軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

941 クマさん、カガリさんを起こす

「俺は仕事に戻る。嬢ちゃんにお酒を飲ませたことが知られると困るから、知られないように店を出てくれよ」

「それじゃ、ロージナさんには嬉しそうにお酒を持って、店を出てもらえればいいね」

ロージナさんがお酒を買ったようにしか見えないはずだ。

「まあ、構わんが」

なんだかんだでロージナさんはお酒を嬉しそうに持っている。

もしかすると、ダダンさんは良いお酒を用意したのかもしれない。

そして、カガリさんが試飲した後片付けするダダンさんを残して、ほろ酔いのカガリさんを連れて部屋をでる。

店内はお酒を購入する商人たちがいるけど、受付で話をしているので、わたしたちを見る人はいない。

わたしたちはその横を通り抜け、店をでる。

「それじゃ、わたしたちは一度、帰るよ」

「ああ、待ち合わせはバッソのところでいいか?」

場所は分かるので、問題はない。

「それじゃ、夜に」

ロージナさんと別れる。

ロージナさんはお酒を嬉しそうに見ながら歩いている。

やっぱり、嬉しかったみたいだ。

ロージナさんの後ろ姿を見送り、わたしたちも歩き出す。

とりあえず、ほろ酔いのカガリさんを連れ回す事はできないので、一度家に帰ることにする。

座って、お酒を飲んでいるときはほろ酔いぐらいだったけど、歩くと少しフラついている。

歩くと酔いが回ると聞いたことがある。

「カガリさん、おんぶしようか」

「妾は酔っ払っていない」

漫画でよく聞く酔っ払いのセリフだ。

お酒は飲んだことがないし、酔っ払ったこともないから分からないけど、本当に本人は酔っ払っていないと思っているのかな。

酔いから覚めると、酔っていたときの行動を思い返して、悶絶するシーンを見たことがある。

お酒って、本当に不思議な飲み物だ。

酔っ払うカガリさんを連れて、どうにか家まで戻ってくる。

家に戻ってくるまでに、カガリさんは眠そうにしていた。

この家で休んでもいいけど、なにもすることがないので、クマの転移門を使って、クリモニアに戻ってくる。

眠そうにするカガリさんを2階の和室に連れていき、布団を敷くと、カガリさんはふらつきながら、布団の上に倒れる。

そのまま、気持ち良さそうに寝てしまう。

その寝顔は天使のような表情だと言いたいけど。

「妾はまだ飲める。酒を寄越すのじゃ」

寝言が可愛くない。

わたしは子熊化したくまゆるとくまきゅうを召喚する。

「カガリさんをお願いね」

起きたとき、自分の部屋でないことに驚くかもしれない。

でも、くまゆるとくまきゅうがいれば安心するはず。

それにカガリさんは大蛇を討伐したあとに、この部屋を使っているから、分かるはずだ。

わたしは寝ているカガリさんを残し、部屋をでる。

そのまま、クマハウスを出るとフィナの家に向かう。

平和だね。

すれ違う人は楽しそうにしている。

他の街と違って、わたしとすれ違っても、ジロジロと見る人は少ない。もちろん、見てくる人はいる。

でも、他の街に比べたら、全然少ない。

フィナの家にやってくる。

ゲンツさんは仕事中でいなかったけど、ティルミナさん、フィナ、シュリはいた。

フィナにティルミナさんに用があると伝えると家の中に入れてくれる。

「あら、ユナちゃん、どうしたの?」

「えっと、ティルミナさんってお酒は飲む?」

「お酒? たまにゲンツに付き合って飲むことがあるぐらいかしら?」

「それじゃ、これ」

わたしはカガリさんにオススメされたお酒をテーブルの上に置く。

「お酒?」

「いつもお世話になっているお礼」

「お世話になっているのは、わたしたちのほうだと思うのだけど」

わたしとティルミナさんがテーブルの上のお酒を見ていると、シュリがやってくる。

「ユナ姉ちゃん、お酒って美味しいの? お父さん、美味しそうに飲んでいるけど。子供は飲んじゃダメって言うの」

「う〜ん、わたしも飲んだことがないから、分からないかな」

「ユナ姉ちゃんって、子供?」

そう尋ねられると、返答に困る。

15歳って、この世界だとどうなんだろう。

13歳で冒険者になれるし、お酒を飲める定義も聞いたことがない。お酒に興味がなかったからでもあるけど。

「ティルミナさん、お酒って何歳から飲めるの?」

「一般的にお酒は20歳からね」

「そうなの?」

「ユナちゃんって無関心なことは本当に何も知らないのね」

日本がお酒を飲めるのは20歳からってことぐらいは知っているよ。ここは異世界だから、知らないだけだよ。

「まあ、国によって違うらしいから、ユナちゃんがお酒を飲んでも許してくれる国もあるわよ」

元の世界でも、国によっては、飲める年齢は違ったはず。

だからといって、その国まで行ってお酒を飲みたいとは思わない。

お酒なんて、料理に使うぐらいだ。

「でも、このお酒はどこで買ったの?」

「ドワーフの町に行ってきたから、そのときに」

わたしの言葉にティルミナさんの動きが止まる。

「ドワーフが造ったお酒……。これはしばらく隠しておきましょう」

ティルミナさんはお酒が入った瓶を抱えるとキッチンに向かう。

なにをするのか見ていると、キッチンの棚の奥に隠していた。

