軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

946 クマさん、冒険者ギルトにやってくる

わたしたちはゴジールさんと一緒に冒険者ギルドに向かう。

「いくら一緒に行っても、嬢ちゃんたちには頼まないぞ」

「じゃが、依頼を受けるのは冒険者の自由じゃ」

指定依頼ではない限り、基本的に誰でも受けられる。

指定があるのは冒険者ランクぐらいだ。

強い魔物の討伐を低ランク冒険者には頼めない。死にに行かせるようなものだ。

その判断は冒険者ギルドが依頼内容で決める。

氷竜とかだったら、ランクが高かったり、人数を増やしたりするけど、普通の魔物ぐらいなら、ランクCもあれば依頼は受けられる。

わたしたちは冒険者ギルドにやってくる。

その間、視線を集めたのは言うまでもない。

ゴジールさんは少し恥ずかしそうにしながら早歩きをしていた。

「ここが冒険者ギルド」

他の建物より大きい。

ゴジールさんは急ぎ足で冒険者ギルドに入る。

わたしもついて行くから、視線はつきまとっている。

冒険者ギルドの中には普通の人からドワーフまで様々な冒険者がいる。

「冒険者になるドワーフもいるんだね」

「あたりまえだろう。たまにドワーフが職人じゃないと驚く人もいるが、割合が多いってだけで、普通に冒険者や農業して暮らしているドワーフもたくさんいる」

固定概念?

わたしが持っているドワーフの知識は漫画、アニメ、小説から得たものだ。

その多くがドワーフは職人で酒好きで、武器はハンマーなどの重い武器を持っているイメージがある。

ちなみにエルフは風魔法や弓が得意なイメージがある。

ゴジールさんは受付に向かう。

その後ろをわたしとカガリさんが付いていく。

受付嬢は可愛らしい女の子。

ドワーフだから背が低いけど、立派な成人女性だ。

「依頼を頼みたい」

女性はゴジールさんの後ろにいるわたしたちを見る。

「後ろは気にしないでいい」

ゴジールさんの言葉に受付嬢は、チラチラとわたしたちを見るけど、最終的にはゴジールさんの言葉に従い、ゴジールさんに目を向ける。

「依頼ですね。それでは、こちらの紙に記入してください」

ゴジールさんは紙を受け取ると、依頼内容を書いていく。

記入が終わると、受付嬢に渡す。

「依頼内容は魔物討伐、場所に関してはご自身が案内すると……。まず確認ですが、魔物の種類は分かるでしょうか。あと場所も教えていただけないでしょうか」

「魔物は分からん」

「分からない?」

「地中の中を動いている」

「地中ですか……」

「詳しいことは分からん」

地中?

なんの魔物なのかな?

砂漠ならワームとかなんだけど。

あとはモグラ?

「場所に関しては秘密にしてほしいから、話せない」

「だから、ゴジールさんが案内するってことなんですね。ですが、距離、日数によって依頼料が変わってきますので、距離か日数は教えてください」

確かに日帰りで行けるところと、往復で3日とか10日とでは冒険者の拘束時間が変わってくる。依頼中の食料は依頼主が別途で支払うこともあるが、基本依頼料に含まれていることになっている。

だから冒険者だって、日帰りで行ける依頼を10回受けたほうがいい。

10日間なら、単純計算で10倍の依頼料がかかるってことだ。

「片道、3日ほどの距離だ」

片道3日は距離としては長いようで短い。

討伐先で時間が掛かれば一週間以上、冒険者を雇うことになる。

それが数人となれば、かなりの金額になる。

一人ならいいけど、パーティーによっては金額が少ないってことにもなる。

「さらにゴジールさんを護衛するって仕事が入りますので、依頼料は上がります」

「構わない。口止め料も入れてくれ」

「分かりました」

「えっと、依頼料って、依頼する人が決められるんじゃないの?」

気になったので尋ねる。

その金額で受けるか受けないかは冒険者が決める。

「そういう依頼も受け付けています。でも基本的に、冒険者ギルドでは冒険者が受けてくれる金額を提示します。それを受け入れるか、受け入れないかは依頼主の判断になります。依頼に来たのはいいですが、依頼料が低くて依頼を受けてくれないってこともあります。逆に依頼料を高くすれば、すぐに引き受けてくれる冒険者は現れます」

冒険者はお金のために動くものが多い。わたしみたいに面白いとか、可哀想で動く冒険者は少ない。

冒険者だって、命がかかっているのだから仕方ない。

「それでは依頼金額ですが……」

金額を提示される。

「これほどか」

「あくまで、最低金額です。受けてくれる冒険者が現れるまで、時間がかかるかもしれません」

他に良い依頼があったら、そっちを選ぶ。

わたしが普通の冒険者だったら、依頼料が高く、簡単な依頼を受ける。

好き好んで、依頼料が低く、難しい依頼を受ける冒険者なんていない。

「この金額から依頼料が高くなればなるほど、冒険者が受けてくれる可能性も高くなります」

「その金額で受けてくれる可能性は?」

「分かりません。依頼内容に対して金額は低いです。言い方は悪いですが、依頼を受けるメリットが少ないです。何日も引き受けてくれない可能性もあります。すぐに受けてくれる冒険者がいるかもしれません。こればかりは、依頼票を貼り出してみないと分かりません」

