作品タイトル不明
956 クマさん、毒沼に向かう
「じゃが、沼に蓋をすると言ってもかなり大きいぞ」
ここからだと沼は小さく見えるけど、近くに行くと大きいのかもしれない。
「そのときは壁でも作るよ」
今回の毒ガスは重いことが分かっている。
なら、高い壁を作れば防げるはずだ。
まあ、突風とか吹いて漏れる可能性もあるけど。
「それで、沼を排除するのはいいが、下は毒じゃぞ」
カガリさんの言うとおりに、わたしたちの下には毒が流れている。
でも、わたしにはクマ装備がある。
毒が効かないのは前回、マーネさんと一緒に薬師を捕まえたときに証明済みだ。
しかも、妖精の眠り粉からも守ってくれていた。
前回、大猿も倒したし、なにかしらスキルに変化がないかクリモニアに戻ってからスキルを確認したら、新しいスキルが追加されていた。
スキル、クマの加護
クマのフードを被っていると空気が浄化される。
いつも綺麗な空気が吸える。(ただし、匂いは遮断できない)
があった。
いつからあったのか分からない。
以前からあったのか、プリムのお姉さんの妖精を捕まえていた男を倒した後からなのか分からないけど、記載されていた。
匂いは浄化はできないって、つまり臭いものがあっても遮断ができないから臭いままってことだ。もし世界一臭い缶詰シュールストレミングで攻撃をされたら、防げないってことだ。噂だと目が痛くなったり、酷いことになるらしい。でも。流石に目は守ってくれるよね?
とりあえず、毒からは守ってくれるらしいので、毒沼まで行くことができる。
「一人なら魔法で守れるから大丈夫だよ。カガリさんたちはここで待っていて」
わたしは柱の上部を広くさせる。
絵柄的にキノコ? 傘を広げた感じ?
もちろん、キノコや傘みたいに端が垂れ下がっていたりはしない。
「くまゆる、くまきゅう、2人をお願いね」
「「くぅ〜ん」」
くまゆるとくまきゅうが心配そうにすり寄ってくる。
くまゆるとくまきゅうに毒耐性があるか分からないので連れて行くことはできない。そのあたり確かめられないから困る。
もし、くまゆるとくまきゅうが毒で倒れでもして、死んだら、後悔する事になる。
そんな危険なところに連れて行くことはできない。
「大丈夫だよ」
「「くぅ〜ん」」
わたしはくまゆるとくまきゅうの頭を撫で柱の端に向かう。
「気をつけるのじゃぞ。もし、なにかあれば妾も駆けつける」
カガリさんはいざとなれば空を飛べる。
「そのときはお願いね」
わたしは柱の上から飛び降りる。
地面に着地する。
「あっちだよね」
わたしは沼があった方へ、ランニングする感じで走る。
木々を避け、ちょっとした段差はジャンプして、先に進む。
クマ装備がなければ、走ることもできない。
走りながら小学校のときマラソンをしたこと思い出す。
どうして、長い距離を走らないといけないんだと、何度思ったことか。
今思えば、子供のときから体力を付けるのはいいことだと思う。
でも、運動が苦手な子もいるんだから、運動が得意な子と同じ距離を走らせるのは、どうかと思う。
ゴールするまで走らせられるし、平等にするなら勉強も平等にするべき、答えが分かるまで、終わらせちゃダメだと思う。
勉強が得意な子はすぐ終わり楽ができる。
でも、猫型ロボットがお世話する小学生みたいに運動もダメ、勉強もダメだったら、可哀想だけど。
その点、わたしは運動は苦手(嫌い)だったけど、勉強は同学年ではできるほうだったと思う。
そんなことを考えながら走っていると、目の端になにかを捉え、とっさに躱す。
「なに?」
すぐに飛んできた方へ目を向ける。それと同時に黒いものが迫っていた。
ギリギリで躱し、黒いものを飛ばしてきた犯人を見る。
「うわぁ」
周囲の木々に黒いクモの巣が張られており、数匹のウルフぐらいの大きさのクモがいた。
見た瞬間に風の刃を放っていた。
クモの体は真っ二つに斬れ、地面に落ちる。
すかさずに火の玉を投げ込み、死体を焼く。そして、地面に埋める。三段活用を行う。
探知スキルで確認すると、隠れていたクモもいたので、サクッと倒しておいた。
クモと言えばルリーナの昔のパーティー仲間だったデボなんとかと一緒に戦ったことがある。
虫は嫌いだけど、とくにクモはダメだ。
クモがうじゃうじゃたくさんいるのも発狂するけど、大きなクモも発狂ものだ。
クモの処理を終えたわたしは、クモが吐いたと思われるものを見る。
飛んできたものを見ると、地面に黒い粘りけがあるものがあり、プツプツと泡が出て、酸で溶けるような音がしている。これも毒かな。
見てて気持ちいいものではないので、土で埋める。
それにしてもいきなり襲われるなんて、注意が足らなかった。
いつもはくまゆるとくまきゅうに周囲の確認を任せているから、周囲の確認が疎かになっていた。
あらためてくまゆるとくまきゅうの有り難みを感じる。
わたしが適当に行動してても、くまゆるとくまきゅうがいつも周囲を気にしてくれていた。
いつもしてもらっていることが当たり前と思ったらダメだよね。
そんなことを思いながら、わたしは毒沼に向けて走り出す。
目的地に向かって走り続け、目的の沼地までやってくる。
探知スキルで確認する。
周辺にヴォルガラスの反応と沼の中に無数の毒蛇の反応がある。
沼の中って、ウミヘビみたいな蛇?
