軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

952 クマさん、蟻と戦う その2

わたしは蟻の穴に向かって大量の水を流し込む。

かなり深い。

水を通して、穴の深さがなんとなく分かる。

しかも、複雑に入り組んでいる。

下がったと思ったら、上がったりする。

これ、全ての穴に水を通して蟻がいるかどうかを確認するには時間が掛かる。

とりあえず、適当に水を流して、蟻らしきものを見つけたら、吸い上げることにする。

水からなにかが動く反応が伝わってくる。

水を逆流させる。

穴から黒い物体が出てくる。

そう思った瞬間には目の前に蟻の顔がわたしに迫ってくる。

手元から水を吸い上げているのだから、こうなるのは当たり前だった。

とっさに水を止めて、蟻を放り出し、反対の手で風魔法を放ち倒す。

蟻の顔を直視してしまった。

やっぱり、虫の顔面直視はダメだ。

寝ると悪夢を見そうなので、今日の夜はくまゆるとくまきゅうを抱いて寝ると、誓う。

一匹目の経験を生かし、2匹目からは気をつけて吸い上げる。

次から次へと蟻を吸い上げては、倒していく作業を行う。

それをなんとも言えない顔で見ているカガリさんとゴジールさん。

「こんなに簡単にできるものなのか?」

「簡単に見えるのはユナの実力が非常識だからじゃ。大量の水を生み出すには、多くの魔力を消耗する。さらにその水を手足のように扱うのは容易ではない」

カガリさんがゴジールさんに説明する。

わたしを基本として、他の冒険者に依頼を頼むようになったら、誰も引き受けてくれなくなる。「他の冒険者はできた」とか比べるようになったら、嫌われる可能性もある。

「こやつの行動は全て非常識と思ったほうがいい」

酷い。

でも、反論できないのが悲しい。

外野で、そんなことを言われつつ、わたしは黙々と蟻を吸い上げ、倒していく。

追加で倒した蟻の数は20匹ほど。

大変だったのに思ったよりも少ない。

穴が深く、無数に枝分かれしているので、全てを確認するのは不可能に近い。

とりあえず、水を下へ流して深さを確認する。

「うん?」

水を適当に流していたら、何かに反応する。

生物が水の中で動くと、伝わってくるのが、なんとなく分かる。でも、これはなに?

「どうしたのじゃ?」

「大きな空間があって、なにか大きな生物がいるみたい」

目を閉じて水に集中する。

なにかが水に触れている。

水を広げてみる。

広い空間?

