルが説明するようだ。

「ケンロン大空洞は視界が悪くて、状態異常攻撃持ちの蝙蝠が出てくるし動きを封じてくる蜘蛛も出てくる。それと、そこに住む人型猿族「ハルタナ」の氷属性攻撃も動きが阻害される厄介な効果がある。一番事故になりそうだし、ここにはレベルに充分な余裕を持ってから挑みたいかな」

冷静に分析しその結論に至ったようだ。

バーバラ達は心の中で拍手を送る。

ここで怜蘭が質問を飛ばした。

「ケンロン大空洞は最後に挑むとして、私達のパーティなら、キレン墓地とクリシラ遺跡のどっちに適してると思う?」

基本的に、アイウエオ順から進むにつれエリアの難易度は上がっていくため、順当にキレン墓地が最も難易度の低いエリアという推測が立つ。

とはいえ、キレン墓地とクリシラ遺跡の推奨レベルは±2程度の差しかなく、第7部隊にとってはどちらも適正エリアといえる。

ケットルはショウキチと視線を交わし、得た情報と自分の意見を合わせ、慌てた様子もなくそれに答える。

「それはキレン墓地。なぜならクリシラ遺跡に挑むには私達は物理攻撃職が多いし、水属性も鈍器を使う人もいない。その点キレン墓地なら私みたいな火属性を鍛えた魔法使いも居て、聖属性が使えるバーバラも居るし、当面のレベル上げ場所はキレン墓地でいいと思う」

修太郎の見解とほぼ同じ内容だった。

ケットルの回答に誰も異論を唱えない。

元最前線組は満足そうに頷いていた。

「異論は無いようね。ショウキチ、ケットル、よくここまで調べた! えらい! 今後は二人に情報収集任せちゃってもいいくらいね」

「どんとこーい!」

元気よく返事をするショウキチ。

バーバラは嬉しそうに席から立ち上がる。

「よーし、意見もまとまった事だし、早速Kさんに許可貰ってこよっか!」

「うおおおお新エリア攻略燃えてきたーー!」

気合十分といった様子で第7部隊が立ち上がった所で、おずおずと手を挙げる修太郎。

「あのう……その前に、新しい召喚獣を召喚してもいい?」

*****

修太郎がわざわざ皆を止めてまで召喚をしたがるのには「修太郎の近くにいるmob達は、正真正銘召喚されたものだ」という認識を皆に持ってもらう必要がある――という理由がある。

怪しまれないための最大限の配慮。

もっとも修太郎は、皆に全部の召喚に付き合ってもらう必要もないだろうとも考えていたが、今回はシルヴィア召喚を見ていない怜蘭とラオがいるためその結論に至る。

現に、バーバラ達は修太郎がシルヴィアを召喚した場面を見ているがために、シルヴィアの規格外の強さも「そういうものか」と自然に納得できた部分もある。

第7部隊とちょっとした野次馬が見守る中、修太郎の呼び声に応えるようにして、 予定通り(・・・・) 黒の竜が現れた。

辺りにどよめきの声が沸き起こる。

『セオドールは基本的にどういう役回りをする予定なの?』

『俺は火球での攻撃にしようと思う』

『そっか。わかった!』

修太郎はセオドールに短い確認を取ったのち、改めて新しい仲間の説明を始める。

「名前は……セオドール!タイプ的にはケットルと同じような火属性の魔法攻撃役みたいだよ」

「魔法攻撃ですか。シルヴィアちゃんは物理ですから、攻撃役が偏らなくて良かったですね!」

そう笑顔で答えるキョウコ。

修太郎は剣主体の物理攻撃役

シルヴィアは素早い物理攻撃役

セオドールは魔法攻撃役

一見して修太郎のパーティは 攻撃役(アタッカー) しか居らずバランスが悪いのだが、物理アタッカーが二人いるパーティはザラにいるため最終的には問題はない。

とっさに名前を考えたような演技も混ぜつつ、修太郎は肩に降り立つ小さな黒竜を撫でた。腕には小さな銀狼が抱かれているため、なんとも愛くるしいパーティが誕生したことになる。

「この子も可愛い!!!!」

「モフモフもいいけどドラドラも好きい!」

「ドラドラって……」

例の如く、尋常ではない食い付きを見せるバーバラとキョウコ。対して元最前線組の二人は少々の驚きと共にセオドールを興味深く観察していた。

「小さいけど竜族とはまあ、神引きだな」

「 八岐(ヤマタ) のマスターって前例を見てた身からすると、戦闘面はちょっと期待しちゃうね」

竜関連のアイテムなど簡単には手に入らないため、今回修太郎は〝ランダム召喚〟を用いた事になっている。

「そういえば、名前の由来知りたいかも」

シルヴィアを撫でながらそう呟くケットル。

そんな質問が飛んでくるとは思っていなかった修太郎は、少し焦りながらもそれに答えた。

「セオドールは、ほら、鱗が鎧みたいだからさ、騎士の名前っぽいのを付けたんだ!」

「おおおお! わかるわかる!!」

激しく同意する同年代のショウキチ。

ケットルはちょっと納得いかなそうな顔をしつつも、セオドールから視線を移す。

「じゃあ、シルヴィアは?」

「シルヴィアは、ええとね……」

修太郎は腕の中のシルヴィアに視線を送ったのち、絞り出すように頭に浮かんだ 言い訳(由来) を述べた。

「……毛がシルバーだから」

「安直ー。黒い犬にクロって付ける感じだ」

「んだよ、安直いいだろ! シンプルイズベストじゃんか!」

やいのやいの言う子供達を尻目に、当の本人であるシルヴィアは『安直……』と、激しく落ち込んでいた事を誰も知る由もない。