うぅ、気をつけないと、いきなり足元に現れるかもしれない。
ウナギなら嬉しいのに蛇だと気持ち悪いと思うのは、わたしが日本人だからかな。
とりあえず、毒蛇の反応は沼の奥のほうだ。ヴォルガラスも離れた位置にある。
でも、ヴォルガラスが飛んで来るとしたら、あっという間だ。
コカトリスの反応はないけど、いきなり現れる可能性もあるから気を付けないといけない。
くまゆるとくまきゅうがいれば近寄ってきたら教えてくれるんだけど、本当にくまゆるとくまきゅうがいないだけで不便を感じる。
でも、普通の冒険者はくまゆるとくまきゅうみたいに魔物が近寄ってきたことを教えてくれる動物はいないし、探知スキルみたいな魔法もないみたいだ。
わたしが知らないだけかもしれないけど。
わたしは周囲を確認しながら、沼に近づく。
沼は濃い紫色をしており、いかにも「毒沼です」と言っているような色をしている。
そして、ところどころではプクプクと小さい気泡が出ている。
あの気泡は毒ガスなのかもしれない。
それにしても臭い。死臭がする。匂いも遮断してほしいものだ。クマパペットを鼻に当てて、鼻を守る。
腐った動物の死体らしきものの上に金死蝶が飛んでいる。
最悪の組み合わせだ。
火の魔法で燃やしたいところだけど、毒ガスが引火する可能性もあるので、下手に火の魔法は使えない。
もし、金死蝶の粉末で爆発し、周辺のガスまで一緒に爆発したら、周囲がとんでもないことになる。
でも、毒沼ごと爆発すれば、毒沼が消えるのでは? と思ったりする。
だけど、そんな大爆発が起きれば、わたしもどうなるか分からない。
クマ装備があれば大丈夫だと思うけど、爆発で毒沼のシャワーが降るほうが怖い。
まあ、雨から守ってくれるクマ装備だから大丈夫だと思うけど、匂いがついたら嫌だ。
火を使うのは最終手段にする。
とりあえず、風魔法を飛ばして、金死蝶を切り裂いておく。
上空を見ればヴォルガラスは飛んでいるし、本当に最悪の場所だ。
さっさと毒沼の処理をして、みんなのところに戻ろう。
まずは、沼の大きさを確認するため、土魔法で柱を作って、上から確認する。
山と山の間の中腹にできたっぽい。
「かなり大きい」
遠くから見たときは、そんなに大きくは見えなかったけど数百メートルはある。
うろ覚えだけど、大きい沼だと数キロあるらしい。
それを考えると、数百メートルぐらいは可愛いものだ。
沼の周囲を見渡す。
沼に全て蓋をするのは大変だから、山の麓へ流れる毒を止めるだけでいいかもしれない。
全てを塞ぐ必要はない。
柱を縮め、地面に戻る。
沼から少し離れ、足元に魔力を流す。
地面からわたしの身長より高い壁がそびえ立つ。
とりあえず、沼の周りを歩きながら壁を作っていけばいいかな。
あとでゴジールさんの魔石を借りて、毒の確認をすればいい。
わたしはゆっくりと歩きながら、壁を作っていく。
これだけの壁を作るのはくまゆるとくまきゅうを初めて召喚したときに村で壁を作った以来かな。
(※書籍1巻書き下ろしでくまゆるとくまきゅうの初召喚のお話で村に行き、巨大イノシシに襲われている村のために村を囲む壁を作ったことがあります)
わたしが歩くとその横には壁ができていく。
のんびりと歩きながら沼から少し離れた場所を歩く。
探知スキルを確認しながら周囲の確認をする。
さらには魔力を流し、壁を作っていく。
気分的には、歩きスマホで地図を見ながら、手は作業をしている感じだ。
これでは注意力が散って、事故が起きるわけだ。
まあ、ここで人にぶつかることもなければ、人に迷惑をかけるわけでもない。なので、気にせずに探知スキルで見ながら、土魔法で壁を作り、さらに周囲を見ながら歩く。
くまゆるとくまきゅうがいれば、くまゆるとくまきゅうに乗って移動するから歩かずに済んで、周囲の確認もくまゆるとくまきゅうに任せて、魔物が近寄ってくることもくまゆるとくまきゅうに任せれば、探知スキルも見ずに済んで、本当なら魔法で壁を作るだけでいいのに。
くまゆるとくまきゅうに会いたい。