軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

957 クマさん、毒沼と戦う その1

沼の周りに壁を建てていく。

先に進む場所に魔物と動物の死体があれば土に埋める。

金死蝶が飛んでいたら風魔法で切り刻む。

ヴォルガラスが近くに飛んできたら、風魔法で切り刻む。

順調に進む。

いつもトラブルが舞い込んでくるけど、今回は大丈夫そうだ。

少しばかりヴォルガラスが邪魔をしてくるのが面倒くさい。

またヴォルガラスが飛んでくるので風魔法を切り裂く。

沼の中にポトンと落ちる。

そんなことを繰り返しながら100mほど進むと、沼の上を飛んでいるヴォルガラスが騒がしくなる。

「なに?」

沼の上を飛んでいるヴォルガラスに目を向けるとコカトリスが降りてくるところだった。

そう簡単には壁を作らせてくれないみたいだ。

私は自分で作った壁の後ろに隠れ、様子を窺う。

コカトリスは沼の上に飛んでいたヴォルガラスを襲う。足で捕まえたと思った瞬間、コカトリスの真下の沼が盛り上がる。

沼が盛り上がったと思った瞬間、水柱のように高く上がり、コカトリスに沼の水が纏わりつく。

コカトリスは逃げようと翼を羽ばたかせようとするが、沼の水に取り込まれた中では翼は動かない。

しかも、普通の水じゃない。粘着質である。

さらにはもがくコカトリスを逃がさないよう動いているようにも見える。

コカトリスは沼の水から逃げ出すことはできない。

逃げ出すことができないコカトリスは沼に落ちる。

それでも逃げだそうとするコカトリスは沼の上でもがく。

だけど沼の水に纏わり付かれたコカトリスは逃げ出すことができない。

そして、沼の水はコカトリスを沼に引きずり込み、姿が見えなくなった。

一瞬のことで、なにが起きたか分からなかった。

わたしは探知スキルを使う。

沼には蛇の反応とコカトリスの反応がある。

でも、しばらくするとコカトリスの反応が消える。

死んだ。

コカトリスがあっけなく死んだ。

沼になにかいる。

探知スキルには蛇の反応しかない。

でも、蛇が沼を動かしたようには見えない。

そんなことができるとも思えない。

沼になにかいる。

壁から沼を覗くけど、コカトリスを引きずり込んだと思えないほどに静かなものだ。

そんな静かな沼の上をヴォルガラスが飛んでいる。

沼が動いたと思ったら、ヴォルガラスも沼の水に巻き付かれ沼の中に落ちる。沼の中に引きずり込まれたヴォルガラスが逃げ出すことができるわけもなく、探知スキルのヴォルガラスの反応も消える。

間違いなく、意志を持ったなにかが沼の中にいる。

考えられるのは水を操る魔物。

探知スキルには蛇と表示されているけど、巨大ヘビの可能性もある。

探知スキルはキングサイズでも通常サイズの魔物として表示される。

でも、沼の水が生物のように動いていた。

沼の水を水鉄砲のように吐き出した感じではない。

次に考えられるのは沼がスライムの可能性。

あの粘着質の水はスライムに近い。

ただ、探知スキルにスライムの反応はない。

もしくは魔物でない生物ってこともあり得る。

金死蝶のように魔物でないなら探知スキルには反応しない。

動物も反応しない。

仕組みは分からないけど、探知スキルに反応があるのは魔物と人だけ。

「はぁ」

どうしたものか。

このまま壁を作るのは危険だ。

いきなり襲われる可能性がある。

こんな2mほどの壁じゃ、簡単に乗り越える。

強度の問題もある。コカトリスが逃げられないほどの水。壁も壊される可能性が高い。

クマの形で作ったクマの壁なら壊れないかもしれないけど、作ったのは普通の壁だ。

現状では身を隠す程度にしか役に立たないと思ったほうがいい。

現状のわたしができることは。

①壁を作るのを諦めて、この場から離れ、カガリさんのところに戻る。

②なにも考えずに倒す。

③今後のことも考えて、沼に潜むなにかを確認する。

一番楽なのは①だ。でも、このまま放置してもいいのか問題。

次にお酒を買いにきたら、ゴジールさんがお酒の材料を手にするためにこの山に来たまま行方不明になったと話を聞くことになるかもしれない。

今回の目的は、ゴジールさんが安全にお酒の材料を取りに来られるようにする。

だから、この場から一度離れて、カガリさんに相談する案だ。

そして、②のなにも考えずに倒すも有りだけど、あまりにも相手が分からなすぎる。

個人的には③の確認だ。

カガリさんに相談するにしても相手が分からなければ、相談のしようがない。

簡単に倒せる相手なのか、簡単に倒せない相手なのか。それともクマ装備があっても倒せない相手なのか。

クマ装備があっても倒せない相手はいると思う。

もし、沼の中に引きずり込まれたら、クマ装備があってもどうなるか、わたしでも分からない。

無敵と思いたいけど、こればかりは分からない。

宇宙に放り出されたら、どうなるか分からないし。

ただ、分かるのは絶対的な防御だ。

いまのところ、どんな攻撃を受けても衝撃を和らげてくれる。痛みはない。怪我もしたことがない。

でも転がったら、流石に頭はクラクラはするけど。

とりあえず、誰が沼を動かしているかの確認をする。

わたしは壁から顔を出し、魔法で土の塊を作り出し、遠くの沼に向けて放つ。

土の塊が沼に落ち、水飛沫もとい、沼飛沫が飛ぶ。

土の塊は沼に沈んでいく。

反応なし?