受付嬢の忖度ない言葉にゴジールさんはなんとも言えない表情になる。

「緊急依頼でしたら金額を増やすか、知り合いの冒険者と交渉するしかないかと思います」

安い金額で命をかけて魔物と戦ってほしいとはいえない。

「お主、お金はないのか? 高級な酒を造っておるのじゃろう。金ぐらいあるじゃろう」

「いい酒を造るには金が掛かる」

同じ料理でも安い食材と最高級の食材で作った料理では差がある。

野菜だって管理されずに作られた野菜より、丁寧に水、肥料を管理されて作られた野菜のほうが美味しい。

養殖に使う餌もそうだし、鶏を育てるにしても、餌によって、卵も肉も美味しさが変わってくる。

美味しいものを作るにはお金がかかるものだ。

「でも、物好きな冒険者が受ける場合もあります」

受付嬢が慰めるように言う。

「そうじゃのう。物好きな冒険者がいればいいのう」

カガリさんがわたしを見ながら言う。

ここで、わたしに受けろってことだね。

もし、本当に物好きな冒険者がいたら困るので、口を開く。

「その物好きな冒険者はここにいるよ。わたしが受けるよ」

わたしの言葉にゴジールさんと受付嬢の目がわたしに向く。

「えっと、クマのお嬢ちゃんが?」

「これでも冒険者だよ」

わたしは冒険者カードを受付嬢に見せる

見た目ではあれでも、ギルドカードは噓は吐かない。(一部を除く)

差し出したわたしの冒険者カードをゴジールさんと受付嬢が見る。

「……職業クマ」

「そんな職業があるのか」

だから、どうして、2人ともそこを見るのかな。

「ランクを見て」

「……ランクCだ」

ランクCはそこそこ強い冒険者になる。

ランクFは新人。(ここで篩にかけられる)

ランクEは冒険者入門者。(弱い魔物を倒せる。一般人からしたら脅威)

ランクDが経験を積んできた冒険者。ある程度なら信用できる。

ランクCは強い魔物をどうにか倒せる冒険者。

ランクB以上になるにはいろいろとあるらしい。

だから、一般的にランクCは強い部類に入る。

「お主、ランクCなのか? そんな嘘を」

「こんなクマの嬢ちゃんのランクを上げる冒険者ギルドがあるのか?」

カガリさんが嘘呼ばわりして、ゴジールさんが違法を疑う。

「いや、こやつのランクは低く見積もってB。妾が見ればAランクあってもいいじゃろう」

「あはははは。嬢ちゃんは面白い事を言うな」

カガリさんの言葉にゴジールさんが笑う。

「お主、笑われておるぞ」

わたしにはゴジールさんの気持ちが分かるから怒ることもできない。

こんなクマの格好した女の子が、ランクCどころか、ランクB、ランクAの実力があると言われても笑うだけだ。

「あのう。ギルドカードの確認をさせてもらってもよろしいでしょうか」

受付嬢が頼むので、ギルドカードを渡す。

受付嬢はいつも思う謎の水晶板の上にギルドカードを載せると確認し始める。

そして、水晶板に表示されている文字とわたしを交互に見る。

表情が変わってくるのが分かる。

「彼女、ユナさんが冒険者ランクCなのは間違いありません。この内容が本当なら、彼女が引き受けてくれるなら、安心かと思います」

「いや、待て。そんなことを言われて、信じられると思っているのか?」

「確かにそうですが、信用問題になるため、ギルドカードに偽りの情報を載せることは基本的に不可能です」

「だが」

「強い魔物を複数人で倒し、実力以上のランクに上がる冒険者も実際にいます。ですが、彼女、ユナさんの討伐記録はほとんどが1人です。つまり、彼女が1人で倒したことになります。噓の可能性があるとしたら、彼女が魔物討伐の依頼を受け、他人が魔物討伐して、それを彼女がしたことにする。そんなことをするメリットは普通はありません。そんな実力があるなら、危険な依頼を押しつけられることもありますので」

「……信じられん」

ゴジールさんが信じられないというようにわたしを見ていると、「クマの嬢ちゃんじゃないか」と誰かが声をかけてきた。

「えっと」

振り返って声をかけてきた人物を見ると、前回、鍛治職人の試練のときにいた。

「鍛治ギルドのギルドマスターの……」

名前はなんだっけ?

「タロトバだ」

わたしが名前を覚えていないと分かったのか、名乗ってくれる。

「どうして嬢ちゃんがいるんだ? ロジーナに会いに来たのか?」

「それもあるけど、今日は依頼を受けにきたんだよ。タロトバさんこそ、冒険者ギルドにどうしたの?」

タロトバさんは鍛冶ギルドの人だ。

関係ないとは言えないけど、冒険者ギルドにいるのは少しだけ違和感がある。

「冒険者ギルドで扱っている解体道具のメンテナンスの打ち合わせだ」

ああ、そういう仕事もあるんだ。

クリモニアでもゴルドさんがしていたような気がする。

「でも、それってギルドマスターがすることなの?」

トップがするようなことではないと思う。

事務仕事だ。

「時間があったのと、顔出しだな」

知り合いに会いにきた感じかな。