「フィナ、シュリ、ゲンツには内緒よ」

「えっと、2人に飲んでほしいんだけど」

「飲むわよ。お祝いのときにね」

感想が聞きたかったけど、当分先になりそうだ。

「美味しかったら、また買ってくるから、早めに飲んでね」

ダダンさんとは顔見知りになったので、1人で買いに行っても売ってくれるはずだ。

それから、ゲンツさんが帰ってくるまで、フィナたちとお喋りをして時間を過ごした。

夕食を誘われたけど、家には寝ている幼女がいるので、断った。

ティルミナさんの手料理が食べられなかったのは残念だけど仕方ない。

クマハウスに帰り、2階に上がり、カガリさんが寝ている部屋に入る。

やっぱりと言うか、まだ寝ていた。

しかも、くまきゅうを抱いて寝ている。

カガリさんの腕の中でくまきゅうが困っている。

その姿が可愛いと思うのは、可哀想かもしれない。

ちなみに、くまゆるは少し離れた場所で丸くなって寝ていた。

「カガリさん、起きて」

「もっと、酒を持ってくるのじゃ」

くまきゅうの耳を吸う。

くまきゅうの耳はお酒じゃないから。

しかも、飲んでいるんじゃなくて、吸っているから。

「くぅ〜ん」

くまきゅうが困っている。

どうしよう。

カガリさんと夕食を食べてからドワーフの町に戻ろうと思っていたけど、カガリさんが起きそうもない。

このまま寝かせて、1人でドワーフの町に行くこともできるけど。

くまきゅうが助けを求めている。

カガリさんを寝かせておくのは問題はないけど、くまきゅうをこのままにしておくのは可哀想だ。

それに、このままにしてドワーフの町に行けば、くまきゅうがいじけるのは想像ができる。

送還すれば、簡単に助け出すことはできるけど……。

「……そうだ!」

ひらめく。

治療魔法で体の中のアルコールって、消すことができるのかな?

わたしはカガリさんの体にクマパペットを当てる。

そして、治療魔法をかける。

体の中にあるアルコールがなくなるイメージをしながら。

頬が赤かったカガリさんの頬が白くなってくる。

もしかして、成功した?

わたしはもう一度、カガリさんの体をゆすって起こしてみる。

「カガリさん、起きて」

「なんじゃ、もう朝か」

起きた。

「違うよ。夕食を食べよう。鉄工所に付き合ってくれないなら、寝ててもいいけど」

「うぅ、起きるかのう」

カガリさんは体を起こす。

「うん?」

「どうしたの?」

カガリさんが自分の体を確認するような動作をする。

もしかして、治療魔法が失敗して、体調が変になった?

「体の調子がいい。気持ち悪くない。もしかして、お主のおかげか?」

カガリさんはわたしではなく、抱いているくまきゅうを見る。

「くぅ〜ん」

くまきゅうは首を横に振る。

「違うのか?」

「ああ、もしかすると、わたしのせいかも。カガリさんが全然起きなかったから、治療魔法? カガリさんの体の中にあったアルコールを消したんだけど」

「消しただと」

カガリさんは抱いているくまきゅうを下ろし、立ち上がる。

「ちなみに、あれからどのくらいが時間が過ぎている?」

「2時間ぐらい?」

少しフィナたちとおしゃべりをしてきたから、そのぐらいだ。

「酔いが完全になくなっておる。あのほろ酔いが気持ちよかったのじゃが」

「それじゃ飲み直す?」

元に戻すことはできない。

アルコール挿入なんてできない。

でも、魔法で相手の体にアルコールを挿入できたら、最強の魔法になるかもしれない。

酔っ払った相手はまともに動けないのだから。

でも、昔の映画で酔っ払って戦う拳法があったような。だけど、あれって酔っ払った風の動きだっけ?

「これから、ドワーフの町に戻るのじゃろう。飲み直すわけにはいかぬじゃろう」

カガリさんそう言って、部屋を見回す。

「ここはお主の家か、世話になったみたいじゃのう」

カガリさんは過去に一度、この部屋で過ごしたことがあるので、分かったみたいだ。

「和の国の家も考えたけど、こっちならいろいろと準備ができているし、勝手が分かっているからね」

「そうか。それにしても、あの程度の酒で眠くなるとは情けない」

あの程度なのかな。

ロージナさんとダダンさんは、お酒を飲むカガリさんを呆れるように見ていた。

たぶん、凄く飲むから驚いていたと思うんだけど。

もしかすると、凄い度数が高いお酒もあったかもしれない。

お酒を飲まないわたしには、その凄さは理解できないけど、ドワーフの2人が驚くほどだ。

かなり飲んでいたってことだと思う。

「まあ、それもこの体のせいじゃろう」

子供の体だと酔いやすいのかな?

「じゃが、お主の魔法は凄いのう。こんなに酔いが残らないとは。二日酔いのときに頼むとしよう」

「イヤだよ」

二日酔いのたびに呼ばれるなんて、面倒くさい。

「意地悪じゃのう」

「そんなことを言うなら、お酒を飲んでいるときに魔法を使うよ」

「お主、よくもまあそんな悪魔的な所業。非道の行い。血も涙もない。お酒に対する冒涜。神に喧嘩を売る行いを思いつくのう」

酷い言われようだ。

でも、自分に置き換えてみる。

好きなゲームを初期化する行い。

楽しんでいる漫画やアニメの中止。

楽しんでいるものを止められる行いは、確かに酷い行いだ。