水がどこまでも広がる。

そして、なにかしらの動くものがいる。

それも、大きい。

「女王蟻かのう」

「やっぱり、そう思う?」

普通の蟻と魔物となった蟻が違うことは分っているけど。

「女王蟻?」

カガリさんは女王蟻のことは知っているみたいだけど、ゴジールさんは知らないみたいだ。

まあ、蟻の研究でもしていなければ、知り得ないことだ。

そもそも、この世界で蟻の研究をしているのかどうかも怪しい。

わたしだって、小学校のときに理科の授業で習わなかったら知らなかったと思う。

自ら、虫の勉強をしようとは思わない。

「簡単に言えば、蟻の母親だよ。カガリさん、よく知っているね」

「過去に見たことがあるからのう」

「クマの嬢ちゃんは分かるが、嬢ちゃんは何者なんだ?」

「妾のことは気にしないでいい」

いや、普通は気になるからね。

カガリさんは、わたし以上に謎の幼女になっている。

「確認だけど、女王蟻って大きいの?」

蜂の時は大きかったけど、めちゃくちゃに大きいわけじゃなかった。

まあ、それでもくまゆるぐらいの大きさはあった。

「妾が見たのは一回だけじゃが、大きかったのう」

「ちなみにどのくらい?」

「お主のクマぐらいじゃ」

蜂のときとおなじぐらいの大きさだ。

もしかしたら、もっと大きいかもと思っていた。

少しだけ安堵する。

でも、水が触れた感覚だと、カガリさんが言うよりも大きい感じがするけど、違うのかな。

あくまで、水から伝わってくるのは、なんとなくの大きさだ。

「それで、どうするのじゃ?」

「倒すにしても、地上に出てきてくれないと倒せないからね」

さきほどから、水をかけると反応はあるけど、地上に出てくる感じはない。

水でダメなら、火で試してみる。

水を止め、小さい炎で出来た子熊を作る。

「炎がクマになっている」

ゴジールさんは不思議そうに炎のクマを見ている。

わたしが手を振ると、炎のクマは穴の中に入っていく。

炎のクマは穴の奥に進んでいく。

う〜ん、どっちだっけ。

蟻の巣は迷路だ。

しかも、見えない。

水は繋がっていたから、感覚的に分かるけど。とりあえず、水を流した方角へ進ませる。

目指すは地下深くにいる大きい生物(たぶん女王蟻)に向けて炎のクマを動かす。

「くぅ〜ん」

「なんじゃ?」

カガリさんが尋ねた瞬間、蟻の巣から蟻が次から次へと出てくる。

わたしはとっさに風の刃で蟻の頭を切り落とす。

頭がコロリと落ちる。

うぅ、気持ち悪い。

「どうやら、穴が熱せられて出てきたみたいじゃのう」

こんな方法でも蟻を地上に出させることができたみたいだ。

とりあえず、出てくる蟻は風の魔法で倒し、蟻の死体は火で燃やし、燃え残った死体は土魔法で覆い被せて見えないようにする。

倒した魔物は処分するのは討伐した者のマナーだ。

視界に入れたくない理由のほうが大きいけど。

とにかく、今は炎のクマを大きい穴へ目指す。

「たぶん、このこっちだったと思うけど」

目的地に到着する。

水と違って、あっているのか分からない。

適当に、炎のクマを適当に動かしてみる。

すると、地面が揺れる。

「なんだ。地面が揺れている」

「地震か?」

「「くぅ〜ん」」

地震と思ったら、地面が大きく盛り上がり、黒い鉤爪が出てくる。鉤爪は地面をしっかり掴むと、一気に地面が盛り上がり、巨大な蟻が這い出てくる。

「…………」

人は驚くと声が出なくなるのは本当だった。

くまゆるなんて大きさじゃない。

もっと、大きい、大型トラックぐらいある。あまりの気持ち悪さに声も出なかった。気持ち悪い。大きな頭、ギョロッとした大きな目、口をカチカチさせ、黒光りした体。

虫好きなら歓喜の声をあげるかもしれない。

くまゆるとくまきゅうが巨大化したら、喜ぶかもしれない。

くまゆるとくまきゅうが巨大化したら、そのお腹に抱きつき、昼寝をする。

でも、虫はダメだ。

体がブルッと震える。

「ユナ! 離れろ」

カガリさんの声で我に返り、女王蟻の鉤爪がわたしに向かって振り下ろされる。

後方に跳び、着地と同時に魔法を連発する。

クマの風魔法、クマの炎、あらゆる魔法を放つ。手加減なんてしない。足は切られ、体は燃え上がり、女王蟻は暴れている。

わたしは土魔法で無数のミニクマを作り出す。

圧縮して、土ミニクマを硬くする。

さらに土ミニクマを高速回転させる。

さらに電撃を纏わり付かせる。

腕を前に向かって振るうと、電撃を纏った無数の土ミニクマは回転しながら、女王蟻に向かっていく。

無数の土ミニクマは女王蟻の体を貫く。

女王蟻は地面に崩れ落ちる。

わたしは攻撃の手を止めない。

弱肉強食の世界だ。

蟻(アント) は動物や人を襲う。

どっちが正しいはない。

どっちも生きるために襲う。

今回はお酒のためだったけど、今後、この 蟻(アント) がどういう行動をするか分からない。

食べ物がなくなれば、近くの村や町を襲ったかもしれない。

たらればかもしれない。

未来なんてなにが起きるかなんて、誰も分からない。

蟻に恨まれたとしても、人の身勝手な考えと思われても、あとで後悔するよりは倒したほうがいい。

まあ、わたしの場合は虫嫌いが1番の理由だけど。

わたしは炎のクマ魔法を使って女王蟻を燃やす。

魔石? そんなものいらないよ。

わたしの精神を守るほうが優先だ。

電撃を纏った土クマが女王蟻の体を無数の穴を開け、最後は巨大なクマの炎で燃やす。

「はぁはぁ」

わたしの目の前では巨大蟻だったものが燃えている。

「少し、やりすぎじゃのう」

カガリさんの言葉で我に返る。

「ごめん、大きな蟻を見た瞬間、怖くなって」

「妾はお主のほうが怖いわ」

「だって、虫苦手なのに、目の前にいきなり現れて。そもそも、大きすぎない? カガリさん、くまゆるぐらいって言っていたよね?」

「確かに、これは大きかったのう」

大きいってものじゃない。

大型トラックぐらいある。

バカでかいだ。

「まあ、どっちにしても倒すことになっていたから、よかろう」

カガリさんは誤魔化すように笑う。

笑い事じゃないんだけど。

「こんな大きな蟻の魔物が地下にいたのか」

ゴジールさんは燃えている女王蟻を見ながら言う。

「将来的なことは分からぬが、これで増えることはないじゃろう」

今更だけど、魔物ってどうやって増えるんだろうね。

他の異世界ものを読んでいたときも書かれていないことが多い。

たまに瘴気が集まって魔物が現れるとか、空間に歪みができて魔物が現れるとかあるけど。

氷竜は卵から生まれていたから、やっぱり母親からなのかな?

「じゃが、これで終わりじゃないぞ。この穴の中に残っているかもしれぬ」

カガリさんが女王蟻が出てきた穴に目を向ける。

わたしとゴジールさんも穴に近づく。

直径4〜5mある。

「この中の確認をしろと?」

「残っておるかもしれぬ」

絶対にこんな穴の中に入りたくない。

せっかく女王蟻が作ってくれた穴だ。活用しない手はない。

魔力を集め、穴に入るギリギリの巨大な炎のクマを作り出す。

手を下に振ると、巨大な炎のクマは女王蟻が出てきた穴に降りていく。

ゆっくりと、ゆっくりと、映画のワンシーンのように、クマの足から穴に入っていく。