それじゃ、出てくるまで撃ち込むだけ。

でも、そのまえに毒沼のシャワーは浴びたくないので、小さいクマの形をした小屋を作る。

クマにした理由はヴォルガラスやコカトリスに襲われたとき対策だ。

さらに小屋でわたしを囲えば後ろから金死蝶やクモに襲われてたり、いきなり毒沼から蛇が現れても守ってくれる。

わたしは小窓から、沼に向けて巨大な土の塊を撃ち込む。

土の塊が沼に落ち、ドボン、ドボン、ドボンと音を立てて、毒沼のシャワーが降り注ぐ。

「どうかな?」

反応がない。

もしかして、無機質には反応しない?

アイテム袋から、過去に討伐したウルフなどの魔物を取り出し、風魔法で沼に向けて放つ。

沼にウルフが落ちると沼に引きずり込む動きをする。

やっぱり生きている?

「面倒くさい」

ちまちま確認するのが面倒くさくなってきた。

わたしはクマ小屋の外に出る。

土魔法を使い、足元が盛り上がり、わたしを高い位置に運んでくれる。

わたしは柱の上に立つ。

「どこまで、耐えられるか勝負だ」

わたしは魔力を集めると柱の上から沼に向かって、無差別に魔法を放つ。

土魔法の塊に、風魔法で沼を切り裂き、空気弾で沼に穴を開ける。

ついでに爆発もしても構わない気持ちで、クマの炎を打ち込む。

ガス爆発は起きず、クマの炎は沼を沸騰させ、蒸気が湧き上がる。

「うぅ、臭い」

腐った匂いが上がってきた。

臭い匂いも毒みたいなものでしょう。

クマ装備で守ってほしいものだ。

でも、これだけの攻撃をしても反応はないの?

そう思った瞬間、沼の水が盛り上がる。

どろっと溶けるような粘着しつがあるような。

スライム?

でも、わたしが知っているスライムではない。

徐々に形を作り出す。

口や目みたいなものもある。

毒の液体の中から生まれたような生物。

大きさは氷竜と同じ、いや沼の大きさを考えたらもっと大きい。

わたしは探知スキルを使う。

表示されていたのは無数の蛇の反応。

違う。

目を凝らして見る。

どろっとした不気味な液体の中に泳ぐ蛇たち。

あの蛇が何かを隠している。

わたしは手に電撃を纏わり付かせ、泥の生物に向けて放つ。

蛇の反応が消え、蛇の文字の下から『no data』の文字が出てくる。

やっぱり、蛇じゃなかった。

魔物が重なっていただけだ。

でも、蛇は倒せたけど、『no data』の魔物は倒せていない。

水系の魔物なのに電撃が効いていない?

ベトベトした生物はゆっくりと体を動かす。

どろっとした液体。

小学生のときにやったモンスターゲームにベトベトした毒を持つモンスターがいた。

大きさは天と地の差があるけど、それに近い。

どうして、こんな生物がこんなところにいるのよ。

あのモンスターは廃棄物や汚染された液体から現れたモンスター。これは自然の毒から現れた魔物ってこと?

目があるのか分からないけど、こちらに体が向く。

体の一部がプクっと膨らんだと思ったら、なにかが飛び出し、わたしに向かってくる。それも一つじゃない。

風の刃で切り刻む。

近くに迫ってきたときに見えたけど、ヴォルガラスの形をした液体だった。

つまり、あの体の一部である毒沼をヴォルガラスに形取り、わたしに向けて飛ばしたことになる。

毒沼で作られた巨大な体の一部の液体が伸びる。

それは大きな手のひらのように広がり、わたしに向けて落ちてくる。

わたしはとっさに柱の上から後方へ飛び、地面に着地すると駆け出す。

わたしの直感が遠くに離れろと言っている。

後ろで液体が叩きつけられる音がする。

わたしはジャンプして後ろを振り返る。

柱とクマ小屋は形を保っているが毒沼の液体に包まれている。

わたしは着地と同時に沼の周りに走りながら、毒沼を観察する。

毒沼の水面が盛り上がったと思うと無数の液体状の蛇が現れる。

もの凄い速さで水面の上を移動し、わたしを襲ってくる。

風魔法で切り刻む。

形を失った液体状の蛇は崩れ落ちる。

蛇を倒しても液体状のヴォルガラスが襲ってくる。

どうして、蛇やヴォルガラスの形をしているの?

そんなことを考えていると沼地の上に人が立っている事に気づく。

人の形は液体状で腐ったゾンビのような動きをしている。

無数の人の形をした液体状の生物は剣のようなものを持っている形もあれば、杖のようなものを持っている形もある。

普通の人から小さい子供のような形まで。

「もしかして、今までに取り込んできた人たち?」

想像もしたくないけど、考えられるのは死の山で亡くなった人たちだ。